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2014年10月28日 (火)

Last Flight 15

 この章は短い。でもかかった手間は他より多かった。

***

第十五章

9:41 ドラゴン

 

「ブラッドメイジに会ったことはあるの?」とイセヤが尋ねた。怖気づいている感じを苦労して出さないようにしても、どのみちそう見えたようだ。数か月の間にテンプラーたちと同居することは受け入れているはずだったが、ホスバーグの習慣は残っていた。
 
 ときにためらいがちであっても、イセヤはレイマスを本当に好きになりはじめていた。彼女の憂鬱そうな外見の下には、慈悲の心と深い思いやりが宿っている。ホスバーグのテンプラーたちが皆そうであったなら、サークルの恐怖に満ちた暮らしは違ったものになったはずだった。

 心を開こうとしない他のテンプラーたちと、そのような親密な関係を築くことはどのみちなかった。数週間前、騎士副長ディギエーがジョイニングの儀式の最中に死んで以降、イセヤが他のテンプラーたちを見かける機会はさらに減っていた。
 だがレイマスとはその後も朝の茶を付き合ったり、ワイズホプト要塞の立ち入りを許されている部分を一緒に歩いたりしており、ヴァルヤ自身が驚いたことに、しだいにふたりは友人のような関係になりつつあった。
 近しい間柄、少なくとも、気にせず悩みごとを打ち明けることができるような女同士の関係。

 レイマスはすぐには答えなかった。彼女は、茶色い小鳥が中庭の壁の上ではねながら、小さな林檎の木の葉っぱの裏の虫たちを探す様子を見つめていた。
 羽根と首の横に黒い斑点があり、腹がクリーム色のその小鳥は、ホスバーグに棲みついて用水槽に溜まる雨水をすすり、塔の高いところの岩場に巣を作っている群れの一羽だった。ヴァルヤは日々その小鳥たちを見つめ、自分にも同じような自由が手に入ることを夢想していたが、この要塞の近くに留まるしかない小鳥たちに彼女以上の自由があるわけではないこともわかっていた。

 小鳥は何かに怯えて飛び去った。レイマスはゆっくりとヴァルヤの方に振り返る。陽光が映える髪は、彼女がここに到着したときに比べてだいぶ伸び、また灰色のものがより多く混じるようになっていた。「もちろん、あるわ」
「どんな感じ?」
「怯えている、だいたいは」 レイマスは空になった茶器の縁をたこのできた親指でなぞった。面長の顔はいつでも悲しげに見えたが、今話をする彼女の憂鬱さは増しているようだった。「だけど、テンプラーに見つかったブラッドメイジたちに何を期待するというの? 怯えていてあたり前」
「邪悪なの? つまり・・・、邪悪な者しかいないの?」
 ヒューマンの女性は肩をすくめた。「まず、邪悪が何であるかを知らなければ答えられないし、私が人よりそれを知っているわけもないのだけれど、よりきれいな答え、よりはっきりした答えは、彼らはみな邪道魔術を禁止する掟を犯しているというもの」

「でもなぜ?」ヴァルヤが詰った。「その理由は問わないの?」
「問うべき」とレイマスが認めた。「でも、できないときもある。誰でも自分の行いには理由がある。他人の理解が得られるものも、漠然としたものもある。私自身が信じてあげたいと思うものもいくつかある。でもどうやってわかるというの? 口にすることなんてその理由のごくわずかな一部でしかないのだし、それさえも彼らのものの見方や、希望や恐怖に彩られている。彼らがたとえ正直だとしても、ブラッドメイジが他人に対しても、自分たち自身に対してもそうであるはずがないのだけど、彼らの話がフェイドの中の光景以上に『本物』であるわけじゃない。たったひとつ確かに言えることは、彼らがその道に手を染め、邪道魔術師になったこと。テンプラーにしてみれば話はそこで終わり。そこで終わらなくちゃならない」

「グレイ・ウォーデンはブラッド・マジックを用いていた」とヴァルヤが言った。そう言うとき彼女は声を潜めたが、誰か他のウォーデンの耳に入る危険は実際にはなかった。ワイズホプトは何世紀も前に比べて今は閑散としている。広間や中庭は、今いるここも含めて、過去の遺物と現在の空虚さに支配されていた。「彼らはどうなの?」
 再びレイマスはしばらく口を閉ざした。林檎の木のごつごつした枝が一陣の風に揺れ、わずかに残っていた茶色い葉が散った。テンプラーの髪が灰色の縞のカーテンのように顔に吹きかかる。彼女はため息をつき、目を閉じ、忌まわしい記憶を押しやるかのように片方のこめかみを押さえた。

「チャントリーの教えによれば、ヒューマンの傲慢とヒューマンの野望がダークスポーンを生んだ」と彼女は言って、風がやんだ頃に髪を元通りになるようにかき上げた。「マジスターたちがブラッド・マジックを用いてフェイドに侵入し、ゴールデン・シティを冒涜し、そうすることで、セダスの全ての民が彼らの愚行の代償を支払う定めとなった。ブラッド・マジックは、グレイ・ウォーデンが命を懸けて阻止することを誓う邪悪を生んだ。やつらと戦うために同じ呪われた武器を用いるのは、間違っていると思わざるを得ない」

「でも、汚染そのものも用いているわ」とヴァルヤが指摘した。「ダークスポーンの穢れを受け入れることで、やつらと戦うことができるようになる。ただの道具よ」
「遣い手を滅ぼす道具」とレイマスが険しい顔つきで言った。「ブラッド・マジックであれ、ダークスポーンの汚染であれ、破滅と取引きすることに違いはない」
「ディギエーがしくじったのも、そのためだと思ってる?」とヴァルヤが尋ねた。騎士副長の死については、すぐ後に丁重なお悔やみを述べた以外、これまでレイマスと話をしたことはなく、今彼の名前を出すのも場違いな気がした。だが彼女は知りたかった。

「かもしれない。儀式は弱さを容赦しないと思うし、ディギエーは普通の意味で弱い男ではなかったけど、テンプラーと袂を分かつ決心をしてこのかた、心は迷いで一杯だった。その迷いが、汚染に対して弱さとなり、死を招くことになったのだと思う。腐食に打ち勝つには強い心がいるのだから」
「あなたは生き残ると思う?」 ヴァルヤは興味ありげに首をかしげた。尋ねるのは無礼なことかもしれないと思ったが、レイマスの心にもその問いが過ぎっていたに違いなかった。そうでないはずがあろうか? 若いメイジたちはその話題について恐ろしい思案を巡らしたあげく眠れなくなり、夜遅くまで寝台の上でひそひそと語り明かしているのだ。 

「儀式を受けさせてくれないのではないかしら?」 レイマスの薄い、色のない唇が内側に隠れ、物思いにふけるしかめ面になった。「ファースト・ウォーデンは、ディギエーのしくじりがどのように影響を及ぼすかを見極めるまで、私たちの誰であってもジョイニングの儀式を受けさせることはしないのだと思う。私はそれでいい。今日、あの杯を受けることになったら、騎士副長と同じ運命を辿るのは間違いないと思うから」
「どうして?」
「なぜなら、私にも迷いがあるから」とレイマスが言った。「ここは由緒ある英雄の軍団。でもその軍団が戦うべき邪悪は・・・、私は、自分が命をグレイ・ウォーデンに捧げるつもりなのかどうかわからない。テンプラーになった理由はよくわかってる。サークルの壁の両方の側の人々を守るために何をすべきかは理解していたし、その任務を誇りに思っていた。でもそんな理解も、そんな誇りも、ここにはない」 彼女は肩をすくめたが、それは挫折への諦観が色濃く出た仕草だった。「そして、私は自分の目的に対して純粋でも、確信を抱いているわけでもないから、毒入りの盃を口にした途端に倒れてしまうのでしょう、ディギエーのように」

「私も、グレイ・ウォーデンになりたいのかどうかわからない」とヴァルヤが優しく言った。「自分にその力があるかどうかわからない。私は・・・、私は、英雄の心は私のものよりずっと強いのだと思う」
 今度はレイマスが好奇の眼差しを向ける番だった。「どういう意味?」

 たとたどしく、ヴァルヤが告げた。「日記を見つけたの」 彼女は膝の上で手を組んで、落ち着かなげにそれを見下ろした。何週間か前には読み終わっていたのだが、イセヤの日記について誰にも話していなかった。最初は、ウォーデンたちの注意を引くほど重要なものではないと思っていた。第四のブライトに関する英雄譚としての価値はもちろんあるが、チェンバレン・オヴ・ザ・グレイが彼女たちに調査を命じている問題に関係があるとは思えなかった。それから、イセヤのブラッド・マジックに関する告白を呼んで、彼女が何をしたかを知り、衝撃のあまり口にすることができなくなった。

 ガラヘル、第四のブライトの英雄にはブラッド・メイジのがいた。イセヤもまたグレイ・ウォーデンでありながら、ブラッド・メイジだった。
 そしてエルフでもあったという事実は関係ないのかといえば、そうではなかった。
 ガラヘルは、セダス中のエルフにその名が知れ渡る誉高き伝説であり、誰も否定できない偉大さの持ち主。人々がエルフについてどう思い、何を言おうが、「ナイフ耳」という呼び名にどんな非難や侮蔑を含ませようが、自分たちの国々が生き残り、今まで家系が途切れず続いてこれたのも、彼が自分の身を一顧だにせず、アーチディーモン・アンドラルを打倒したおかげであることは認めざるを得ないのだ。

 イセヤの告白を暴露することは、その輝かしい象徴をくぐもらすことになる。そうすることが正しいのだが・・・、彼女は瀬戸際に立たされ、それを認めることは舌の上に灰汁(あく)を乗せたような苦さを伴ったが、自らの民に対する裏切り者になったような感じがした。
「誰の日記?」とレイマスが促した。声は優しい調子だが、目は注意深く、ヴァルヤは、自分の口の重さを彼女が気にしていることがわかった。

「あるウォーデンの」とヴァルヤは曖昧に答えた。その名前を告げることはできなかった。「第四のブライトの時代のウォーデン。彼女はブラッド・メイジで、とてもひどいことをした・・・、でも彼女はひとつ偉大なこともした。だから私は、あなたにブラッド・メイジについて尋ねたの。ブラッド・マジックで善をなすことはできるのかと。もし、テンプラーのひとりが、それは可能なことだと認めるなら、私は自分自身に嘘をついていたわけではなかったのかもしれない。それは真実かもしれず、この・・・、彼女の伝説は・・・、皆に知らしめる意味があるのかもしれない」

 沈黙がふたりの間に訪れた。茶色の小鳥が林檎の木に戻ってきて、こぶのある枝の上ではねている。それとも先程とは異なる小鳥か。ヴァルヤにはわからなかった。ずっと長い間小鳥たちを見つめていても、彼女には違いを見分けることはできなかった。

「私はもうテンプラーではない」とレイマスが言った。まるで囁きのようなあまりに静かな声だったが、長い沈黙の後に発せられたその声がイセヤをびくりとさせた。「邪道魔術があるところどこであっても撲滅に向かうのは、もう私の任務ではない」 彼女の暗い、絶えず疲れ切った目には、ヴァルヤにはわからない何らかの感情が潜んでいた。希望、かもしれず、あるいは受容・・・、もしかしたら少しの恐怖か?

「どういう意味?」とエルフが尋ねた。
「つまり、私は白でも黒でもないものを受け入れることができる、という意味」とレイマスが答えた。「だから、もしかしたらブラッド・マジックで善をなすことは可能かもしれない。たぶん。そのウォーデンの伝説はどんなものなの?」

*** 

 またしても女子高生ののり。辛い。本当に辛い。

 ひとつ、私自身と大きく解釈が違うのが、ジョイニングの儀式。私は、これまで何度か書いたように、ジョイニングの儀式で生き残るかどうかは、その者の過去の行為や抱いている意志などとまったく何の因果もない、という立場。もちろんダークスポーンの汚染を克服できる肉体的な何かの要因があるのでしょうが、それは儀式をやってみなければわからない、そのほうが物語として格段に面白いと考えている。

 心が弱いから、迷いがあるから、汚染に負ける。それはまったく受け入れがたい発想ですね。第一、物語としてなんら斬新でもなければ、面白くもない。
 この世は理不尽な混沌が支配している。だがその中に何らかの救いが、理(ことわり、秩序)があるのではなかろうか。いや、あるに違いない。あると信じよう。救済宗教とはそういうもの。
 「意志が強いから汚染に生き残りましたー」って、現世ご利益(りやく)宗教ですらないですね。つか能天気、バカでしょう。ファンタジー史上屈指の優れた設定が、お子ちゃま向け少年ジャンプになってしまう・・・。
 決してそうじゃない、本人の善行も意思も関係ない。やって見なければわからないことは、DAO、DAOAのジョイニングの儀式で、わかるように提示されたはず。
 まー、作中で語っているテンプラーがそう考えている(つまり間違っている)だけ、そう思ってればいいのかもしれないけどね。

 "humanty and deep kindness"、上では「慈悲の心と深い思いやり」とか苦しいことになってますが、一緒じゃん。"humanity"を「人間性」、「人間らしさ」とやるわけにはいかない。「ヒューマン」に異なる意味が付されている世界で、ヒューマニティはやめてほしいのです、まじで。(つっても「友人」とか「二人」とか使ってるけどね・・・)

 Mass Effectでいう「ヒューマニティ」は、「人類世界」というまた異なる意味なんで問題なかったんだけど。"people"が「人々」は、これはしょうがないかな。

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