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2014年12月 4日 (木)

Last Flight 22(2)

 死闘。

***

 馴染みのある棘で刺されたような痛みがイセヤの肌を通り抜ける。「魔法か」と思った次の瞬間には、渦巻く紫色と黒色のエナジーのらせんがウォーデンたちのど真ん中に降り注いだ。
 クロッキーテイルが真っ先に反応した。白斑のグリフォンは翼を折りたたみ、その場で落下する。リーヴァスも同じことを試みたが、老いと怪我のため反射神経は鈍く、十分早く遠くまで落下することができなかった。
 他のグリフォンたちは左右に避けようと試みた。一頭は無謀にも上空に回避した。渦巻きは彼らをハリケーンの中の藁のようにつかみとり、獣たちを空から引きはがし、互いに衝突させた。イセヤはリーヴァスの手綱を必死に握りしめ、耳をつんざく風の咆吼の中に降り注ぐ、骨をきしませ、プレートメイルを押し潰す震動に顔を歪めた。

 彼女には何も見えなかった。風が容赦なく目に打ちつける。羽毛と血まみれの破片の嵐を避けるため目を閉じていなければならず、フェイドのディーモンたちの囁き声が大音声となって心の中に襲ってくるが、たとえそれがなくとも、周囲のグレイ・ウォーデンたちの恐怖と苦痛の悲鳴を閉め出すことはできなかった。
 アーチディーモンは態勢を崩したウォーデンたちを掃射するため、穢れの炎を立て続けに浴びせかけた。イセヤの閉じた瞼の裏にはその輝きが筋のようにこびりついた。たとえようのない異質な悪寒が背筋を駆け抜け、魂を震えさせた。

 とても耐えられなかった。血で縛り付けたすべてのグリフォンたちの制御を保つことはできなかった。リーヴァスが空中にとどまろうとして必死にもがき続け、アーチディーモンはすぐ目の前におり、彼女の身体の中のダークスポーンの穢れがやつに呼応するように鳴り続け、フェイドのディーモンどもが頭蓋の内側に爪をたてているさなかでは。
 だから彼女は手放した。憑依していたグリフォンのうち三頭が彼女の手からすり抜けた。イセヤは心の中で、魔法がまるでほころび過ぎた白熱した繊維の束のようにばらばらになって、果てしなく広がる闇の中に閃光の尾を引く様子を見た。

 解放されたグリフォンたちはアーチディーモンに突撃をはじめ、躊躇なく焔の流れに入り、その中を突き進んだ。一頭は紫色の爆発に包まれ、翼を羽ばたくごとに燃える羽根を渦巻きの中にまき散らした。そのとき竜巻に左の翼をとらえられたリーヴァスの向きが変わってしまったため、イセヤにはアーチディーモンの姿が見えなくなった。
 イセヤがその魔の手から逃れようと必死になっていたとき、渦巻きがやんだ。何もない空に羽根が舞い、その静寂の間、めったに差さない日差しがまるで祝祷のように降り注いでいた。その凍り付いた永遠にも似た一瞬、イセヤは、さっきまで二ダースのウォーデンたちがいたあたりの、羽根と陽光の緩慢な舞踏に目を奪われ釘付けになった。

 そして再び視界の中に湧き出てきたアーチディーモンは、とうの昔に死んでいなければおかしいはずの汚染された二頭のグリフォンたちと絡み合っていた。何度も何度も宙返りを繰り替えすそれらの姿は、まるで棘と鱗、焦げた羽根と毛皮でできた球のようだ。降り注ぐ血は赤と黒のスタッカートのシャワーで、アクセントをつけているのは、アーチディーモンが襲撃者たちを振り切ろうとして放つ魔法の輝きと焔の短い弧、そして渦巻きから逃れたグレイ・ウォーデンたちが、穢れた古の神を墜とそうとして矢継ぎ早に放つ呪文だった。
 
 ドラゴンは片方の後ろ脚の爪で一頭の汚染されたグリフォンの下腹をとらえていたが、小さいほうの獣は狂ったように戦い続けており、アーチディーモンのかぎ爪がそのあばら骨を砕き、鞍を支えていた分厚い紐帯を引きちぎっても、死も敗北も拒否していた。乗り手のいない鞍は回転しながら飛んでいき、グリフォンはドラゴンの脇腹に埋めていた嘴を引きはがし、悲鳴をあげた。
 もう一頭はドラゴンの頭を攻めていた。その牙も必殺の焔もものともせず、鋼のような灰色のグリフォンは爪でアーチディーモンの両目をかきむしり、鼻先に無残な爪跡を残していた。空中を舞い散る剥がれた鱗が宝石のシャワーのように輝いている。
 血で覆われた片方の目を細めながら、古の神は力いっぱい息を吸った。グリフォンの羽根がドラゴンの吸気で前方に逆立つ。
 それからやつが息を吐き出すと、グリフォンは焔の壁の中に消えた。
 フェイドのディーモンどもが、イセヤの頭の中で悲鳴をあげ、報復しろとわめきたてた。彼女は片方のこめかみを手の付け根で叩き、声を締めだそうとした。瞳の前の世界が揺らいだが、ディーモンどもは不承不承静かになった。

 何秒かの後、もう一頭のジョイニングを経たグリフォンが空中を転がり落ちてきたが、ドラゴンの二本の後ろ脚の爪で見る影もなく引き裂かれていた。解放され、得意げな咆吼をあげたドラゴンは、逃げ去るグレイ・ウォーデンの残党を追撃しようと爪痕をつけられた頭をもたげたが、相手はすでに向きを変え、攻撃の準備を整えていた。

 「ウォーデン! ウォーデン! ここに集結!」 ガラヘルは一斉攻撃を促すため呼び続けていたに違いない。編隊の残りはすでに彼の後ろで戦闘体形を取っていた。ディーモンに苛まれていたイセヤの耳には届かず、後ろで急かし続けていたカリエンの声がどんどん半狂乱に近くなっていたのもわからなかった。彼女はリーヴァスに編隊に近づくよう促したが、すでに隊列に参加するのには遅すぎた。彼女は五十ヤードほど離れたところで、仲間たちが蛇に似た敵に突進するのを見守っている他なかった。

 鋼と、陽光に輝く銀の流れが、ドラゴンに向かって進んでいく。弓が矢の嵐を奏で、杖がフェイドのスピリットの光を煌めかせる。彼らの突撃にあわせて雲が道を譲るように分かれ、突然陽光に照らし出された中で、イセヤは、アーチディーモンが思った以上にひどく傷ついている姿を見た。下顎の片方はもぎ取られ、むき出しになった赤い骨のためその口腔が嗤った骸骨のように見える。グリフォンにかきむしられた右の瞼は垂れ下がっている。鱗の鎧に開いた亀裂からは、むき出しになった濡れた肉と畝織りの筋肉が光り、横腹の皮は剥がれてはためいている。
 だがアーチディーモンは、打ちのめされていると呼ぶにはほど遠く、アイセイヤの上空を突進してくるウォーデンたちを受けて立ち、またしても焔の柱を浴びせかけた。グリフォンの編隊の左翼が悲鳴と煙をあげ、霞んだ灰色のらせんを描きながら地上に向かって墜落していく。イセヤの呪文の負荷が突然軽くなったのは、彼女が憑依していた獣たちのうちの何頭かが突然潰えたことを物語っていた。

 焔から身をかわした残りのウォーデンたちは、再び突撃のため戻ってきた。先ほどのきれいに並んだ編隊ではなく、各自でたらめに飛び、獲物に接近するにつれて相手の混乱を誘うため、それぞれのグリフォンが撹乱する動きを繰り返した。その代償はグリフォンがお互いの射線に入る危険があることだ、そうイセヤにはわかっていたが、いまや空中には十五人かそれ以下の乗り手しか残っておらず、彼女の兄は、それだけの数であれば危険を冒す価値があると考えているのは間違いなかった。

 彼は間違ってはいなかった。グリフォンのうち三頭がその混乱のために墜落した。一頭が仲間の急接近を避けようとするあまりにアーチディーモンの焔の中に飛び込み、別の一頭は味方のフロスト・コーンを浴びせられ、氷で重くなった翼のため地上に向かって落ちていった。三頭目は、イセヤも墜落し始めてからはじめて目にしたのだが、空の下半分を灰色の彗星のように落下していった。そのグリフォンは、聖堂の廃墟に骨が粉々に砕けんばかりの勢いで激突し、地響きを立てた。
 残りは無事で、戦い続けた。
 
 アーチディーモンは、蝿の群れを追う犬のように突きかかった。白い腹をした一頭に向きを変えると、あまりに近くを飛んでいたその尾を一噛みして羽根をむしり取った。だが、その攻撃によってやつは射手のひとりのほうに死角を曝してしまい、とてつもない幸運のためか、あるいはそれをも上回るおそろしく卓越した技倆によるものか、弓の使い手が大打撃を見舞った。彼の射手用の手槍は、アーチディーモンの左の翼の膜を貫くと、右の翼の関節に深く突き刺さり、その翼を嵐で折れた船のマストの帆のようにひしゃげさせた。
 使い物にならなくなった翼を軸に錐もみしながら、アーチディーモンはらせんを描いて急速に落下していった。カリエンが傍らを落下するドラゴンの巨大な棘だらけの下腹に向けファイヤーボールをお見舞いする。リーヴァスも追撃に参加し、やつの後ろにマントのように尾を引く、鼻をつく臭いのする煙の跡を追った。
 雲の中を錐もみして落ちていくその先、追撃する彼女たちの眼下には、街の崩れ落ちた城壁の中、湾を見下ろす黒ずんだ中庭に、背の高い石造りの教会の塔の骨格だけが残っていた。煙と海霧が教会の基部をぼんやり霞め、付近の墓場を囲む装飾用の手すりの周りで渦巻いている。
 これでおしまいか。イセヤはそう思い、彼女の黒いグリフォンが傷ついたアーチディーモンを追撃して飛ぶ間も、驚きのあまり勝利を感じる暇さえなかった。これで本当におしまいなのか。
 そのように思われた。正直ほとんど、そのように見えた。歓喜の叫びをあげ、ウォーデンたちは降下を続けるドラゴンにスピリットの弾や灰色の矢羽の矢を浴びせかけた。アーチディーモンは使えるほうの翼を折りたたみ、さらに速度を増しながら塔に向かって落ちていく。
勝利が近いとみて大胆になったウォーデンたちは、追撃のため急降下していた。

 眼下の煙の中から、轟音の合唱が彼らを出迎えた。先端の黒い弩の矢が、イセヤのすぐ右を飛んでいたウォーデンの喉に突き刺さる。男は鞍の中でのけぞり、横向きに崩れ落ち、ごぼごぼと噴き出す血が、鎧の前面をよだれ掛けのように濡らした。さらに二本の弩の矢が彼の乗るグリフォンのむき出しの下腹に刺さり、一本がイセヤの左のふくらはぎに刺さった。
 その衝撃のショックで、彼女は正気を取り戻した。
 煙とまとわりつく霧の間から、イセヤがぼんやりとした姿を目にしたのは、正面の放棄された家屋群の残る高台に整列しているダークスポーンどもだった。ジェンロック、ハーロック、ひょろりと背の高いシュライクども。たわんだ雨樋に腰をかがめ、雨露で削れたガーゴイル像の間にしゃがみ、穴だらけで放置された屋根の下から見上げている。彼女にはその武器まで見て取ることはできなかったが、やつらがみな弓や弩を構えているに違いないと推測する癖は、骨の随まで染みついていた。

 アーチディーモンはウォーデンたちの戦術を逆に用いてきたのだ。翼を傷つけられたことを巧妙に装う母鳥のようにウォーデンたちを引きつけ、今その待ち伏せの罠が閉じられた。
 リーヴァスは、恐怖と怒りの啼き声をあげながら上昇をはじめ、周りでも皆がそうしていた。だが被害は大きかった。ガラヘルの後に続いてアーチディーモンの罠に陥ったグリフォンたちのうち、八頭だけが生き残った。八頭のグリフォンとおそらく十名の乗り手たち。アーチディーモンを倒すためにはあまりにも少なく、とんでもなく少ない。イセヤが勘定しているうちにも、ひどい傷を負った一頭が、渦巻く煙と霧の中に消えていった。
 
「荒ぶるやつらを解き放て」 後ろからカリエンが言った。彼の声は恐怖と苦痛のため張り詰めていたが、その申し出は、この混乱の中で冷静さをもたらしてくれた。
 イセヤが、それが彼女の古い友人の声であって、フェイドのディーモンのものではないと気がつくまでにはしばらく間があり、その言葉の意味を飲み込むまでにはさらにかかった。
 汚染されたグリフォン一頭がアーチディーモンに立ち向かえた。二頭で傷を負わせることができた。三頭または四頭なら、とどめを刺すことができるかもしれない。

 どのみち、彼女にはそう願うしかなかった。ジョイニングを経たグリフォンは四頭だけが残っていた。そしてこの戦いを生き延びたとしても、グレイ・ウォーデンがこの手の決戦をすぐさま再び挑むことができるはずもなかった。もしかしたら永久にできないかもしれない。
 イセヤは呪文を断ち切った。フェイドのディーモンたちの声が意識の中から消え去ると、彼女は自身の意識のまったき静寂の中に取り残され・・・、そしてグリフォンたちの叫び声が聞こえた。
 だが、それはフェイドのスピリッツどものいたずらではない。叫び声は現実のものだ。エルフの耳を覆うのは、むき出しの憤怒と、復讐への渇望、そしてその渇望は、今存分に満たすことができる。

***
 

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