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2014年11月 7日 (金)

Last Flight 17(2)

「やっぱりグリフォンが好き」?

***

 一時間後、イセヤは彼らが飛ぶところを見るため外に出た。アマディスが空を飛んでいることは、ルビー・ドレイクの連中が大騒ぎしている様子で嫌でも知れた。ダークスポーンを倒すブラッド・マジックの研究をして一日費やすつもりだったイセヤは、傭兵たちの歓声がうるさすぎてそれに集中するのが不可能だと諦めていた。
 血の瓶とレリウムの薬に注意を割くのは土台無理だった。魔法の研究はもう十分なほどやり続けていて、だいぶ飽き飽きしていた。日光と髪をなでる風のほうがありがたかった。

 主人の姿を見つけたリーヴァスが喜び、鳴き声をあげ、耳を垂らして身体を掻いて欲しそうに近づいてきた。イセヤは喜んでその期待に応えたが、そのときリーヴァスの鼻先の変化、蝋膜の基部にほんの少しだけあった白い部分が、喉元から胸のあたりまでまるで白髭のように広がっていることに気が付いた。

 彼女のグリフォンは年を取った。それはほろ苦い思いだった。ウォーデンの戦(いくさ)グリフォンがそれだけ長生きすることは今ではずっと少なくなった。リーヴァスが最悪の戦いを何年もの間生き残ったのは、その強さと意志の力の現れであり、今でもまだ強く、速く、そして戦いでは容赦なかった。
 だが、それがあとどれだけ続くのか。そろそろ引退させ、オーガやハーロックの餌食になる前に、ワイズホプトの厩舎に送るべき頃合いではないか。
 イセヤは目を閉じ、顔をグリフォンの黒く固い毛皮に埋めた。馴染んだ麝香の匂いがする。ライオンの野性、閉じ込められた陽の光、そして餌を食べるときについた血糊の微かな匂いが入り混じり、彼女の鼻孔をくすぐっている。このまま離したくはなかった。
 だが、いずれ離さなければならず、そうするとき彼女の眼は予期せぬ涙で濡れた。彼女は瞬いてそれを散らし、零れ落ちないように空を見上げた。

 そこではアマディスが熱風の上を旋回しており、ガラヘルとクロッキーテイルがすぐ後ろから追従している。女の姿こそはっきり見えなかったが、グリフォンはすぐにわかった。それは若く小さな牝で、灰白色の毛皮と羽毛にはっきりわかる青味を帯び、翼には不規則な黒い帯が入っている。新米の乗り手を背にしながらも、その飛ぶ姿は自信に満ちているようだった。

 牝の名はスモークで、当初の乗り手は一か月前にダークスポーンの暗殺者の毒の刃で命を落としていた。スモークは訓練を終えたばかりで、その乗り手との絆もまだ築く前だった。それ以来、若いグリフォンはウォーデンの拠点間の伝令役に供されるのみであった。
 それも悪い生き方ではないし、戦闘のただ中に突撃するよりは安全だが・・・、信頼する相棒とともに戦闘に参加するのではなく、伝令役で満足するグリフォンは稀だった。スモークがアマディスを選んだにしても、その逆でも、イセヤにはなんの不思議もなかった。

 彼女はアマディスたちの幸運を祈ると、自分も空を舞うため、リーヴァスを飛び立たせた。
 いつになってもその感動が薄れることはない。風に髪をなびかせ、肺に鋭く新鮮な空気を吸い、急上昇するときの混じり気のない自由は、地上の悲しみや重荷から解放してくれる。メイカーの造り給うし事柄のうち、これに匹敵するものはない。何一つない。

 ホスバーグ周辺のまだ燻りをあげる戦場も、ダークスポーンの屍を燃やす炎から油まみれの黒煙が空を汚す部分も飛び抜ける。その醜い光景を見たいのではなかった。

 戦友たちが戦いの果て死んでいった場所から遠く離れるように、イセヤはリーヴァスに、アンダーフェルズの石だらけの平原、茫漠としたステップの上空も飛び越えさせた。眼下には銀色に輝くラッテンフラス河が、緑に縁どられた広く、豊かな茶色い帯を伴っている。彼女たちの高度からは水位が低い以外は河は健全に見え、取り巻く泥の中に生える木々は弱い陽光とブライトの病によってまだらで痩せこけていることはわからない。彼女はほとんど、ほとんど、世界は再び平常に戻った、と思いこむことができた。

 もちろん、そうではなかった。あっけないほど早く、彼女たちは再び燃える屍から立ち上る悪臭の中をホスバーグへ、果てしない酷い戦いへと戻らなければならない。
 だがイセヤは平和の幻想をできるだけ長く保ち、城に戻ってからも抱き続けた。
 ガラヘルとアマディスは先に戻っていた。ふたりのグリフォンは鞍をはずされており、そしてイセヤは、クロッキーテイルが餌として与えられた死んだヤギの肉塊をスモークに差し出している様子を見て、乗り手がスモークの乗り手に感じているのと同様、クロッキーテイルも相手に惚れ込んだことを見てとった。
 その様子にリーヴァスが小ばかにしたように鼻を鳴らし、イセヤも真似をした。リーヴァスの鞍を外して、餌のヤギ肉にしゃぶりつかせるため送り出し、それからまるで鉛入りの外套のように感じられる要塞の中に戻った。

 彼女は黄金の一日の幻想を抱き続けるため、できるだけ誰とも話をしたくなかったが、運は味方してくれなかった。パンとワインを所望して厨房に足を踏みいれるや否や、カリエンが近づいてきて、自分たちがヘイン要塞に送られる話を聞いたか、と尋ねた。
 イセヤはその場所について聞いたことはなかった。

 カリエンによれば、要塞はヴィマーク山脈の奥深いところにある、蝙蝠が巣食う廃墟であり、かつてはノルベルト・デ・ラ・ヘイン卿の領地だった。卿はヤツメウナギの酢漬けに目がなく、またフリー・マーチズを占領するだけの力があるという妄想に取りつかれていた。クロウが卿を暗殺し、それからほぼ六十年間、城は主不在のままだった。そこをグレイ・ウォーデンが拠点として徴用し、自分たちが送られることになった。

 イセヤは、シーデド・ロール(種まぶしパン)ひとつ、ローストチキンの四分の一と、料理に用いられる程度のまずい味のワインが半分残っていた瓶を見つけた。どうして自分たちはそこに送られるのか?
 フリー・マーチズが間もなく蹂躙される恐れがあるからだ。カリエンが髪を掻きあげながら答えた。今日到着した三人の伝令とも悪い報せを運んできた。カンバーランドとカークウォールは非常に危険な状況だ。スタークヘイヴンは陥落する危険がある。生き残るためには結束するしかなく、ガラヘルは彼らに、イセヤがワイコムで用いた方法を伝えた。ファースト・ウォーデンはヘイン要塞に拠点を築き、必要ならマーチズの難民を受け入れるように指図した。

 ガラヘルが自分たちをわざわざ指名したのか。イセヤは、自分が最前線から引き抜かれて後方に回されるなら兄に意見するつもりだった。だがカリエンによれば、イセヤを指名したのはウォーデン・コマンダー・アルシアナだった。ヘイン要塞は数多くの難民を受け入れるために相応の改修を要するが、イセヤの力場の魔術が役立つ上に、他にその種の魔術の遣い手は少ない。イセヤがワイコムで用いた芸当、空飛ぶアラヴェルが難民を「避難所」に移動させるためには必要になるのだという。

「そういう風に呼んでいるわけ? 『撤退』? 随分と不吉な名前ね」(The Retreatには「避難所」の他、「撤退」の意味もある) 
「フリー・マーチズにとって、のっぴきならない状況を知らしめる凶兆が必要な時期は、もう過ぎてしまっただろうな」とカリエンが冷徹に言った。「ガラヘルは、希望を捨てるなと強いるし、確かに彼はできる限りのことをなしている。女王マリウェンの兵を手に入れ、ホスバーグの勝利によってアンダースのほとんど全軍を動員できる。グリフォンを贈ってルビー・ドレイクを繋ぎとめただけではなく、自分たちもグリフォンが欲しい半ダースもの隊長たちの傭兵部隊も追従する。カンパニー・オヴ・ザ・ライオンの指揮官など、将来の自分のグリフォンの鞍に用いるため、すでにオーガの頭皮を用意しているなどと放言している有様だ」 彼は息を継いだ。「君の兄上は奇跡の人物だよ、イセヤ。フリー・マーチズを救えるのは彼をおいていない。次にはオーレイに向かい、あの仮面の気取り屋どもから必要などんな支援も引き出してくるだろう。だが、彼にはフリー・マーチズも必要だし、もし彼らが自分の家や家族を救うためばらばらに戦ったら・・・」
「すべてを失う。なるほど、わかった」
「よかった」 彼はワインの瓶を指差した。「少し手伝おうか? 一人で呑み干すのは思慮深いとは言えんだろう。ガラヘルは日の入り前には出発するよう求めている」

 イセヤは窓の外を見た。中庭の影は長く傾いていて、厨房の狭い窓を青く染めていた。彼女はほぼ一日中リーヴァスと空を駆け巡っていたので、出発のときまであまり時間は残されていなかった。
 彼女は彼に瓶を仰々しく手渡した。「ぜひにぜひに。旅立ち前のご一献」

***

 まー・・・。愚痴は弾倉が空になるまで打ち尽くしたので、もうやめます。

 "Fortress Haine" ヘイン要塞。あれですね、DA2のDLC、MotAで登場しましたね。プロスパー公爵編でしたっけ? "The Retreat"も触れてましたよね。覚えてますでしょうか。
 そこらの薀蓄は後ほど。

 Smoke スモーク: ash-grey (ash-gray)、灰のような灰色(笑)。そうではなく、灰のような白色、灰白色ですか。

 

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コメント

>やっぱりグリフォンが好き
イセヤとリーヴァスの様子を読むと、小春日和の中のL様と猫ちゃんの戯れもこんな感じかなぁ、と思ってしまった。
これからどんどん寒くなっていくと、ぬくもりを求めて猫ちゃんがPCの周りをウロウロするんでしょうね。
猫を飼っていて、DAIをPCでプレイされる方は大変そうだ。


実は先月から、時間つぶしにMinecraftをやってます。(笑)
材料集めて、クラフトして、家建てて…。
あぁ…、べ・別にSkyholdを想定して遊んでるわけじゃないですよ?た・たぶん…。
DAIまで3週間、今はもう情報集めするまでもないし、本番に臨むだけ。
ん~、あとは日本語版DAKがいつになるかが気になるくらいかな。

 私なんか、「なんとかの軌跡II」爆走中ですよ。どうにかDAIリリース前に一回は終わりそうだけど。他のやりかけゲーム(大した数はない)は全部停止中です。と言っても週末は平気で飲みに行っちゃうんですけどね。

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