フォト
無料ブログはココログ

« Last Flight 21(1) | トップページ | Last Flight 21(3) »

2014年11月26日 (水)

Last Flight 21(2)

 シェヴァリエ、恰好よろしおすなあ。

***

 ブライトを終息させる機会が訪れた。ある夜、天幕の中でそうガラヘルが告げた。彼とアマディスは、一握りの手練れのウォーデンたち、軍の指揮官たちを非公式の会合に集めていた。彼の従者たちが回りを取り囲み、燭台に甘い香りを放つ木をくべている。香は不謹慎に過ぎるとイセヤは思ったが、アマディスは滅びゆく世界の美しさを忘れないようにするためだと譲らなかった。いずれにしろ、この天幕は彼女のものでもあった。

 豪奢な黒い羊皮で覆った折り畳み式の椅子でくつろぐアマディスは、「機会」であることを強調した。女傭兵隊長の漆黒の絹の流れのような髪は腰のあたりまで伸びており、従者の運ぶ盆から香辛料入りの葡萄酒のグラスを受け取るため身体を横に傾けたときには、毛皮の上にさっと音を立てて広がり落ちた。自分たちが揺るがぬ決意で臨むなら。ダークスポーンが壊滅の淵に追いつめられていることは、やつらも気づいている。最後の勝利を収める絶好の機会だ。

 策はあるのか、とイセヤが尋ねると、周囲の者たちが、最近しばしばそうするように彼女に怪訝そうな顔を向けた。彼女はだぶだぶの灰色のローブをまとい、穢れの兆しの見える顔を頭巾ですっぽり覆っていたが、その声の変化まで隠すことはできなかった。言葉はがらがら声で歪み、濁って聴き取り難かった。それが苛立たしく、ゆえに言葉少なになっていたが、だからこそ発言するときには鋭い反応を集めてしまう。新参の傭兵隊長のふたりと、オリージャン・シェヴァリエひとりが、彼女の目に入らないと思って、こっそり魔除けのまじないの印を切っている。
 ガラヘルは、だがまったく動じずに答えた。アンティヴァに急襲をかける。自分たちは、すでに十分脅威を与える位置まで近づいている。アーチディーモンの支配地のただ中で決戦を挑むのだ。

 あのけだものが騎士のように挑戦を受けて立つはずがない、とオリージャン・シェヴァリエが嘲るように言った。傷だらけの鎧に身を包んだグレイ・ウォーデンたちに比べ、彼のいでたちは壮麗で、態度もそれに見合うだけ尊大だった。胸甲はぴかぴかの鋼に込み入った豪奢な金細工が施してあり、肩甲に描かれた銀の薔薇模様は花弁一枚一枚が鏡のように磨き上げられている。あやつが名誉を損なわれたと感じるなどと考えてはいるまいな。
 イセヤは、彼の名前がモントフォートであることを、なんとか思い出した。彼女たちが立ち去る少し前にへイン要塞にやってきた彼が、勇敢な男であることはぼんやり覚えていた。馬鹿ではない、たとえわざわざそう見えるように振る舞っているとしても。

「実はそう考えている」とガラヘルが言った。「傲慢さゆえに、名誉ではなく、だがそれでも俺たちの目的にはかなう。アーチディーモンは、自陣の目前で戦いを挑まれれば乗ってくる」
「そうに決まってるのではなくて?」とアマディスが同意した。「もう耐えられないほど負け続けてるのよ。だからやつは、再結集した戦力でこっちを殲滅する絶好の機会を見逃すはずがない」 彼女は腕輪の飾りを指で弾いた。編み込まれた革紐には、彼女が倒した百匹目のオーガの一組の糸切り歯が括り付けられている。その歯が彼女の盃の縁に当たり、血の色の酒を震わせながら、ちりん、ちりん、ちりんと音を立てた。

「やつまで辿り着ければの話、そこで諸君の出番だ」とガラヘルが言った。「グリフォン・ライダーが先陣を切らねばならん。アンティヴァの奥深くまで食い込んで、アーチディーモンを誘い出すのは他の者たちには無理だ。だが、俺たちには援護が必要だ」
「拙者が行こう」 モントフォートが間髪入れずにそう言って、一歩前に踏み出すと宮廷式の仰々しいお辞儀をした。「援護の騎兵を指揮する名誉は、拙者が拝命つかまつる」 彼の鎧が天幕の中の明かりできらきら輝いた。何人かのグレイ・ウォーデンが、彼の背中越しに愉快そうな顔を取り交わした。
 ガラヘルは、だが、彼の申し出を至って厳粛に受け止めた。「感謝する。貴公の勇気、痛み入る」
「ルビー・ドレイクも出るわ、もちろん」とアマディスが言った。それに続いて、他の傭兵部隊が先を争って名乗りを上げ、他所より自分の部隊の勇気と技倆がいかに優れているか吹聴し合った。
 ガラヘルは、彼らの自慢話を神妙な顔つきで聞き、それから望む相手を指名した。メイジたち、射手たち、そして彼らの周囲に鉄壁を築くストーンズ・バスタードたち。そのほとんどが、はみ出し者たちの部隊から選ばれた。
 英雄になる必要がある者たち、とイセヤは思った。そして平時になればどこにも帰るところがない者たち。

 そしてガラヘルが、選から漏れた傭兵部隊とともに、グレイ・ウォーデンたちのほとんどを退出させたときも、彼女は驚かなかった。やはりここでも、彼が残るように求めたのはブライト以外に居場所のない者たちだった。何人かは、イセヤのようにダークスポーンの汚染が深く、平時であればすでにコーリングに応じて旅立っているはずの者たちだった。

「我々が生き残るとは考えておらんのだな」 他の者たちが外に出た後、そうしたウォーデンのひとりが言った。厳格な、百戦錬磨のアンダーフェルズの男で、顔は茶色く日焼けし、風雪に曝された顔には皺が刻まれている。頬の白い縦筋の傷は、部族の風習を示すものだ。名前は、リーホウだったかもしれないが、イセヤには定かではなかった。

 そのアンダースの眼の下にできた紫色のたわんだ袋が疲労によるものでないことは、すべてのグレイ・ウォーデンたちが知っていた。それを知っても仕方のない同盟相手に伝えることはしないかもしれないが、ウォーデンたちにはコーリングの兆しが現れていることがわかった。汚染は、彼からほとんど自制を奪い去るまで進行している。

「俺たちの誰一人生き残るなんて考えていないよ」とガラヘルが陽気な調子を取り繕って言った。「だが今回ばかりは、いつもより厳しいかもしれん。気になるなら、好きに残っていい」
「残りはせん」 アンダースは蔑むように言った。「戦いから逃げたりはせん」
「いいだろう、だったら話は終わりだな」 エルフは天幕の中を横切り、折り畳み式の机の上に広げられた地図の上を指でなぞった。指先の線は、自分たちの逗留地からまっすぐアンティヴァ・シティーに向けられた。「この進路を行く。やつらの軍勢の真上を飛ぶのは、俺たちが向かう姿を見せたいからだ。アマディスが地上の兵をアーヴァウズ・バロウまで率いる。あそこの丘がダークスポーンに対して有利な地形となるだろう。地上の兵はそこで、俺たちがアーチディーモンを弓の射程距離に引き込むまで待機する」

「長い距離を飛ぶことになる」 ガラヘルの肩越しに地図を覗き込むため近づいてきたリーホウが言った。「最高速度で飛び続けるには長すぎるかもしれん」
「だからこそ、最強のグリフォンのみ用いることにする」とガラヘルが答えた。彼はイセヤが身を潜めている薄暗い隅のほうを見た。「疲れ知らずの連中を」
 リーホウが顔をしかめ、他のグレイ・ウォーデンたちの何人かも不安げな囁きを交わした。「ジョイニングを経たものに乗れというのか?」
「君のグリフォンがこの任務をこなすだけ強く素早くない限り、そうだ」
「連中は狂っている」とリーホウが不愛想に言って、片手の掌を机の上に押し付けた。「言うことをきかない。憤怒に取りつかれている。ダークスポーンに近づけば我を失う。勝手に突撃して呼び戻せない。アーチディーモンとの戦いに、そんな獣に跨って臨むのは・・・、死を手招きしているようなものだ。惨劇しか生まれない」

「俺がそう思うなら、用いたりしない」とガラヘルが言った。「だが俺は妹を信じるし、これが機会をものにする最良のやり方だと信じる。俺たちは、アーチディーモンを味方の待つところまで引きずり出すことができないかもしれない。あやつが乗ってこなければ、空中で倒すしかなくなる。そのときは、どれだけ不利になっても、どれだけ傷ついても、戦うことができ、そして戦うつもりのあるグリフォンが必要なのだ」

 彼らはイセヤのほうを振り返って見た。頭巾の下で彼女は、彼らの眼差しのため消え入りたいような気分だった。ウォーデンたちの顔には疑いが、さらには不信が読み取れ、彼らがガラヘルを見つめるときに鮮やかに浮かぶ希望の、かけらもそこにはなかった。自分は彼らからすれば化け物なのだ。

 だが彼らを責めることはできない。以前のエルフだった自分を示す部分は、今ではほとんど残っていない。
 だが、もうこれで仕舞だ、と彼女は思った。彼らのそんな眼差しに耐えるのも。自分はアーチディーモンを打倒するためできることをするだけ。あと一度の戦いで、彼女はこの終わりなき悲嘆と犠牲の進軍に別れを告げることができるかもしれない。あと一度だけ、そして彼女は、自分を押し潰してしまいそうなこの英雄としての重課を、他の者たちに任せることができるかもしれない。

「言うことをきくようになるわ」と彼女が言った。

***

 勇気(courage)には色々な種類がありますが、武勇(valor)にはたった一種類しかありません。戦いに躊躇なく赴き、最後まで踏みとどまること。

Lehor: リーホウ
Arvaud's Barrow: アーヴァウズ・バロウ

 登場するシェヴァリエは、どうやらSer Gaston de Montfortらしい。あのプロスパー(Duke Prosper de Montfortの祖先にあたる。

« Last Flight 21(1) | トップページ | Last Flight 21(3) »

ゲーム」カテゴリの記事

Dragon Age Inquisition」カテゴリの記事

DA: Last Flight」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Last Flight 21(2):

« Last Flight 21(1) | トップページ | Last Flight 21(3) »