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2014年10月12日 (日)

Last Flight 10(1)

 年数表記にご注意。

***

第十章

5:19 エグザルテド

 準備はいいか、とフェリスが言った。彼女の声は、跨る黄褐色のグリフォンが受ける上昇気流のため震えて聴こえた。準備よし、とイセヤが叫び返す。唇に入った髪の束を吐き出し、リーヴァスにフェリスの後ろにつくよう合図を伝える。冬の風が街の篝火の燃えかすを巻きあげ、雪片と焼け焦げた灰というつじつまの合わない組み合わせが彼女の頬に当たる。

 空を飛ぶウォーデンとグリフォンの眼下では、ホスバーグの街が城壁と燃え盛る障壁陣地に取り囲まれていた。障壁陣地の外では、ホスバーグの弩砲や投石器の射程に入るあたりで、まるで邪悪な海のようにダークスポーンの群れが打ち寄せ、また引いてを繰り返していた。

 七年にわたり、籠城はずっと続いていた。グレイ・ウォーデンに率いられたアンダースたちは、その年月の間、ダークスポーンを定期的に打ち破り、平和を夢想するに足るだけ、群れを大きく押し戻すこともあった。だがブライトは必ず新たな恐怖の波として押し寄せてきて、安全な城壁とタールを滲み込ませた木杭の障壁の中にアンダースを押し込めた。

 グレイ・ウォーデン抜きなら、街はずっと前に陥落していただろう。ホスバーグの農夫たちが街の周囲の荒れた土地からささやかな収穫を済ませ、狩人たちが森の中に生き残っていた鹿などほんの少しの獲物を狩るに足るだけの休戦期はあったが、街が自立するにはまるで不足していた。ホスバーグは、ウォーデンとそのグリフォンたちの空中補給のおかげで生き延びていた。 

 イセヤもその補給を担っていた。アンティヴァ・シティから来たメイジ、カリエンがリーヴァスの後ろの座席に跨り、ガラヘルに同乗するアマディスも、街の向こう側の空のどこかにいるはずだった。四人はこれまで夥しい数の戦友たちを亡くしていたが、幸運と技倆のおかげで、なんとか生き延びていた。

 今日の任務は、街の東端にダークスポーンの注意を引き付け、ホスバーグの西側に補給を落下させる輸送本隊を支援することだった。
 本隊に比べて囮の側は常に、意図的に危険を伴うような働きが求められた。一般に、ダークスポーンの戦いは洗練されておらず、戦術らしきものを用いることもなかった。イセヤは、ブライトとの戦いの間、二匹のエミッサリーが高い知性を示すわずかな兆しを見かけたことがあり、他にも何例か報告されていたが、ウォーデンは常にそれらを探し出し、発見次第ただちに打ち破るようにしていた。 

 才能ある指揮官が不在で、アーチディーモンの直接の指図もなければ、他のダークスポーンはただの凶暴な群れに過ぎない。何度かの低空飛行、ファイヤーボールの一、二発、あるいは矢の雨でも降らせれば、あらぬ方向に釣り出すことは容易だった。 

 釣り出した後も生き残ることは、だが難儀だった。十分低く飛ばなければ、群れの興味を失わせ、低く飛び過ぎれば、オーガの投げる岩石で叩き落とされる。ジェンロックとハーロックは、そのまがまがしい黒い弓から放つまぐれ当たりでグリフォンを撃ち落とすかもしれない。ダークスポーン抜きでも、篝火の近くを飛ぶのは危険だ。煙と光はグリフォンを惑わせ、温かい上昇気流が羽ばたきを邪魔して制御を失わせれば、軟着陸を余儀なくさせてしまう。味方の戦線の彼方で地上に降り立ったグリフォンと乗り手は、死んだも同然だ。 

 だが注意深くやれば、群れの結構な頭数を壊滅させ、四方を囲まれたホスバーグの守り手たちに束の間の救いをもたらすことができる。そしてそれは価値のある賭けだった。 

 彼女たちの前では、フェリスのグリフォンがダークスポーンの不気味な奔流に急降下していった。群れはまるで磁石に引き付けられる砂鉄のように集まってくる。ジェンロックとハーロックの中には野蛮な剣を宙に振るやつがいて、四十フィートも隔たっているフェリスと乗騎に飛び上がれば届くとでも思っているようだった。

 やつらの三十フィート頭上で、グリフォンは降下をやめ、水平飛行に移り、燃え盛る障壁陣地から群れの注意を逸らした。フェリスの同乗者、ジョラクと言う名のグレイ・ウォーデンが、白い羽根の矢を群れの中に放ち、ハーロックどもの怒りの叫びがさらに高まる。苛立ちとともに斃れた仲間を引き千切るやつもいたが、ほとんどはウォーデンたちを追撃していた。

 こっちも行く、イセヤがカリエンに告げ、リーヴァスにフィネスの進路に続くよう伝えた。視線の隅でメイジが頷くのが見えたが、降下がはじまると、彼女はダークスポーンに意識を集中した。

 リーヴァスの急降下が最も低い位置に達し、イセヤがむかつくような冷たい汚染の匂いを感じさえしたとき、カリエンがいくつものスピリットの矢弾を群れの中に撃ち始めた。やつらはあまりに近く、あまりに密集していたので、より強力な魔法で一掃することさえできたはずだったが、ファイヤーボールやテンペスト・ストームは群れを散りぢりにしてしまう。今はやつらを互いに畳重ねのようにしておく必要があった。 

 前方では第三のグリフォンが降下をはじめ、フェリスとイセヤと空中で交差する軌道を描いていた。そのグリフォンがダークスポーンの頭上をかすめると、同乗者が、持っていた重たい袋を喚き散らしているハーロックの頭の上に放り投げた。そこから滝のように沢山の瓶が流れ落ち、ほの暗い火の光の中で、毒入りの雹がまるで真珠のように輝いた。

 それぞれの瓶が割れると、入っていた乳液色の液体がダークスポーンの群れの中に巻き散らされ、あっという間に濃い半透明の霧になり、その錬金術の霧がダークスポーンに眩暈と苦痛をもたらした。角の生えたでかいオーガどもが悲痛な喚き声をあげる。ハーロックとジェンロックが互いにもつれ合い、むかつきのため叫び声や悲鳴をあげはじめると、グレイ・ウォーデンたちが矢と呪文を放った。

 ジョラク、フェリス、そして瓶の袋を投げた射手は、矢筒があっという間に空になるまで射ち続け、ダークスポーンの頭上に、容赦のない矢の雨を降り注いだ。斃れた一匹のオーガは、まるで至る所に丁子を刺されたハムのように見え、その下敷きにされた二匹のジェンロックの四肢は、潰されたクモのようにぺしゃんこになった。斃れたオーガの隣では、ハーロックのエミッサリーが呪文を唱えようとしたその顎の中にウォーデンの矢が飛び込み、舌もろとも胸まで串刺しにされた。箆にまとわりついていたエミッサリーのおぞましい悲鳴は、あと二本の矢に貫かれると静かになった。

 他のダークスポーンどもも、暗闇と霧に取り囲まれたその周囲で死んでいった。即座に絶命せず、傷ついて倒れたやつらは、仲間に踏まれてずたずたになって死んでいく。
 イセヤはその叫び声から耳を塞いだ。ダークスポーンの叫びは勝利でも死でも同じだ。苦悶に満ちた唸り声と喉鳴りの響きで、最後まで邪悪なままだった。
 彼女の後ろでは、カリエンがフェイドとの間の結びつきを完全に開いていた。メイジを取り巻くエナジーのオーラはあまりに強力で、肉眼でも見えるほどだ。ダークスポーンさえ恐れをなしただろうが、霧に包まれ、三人目のメイジの放ったファイヤーボールで周囲を焼かれ、傷つき、一か所に固まるように誘導されつつ悲鳴をあげるやつらに、それを目にするような余裕はなかった。カリエンの周囲に電荷がまとわりつき、メイジの髪を逆立てた。電光が髪の毛の周囲に踊り、フェイドとの連絡の強さを示すように明るく輝いた。 

 イセヤはリーヴァスの手綱を緩めた。グリフォンは、すぐ後に襲う嵐の中を自力で切り抜けなければならない。乗騎の頸を叩いてそう合図を送ると、イセヤは自分自身もフェイドとの連絡を探り、呪文を形作り始めた。
 
 彼女の周囲の冬の空気がさらに冷気を帯びた。アンダーフェルズのさらさらした雪片が空中で結晶になり、突然あまりに脆くなりはじめたため、彼女の騎乗用の手袋の甲の部分をちっちゃな鐘のような音を立てながら流れていった。周囲でつむじを描く風が強まり、リーヴァスの身体を左右に揺らした。グリフォンにはお馴染みのことで、できる限り態勢を維持していたが、これから一番危険な場面がやってくることをイセヤは知っていた。

 彼女は、自分のほとんど真下にいるダークスポーンに呪文を放った。 唸り声を立てる吹雪が群れを切り裂く。その超自然の冷気の第一波がやつらを襲い、傷を負ったハーロックどもの血が凍りついて毛羽立った黒い氷となり、ジェンロックどもの関節を樹液で一杯の樹木のように破裂させた丁度そのとき、カリエンが冬の嵐の中に自分の呪文を放り込んだ。

 稲妻が回転花火のようにダークスポーンの回りに飛びかい、地面と平行に走る光り輝く白熱の電弧がやつらを刈り取っていく。一ダースものハーロックが電撃で麻痺し、その矢まみれの身体が吹きすさぶ雪の中で不自然な弓なりの形で持ち上がる姿を、イセヤは垣間見た。衝撃から解放されると、やつらは地面に倒れる間もなく死んでいた。

 リーヴァスはその上を飛び過ぎ、乗り手たちの呪文が巻き起こした乱気流を利用して、どんどん上昇し、眼下の戦場を遠い彼方に置き去りにした。イセヤは呼吸を取り戻し、凍り付いたような感じのする指をほぐして生気を取り戻した。カリエンはフェイドとの連絡を絶っており、身体の回りに渦巻いていたオーラは消えていた。

 完全な作戦だった。乗り手は誰一人損なわれておらず、重大な怪我を負った者もいないだろう。彼女たちの攻撃は、ダークスポーンの軍勢からかなりの部分をえぐり取り、また街の反対側のどこかでは、トラデン王の兵たちが、ホスバーグの民が感謝とともに受け取ることになる、塩、乾き肉、大麦などの新たな補給を手に入れていることだろう。 

 彼女たちの勝利は圧倒的だった。そして、それにはまったく何の意味もなかった。

 何週間か経てば、あるいは何日かの間にも、彼女たちが倒したダークスポーン一匹に対し、二匹かそれ以上の新手がやってくる。アーチディーモンの軍勢は無限なのだ。ウォーデンの「集めて殺す」戦術は、これまで数えきれないくらい試されたため完成の域にあるが、依然として、まとまった数のダークスポーンを死地に誘き出すことが可能で、それというのもダークスポーンは以前の失敗から何も学ばないからなのだが、学ぶ必要すらないのだった。やつらの兵力の補充は無尽蔵だった。

*** 

 戦闘シーンは楽しいんだけどなあ・・・。すっとばすつもりが、結構まじめにやっちゃった。
 ま、戦争シーンは、大抵愉しめますよね。きったはったの戦いは楽しい。おそらく本当にやるともっと楽しい。だからこそ、おっかないんだけどね。

 ホスバーグはグリフォンの空中補給で生き延びていた。まるでインパールの戦いで旧大日本帝国陸軍の包囲を受けた英軍のようですが・・・。ダークスポーンが日本軍? まあ、指揮官についてはダークスポーンとほとんど代わりなかっただろう。 

 「集めて殺す」、"gather-and-destroy"は造語ですね。"search-and-rescue"、"search-and-destroy"などからの連想でしょうか。
 ゴキブリホイホイとはまたちょっと違う手法で・・・。ん、バルサン?

 

 そうそう、「栄光の勝利、ただし何の意味もない」で思い出したのが、映画"The Longest Day"(1962)のこのシーン(下にYouTubeのリンク)。英コモンウェルス軍が上陸したばかりのノルマンディ、ゴールド・ジュノー・ビーチに、ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)のフォッケウルフ(んー、映画ではメッサーシュミットぽく見えますが、実際にはFW190のはず)がたった二機だけで機銃掃射を敢行するシーンでした。ちなみにリードは百機撃墜のエース、ヨーゼフ・プリラー中佐。

「(僚機のヴォダルチックに)バーグスドルフにとっとと帰ろうぜ、ルフトヴァッフェに栄光あれ! あっはっはっ・・・、あぁあ」

https://www.youtube.com/watch?v=F6IHANM9_k0

 本当はこの前段の、出撃を命じられる場面からあるといいんだけどね。 

 ・・・。あったあった(笑)。あるもんだなあ。こちらが「完全版」ですかね。

https://www.youtube.com/watch?v=cbxbEv2xMnU

 三つのシーンのつぎはぎですが。

 出世して司令官になったかつての同僚へのプリラーの罵詈雑言もすごいが、彼の警告を切り捨てずに、真面目に受け取る上司も面白いですね。
 戦闘機たった二機しか配備されていない「航空隊」で出撃しろと命じられた場面。

「礼を言うぜ、ハンス、もうこれっきりだからな! じゃあな!」 (電話を切る)
「おちおち寝ていられやしませんぜ」
「どうせすぐにぐっすり眠れるぜ、侵攻が始まったんだ。ノルマンディー。俺たちふたりで飛ぶ。他には誰もいない。生きて帰ってこれるとは思えん」

Felisse フェリス

Jorak ジョラク

King Traden トラデン王

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