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2014年11月26日 (水)

Last Flight 21(1)

 こういうときに、数を減らす。
 といっても、ずいぶん前にあらあら書いていたのですが、DAIリリースのどたばたで手つかずでした。
 DAIを遊べない失意の中でまとめるには辛い中身です。ダークスポーンとブラッド・マジックの穢れ。

***

第21章

5:24 エグザルテド

 イセヤの髪が抜け始めたのは、スタークヘイヴンにやってきた後だった。
 フリー・マーチズの戦いは彼女にとってぼやけたものになっていた。仲間や友人が次から次へと現れては、名前を覚える間もなく過ぎ去っていった。皆、熱病、ダークスポーンの汚染がもたらす狂気、そして剣と矢によって斃れた。ほんの僅かの者たちだけがコーリングの呼び声を聞き、それに応じた。グレイ・ウォーデンと同盟軍はフリー・マーチズの街や村をひとつづつ取り戻していったが、奪還したどの一マイルも血まみれだった。

 アマディスは勝っているといい、ガラヘルも同意見だったが、他の者たちは逆のことを言っていた。マーチズで奪還した領土の分だけ、オーレイとアンダーフェルズで、そしておそらくテヴィンターでも喪っている。
 イセヤには誰を信じるべきかわからなかったし、ほとんどの日々にはどうでもいいと思っていた。勝利がどのようなものだったか忘れてだいぶ久しい。
 彼らは水のない河床、死に絶えた森、茶色い塵の平地を進軍した。穢れた地を永遠に覆う陰鬱なもやの中に塵が舞い、頭上の変色して膨れあがった雲からは、雨が降ることは決してない。

 同盟がやってきた。食糧となんとか安全に眠れる場所と引き替えに戦うことに同意した難民たちの他には、感謝の意を示す王子たちや野望を抱く隊長たちが送り込んできた兵士たちが、またはブライトの影響が少ない諸国が自国への蔓延を防止する目的で派遣してきた兵士たちがいた。だが大部分は見捨てられた者たちだった。

 ガラヘルにはあり得ないところから支援を勝ち取ってくる才能があった。追放された、またはカーストレスのドワーフたちを割れた山を描いた戦旗のもとに集めた。彼らは自分たちを「ストーン・バスターズ」と呼び、自分の遺骨がオーザマーに戻ることを願い、死後ストーンの名のもとで汚名がそそがれることを祈った。主人たちを殺害し、テヴィンター帝国からブライトのただ中に逃亡した叛乱エルフたちの忠誠も勝ち取り、彼らは「マスターレス」と名乗って武器を手渡す誰のためであっても戦った。「ブロークン・サークル」、テンプラーの追跡を逃れてウォーデンたちの側に群がってきたアポステイト・メイジたちも受け入れた。

 彼らの忠誠はヒューマンのどの国に対してでもなく、ブライト打倒に対してでさえなく、ガラヘル個人に向けられていた。何度も何度も、イセヤは傍らで静かな畏怖を抱きながら、兄が魔法を繰り出すのを見守っていた。
 彼が皆を扇動した。そのくらい単純なことであり、それが複雑でもあった。彼はエルフで、貧しく汚れたエイリアネイジの名もなき両親の捨て子だった。同時にホスバーグを救った英雄でもあり、カークウォールとカンバーランドの民を避難所に脱出させ、ありそうもない同盟軍を招集してスタークヘイヴンからダークスポーンを追い出した。

 いくつかはイセヤの手柄だったが、彼女はそれさえも喜んで兄に差し出した、なぜなら彼のほうが彼女以上にその栄誉をうまく使いこなせるからだ。特に今は、ダークスポーンの穢れがもたらすゆっくりとした死が、彼女を化け物に変容させつつあった。
 同盟が必要だった。それなくして戦うには敵の数はあまりに多い。

 毎日、新たな戦いが繰り広げられているように思われた。ハーロック、ジェンロック、オーガども。絶望にさいなまれ、死に絶えた土地から自分たちの生存に必要なものをかき集めようとする、盗賊稼業や共食いに身をやつした一団。ベレスカーンや穢れたクモ、時には惨めなグールども。それらすべてがイセヤの記憶の中で溶け合い、そのすべてが、フリー・マーチズ中を進軍する軍隊の足取りが残す骨の絨毯に加えられていく。

 暴虐の単調さだけが、イセヤに敵の顔を忘れさせたのではない。汚染は、毎朝少しづつ彼女の思考を曇らせていった。かつては日々の思いを欠かさず詳らかに綴った彼女の日記も、今では何週も、あるいは何ヶ月も放り出したままになることもあった。彼女は気が触れ始めていた。
 もちろん彼女だけではない。ブライトの現実と夢の恐怖を区別するのはどんどん難しくなっていく。ときどき、今どちらを歩いているのか、どちらで戦っているのかわからなくなるときもあった。彼女は、同じような困惑が年配のウォーデンの顔に浮かぶのがわかるようになった。彼らもまたアーチディーモンの呼び声が、夜な夜なほんの僅かずつ大きく聞こえてきているのだ。彼らもまたそれに抗い、兆しを同志に見とがめられないように隠しているのだ。なぜなら、いずれ皆がコーリングに応じるとしても、目前のブライトとの戦いのほうがずっと喫緊の問題だからだ。

 リーヴァスが彼女の正気の試金石だった。
 黒いグリフォンは老いて傷だらけで、普通なら一、二年前には引退しているべきだった。だがブライトはグリフォンにもウォーデンにも休息を許さないし、どのみちイセヤにはリーヴァスが必要だった。相棒のグリフォン抜きでは、彼女は途方に暮れていただろう。
 同じ状態の他のグリフォンは皆変異させることになったのに、リーヴァスを除いたのもそのためだった。

 最初にジョイニングの儀式を施したのは、へイン要塞のごく少数のグリフォンだった。だがカンバーランドやカークウォールをはじめとしたフリー・マーチズの諸都市で苦境に置かれている者たちは、その変貌ぶり、力と憤怒を目にして夢中になってしまった。
 それ以降、限られていたとはいえ、要請は着実に執拗にもたらされた。すべてのグレイ・ウォーデンが、絶頂期の状態のグリフォンのほうが、ジョイニングの儀式を施したものよりも優れていることを理解していたが、ブライトの長く続く試練のため、みな劣悪な状態に置かれていた。顕著な割合が老いて、栄養不足で、傷を負い、または長い労苦のせいで疲弊しきっていた。それらグリフォンにとって、ブラッド・マジックのもたらす優れた速度と力は、知能と自律を奪うに足るとみなされ、変異の間に咳き込んで何時間も赤い泡を噴き出し続ける不快さも仕方がないこととされた。

 よって、命令は様々なフィールド・コマンダーたちから、ときにはファースト・ウォーデン自身からもたらされ、一頭あるいは数頭のグリフォンが、戦いを継続させるためジョイニングを施された。そして儀式を経たグリフォン一頭につき、他の三、四頭が、汚染を受けた仲間を容認するように意識に手を加えられた。
 乗り手からの苦情がない限り、イセヤは命令に服従し、儀式を執り行ったが、それも他にしようがなかったからだ。当初は抗いもしたが、彼女が屈するまで何度でも命令が発せられた。永久に抵抗する力もなく、今はそうしても明らかに無駄なときであった。その絶望が彼女自身の汚染の進行を早め、またブラッド・マジックの穢れも寄与していたのだろう。彼女とガラヘルがスタークヘイヴンで一緒に戦う頃には、兄よりも二十年は長くウォーデンの任務についているかのような見かけになっていた。

 だが、それを気にかけるすべも、そのわけも、忘れ去っていた。果てしないブライトに巻き込まれ、毎日終わりの見えない戦いを繰り広げているうちに、それを思い悩む意味さえ見失っていた。グリフォンに自意識が残っていようが、汚染されていようが、何の違いがあるというのか。ブラッド・マジックの上に別のブラッド・マジックを重ねなければならず、野生の憤怒を制御するために憑依する必要があるとして、そのどこがいけないというのか。ウォーデンたちも似たような犠牲を払っており、彼らの命運はすでに定められているのだ。

 ときには変異に抵抗するウォーデンもおり、その際にはイセヤも、かつて自分が反抗した理由をぼんやりと掴み取れそうになるが、ダークスポーンの穢れがもたらす混濁した意識の泥濘の中で、いつも途中で見失ってしまうのだった。
 彼女が覚えていることは、毎晩祈りのように自分自身に語りかけていることであった。それがブライトを終息させるための対価であるということ。ダークスポーンをフリー・マーチズから押し戻すこと。アーチディーモンの呼び声を消し去ること。途方もない代償には違いないが、そこにはまだ希望があった。彼女が代償を支払えば、悪夢は終わる。いつの日にか。

 彼女がその希望にしがみついている間、髪の毛は一塊になって抜け落ち、黒ずんだ紫の穢れの跡がまるで血流の中の痣のように肌一面に広がっていった。
 それだけで済むのであれば、まだよかった。

***

Stone's Bastard:ストーンズ・バスタード
the Stone:ストーン。オーザマーのドワーフの信奉する土着の守護神的な存在。地中ドワーフは、先祖のうち優れた偉業をなした「パラゴン」たちを信奉するようになったが、それ以前の原初的な信仰対象。
the Masterless:マスターレス
the Broken Circle:ブロークン・サークル

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