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2014年11月17日 (月)

Last Flight 19(3)

 カリエン。

***

 イセヤは頷いた。酸の胆汁のように喉にせり上がってくる罪の意識を振り払うため、歯を痛いほど食いしばる。自分にできることは何もないが、あの塔の厩舎ではまだあった。だが彼女は親友の求めに従い、そして死に追いやった。
 無言のまま、彼女はリーヴァスを前に進めた。

 黒いグリフォンは耳を平らにして宙をつき進み、脇目も振らずに目前に小さく見える隊列を目指した。都市の壁の下まで辿りつくと、ダークスポーンが両脇から素早く迫るが、彼女がハンターの叫びもリズメの悲鳴もそうしたように、リーヴァスは群れを無視して進んだ。挑発するハーロックはカリエンの氷の扇を浴び、急激に凍り付いた脳髄が頭蓋もろとも破裂し、眼窩からは黒いつららが飛び出してきたが、敵の数はあまりに多すぎた。凍り付いた仲間の後ろでは、手にした盾を拳で叩きながらジェンロックが脈絡のない喚き声をあげている。 

 グリフォンが嫌悪する敵に立ち向かう猛禽の本能を押し殺すのはとてつもなく困難であるはずだったが、リーヴァスは持ちこたえた。ダークスポーンの群れが迫る中、彼女たちはカークウォールに辿りつき、その壁の炎が苛立つハーロックたちを近寄せなかった。
 そして、これまで起きたこと、これから起きることに関わらず、彼女は自分のグリフォンの意志と克己を誇る気持ちが湧き起るのを禁じ得なかった。魔法の面でも感情の面でも疲弊しきった彼女はグリフォンに後のことを任せ、そしてリーヴァスは見事にこなした。ハンターの叫びが耳にこだまし、フェイドの悪質なスピリットどもが集中を邪魔しても、彼女は感謝の気持ちを奮い起こすことができた。

 彼女が鞍から降りると、他の者たちも同じようにして、炎の鞭に打たれて壁の傍から押し戻されるダークスポーンどもの姿を見つめた。援護のウォーデンたちは視界の中にはおらず、カークウォールの上空を飛び越えて城に着陸し、そこで乗り物に搭乗する市民たちを招集しているはずだった。リズメの牽引していた隊列を喪ったため、後に残される者たちをどうやって選別するのかイセヤは訝しく思った。それもヘイン要塞のフィールド・コマンダーである自分の役割かもしれなかったが、今そのような決断に直面するには疲れ切っていた。

 目の前の小さな扉が開くと、疲れ切り、恐れおののく男女が顔を出し、炎の呪文のまぶしさに目を瞬いた。多くは腕に赤ん坊を抱え、幼子たちの手を引いているが、それ以外はほとんど着のみ着のままだった。イセヤはカークウォールのチャンピオンに対し、今回資材を積む場所はないと予め告げていた。食糧や衣服はヘイン要塞に準備がある。

 ウォーデンのひとりが、難民たちに三列の乗り物に乗るように促した。マーチャーズは恐慌をなんとか押し殺した緊張した面持ちでそれに従い、子供が何人か泣き始めた。

 イセヤは彼らを無視した。呪文を維持し続けることで精一杯で、乗客に憐みや愛想を振りまく余裕はなかった。最後のアラヴェルが満杯になるまで見届け、空中の護衛の姿が壁の炎に照らし出された頭上に見えるのを待った。準備完了を告げるように仲間が頭上を旋回しはじめると、彼女はリーヴァスの鞍に戻りながら、周囲のウォーデンたちに焦天陣の準備を命じ、メイジたちには隊列を浮かび上がらせるよう指図した。

 上空のウォーデンの合図により、守備の兵隊の炎のカーテンが左右に別れて消えた。ダークスポーンが前方に殺到し、力場や氷の魔法で押し戻される。メイジの魔法で浮かび上がった隊列が、二頭は憑依され、一頭は自らの意志で飛ぶグリフォンに引かれながら、喚き散らすダークスポーンの頭上を飛び越えていく。

 帰りもまた、護衛の仲間たちが造り出した細く消えそうな道を追いかけて進む。だが今回は、後方から迫りくるダークスポーンが近づくのを見てとったイセヤが、隊列の最後尾にレリウムのルーンを起動させるように合図を送った。

 ドワーフの爆弾はあまりに不正確であり、あたり一帯に破片を飛び散らせてしまうため、進入の間は危険すぎて用いることができなかった。だが退出の際には何も気にかける必要がない。立ち去るグレイ・ウォーデンたちは、ダークスポーンの群れの至る所に破壊をまき散らし、紺碧の死の爆発と混乱によって、追撃を阻止した。
 リズメの墜落したアラヴェルもまたその爆発の中で消滅するのを目にし、イセヤは歓びとともに悔いを感じた。

「うまくいった」 数分後、ブライトの領域の中でも比較的静かな場所まで出たところで、カリエンが言った。彼は呆然としているようだった。「うまくいくとは。これは使える」 
「かもしれない」とイセヤが言った。カークウォールから十分離れ、憑依していた二頭を解放しても大丈夫だと判断した。ゆるゆると力を緩めても、グリフォンたちがダークスポーンの方に戻っていこうとする兆しはなかった。彼女の予想が当たっていたことがはっきりした。このグリフォンたちは、ダークスポーンの群れが見えなくなれば興味も喪うし、骨の折れる旅による疲れが憤怒も和らげるのだろう。   

 ほっとした彼女がフェイドとの連絡を絶ち切ると、ディーモンたちの呼び声がようやく頭の中から消え去った。イセヤは鞍に深くもたれ、自分のローブが冷たい汗でびっしょり濡れていたことにはじめて気が付いた。隊列を無傷でカークウォールから脱出させることに、そして魔法を維持することにあまりにも没頭していたため、これまで気が付かなかったのだ。

「かもしれない?」とカリエンが聞きとがめた。
 イセヤは両のこめかみを撫でた。目の奥の疼く痛みが和らぐことはなかったが、とにかく試してみた。「私がグリフォンたちに憑依して、自己犠牲から守ってやらなければならないのだとしたら、これは使えない。他のグリフォンたちの心を操作して、ジョイニングの儀式を施したグリフォンたちへの寛容さを植え付けなければならないとしたら・・・、だめ、私にはできない。それはあんまりよ、カリエン。私にはできない」 
 ブラッド・メイジはしばらく黙り込んだ。それから、優しく、こう告げた。「私なら代われる」

 そして、風の流れの中、疲れきっただるい痺れの中でその言葉を聴いたとき、イセヤの頭の中に過ぎったのは、たた次のことだけだった。ディーモンどもが言っていたのも、それと同じこと。

*** 

 カークウォールのチャンピオン。この時代には残念ながら存在せず、これは著者の勘違い。

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