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2014年11月 3日 (月)

Last Flight 16(2)

 酒の席で大事な約束をしてはいけない。特に野郎が女性の言葉に乗っかったり、気を惹くため迂闊な約束を口走ると碌なことにはならない。

*** 

 その、尋常ならざる一瞬、ガラヘルは言葉を喪った。目を見開き、椅子にのけぞり、態勢を崩した身体を支えるため壁に手をつかなければならなかった。
「グリフォン?」 やがて気を取り直すと、喉を締め付けられたような声を出した。「君はあいつらについて何も知らないじゃないか」

「グリフォンとその乗り手たちとともに、かれこれ十年は暮らしてきた」とアマディスが辛辣に言った。「とても近くにいたから、気づいているのではなくて。私も少しは学んでるはずだわ」
「ああ、いいだろう、言いたいことはわかった・・・、だが君はグレイ・ウォーデンじゃない」
「そうね」と彼女が言った。「だから欲しいのよ。ワイズホプトの外で、ウォーデン以外でグリフォンを手に入れている唯一の人物になる。それは大変な権力と権威の象徴。あなたがルビー・ドレイクをフリー・マーチズのどこにだって引き連れていけるだけの価値がある、といっても報酬を支払う約束がいらなくなるわけじゃないけど。グリフォンはあなたの誠意を知らしめ、彼らにとっては他の傭兵部隊に対する自慢になるわけだし、他の傭兵連中だって自分のグリフォンを欲しがるようになるんじゃないかしら」

「まあ、そうかもな」 ガラヘルは、傾いた椅子から危うく転がり落ちそうになったとき引っ張りあげられたままのシャツを直した。
「大したことじゃないかもしれない。私が欲しいのはそれ。グリフォン一頭。子供が産める牝」
「群れでも育てるつもりかい?」 両方の眉を逆立てたエルフは、信じられないという表情で尋ねた。
「そうかもね」 アマディスは自分のワインを飲み終り、グラスを横にどけ、膝を指でなぞった。

「私にそうさせる必要があるんじゃないの。今グリフォンは何頭生き残ってる? 数千頭? その半分が戦っている。ブライトが終わるまでにその多くが死んでしまう。それ以外のうちで、子供が産めないほど老いたものはどれだけいる? 虚弱すぎるのは? ブライトのせいで、病いを抱えたり奇形の姿で生まれてくるのはどれくらい? 群れを再建しなくちゃならないのよ、ガラヘル。私ならできる。スタークヘイヴンの外で、あるいはヴィマーク山脈の中で、グリフォンがあの辺の地形を気に入ってくれるならだけど。あそこには私の家の土地がある。でもあなたには、ここ以外にもうひとつ群れを育てる場所が必要」

 ゆっくりと、彼は頷いた。「わかった、君の言う通りだ」
「もちろん、私の言う通り」 アマディスは立ち上がり、扉に向かってぶらぶら歩き、肩越しに振り返って微笑みを投げ掛けた。「どのグリフォンをいただくか話すのは後にしましょう。今は、あなたもゆっくり休んだほうがいい。女王に男前なところを見せないといけないから」

--- 

 彼はその通りにした。

 女王マリウェンの祝宴に現れたガラヘルが身に着けていたダブレットとズボンは緑色と黄金色の錦織で、エルフの瞳の色に深みを与え、金髪の鮮やかさを強調するために注意深く選ばれたものだった。ヴェルヴェットの半外套は灰色のミニヴァー、オコジョの毛皮で縁どられていたが、その色はずうずうしくも貴族専用の色を用いてると誰かが気分を害することのない程度まで、オコジョの毛皮の白さに近かった。だがその毛皮の柔らかい縞模様以外、彼が身に着けている灰色はなかった。彼のことは皆が知っていた。 

 この催し全体にイセヤが反感を抱いているのは確かだったが、女王の蝋燭の森の輝く光の中で、ガラヘルがとりわけ際立った姿であることは認めざるを得なかった。彼女の兄は女王マリウェンの気を惹くためのあらゆる努力を惜しんでおらず、彼が祝宴の場に歩み入ったときには、集まっていた貴族や傭兵隊長たちが静まりかえった。

 彼は美しい、イセヤは、フォークを弄びながら思った。それに意味があるかどうかは定かではなかった。女王のような立場の人物の約束は、そのきっかけになった欲望が満たされた後には滅多に守られることはない。

 「陛下」とガラヘルが言って立ち止まり、女王とその取り巻きの淑女たちが座る中央の高い食卓の前でお辞儀をした。イセヤはその中におらず、アマディスも違った。グレイ・ウォーデンたちは女王の右側の席に座り、カリエン、リズメが、戦功のあった他のメイジたちやウォーデンたちと並んでいた。

 アマディスは石のように押し黙ったまま女王の左側の席に、彼女の副官たちや他の傭兵隊の指揮官を伴って座っていた。彼女は、他の貴族の女性たちが見せびらかしているような念の入った造作の夜会服ではなく、鎧に似せて青銅を散りばめた深紅の革の鎧下を着ることを選んでいた。彼女の滑らかな黒髪は、イセヤがアンティヴァ・シティで初めて出会った頃と同じ長さに切り揃えられており、その毛先の角度が、まっすぐ尖った彼女の顎の線を強調していた。ルビー・ドレイクの隊長は、女王マリウェンの宮廷の女性たちとは似ても似つかない存在であり、彼女はガラヘルにそれをわからせようとしているのだ。

 間違いなく彼はわかっており、だがそれをうまく隠していた。お辞儀からあげた顔に輝くのは、絶対的な献身に他ならなかった。

「グレイ・ウォーデンのフィールド・コマンダー、ガラヘル殿」と女王マリウェンが歓喜しながら言った。彼女は今までどおり燦然としていて、ここに居並ぶ中で唯一、ブライトにも、長く続いた籠城にも影響を受けていない人物のようであった。彼女の青紫の瞳は厚化粧で見事なまでに縁どられ、豪奢な紫の夜会服は、低い両肩から乳白色の肌をはしたないほど覗かせている。彼女の周囲の貴族たちは七年の間に及んだ悲嘆のため痩せこけ、やつれ、その衣裳も虫食いだらけで、十年は流行遅れであったかもしれないが、女王の美しさには欠けるところがなかった。

「お越しいただいて光栄ですわ」と彼女は言った。「アンダーフェルズの皆の者が、ホスバーグの長い、恐ろしい包囲を打ち破るため示されたあなたの英雄的な行いに感謝いたしております。このささやかな宴を、わたくし共の感謝の気持ちとしてお受けいただけることを祈っております」

「もったいないお言葉です、陛下」とガラヘルが答えた。「私はただ責務を果たしただけ、このような試練の時には誰もがそうせねばならないように」
「そうでしょうとも。ですがあなたの責務ほど重いものは、他にそうはございません」
「その通りです。私一人で成し遂げることはできなかった。我が軍団だけでも無理でした。グレイ・ウォーデンは、ダークスポーンと戦うアンダースの勇気と奮迅振りに恩義がございます」 彼は間をあけ、三方の高い食卓に居並ぶひとりひとりの者たちの目を見た。「我々はその勇気を、フリー・マーチズまで押し進めなければなりません。あなた方の助けなくしてこのブライトを終わらせることはできない。ですが助けがいただければ、アーチディーモンの成敗がかない、そしてついに我々の故郷に安全がもたらされると、私は固く信じています」

 彼の言葉には静けさが続いた。それから、傭兵隊長たちが木製の卓上に手にしたタンカードを打ちつけはじめ、ウォーデンの誓いを讃えた。他の兵士たちも歓声で続き、最後には女王の取り巻きたちもそれに加わったが、他の者たちに比べれば熱意は浅かった。
「わたくし共アンダーフェルズの民は、応分の役目を果たしましょう」と女王マリウェンが誓い、立ち上がった。彼女の髪の上に乗せられた繊細な黄金の冠が、祝宴の広間で燃える松明の灯りに照らされ、たくさんの蛍でできた頭飾りのように輝いていた。「わたくし共は、ダークスポーンにとって常に難敵でありました。フリー・マーチズの友人たちが暴虐に曝されていることは存じております。アーチディーモンにとどめを刺さない限り、わたくし共に休息は訪れず、そのときには、わたくし共の勇敢な兵士たちが必ずや最前線にいることでしょう」 彼女は目の前で手を組み合わせ、首を傾げ、ガラヘルに向かってとっておきの笑顔を見せた。「ですが今宵は、誉高きウォーデンよ、すでに手にした勝利の喜びを分かち合うことにいたしましょう」

 エルフは再びお辞儀をして同意を示すと、マリウェンの右隣、上座の席に向かった。彼は欲っしていたもの、公の場での軍事的支援の表明を手に入れ、イセヤは兄の姿に微かな満足の空気があることに気が付いた。今夜二人の間に何があろうとも、女王はホスバーグの指導者たちや将軍たちの前で、自ら公約したのだ。
「守るならいいんだけど」 イセヤは酒杯の中に呟いた。
 誰かに聴かれるつもりはなかったが、結局カリエンが彼女のほうに向けて鼻を鳴らした。「疑っているのか?」
「疑うのは習い性」 エルフは肩をすくめた。「でももうどうしようもないから、悩んでも仕方がない。今はガラヘルに任せるしかないもの。そして今夜決着をつけることができるのは、彼しかいない」
「ブライトを終わらせるためなら、彼はなんでもやるつもりなんだな?」
「あなたは違うの?」

 召使いが晩餐の最初の料理を運び入れてくると、カリエンは彼らが近づくのにあわせて黙り込んだ。長い籠城による困窮にも関わらず、女王マリウェンの召使いたちは料理で面目を施した。鳩肉のパイ、ブランディで煮込んだ乾燥林檎のソースで供される鹿肉、蜂蜜と刻んだナツメヤシを載せた繊細に編み込まれたパン。彼らはやりくりして城の食糧倉庫に温存していたいくつかの贅沢な品をウォーデンのグリフォンに運ばせ、八品の料理を作り上げていたが、これ以上に豪華な料理を食べたことがあったかどうか、イセヤには思い出せなかった。 
 だがついに、給仕もワインの注ぎ役も後ろに下がり、城の詩人が最初の歌、ガラヘルの英雄とアンダースの勇猛さを讃えるため急ごしらえにつぎはぎされた歌を歌い始め、それはイセヤの耳にはうんざりするようなものだったが、次第に酔いが回ってきた兵士や傭兵たちにとってはぞくぞくするものだったらしく、彼らが節に合わせて歓声や野次をあげている頃、カリエンが身体を寄せて来た。

「いいや」とブラッド・メイジが言った。「私でも、やらないことがある」
「あら、それは何?」
 カリエンは鳩肉のパイにフォークを突き立てたが、すぐには口に入れなかった。女王の晩餐を急いで準備するあまり、料理人は鳥の羽毛を綺麗に取り去ることができなかったようで、小さな羽根が一本はみ出していた。湿っぽくて捻じれた柔らかい羽根にはねばねばした汁がこびりついており、それが心の中に不快な残響を呼び起こした。
「答えはわかっているはずだ」とカリエンが言って、パイから羽根を抜き出した。「でなければ、もうじきわかる」

***

 ただし、ガラヘルほど美形だと、話はだいぶ違うようです。
 "Life is unfair."
 今にはじまったことでもない。

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