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2015年1月 9日 (金)

Last Flight 25(1)

 告白。

***
第25章

9:42 ドラゴン

「この世界に、まだグリフォンがいるというのか?」 カロネルが仰天した様子で尋ねた。
「確かなことはわからないけど」とヴァルヤは認めた。「保護の魔法がしくじっているかもしれないし、卵は飢えたドレイクに見つかって餌食になっているかもしれない。イセヤが思っていたのとは違って、汚染を完全には取り除けなかったのかもしれない。四百年の年月は長いし、隠したときの彼女は正気を喪いつつあって、彼女はそれについてあからさまだった。しくじる理由はいくつもある。でも・・・、機会は残されていると思う、きっと。うまくいった可能性はあるはず」

 一同は馬で、アンダーフェルズの埃っぽい荒れ果てたステップに乗り出した。レイマス、セイカ、カロネル、そしてヴァルヤ。友人たち三人は皆、理由はワイズホプトを出てから説明するという彼女の約束をあてにして、赤き花嫁の墓までの同行を承諾した。丸一日近く馬上を行くと、ブロークン・トゥースは南の地平線に霞む影となり、その西側は沈む夕日の光を浴びて赤く染まり、ヴァルヤは彼女が知る秘密を暴露する頃合いだと考えた。

「イセヤが卵を隠したとき、そこはまだ神殿ではなかった。名も知れない者の手で岩に彫り込まれたアンドラステの肖像はあったけど、修行僧たちはいなかった。アンダーフェルズは、そんな集落が生き残ることなどできないくらい、ブライトのため完全に荒れ果てていた。その頃にはドラゴンの洞窟があり、イセヤはその生き物がうまい具合に卵の守り手になると考えた」
「食べられてしまうことは考えなかった?」とレイマスが尋ねた。この陰鬱なテンプラーにどこかしらおかしがる雰囲気があることに、ヴァルヤは驚いた。

 エルフのメイジは首を振った。「彼女は卵を隠した。具体的にどうやったかはわからない。そこに行けばわかるのだと思う。わかることは『魔法の壁と岩の壁』が関係していることだけ」
「それから、引っかき回されて眠りに就けない骨の壁」とカロネルが、イセヤの声の抑揚を真似して言った。彼は皮肉に満ちた顔をしてみせた。「すまん。場当たりな詩文など、罰としてぶん殴られてもしかたないな。だが事実は残る。赤き花嫁の洞窟にはアンデッドがいる。君がそこに向かう理由は今わかったし、グリフォンの生き残っている可能性を入念に調べなければならないことも完璧に頷けるが、ことは簡単ではない。君は本当に、ファースト・ウォーデンの支援を求めないつもりなのか?」

「そう」とヴァルヤが言った。心の中では、彼が彼女の判断に取り敢えず従うことにしたことに気づいていて、それに感謝していた。「そこで何が見つかるかもわからないし。でも、それがなんであれ、私たち自身がどう取り扱うかを決めるべきだと思う。私たち四人が。ファースト・ウォーデンではなく、ハイ・コンスタブルでも、チェンバレン・オヴ・ザ・グレイでもなく。彼らがグリフォンにとっての幸せを、権力や政治よりも大事に扱うなんて話は信じられない。あなたたち三人を招いたのは、私があなたたちを信用しているから」

「メイジふたり、グレイ・ウォーデン、それにテンプラー」とセイカが口に出して考えにふけり、自分の黒檀の杖一面を覆う彫り物を指でなぞった。彼の黒い瞳はずっと冷静なままで、まるでその価値を真剣に計るかのように、順繰りに仲間たちの顔に向けられた。その間、彼の顔はヴァルヤが思ったよりもさらに幼くも、さらに大人っぽくも見えた。「悪い冗談の出だしみたいだけど、僕たちならすごく強力なチームになれる。いけるよ」
「神殿に何がいるか知らんから、そう言えるだけだ」とカロネルが反駁した。若いメイジは肩をすくめ、エルフのほうに変わらぬ真面目くさったまなざしを向けた。「違わないよね?」

 ウォーデンは、芝居がかった様子で両手を宙に放り上げた。その仕草を誤って挑発だと受け取った彼の騸馬がいななきたじろいだ。カロネルは急いで手綱を引き寄せ、乗馬をあやさなければならなかった。「馬さえ上手に扱えないのに」 馬をようやく落ち着かせると、エルフは不平をこぼした。「シェイドどもや怒鳴り散らす骸骨どもをどうこうできるなんて、気楽に考えることはできん」
「本当に怒鳴るの?」 好奇心に打ち勝つことができなかったヴァルヤが尋ねた。
「そんなこと知るか」とカロネルが言った。「自分たちの悲鳴以外に何も聴こえやしなかった。ただ、間違いなく牙は生えていた」彼は騸馬の手綱を翻すと、砂の色をした(月毛の)馬を北に向けて走らせ、たちまち他の者たちを引き離した。

「あんなにぷりぷり怒ることなんて、今までまるでなかったのに」 もうひとりのエルフに聞かれることがないくらい離れてから、ヴァルヤはそう呟いた。
 それを耳にできるだけ近くにいたのはレイマスだけだった。テンプラーは肩をすくめ、自分の乗馬がカロネルのものの後を落ち着いた速歩(はやあし)で追いかける間、背負った丸い形の鋼の盾の位置をただした。以前はそこにテンプラーの焔をあげる剣の印が描かれていたが、彼女はその上から、意匠にこそ頓着していないものの、単純な青色と灰色のグレイ・ウォーデンの色合いの山形紋(シェヴロン)に塗り替えていた。「恐怖に向き合う方法は人それぞれ。吼える者もいれば、笑い飛ばす者もいる」
「吼えるほうがいい」とヴァルヤが言った。「笑い声は落ち着かない気分にさせるから」 彼女はウォーデンを追うように自分のまだらな灰色(芦毛)の乗馬を急かした。あたりは急速に暗くなってきており、彼女たちが今いるあたりは野営には適さない。冬には常に砂嵐の脅威が襲い、逃げ場に身を隠していない者は、いとも簡単に生命を奪われてしまうだろう。

 彼女たちが進むのは厳しい土地だった。ワイズホプトは立ち入ることのできない土地にくり抜かれていて、そこから北側のステップはすぐに乾いてひび割れた丘陵となり、要塞のすぐ側には辛うじて生えている下生えの草や棘のある茂みも、そこにはまったくなかった。塩のように白い霜が、割れた砂の層の表面を覆っている。彼女たちの馬の蹄が蹴散らして粉になったそれが、少しでも風が起きれば巻き上がり、ヴァルヤの瞳に容赦なく突き刺さった。

 前方では、広い緑色の帯が遠くに流れるラッテンフラス河を示している。そこで少しの休息をとり、馬たちも草を食むことができるだろうが、土地の厳しさはまだまだ序の口なのだ。言い伝えによれば、彷徨いの丘の周囲では、第一のブライトの時代に苛まれ、死んだ者たち皆の血の色が、二度とぬぐい去れないまま地面を赤く染めている。

 ヴァルヤは、バードたちの悪ふざけが少々過ぎるだけだと考えていたが、その不毛の丘陵地帯を横断することに思いを致せば、怖じ気づくのは否定できなかった。彷徨いの丘では、過酷な自然に野ざらしにされたまま身体を壊して死んだ者も数多い。より多くは砂嵐のため窒息したか、肌をぼろぼろに破られて死んだ。他の者たちは、その土地の名のとおり、道に迷って途方に暮れたあげく、死んだように乾いた丘の斜面の間をあてもなく彷徨い続け、最後には案の定、力尽きたのだ。

「グリフォンを見つけたらどうするつもり?」 前方の河沿いの緑に向かってふたりが乗馬を速歩で進める間、レイマスが尋ねた。日暮れが迫り、ラッテンフラス河沿いに並ぶ森の形は、黄昏の中で青くぼやけて見えた。「卵があって、今日まで長い間生き延びていて、ガラヘルの妹がダークスポーンの汚染を取り除くことに成功していたとして・・・、あなたはどうするつもりなの?」
「わからない」とヴァルヤは白状した。「イセヤは、グレイ・ウォーデンが導き手に最も相応しいと考えていた。過去の時代の過ちのことを反省し、それをただすだけの十分な時間が経てば。彼ら以外に相応しい者は思いつかない。あなたは?」
「飼い主なんていらないのかもしれない。自由に羽ばたいていけるのかもしれない」とレイマスが言って、ステップの黄昏の空に片手を大きく振り上げた。

 ヴァルヤは、テンプラーに半笑いの顔を向けた。「雛たちが? あっという間に死んでしまうわ。だめよ、そんな自由を享受することができないのは私たちと変わらない。餌も、棲み家も、水もいる。繁殖できるだけ長く生きたなら、止まり木や巣づくりできるだけの場所がいる。ワイズホプト以外に適当な場所が思いつかない。イセヤが祈ったように、ウォーデンたちが過ちから学ぶように期待し、今度こそ乗騎たちを手厚く扱うことを信用する以外に、選択の余地があるのかどうかもわからない」
「そうなるかも」とレイマスが折れた。「私たちがテンプラーとして学んだことのひとつは、迷いが生じたときには、人々が善をなすことができる機会を必ず与えるようにしなければならない、というもの。その結果に驚かされるときもあれば、そうでないときもある」
「驚かされるのは、どっちのとき?」

 今度は、テンプラーのほうがかすかな半笑いの顔を向ける番だったが、暗闇の中それも辛うじて見えただけだった。「誰かが誰かに、本当に機会を与えたのだということがわかったとき」

***

「翻訳の方が楽」とほざいた割には、最後の一文でうんうんうなってしまった・・・。
  ここで大事なのは、ほぼこの一行だけ(あと、ヴァルヤのカロネルに対する淡い恋慕というか憧憬? 私がちょっとだけ誇張してあるけど)。
 英語はやっぱコンパクトなんですね。原文は(加工すると)
 
  "(The surprise is) (t)hat anyone ever actually gives someone else the chance."
 
 「誰かに選択の余地(別の進む道)を与えることなんて最初からできないんだ」という考え(諦観)を予め踏まえた上での、それに対するアンタイセシス(アンチテーゼ)。
 DAIといい、(その内容の影響を間違いなく完璧に受けている)この小説といい、グレイ・ウォーデンはけちょんけちょんにされ、くそみそのすかぽんたん扱い。四百年にわたる応報(retribution)の後、ようやく贖罪(atonement)は図られるのだろうか。

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