フォト
無料ブログはココログ

« Last Flight 12(2) | トップページ | Last Flight 13(2) »

2014年10月22日 (水)

Last Flight 13(1)

 途中まで空港で書いた(笑)。

***

第十三章

 5:19 エグザルテド

 助けることはできないのか、とダナロが静かに、期待を込めた声で尋ねた。彼は、怪我をした自分の両脚を覆っている野戦用毛布の角を無意識にいじっているが、その部分は過去にも似たようにした者たちの手で汚れて黒ずんでいる。
 彼自身はあと一日二日で診療所から退院できる見込みだ。唯一心配されているのは毒を受けた片足の状態が悪化することだが、彼自身は全く気にかけておらず、シュライクの容体だけを憂慮していた。自分を救ったグリフォンをそのまま死なせるわけにはいかない。このままおぞましいグールになってしまうのは耐えられない。

 ダナロへの共感で胸がいっぱいなイセヤは、そうはならないと約束した。乗り手たちは、その乗騎がトラヴェラーのように戦いで斃れることを恐れていたが、速やかな死であればまだしも、ゆっくりとグールと化していく運命は比べようもないほど酷い。
 フェラルデンの野花が効くらしい、そう話しはじめたダナロは、すぐに首を振り、自分は子供の話に救いを求めている愚か者だと認めた。仮にそんな魔法があったとして、ブライトと七年も戦ってきた今は根こそぎにされているに決まっている。お伽噺のお助け妖精に、杖の一振りで治してもらうよう頼み込むのと同じことだ。

 試すべきことはある、とイセヤが言った。寝台に横たわるダナロを見おろしながら逡巡し、疑わしげな目を向けた。危険を冒すつもりがあるのなら。
 ジョイニングか、そう言ったダナロは自分の言葉にたじろぎ、鼻の横のほくろを片方の親指でいじった。過去にも試されたが、グリフォンには通用しなかったし、それから五十年の間、誰もが考えることを避けたほど悲惨な結果だった。たとえ上手くいくとしても、汚染で死にかけているグリフォンは救えない。

 そうかもしれないが、思いつく方法はそれしかない、とイセヤが言った。最初の儀式は、今のシュライクと同様、汚染で死にかけた人々を救うために試されたのだ。何を喪うものがある。
 山ほどある。微笑もうとしたダナロの唇が歪んで渋面になった。ほくろをいじっていた手が再び毛布をもてあそびはじめた。シュライク、イセヤ、それ以外の多くの友人たち。グリフォンにジョイニングの儀式を受けさせたときの物語は、イセヤだって聞いて知っているはずだ。
 イセヤも知っていた。五十年前の試みがもたらした警告は、ウォーデンたちの胸中に鮮明に残っている。ジョイニングの儀式を受けたマバリ戦犬の運命は、ヒューマンたちと変わらない。一部は死ぬが、生き残ればウォーデンのような無謬性と同調性を獲得する。仮にマバリがヒューマンほど長生きするならコーリングすら経験するのかもしれなかったが、犬の寿命は短く、戦犬であればなおさらだった。

 だがジョイニングを経たグリフォンは、手が付けられない猛烈な憤怒に見舞われる。その爆発的な暴力は、付近にいるもののみならず自らも危険に曝す。ダークスポーンへの嫌悪は自らの肉体に宿った汚染さえ許さず、高貴な生き物は荒々しい激怒とともに自分の身体を食いちぎってしまう。その古い試みの恐怖と惨劇のせいで、ウォーデンたちは二度とその道に踏み込ませないよう肝に銘じているのだ。 

 だが当時のウォーデンたちはブラッドメイジではなかった。そしてイセヤは、カリエンから学んだことのどこかに、グリフォンがダークスポーンの汚染を受け入れる可能性が見いだせると信じていた。グリフォンたちの心を歪め、完全な憑依ではなく、だが受容を強いることによって、その意志をほんの僅か曲げることができるなら、盲目的な嫌悪を克服し、汚染と共存できるかもしれない。

 ダナロは頭を持ち上げ、イセヤの顔を探るように見詰めた。平凡な農奴の顔に浮かぶ心の広さと正直さは、あからさまな期待を隠しもしていなかった。彼は、自分が愛するグリフォンをイセヤが救うことを信じたかった。だが実のところ、信じてはいなかった。
 試すがいい、と彼は言った。そのつもりだとイセヤが答え、兄を探しに出た。

 ガラヘルは城の指揮所におり、アマディスの他一ダースの者たちと評定の最中だった。古参のグレイ・ウォーデンたち、民兵隊長たち、傭兵団長たち、彼らはアンダーフェルズの玉石混交の軍勢を率いる者たちで、ダークスポーンが補充を遮断されているうちに、ホスバーグの包囲を打ち破るべく軍議を行っていた。

 そこにはユーヴァシャ、アンダーフェル王立軍の女貴族の司令官も加わり、また愛らしい、常に口を尖らせている摂政女王のマリウェン、二年前にオーガに肋骨を叩き折られて短い統治を終えた亡きエノー王の代わりとして、ホスバーグの指導者の地位に就いている彼女もいた。エノーの家督グリヴォード王はまだ三歳で、育児室から統治することは適わない。

 その母は、当然のように支配者の地位を喜んで引き受けた。そしてイセヤも宮中で囁きを耳にするように、女王マリウェンに対する最悪の誹謗は、他でもないブライトのおかげで、実質的な支配が彼女の代わりに女司令官ユーヴァシャの手に委ねられていて幸いだった、というものだった。女王は、目にした男前の傭兵に手当たり次第に媚びを売る一方で、ユーヴァシャは静かに、疲れも知らずに必要な職務を果たしていた。

 ユーヴァシャは地図台の一方の端で、アマディスとガラヘルと一緒に頭を寄せ合っていた。イセヤが近づくと、地図上の兵の配置を示す駒が目にとまった。白い大理石の人形がホスバーグの街の内外に位置するウォーデン、メイジ、グリフォン、そしてさまざまな傭兵軍団を示す。子供の遊びで用いる黒と白の石はアンダーフェルズ王立軍。山と積まれた乾いたゴキブリの死骸がダークスポーンで、ガラヘルの突飛な命令に従って召使たちがかき集めたものだった。 

 彼らはラッテンフラス河沿いのどこでダークスポーンどもを包囲殲滅するのがよいか、どうやってその罠に誘い込むかを議論していた。アーチディーモンに率いられていてさえ、ダークスポーンは通常の軍隊のような行動はとらない。補給路も、兵の損耗も意に介さず、ただ闇雲に獰猛な突進を繰り広げる相手は、ヒューマンやドワーフの指揮官が注意深く待つ罠の只中に引きずり込むことができる。

 それがうまくいくときも確かにある。だが、アーチディーモンが狡猾にも群れを死地から逃れるように誘導すれば、罠は仕掛けた側にとってしっぺ返しとなる。その先の読めなさが、重大な難関だった。

 だがそれは、今日の彼女にとっての難関ではなかった。イセヤは地図台のそばをすり抜けると、兄の肩を叩いた。

「ジョイニングの儀式に使う用具がいるの」

***

 「グール」(ghoul)とは、ダークスポーンの汚染を浴びながら生き延びた生き物(ヒューマノイド含む)のこと。熊、狼、ウェアウルフ、カラス、蜘蛛などが本編ゲームに登場する代表格。徐々に知性・知能が蝕まれていくのみならず、一般に不気味な異形に化していく(ヒューマノイドだけは、辛うじて原形をとどめるようだ)。
 ブルードマザーは、強制的にダークスポーンの肉を食らわされ、「グール化」(ghouldom、本編ゲームには登場しない、著者の造語)されたヒューマノイドの女性。DAOにもむごたらしい姿で登場しました。

 グレイ・ウォーデン、あるいは上述の汚染を克服したマバリ犬はそうは呼ばない。汚染への無謬性と、ダークスポーンに対する(またはアーチディーモンの歌声への)同調性を得つつ、少なくともコーリングまでの間は知性・知能を保持するから。

 以前紹介したゲイダーさんのTumblr記事で、「マバリの寿命はどのくらい?」というファンの質問は、おそらくここの部分からきているのでしょう。

 Uvasha、Lady-Commander ユーヴァシャ
 Mariwen、Queen-Regent マリウェン 
 King Henault、エノー王
 King Grivaud、グリヴォード王

« Last Flight 12(2) | トップページ | Last Flight 13(2) »

ゲーム」カテゴリの記事

Dragon Age Inquisition」カテゴリの記事

DA: Last Flight」カテゴリの記事

コメント

お疲れ様です。

>フェラルデンの野花が効くらしい
DAOをプレイされた方には懐かしいでしょうね。
前述されていた「空にあがると必ず具合が悪くなる」ドワーフの兄弟とか、DAOやDA2にあったちょっとしたエピソードが踏襲されてるのはエライなぁ。

以前話題にもありましたが、コーリング、ジョイニングはさることながら、汚染というのもなるほど曖昧さが多いですねぇ。
リアルの現代でも、エボラやデング熱やら感染経路や治療法が簡単には解明できないこともありますし、狂犬病だって有効な治療法が確立されてないんでしたっけ。
そう思えば、まぁ、フィクションの世界のものくらい曖昧な謎であっても別にいいんじゃないかという気もしてきました。

そうそう、新Twitchは、Skyhold特集でしたね。
紹介するのは、CLとJason Hill(Skyholdのデザイン担当)。
Hill氏はまん丸顔のドワーフ、やっぱし…。
う~ん、Skyholdをチェックして見て回るだけでも、1時間以上かかりそうな予感。

 フェラルデンの野花、そう言えばありましたっけ。「アンドラステの涙」のことですかね。申し訳ない失念しているかもしれません。

>リアルの現代

 そして、欧米の医学こそエボラ熱を招いた邪教の呪術である!

 医学は「宗教的」問題ですしね。創造主から委ねられたこの世界、人間の都合でいかようにも改変して良いというのがクリスチャニティ科学(医学)の拠り所ですが、イスラームにはそうは考えない宗派があって「ありのまま死ぬ」べきであると考えるわけだし、ましてやアフリカ諸国のメディシンメンには、西欧医療=邪悪と考える人もいる。
 視点を変えれば、そのどれもが「野蛮」と呼べますしね。ん、ああ、漢方に至ってはほとんど詐欺ですから。
 

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Last Flight 13(1):

« Last Flight 12(2) | トップページ | Last Flight 13(2) »