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2014年11月11日 (火)

Last Flight 17(3)

 何か遊びがないと続けるのが辛い場面。

***

 へイン要塞は、本当に辺鄙なところにあった。ヴィマーク山脈の西のはずれで、城と周囲の土地は比較的ブライトの影響を受けていない。森は青々と茂り、渓谷の水嵩は高く、勢いも強い。リーヴァスが森に降下する間、縄張りを主張するワイヴァーンたちの好戦的な啼き声が響き渡る。巨大な獣たちを生き永らえさせるだけの豊富な獲物がいることは明らかで、連中は今、五頭のグリフォンと十人のウォーデンたちに向かって虚勢を張っていた。

 他に目ぼしいものはない。城下の村は見捨てられたようで、農地には雑草が覆い茂り、牧草地の柵は倒れたまま修理もされず、家屋に棲みつくのは蝙蝠と野狐だけだ。デ・ラ・へイン卿の民は、領主の背信に愛想を尽かして逃散したか、彼がクロウに暗殺された後で追放されたかしたのだろう。
 そのすべてを再建しなければならない。そう言うと、イセヤはリーヴァスを中庭に向けて降下させた。要塞は巨大で、石壁は高く堅固で、いくつかの塔からは周囲をよく睥睨できる。要塞は攻城戦ではなく暗殺によって滅んだので、時の流れと放置による老朽化以外、痛みはなかった。

 グレイ・ウォーデンたちは、すでに鑑賞用の庭園に伸び放題だった雑草を刈り取り、見た目は悪いが実用的な薬草や野菜の栽培を始めていた。小さな庭園には、まだ仕掛り途中の兎小屋や鶏小屋が見える。
 少なくとも今回はまともな素材には事欠かない、とカリエンが答える。木材、石材、清水、牧草地。麓の丘では狩猟にも採集にも不自由しない。要塞自体も堅牢に見える。今までこんなにお膳立てが揃っていたことはないのではないか。
 今までは任務自体もそこまで大きくなかった、とイセヤが言った。ガラヘルは本気で、フリー・マーチャーの全員をここに避難させるつもりなのだろうか。
 全員ではないが、かなりの部分だ、とカリエンが応じる。
 そのほとんどが兵士以外の数千人。受け入れられなければ任務は失敗だ。だがこの城はそれほど大きくは見えない。イセヤは首を振った。リーヴァスが胸壁の上に乗って急停止したので、衝突時の衝撃を避ける締め帯を身に着けていたふたりは、グリフォンの背中の上で前のめりにつんのめった。

 イセヤは締め具を外してグリフォンから降りると、その首筋を撫でながら、他のグリフォンたちが中庭に続いて着地する様子をカリエンとともに眺めていたが、巻き起こる埃ですぐに視界が悪くなった。
 仲間たちに合流するため塔を降りる間、イセヤは城の守りにどう手が入れられるか検分してみた。記録が正しければ、へイン要塞は領主が暗殺されてから三十年ほど無人だったはずだ。放置されていたその間、何事もないまま形をとどめていたことに彼女は満足した。

 塔から外に出たイセヤは、ドワーフのウォーデン、オーザマーのオゴサに出迎えられてさらに気を良くした。カーストレスとして生まれた彼女は、ブライトが勃発したとき、「ひとでなし」として扱われる故郷の暮らしを早々に見切り、グレイ・ウォーデンに加入した。それはオーザマーにとっての手痛い損、同盟軍にとっての得だった。オゴサは利口で、機知に富む、疲れを知らない戦士だった。

「イセヤ!」 陽光に目を瞬いている二人のメイジたちに向かって、赤毛のドワーフが叫んだ。エルフの身体を抱きあげると、強烈な力で抱きしめる。「ここに飛ばされてくる聞いとったけど、あんさんの黒い鳥見るまでよう信じんかったわ」
「私も会えて嬉しい」とイセヤは言って、息を詰まらせ、身体を離すと一息ついた。「オーレイにいるのだと思っていた」
「おった。オリージャンのいけずどもが、ひとでなしのドワーフの言うこと聞かへんつもりやわかるまでな。うちも、助けたるゆうてる相手と言い争わなかんの、かんにんやいうことわかったし。なんや、口の減らんシェヴァリエのあほ臭い安ぴかマスク張り倒してやりよったら、ウォーデン・コマンダーも適材適所ちゃう気いついたって、ここに飛ばされてきよったちう次第やわ」
「私にとっては、ついていたわ」とイセヤが言った。「それで、人手はどのくらい?」 

 オゴサによれば、ウォーデンと、それ以外の農夫や職人が半々で二ダースほどだ。要塞のていをなすには、兵士も、石工も、草刈りも、調理人も、何もかもが不足している。
 ここにやって来る避難民の中から、腕に覚えのある者たちを集めるように告知しよう。まずは輸送手段を優先して整えよう、とイセヤが告げると、オゴサが頷いた。彼女の明るい赤毛は、頭蓋にぴったりと張りつくように何本にも固く編み込まれ、それぞれの先っぽには穴を開けた銅貨が結び付けられている。地表にやってきたドワーフが、チェイシンドの風習を即座に真似たもので、自分の民へのささやかな反抗を示している。 

 城の状態はさほど悪くないが、村の農地は手がかかる。大人数を支えるための食糧が必要であるし、できるだけ早く農地の手入れをして作物を植えれば、それだけ早く食糧も備蓄できる。最初にやるべきことはそれだ、とオゴサが言った。
 イセヤが同意して、陽光を遮るヘイン要塞の白くそびえる威容を見上げた。そして、市民はどのくらい収容できそうかと尋ねた。

 市民、と尋ね返して、オゴサは下唇をかみ、イセヤの視線を追った。食糧は今いる者の分しかないし、水は二百人分ほどしかない。それが第一の制約条件だ、とオゴサは言った。第二の制約条件は物理的な場所、城そのものだ。避難民たちが自分で農地を整備し、家屋を建てるつもりなら、村にはいくらでも受け入れることができる。ヴィマークは僻地で化け物どもが多く棲みつく危険な土地柄だが、だからこそブライトの影響が少ない。

 フリー・マーチズの他のどの部分よりもここに豊かな自然が残っていることは、イセヤも空から見て知っていた。オゴサは、徐々に受け入れていくなら、村には千人から二千人まで住まわせることができると見積もっていた。だがダークスポーンがやってきたら、どこか逃げるところが必要であり、城はその全員を収容することはできない。

 では、どうするつもりだ、とイセヤが尋ねた。ドワーフのハシバミ色の瞳が、楽しそうに輝いた。「よう聞いてくれはった。たまたまやけど、ええ策思いついとったんや」
「素晴らしい。どんなもの?」
「ちょろいやつ」とオゴサが言った。「みな山ん中に入れたんねん」 

***  

 フォニー(なんちゃって)大阪弁。ネイティヴからの批判は甘んじて受けるつもりですが(笑)。

 先日久しぶりにリアル書店で時間をつぶしていたら、あの"Combat!"のDVDシリーズが定期刊行されているのを見つけた。発売元はディアゴス(略)ではなく反日新聞出版・・・。だから買うのをやめたわけではないが、あのシリーズ(DVDは50話、実際には152話ある)は「はずれ」も多くて玉石混淆。大好きなエピソードはそんなに多くはない。

 サンダース軍曹がノルマンディに上陸した直後のエピソード(おそらく舞台がノルマンディ上陸であることがはっきり示される唯一のエピソードである「第一話」)。部隊にはでぶちんのニューヨーカー(注)の兵士(その後どうなったかは記憶にない。調べると突然登場しなくなったそうな)がいたのだが、彼の日本語吹き替えはなんと「大阪弁」だった。洒落たことするな、と子供心に感動したものだった。今のものは新吹き替え版だそうで踏襲されているかどうかは定かではない。
(注)作中でニューヨーカーと言っていた記憶があり、大阪弁は商いの街堺との連想かと思ったが、今調べると原作ではシカゴ生まれだそうだ・・・。私の脳内妄想か、または訳者の意訳(当時の日本人にシカゴはぴんと来ない)かもしれない。

 余談だが、真珠湾攻撃直後に志願する(当時のアメリカの若者男性にとってごく当たり前の行動)までサンダースが商家の「番頭」だった(すなわち職業軍人ではなかった)ことが明かされるエピソードも大変面白かった。あとはジェームズ・コバーンが登場した(いくつかあるとしたらナチスとして登場した)エピソードは素晴らしかったなあ。
 という、いくつかあるお気に入りのエピソードだけ観直せれば満足なので、買うのはやめにした(150話以上もやるから、どんどん似たようなエピソードが増えてくるのも辟易)。オン・デマンドにせずDVDなんて売りつけてるのも気に食わないところです。 

(というところから、なぜか「オゴサは大阪弁」と思いついたのですが、まー、外したかな)

(別件)

 前回あたりでへイン要塞は「六十年間」放置されたとあるのに、上では「三十年間」になっている。「また誤訳か」と言われそうで心外だが、これはおそらく著者の勘違い。前の部分は"two generations"で、今回は"thirty years"。"a generation"はふつう(人間の「世代」が入れ替わるとされる)三十年を指す。
 つっても「世代」そのものが(おそらく明治時代頃の)"generation"の和訳だけど! それまでも具体的に二代目、親子三代とは言ったでしょうが、「世」と「代」も結局は「ある統治者などの時代」という意味一緒じゃんの重ね言葉(だって二代目、三代目は、二世、三世だよね?)。存在、超越、自己、豊富、社会などなどと同類の明治訳語でしょうね。

 次は覚えておいて損はない。ご承知のとおり"a decade "は十年、"a generation"は三十年。では二十年は? "score years"または"a score of years"。
 "score"は「二十の」ものを表し、基数(a cardinal number)をくっつけて例えば"fourscore"となると4*20で「八十の」(80歳など)。"score"の語源は分け前などを数えた記録のこと。

 "The Masked Empire"のパトリックは年数も頭数も"score"を多用していたが、ゲイダーさんは用いず、むしろ年数は"generation"、頭数なら"dozen"(なぜ日本語で「ダース」いうかしらんけど、それね)を用いていた。よってDAOのグレイ・ウォーデンやメイジなどは、よく十二人(一ダース)とか六人(半ダース)とか、十進法じゃない頭数で表記されていた。「ダンカンを含め、フェラルデンには一ダースのウォーデンしかいない」とか。もちろんその意味は「大した数がいない」です。なお上にも"dozen"が出てきますね。このように、著者の癖によって使ったり使わなかったり。

 日本語でも「はたち」、「はつか」などあるように、「二十」(昔は「廿」と書いた)は独特の呼び方(はつ)をしていたようです。

 「ひとでなし」は"nonperson"、ひとではないひと、日本語にはもちろん別にドンピシャの言葉がありますが、敢えてぎらつかせることはやめた。


Ogosa オゴサ

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コメント

>オゴサは大阪弁
なるほど~、突然どうしたかと思ったら、そういうことでしたか。
いやいや、なかなか楽しいですよ。(笑)
瞳のハシバミ色は、黄色っぽい茶色でしたっけ。
瞳の色で、同じようによく出てくるものにトビ色なんかもありますね。

>Combat
CMで見ましたけど、モノクロ画像でした。
ジェームズ・コバーンは渋いですよねぇ。
派手さはないんですけど、なぜか印象に残る好きな俳優の一人です。
その他にもウォーレン・オーツとかいろいろゲストが出てくるのも面白そう。

>でぶちんのニューヨーカー
シカゴ生まれのニューヨーカーってのはダメですか?
東京住まいでも、地方出身者は多いですし。

 ハシバミ(榛)色、"hazel"って、特に英文学では瞳の色でよく使われますが、日本ではどんな色かあまり知られてない気がしますよね(笑)

オリジンはシェークスピアだそうです。ヘーゼルナッツの色ですね。Wikipediaにはそのとおりの瞳の写真もありました。褐色だけではなく緑がかってないと呼ばないんすね。ハシバミ(榛)自体は日本にもずっとあったそうで、ヘーゼルはセイヨウハシバミと区別するみたい。

なんとなーくですが「機転がきく」、「目端がきく」みたいなキャラクターに用いられることが多いみたい。推理小説だと真犯人ではないが、重大なヒントを握っている可能性が高かったり(笑)。

 トビ(鳶)色の瞳は、一部の日本人ですね。なにしろ対応する英語がありませんから。
 まー、日本語は「緑の黒髪」っていいますからね(笑)。

でぶちんは生粋のシカゴっ子の設定みたいでした。

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