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2014年12月22日 (月)

Last Flight 23(3)

 アンティヴァ・シティー。

***

 三ヶ月後、イセヤは、ファースト・ウォーデンから正式に命令が発せられたことを知った。矯正不可能な凶暴性を示すグリフォンは処分せよ。咳きやくしゃみで吐血するもの、またブライトとの戦いに参加したものも同様。
 その頃アンティヴァにいたイセヤは、心臓をダガーで突かれたような感じがした。グレイ・ウォーデンはすでに制御できなくなったグリフォンたちを秘密裏に処分していたので、命令が公に発せられた唯一の理由は、ワイズホプトの外にまで拡散したグリフォンの異常について救いを求める他諸国に対し、彼らの措置を知らしめるためであった。グレイ・ウォーデンも殺す以外に手段を持たない。ファースト・ウォーデンの命令の真意はそこにあった。

 そして、それは彼女の過ちのせいだった。仕組みも理由も依然としてわからなかったが、そうであることは間違いなかった。グリフォンが苛まれている緋色の病は、彼女がブライトの最中に施した儀式と結びついていたが・・・、だが彼女はそれが何をもたらすか、どのように拡散するのか、完全には理解していなかったし、治療の手がかりさえ知らなかった。本当に病なのであれば、血の噴出が感染源かもしれなかった。だが本当の病ではなかった。あるいはそうだったのか? 彼女が意図せず造り出してしまったのだろうか?

 答えを探す旅はワイズホプトからはじまった。グレイ・ウォーデンのグリフォンに関する伝承収集はセダス随一であり、魔法に関する蔵書も屈指だ。だが予期していたとおり、ダンセインや他のウォーデンたちの探究はすでに徒労に終わっており、イセヤ自身のものも大差なかった。
 手ぶらのままワイズホプトから旅立ったイセヤが向かった先はフリー・マーチズだった。ダンセインには少なくとも一部嘘をついていた。彼女とカリエン以外にブライトの戦いを生き抜いたブラッド・メイジはいない。他の者たちは戦死し、多くはまるで邪悪魔法に手を染めた贖罪を果たすかのように望んでそうした。だが彼女はどこかに書物が、秘密の日誌が、封印された巻物が存在し、答えを与え、少なくとも進むべき道筋を示してくれると信じていた。
 だがスタークヘイヴンでも、カークウォールでも、タンターヴェイルでも、オストウィックやアンスバーグでも見つけることはできなかった。カンバーランドの血まみれの泥濘からも、ワイコムの潮まみれの灰燼からも見つからなかった。

 彼女は次にテヴィンター帝国を頼った。セダスで最も悪名高い秘密の守り手であるテヴィンター・マジスターたちは、ブラッド・メイジを許容し、推奨までしている。噂では、彼ら全員が一人残らずブラッド・メイジであり、それこそテヴィンター帝国が、この世界の列強の中で唯一おおっぴらに奴隷制を採用している理由であるというものまであった。マジスターたちは非情にも奴隷たちの血をすすっているのだと。

 これまでイセヤはその手の噂を信じることはなかったが、テヴィンター国境沿いで受けた薄ら寒い対応が、ほとんど彼女の態度を変えそうになった。そう、グレイ・ウォーデンは世界の救世主として途方もない厚遇を受けている。そう、彼女の兄が果敢にも殉死者となったことも知れ渡っている。だがテヴィンターがあからさまに示したのは、イセヤが受けるにふさわしい優遇は、即座に奴隷商に売られることなく帝国内を往来できることだけであった。公開の書庫でもほとんど自由はなく、魔法に関する蔵書のあるサークルの書庫からは締め出された。おざなりの社交辞令以外のものを与える者はなく、それらすら氷のようによそよそしかった。適切な賄賂で拒絶が溶けるような手がかりもなく、極秘に行う秘儀の交換が歓迎されるきざしもなかった。ただそっけない、容赦ない拒絶だけだった。
 彼女は激高し、そして挫折した。十年前だったなら、五年前であっても、イセヤはテヴィンターたちの沈黙を挑戦と受け取り、どちらかが砕け散るまで、自分の頭を連中の慇懃無礼な壁に打ち付け続けただろう。
 だがそのような威勢の良さはもうない。グリフォンが処分される報せが日々届き、死の頭数が徐々に増え続け、夜は彼女の夢の中でコーリングが囁いている中では。テヴィンターの頑迷さを呪い、イセヤは惨めな思いで帝国に背を向けた。

 次に向かう先は最後の頼りだった。
 カリエンはアンティヴァに戻り、崩れ落ちた栄華の再建に勤しむ国の者たちに手を貸していた。それは容易なことではない。後背地にはダークスポーンの残党や穢れた獣たちが残り、食糧は乏しく、往来できる街道は少ない。ディーモンどもや眠らぬ死者たちが、いくつかの激戦地に跋扈している。国から逃げた者たちの多くに帰国の意志はなく、他の諸国で満足な暮らしを送っていた。
 アンティヴァ・シティーを含むリアルト湾の諸都市の立地は、だが永久に捨て置くにはあまりに絶好であり、一握りの心挫けぬ者たちが復興を手がけ始めていた。ガラヘルの葬儀が済んだ直後から、カリエンはその取り組みに身を投じた。

 あの日以来、イセヤは彼と出会うことも、言葉を交わすこともなかった。別れに害意などなく、悲しい決意だけがあった。ふたりともイセヤの最期が近いことは承知していた。だが今、嘆きと自戒の念に苛まれ、彼女には彼しか頼る先のないことがわかっていた。カリエンは、彼女にブラッド・マジックの扉を開けることを戒めたのは確かだが、鍵を渡したのも彼だった。
 彼女の自責の念を肩代わりさせるつもりはなかった。ふたりともこんなことになるとは考えてもいなかったし、セダスのどこかに答えがあるとしたら、カリエンにこの心痛を共有させるつもりもなかった。
 だが他に道はなく、彼女はアンティヴァ・シティーに飛んだ。

 彼女が到着したとき、カリエンは海岸沿いにいて、力場と炎の呪文で港の瓦礫を処分していた。アンティヴァの富はいつもその港と結びついており、海上交易の再開が国家の財政の再建に欠かせなかった。
 彼は髪を短く切り、伸び放題だった髭はほとんど灰色になっていたが、一目で見分けがついた。メイジの周りでは、朝を台無しにされたカモメが飛び回り、非難の啼き声をあげている。アンティヴァで無邪気で不機嫌な鳥たちを目にするのがあまりに久しぶりであったイセヤは笑みをもらした。カリエンが倒壊した建物を破壊し尽くすのを待ってから、けぶる静けさの中、イセヤは歩み寄った。「まだ破壊から足を洗えないの? もう飽き飽きしてるのかと思った」

「イセヤ!」年長のメイジの微笑みは率直で、本物で、そしてわずかな心配の影があった。冬もまもなく終わる時期、天候の厳しさは、イセヤが必要以上に顔を布地で、手を手袋で覆っている言い訳にはなるが、彼女を良く知るカリエンは本当の意味をわかっていた。「こんなところで何をしてるんだい?」
「訪ねてきたの。話す時間はあるかしら?」
「もちろん」 カリエンは近くに並ぶうち、最もましな姿に見える建物を杖で示した。窓には新しい木材が打ち付けられ、晩冬の容赦ない寒風が凌げそうだ。扉には王冠を被った青い魚が描かれた質素な看板がかかっていた。「『青鰭王』。いつも食事をとるところだ。調理人は他よりましだし、なにより今は魚も戻ってきつつある。エールまである。大抵の日には。ワインが出る日もある」
「個室はある?」
「私のことを、そこまで思い焦がれていたとは気が付かなかった」 だが彼女が笑えないでいると、彼の瞳からおどけた調子が消えた。落ち着かなげに、彼女の覆われた顔からその狙いを知る手がかりを探し出そうとしつつ、カリエンは頷いた。「あるとも」
「助かるわ」 彼女はカリエンに続いて宿屋に入った。店は小奇麗で繁盛しているようで、何人かの漁師たちが暖かい食事をとり、髭のある酒場の女主人が、宿屋の親父に家具の見本を売りつけようとしていた。それらは引き揚げられた様々な家具が不細工に組み合わされたものだったが、修理は行き届いていた。イセヤには、アンティヴァの来たるべき再興の象徴のように思われた。

 女主人と宿屋の親父は、入ってきたカリエンに頷いてみせたが、ふたりが階段を上って個室に向かう間、一言も発しなかった。メイジの客人の中には、目を背けるに越したことがない者がいるのかもしれない。
 部屋に入るとカリエンは扉を閉め、近くの机の上に鍵を置いた。「さて、これほど内密にすべき話はなんだろう?」
 イセヤには躊躇うつもりはなかった。「ブラッド・マジック」 口に出した途端、残っていた最後の力まで吸い出されるような気がした。最寄の壁にもたれながら、頭を粗い漆喰にこするようにして床に滑り落ちる。眼は閉じていた。カリエンに話す間、その方が楽だった。「グリフォンに施したあれは、ジョイニングは・・・、他に広まってしまった。みな病に落ちた。ブライトの病に似ているけど、広まり方が異なる。空気を伝っているみたい。それか、血を介して。いずれにしろ魂を蝕む疫病で、死に至らしめる。治し方がわからない。ここに来れば手助けが得られると思って」

 長い間、カリエンは答えなかった。沈黙が続き、イセヤが目を開け、頭を挙げても、年長のメイジはまだ何も口にせず、とうとう無限に近い時間が過ぎたと思われる後になって、ため息をつき首を振った。「できない」
「できない?」
「助けることはできない。たとえできたとしても、できるかどうかもわからないが、だが問題はそうじゃない。私にはできない」
「なぜ?」とイセヤは尋ねた。旧友に出会えた当初の喜びは消え去り、その代わりを精気のない空虚さが埋めた。その感覚はまた、避けられない最期に近づく別の一歩でもあった。

「チャントリーのブラザー・ヴィジュラスが、かつてこう書いた。魔法にはそれ自身に法と理(ことわり)があり、すべての呪文は支払うべき対価を伴う。ブラッド・マジックの真の危険は、彼が結論づけるところによれば、それがディーモンの産み出したものであり、対価が隠されていることだ」
「ブラザー・ヴィジュラスはメイジではなかった」とイセヤが反駁した。「私も、他の皆と同じように彼の書は読まされた。でも彼は人生で一度も呪文を用いたことがない。彼は神学者ではあったけど、エンチャンターではなかった。自ら一度も立ち入ったことのない領域に、理論だけで法理を組み立てた」
「そうかもしれんが、私は何年にもわたり彼の著作から知見を得てきた。そう、彼は推測していたし、推測は間違っていたのかもしれないが・・・、正しかったのかもしれない。ブラッド・マジックの真の危険は、犠牲(いけにえ)からパワーを引き出すことでも、他者の災難を自らの魔法に用いる強欲さや野心を唆すことでもないのかもしれない。もしかしたら危険は、我々が単にそれを理解できないことであり、理解できないが故に、たとえ我々の意図が純粋であっても、惨たらしい帰結を招くことかもしれない。

 君が正しいのなら、そしてグリフォンたちが死んでいく原因がブライドの間に我々がなしたことにあるのなら・・・、それも『もしも』のうちだよ、イセヤ、君にはそれが本当の原因かどうかわからないし、知ることもできないのだから。だがそうだとすれば、我々が大いなる善のためになした事柄がこの結果を招いたのだ。我々が払っても良いと考えた犠牲は、ただの始まりにすぎなかった。真の代償は、我々のどちらも思いもしなかったほど高かったのだ。
 もしそうであるなら、そして、このすべてが純粋な憶測に過ぎないことはもう一度強く念を押しておくが、再びブラッド・マジックに頼ることで、どうして事態の打開を願うことができるのだろう? どうして私の目論見が、さらにこの世の中の事態を、新しい、予想もつかない方法で悪化させるのではないと言えるのだろう?」 カリエンは再び首を振った。「私は二度と用いないと誓った。サークルは、ブライトの間グレイ・ウォーデンとともに戦ったメイジたちの行いについて御咎めなしにしたが、もし私が邪悪な遣い手だと知れ渡るようなことにでもなれば、その寛容さも即座に消え去ってしまう。ブライトの終息以降、あの力には触りもしていないし、私が疑われるようなことはないのだが・・・、それもすぐさま変わりうる。常に監視の目に曝されているのだ。だから私には手助けはできない。だが仮にできたとしても、やろうとは思わない。ブラッド・マジックの代償は、その支払いを迫られるまでわからないし、そして私は二度とそんな無暗な取引きはしない」
 彼は黙り込み、彼女の差し迫った眼差しを見た。「すまない・・・」

 イセヤはぎこちなく立ち上がり、自分の外套を踏んであやうく倒れかけた。彼に尋ねた自分が馬鹿だった、ここに訪れたのが馬鹿だった。新しい人生をはじめた彼に、彼女は自分の心痛の重荷を担わせようとしたのだ。「いいえ。謝らないで。あなたが救いはないというのなら・・・」
「救いがないとは言っていない。私には救えない、とだけ言ったのだ。そしてブラッド・マジックは、支払うつもりのないくらいの、予想もしていなかった高い代償を求めるかもしれないと言ったのだ。それと、救いがないと言うのとは違う」
「違わない。他のところは全部調べた。ワイズホプト、フリー・マーチズ、テヴィンター帝国さえ。どこにも答えはなかった。どこにも救いはなかった」 鍵は扉の近くの机の上にあった。宿屋の主人は、どこからか小さな飾りの彫刻を見つけてきていた。丸く太り、お腹が起き上がりこぼしになっている愉快な姿の陶製のドラゴン。鍵留めの輪は真ん丸の鼻にくくりつけられている。イセヤが慌てて引き寄せたため、鍵が外れてドラゴンが床に落ちた。

 それは粉々に砕け、無数の陶片が散らばった。イセヤはそれらを踏み越え、鍵を扉の鍵穴に差し込み、カリエンが最初から施錠をしていなかったことを知った。彼女は驚いて振り返った。その目つきの意味を誤解した彼は、肩をすくめた。「心配ない、私が綺麗にしておくから」
「そうじゃなくて・・・」
「君が気にすることじゃない」とカリエンはきつく、そしてやさしく繰り返した。腰を折ってドラゴンの破片を床から拾い集め始めた。「どのみち、他で答えが見つからないから何だというんだね? 君は他の誰もできなかったことをやり遂げてきたではないか。宙を飛ぶ船も、避難所の建造も・・・、そう、それにグリフォンのジョイニングさえも。すべて君自身の発明した呪文で、他の連中は誰しもが無理だと考えていた」

 イセヤは、片手を扉の取っ手にかけたまま、注意深く彼を見つめた。「何が言いたいの?」
「このことについて、私が手助けできない理由を言ったんだ。だが私の理由は君のものである必要はない。私の限界が君の限界である必要もない。今までもそうだったのに、どうして今度だけ違う? それともこう尋ねればいいのか、君はブラッド・マジックの危険にも陥穽にも気が付いていたのではないのか、アーチディーモンに食い殺されかけていたあのときでさえ、君はまだ思いとどまろうとしていた。だが私はといえば、決して君を止めようとしなかった。
 他のメイジなどに答えを求めるな。書や巻物やディーモンを頼るな。自分の中を探せ。君がやり遂げたことだ。一体他の誰に、それをやり直すことができると思うんだ?」

***
 まあ、ええシーンですわ・・・。

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