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2014年11月27日 (木)

Last Flight 22(1)

 アーチディーモン。

***

第22章

5:24 エグザルテド

 グレイ・ウォーデンは夜明けとともに集合した。イセヤの飽き飽きした目から見てもそれは壮観であった。澱みなく行進する五十人のグリフォン・ライダーたちは、磨きあげられたプレートメイルと灰青色の陣羽織をまとい、手にした空中槍の先端には雪のように白い絹の槍旗がはためいている。日の出の光が照らす胸板と肩甲は、遮ろうとする嵐の雲にも関わらず大胆不敵な薔薇色に輝いていた。グリフォンたちは乗り手たちの興奮を感じ取り、手綱の中で意気揚々と跳ね、鼻を鳴らしていた。ジョイニングを施された獣たちでさえ、普段より熱意に溢れ、怒気を抑えているようだ。咳き込みは、戦の予感がもたらすしゅーっという吐息が取って替わり、多くが自分の嘴から出る泡をまるで仇のように掻きむしっている。

 ガラヘルが先頭を進み、その明るい青色の外套を身にまとい、輝く白金の上にグレイ・ウォーデンのグリフォンの紋章が描かれた丸い盾を構える姿は壮麗だった。彼は他のウォーデンたちに比べて軽装で、重たいプレートメイルの代わりに簡単な兜、腕甲、そしてなめし革の上から胸板を身に着けている。クロッキーテイルが、もじゃもじゃした白い斑点のある尻尾を居並ぶ兵士たちに向かって振る様は、まるで彼らがこれからただの行進に出ていくのかと思わせるほどのんきに見えた。変わった姿のグリフォンは、ブライトとの果てしない戦いを潜り抜けてもなんら士気が挫けた様子もなく、左の耳の折れ曲がった先端が、戦いへ赴くため飛び跳ねるように歩を進めるにあわせて跳ねあがっていた。

 イセヤは後ろに退き、頭巾を深くかぶり、まだらになった頭皮と青ざめた顔の周りには何枚かの襟巻を固く巻いていた。飛行中に浴びる風が頭巾を吹き飛ばしても、汚染の印が誰の目にも止まらぬように。
 リーヴァスは鞍の下で落ち着かなげで、何かが近づくたびに耳を逆立てたり平たくしたりを繰り返していた。多くのグリフォンたちも同じように興奮しており、イセヤは乗り手たちの緊張のどれだけが乗騎に伝染しているのだろうかと訝しがった。グレイ・ウォーデンたちの平然とした表情とは裏腹に、イセヤは多くの者たちが幾ばくかの恐怖を感じているに違いないと思った。

 汚染を受けたグリフォンたちは、だが恐怖を感じない。心の中には、ただ湧き上がる怒りと、それを敵にぶつける欲求だけがあった。イセヤは憑依している八頭のグリフォンたちを怒りに任せた行動から防ぐため、鋼で締め付けるように束縛している。カリエンが四頭、他のふたりのブラッド・メイジたちもあわせて半ダースに憑依している。彼らにジョイニングの細部は伝えておらず、イセヤはそれを誰にも背負わせるつもりのない罪だと考えていたが、汚染された獣の制御には手を貸してもらうことにした。
 残りのグレイ・ウォーデンたちとともに、彼女たちは雲で紫色になった空に飛び上がった。

 ブライトが蝕む土地の上空高くを飛び、病んだ大地は嵐が覆い隠すに任せた。ダークスポーンはアンティヴァの街中までずっと押し戻され、滅んだ都市が横たわる海岸線にまで追い詰められており、あと一時間かそこらで、彼女はやつらの通過した傷跡だけを目にするようになった。名もなき街々の墓標替わりとなっている、炎に包まれた農家の焼け跡と崩れた壁が眼下を素早く過ぎ去っていく。河川は死んだ土地に交差して走り、流れが緩慢で水位も低く、広い川べりの間に灰色が広がっているものもあれば、ぎざぎざの石の上に轟音とともにたたきつける白い激流になっているものもあった。

 それから、突然ダークスポーンが姿を現し、アイスレイの廃墟に棘の生えた黒い蛆虫のように群がりうごめいていた。この高さからではイセヤにははっきりと見えなかったが、オーガどもの大きな角だけは見分けがついた。その巨体でさえ、顔のない群れの中ではぼやけて見える。
 だが、目標とするには事足りた。グリフォンの編隊の先頭を進むガラヘルの片手が上がり、鮮やかな深紅の絹の吹流しが風にたなびいた。彼の合図を受け、乗り手たちは急降下をはじめ、ダークスポーン目指して二列に分かれて突撃していった。

 弓の射程のすぐ上で編隊は水平飛行に移り、それぞれのグリフォンの後部の鞍の乗り手たちが、ガラヘルが逗留地を出発する前に配った袋の中身をぶちまけた。何ダースもの長く延ばされ、重みをつけられた土の弾が宙を降り、ダークスポーンの頭上にまるでずんぐした灰色の雹のようにばらばらと降り注いだ。それらが都市の石造りの街路に当たると爆発し、様々な毒の雲や焼灼性の霧を吹きだすとともに、ドワーフの焦天陣は破砕した地面を間欠泉のように周囲に撒き散らした。空き家だった店舗や家屋は梁が折れ、瓦を吹き上げ、轟音とともに倒壊した。 

 見事な一斉攻撃だったが、グレイ・ウォーデンが持続的に用いることのできる戦法ではなかった。ガラヘルがイセヤと戦略を練っているとき、ついでのようにそれら砲弾にかかる費用について一度だけ口にしたことがあるが、まるで黄金でくるんだ紅玉の雨を降らせるようなものだった。
 だが紅玉はここまでの破壊をもたらさない。激怒し、敵意をむき出しにしたダークスポーンどもの叫びが、再び雲間に隠れようとするグレイ・ウォーデンたちを追従する。そして、いくら悪魔のような狡猾さがあるといっても、群れを支配するアーチディーモンがセダスの政治や経済を理解しているわけではない。ドラゴンの姿のダークスポーンもその手下どもも、ウォーデンたちが先ほどの爆撃を何度も繰り返すことができないことを知る由もない。そして空中のグリフォンたちに対処する術も持たない。アーチディーモンそのものが出張らない限り。

 ガラヘルの賭けはそれだった。ダークスポーンの知る限り、ウォーデンの爆撃を食い止める手段は他にはない。
 赤い旗が再び掲げられると、最初の爆撃が生んだ煙を避けながら、ウォーデンが二度目の急降下を敢行した。彼らの後ろでは再び大地が毒まみれの炎を噴き上げ、ダークスポーンどもの断末魔の叫びが天を衝く。汚濁した緑色の蒸気が、まだ崩れ落ちていないいくつかの空き家の窓から湧き上がった。

 だが今度は、ウォーデンたちに浴びせられる叫び声が恐怖ではなく歓喜を示すものへと変化し、イセヤには鞍の上で振り返る必要さえなく、アーチディーモンが彼女たちの挑戦に応じて現れたことがわかった。
 やつは、まるで悪夢が実体を得たかのような姿で、アイスレイの火焔地獄の上空に躍り出てきた。ウォーデンたちの爆弾が撒いた瘴気の霧がギザギザの黒い鱗で巻き上げられ、外殻の隙間で渦巻き、やつの軌跡に尾を引く姿は、まるで毒の衣をまとっているようだ。

 アンティヴァ・シティーの陥落以降、イセヤがアーチディーモンを目にするのはこれで三度目で、そのたびに化け物がより巨大に、よりおぞましくなっているように思われた。ブライトの進行が力を与えているのかもしれず、単に汚染で歪められた彼女の妄想のせいかもしれなかったが・・・、アーチディーモンの姿は、当初から怖気を震わせるものではあったが、今や彼女の心に凍てつくような麻痺の衝撃をもたらしていた。

 他のグレイ・ウォーデンたちの多くも同じように金縛りにあっていた。乗り手の指示を失い、精神を奪っていたメイジの支配からも逃れ、グリフォンたちは混乱の中で躊躇し、逸脱し、計画どおりに待ち伏せ地点まで退却するための貴重な何秒かを無駄にした。クロッキーテイルの名の由来となった白斑の尻尾に率いられたごく僅かだけが、味方が潜む地点まで退却を始める。残りは混乱したままで、それもたった一秒の間だけだったが、その一秒が致命的だった。

 イセヤには信じられない速さで、アーチディーモンが彼女たちの頭上に現れた。やつは翼の巻き起こす風でリーヴァスを横殴りにして通り過ぎ、正面で塊となっているウォーデンたちに狙いを定めた。黒いグリフォンは怒りの啼き声をあげながら必死に態勢を立て直そうとしている。

 彼女たちの前方では、アーチディーモンの巨大な骨だらけの顎が開き、その口腔の中に満ち溢れたおぞましい輝きが、穢れたドラゴンの一組の角と顎の周囲のギザギザの骨の周辺を影絵のように浮き上がらせた。リーヴァスの動きのためイセヤは視界を奪われ、一瞬後にそれを取り戻したとき目にしたものは炎の他何もなく、それは全き死の黒い闇を核にして広がる菫色で、音もなく、と同時に咆哮を轟かせた。

 アーチディーモンの炎は、グレイ・ウォーデンの崩れた編隊を切り裂いた。グリフォンたちと乗り手たちが焚火にくべられた枯れ葉のように舞い上がった。彼らの肌が萎み、大きく開いた口が黒い穴に見え、それから雲間を錐もみしながら地上で待つダークスポーンどもの頭上に落ちていった。

 墜落の間に、メイジのひとりが中空で姿を変えた。彼女がフェイドとの連絡の制御を失い、あるいは自ら手離すと、肌から液状の炎を噴き出しならアボミネーションに変化した。イセヤがその恐怖の姿と化け物の憤怒が歪めた形相を一瞥した次の瞬間には、メイジは嵐の間に消えていき、跡にはローブの燃えかすがありえないほどゆっくりと漂っていた。

 それからグリフォンたちが、その引き裂かれ、燃え殻を塗された雲間から再び舞い戻り、墜落して行ったアボミネーションよりもずっとおぞましい姿を現した。
 すべてが戻ってきたわけでも、多くが戻ってきたわけでもない。先ほど墜落したメイジに憑依されていた、たった二頭のジョイニングを施されたグリフォンたちが、今や抑えることのない復讐の怒りをたぎらせていた。イセヤは息をのみ、風の中で目を細めながら二頭を見つめた。

 二頭の鞍は傾き、引き具の銀の留め具はアーチディーモンの穢れの息のため炭火色に輝いていた。どちらにも乗り手はおらず、羽根は溶け、自身の黒い血に塗れて見る影もなく、そしてイセヤはその翼に空いた穴を震わせながら風が吹き抜ける音を聴いた。一頭の顔は吹き飛ばされており、砕けた骨がむき出しになって黒ずんだ血がこびりついた頭蓋の半分しか残っておらず、雲間を通してはイセヤにはそれ以上はっきりとは見えなかったが、二度と見たいとも思わなかった。だがそのグリフォンたちは、ありえないことに生き残っていた。ありえないことに飛んでいた。そして、ありえないことに、襲い掛かっていった。

 二頭はアーチディーモンの視界には入っていなかった。穢れたドラゴンが燃える瞳を向けるガラヘルと残りの乗り手たちは、今やなんとか編成を整え、待ち伏せ地点へと退却する途中であった。
 怒れるグリフォンたちが、まるで二本の弾弓の矢のように、やつのむき出しの腹部に激突した。アーチディーモンは片方に大きく揺れ、衝撃のため危うく墜落しかかった。血と黒い鱗がその傷口から降り注ぎ、雲を切り裂いて落ちていく間、やつは悲鳴を上げた。

 グリフォンの一頭は、衝突の際に首の骨を折っていた。イセヤはその亡骸が墜落していくのを目で追った。もう一頭はアーチディーモンの下腹に両の爪を突き指し、手当り次第に掴み取り、引き裂いた。ドラゴンが空中で身体全体を横転させ、前後に激しく揺さぶってなんとかグリフォンを振り払おうとするが、無駄だった。 

 両者の格闘は、また別の痣のような色の雲の壁を抜け、近くの湾岸の上空に至るまで続き、イセヤの視界からは完全に消えた。ガラヘルと仲間たちに追いつくため、リーヴァスは飛び続けた。大きな黒い翼が嵐の雲を切り裂き、他のウォーデンたちに急速に接近していった。

「何が起きた?」 声の届く範囲まで近づくと、ガラヘルがイセヤに尋ねた。彼と残りの編隊はずっと先に進んでいたので、アーチディーモンが突如進路を逸脱したのは目撃していたが、その理由を知ることはできなかった。
「グリフォンたちが舞い戻ってきたの!」 イセヤが答えを叫び返した。「汚染された二頭。やつに襲い掛かった。一頭が死に、残りはまだ戦っている」 
「一頭だけで?」 ガラヘルの懐疑が、間違いなく風に乗って伝わってきた。「アーチディーモンと戦ってるって。一頭だけで?」

「そう」とイセヤが言ったが、その言葉を発したときにはすでに、彼女たちの後ろの雲の間から、アーチディーモンの角の生えた頭が姿を現してきた。その翼の一振りごとに、まるで戦船が荒海を推し渡るように、巨大なドラゴンは容赦なく彼らのほうに接近してくる。あのグリフォンの姿はなく、その負わせた傷によってアーチディーモンの速度が落ちていると示すような、どんなきざしも見あたらなかった。

***

 二頭のグリフォン、私が個人的に大好きな、宮澤賢治「注文の多い料理店」クライマックスの二頭の白い猟犬を彷彿とさせます。んー、弱いんだよな、こういうのに。

 決戦です。さっさと行きましょう(書く暇があればだけど)。

Ayesleigh: アイスレイ、アンティヴァの都市、第四のブライトが終息したとされるアイスレイの戦いが繰り広げられた場所。その戦いの後日談を詠んだとされるバラッド・オヴ・アイスレイ(the Ballad of Ayesleigh)が後世に伝わる。

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コメント

>「注文の多い料理店」
なるほど、そう言われてみれば。
そしてそれは、二人の紳士ならぬ、イセヤに還っていくわけですね。
それも、せつないなぁ。

コンソール版もついに、DAI発売日を迎えることができましたが…。
MSジャパンとEAジャパンのどちらかよくわかりませんが、何やら「やっちまった」らしいです。
Xbox OneのDL版がDLできずプレイできないとかいう噂。
せっかく盛り上がってる千載一遇のチャンスなのに、ここに来て売る気あるのか疑わしいようなポカやるかなぁ。

本当ですよ。
XONEのデラックス版を予約購入しプリロード、いざ、27日の0:01より始めようとしましたが、何故かストアに遷移。((+_+))
予約購入済みが解除されずに、プレイできない状態に・・・。
何故か、通常版とデラックスアップデート版を購入したことになっていて、アップデート版が12/16(?)にプレイ可能な状態なのでガードが掛かったままになっているぼっい。
結局、3回入れ直しして、最後は通常版のみインストールして、今朝やっと、プレイ可能な状態になりましたが、どうも、プリロードの意味が無い様な感じで、改めてダウンロードしながらインストールしている様です。
自分の環境だとDLに3~4時間掛かるので、ブチ切れの状態を通り越して、諦めの境地に・・・。
Originで購入したPC版は、時間通りプレイできたので、犯人はMSぼっい気がします。
ディスクの管理が面倒なので、パッケージ版キャンセルして、改めてDL版購入したのに、ナニコレ状態でした。(´・ω・`)

 空港で暇だったのでネットであちらを覗いたらそんな話にはなっていないみたいなので、日本特有?
 でもコメントから推察する限り、なんだか複雑すぎますよね、リリースのスケジュールとか。ぼうっとしてても売れるゲーム(だとして)なのに、マーケがいじりたおして台無し。MSらしいっちゃらしいですけど。
 
 

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