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2014年10月12日 (日)

Last Flight 9(2)

 ここは、短くまとめます。

***

 エルフは凍り付かずにはいられなかった。ホスバーグのサークルにおける長い暮らしで染みついた反応だった。何とか努力して落ち着き、強張った顔を取り繕い、年上の女性に振り向き、返事をした。
 女は、ここにきて話をしないか、と告げた。

 ヴァルヤは再び身体を固くした。ここはサークルではなくワイズホプトなのだから、テンプラーに従う必要はない。だが身についた習慣から抜け出すのは容易ではなかった。

 理由を問うヴァルヤに、女は、ただ話すだけだ、と答えた。レイマスの長く薄い顔に浮かんだ笑顔もぎこちなく、いつも熟考に沈んでいることを示す皺になっていた。
 だが要求はぎこちなさこそあれ真っ当なもののようであったので、ヴァルヤは机を挟んだ向かい側の椅子に渋々近づいていった。できるだけ距離を置くため斜め向かいに腰を下ろす。

 ヴァルヤはテンプラーたちを信用していない、そう言うとレイマスは、目の前の閉じられた書物の上で両手を組み合わせた。男のように大きな手は、太い指とたこのできた掌をしている。甲には古傷が残る、兵士の、テンプラーの手だ。メイジたちは誰も自分たちテンプラーを信用していないのはわかるが、ヴァルヤほど疑い深い者はいない、と女は告げた。

 したいのはその話か、とヴァルヤが問うと、そのとおりで、疑う必要はない、と答えたレイマスの瞳には、古くて長く秘められた苦痛が見え隠れした。ここにはメイジを狩りに来たのではない。全てのテンプラーが、メイジを踏みつけにして喜ぶわけではない。
 そうしないで他に何をするのだ、とヴァルヤは苛立ちを示しながら言った。恐れ戦き、落胆したメイジたちで一杯のタワーで過ごす理由が他にあるのか?

 少なくとも自分にはある、テンプラーの女は細い茶色っぽい黒髪を耳の後ろに撫でつけ、視線を閉じたままの書物に落とした。ヴァルヤはそれが「訓戒とメイカーへの賛歌」という祈りの書であることに気が付いた。背表紙は固く、まだ多くの者に読まれていないことを物語っている。自分はメイジたちを守るために騎士団に入った、と女が言った。 
 崇高な考えだが、その理由を問うことを期待しているのか、とヴァルヤが尋ねる。どちらでもよい、と言って女は話しはじめた。

 レイマスの父はメイジだった。さして強力でもなく、訓練を受けたこともなく、その天賦の才をできるだけ隠していた。自分の子供たちにも話さなかった。妻にすら話さなかったのかもしれないが、身の回りで不思議なことが色々起きたから、レイマスの母親は知っていたのかもしれない。鶏の卵が一晩で凍り付く、焚火が青や緑色の炎をあげる、小さな声がするなど。よそ者に告げてはいけない類の話であることはわかっていた。村人の誰かにばれていたとしても、彼らもその秘密を守り続けた。 

 ヴァルヤは、この話がどこに向かうのか気が付き、それを聞きたくもないと思って苛立っていた。サークル・メイジは誰であれ、似たような退屈な警句めいた話を聞かされる。不慣れなメイジがディーモンに唆され、アボミネーションになる話。レイマスの父がそうなったとして、それは確かに悲惨だが、今更聞きたい教訓ではなかった。
 だが、話はまったく違った。 

 レイマスの父についての話を誰かが漏らし、テンプラーがやってきた。誰が漏らしたか、なぜ知ったかはわからず仕舞いだったが、それは問題ではない。レイマスの父は強い男ではなく、さしたる勇気もなかった。テンプラーがやってくると知ったとき、彼は着ていた服のポケットに石を詰め、湖の中に入って行った。

 レイマスはしばらく黙り込んだ。両方の親指を互いにぐるぐる回し、握りこぶしは感情を押し殺すかのように白くなっていた。それから長いため息をつくと、両手を広げて書物の表紙に乗せ、指の間からのぞく表題を見つめていた。

 彼女はそれからしばらく怒り続けた。テンプラーを憎み続けた。彼らは、まるで疫病患者を隠しているのを疑っているかのように冷たい高慢さで母親を問い詰め、自分を含めた子供たちには、魔法の素養を隠しているのではないかと問い質した。彼女の怒りと憎しみは数年にわたって持続し、自分に対峙する者とは誰とでも戦い、怒りのやり場を見出していた。 

 どうして、なぜ変わったのかわからないが、ある日彼女は、父のような目に会う者を出さないようにするためには、内側から変えなければならないことに気が付いた。聖職につくための敬虔さは有していなかった。メイカーのことなどこれっぽっちも気にかけてはいなかった。だが、メイジの安全を守ると信じられていたのはテンプラーであった。その責務を正しく果たすのなら。そしてレイマスはその通り果たすつもりだった。

 だから脱走したのか、とヴァルヤが尋ねた。
 だから脱走した。レイマスがとうとうヴァルヤの顔を見た。年長の女の瞳は輝いており、もしかしたら涙で潤んでいたのかもしれないが、暗い図書館の中では何とも言えなかった。 
 騎士団がその責務を果たさなくなったため。

「どうしてそんな話を私にするの? 何が望みなの? 騎士団への赦罪? 父親への赦罪?」
 レイマスはぎこちなく笑った。彼女は袖の先で瞳に触れ、そこにあるのかもしれず、ないのかもしれないものを拭い、いつものふさぎ込んだ冷静さの壁の中に戻って行った。「赦罪をくれるというなら断りはしない、でもそれを求めるのが意図ではない」
「では、何?」
「テンプラー騎士団は本来の姿ではなくなってしまった。正しい道に戻すこともできると信じているけど、でも・・・、今、私の手ではできない」 レイマスは訓戒の本を脇によけ、二人の間の卓上を開けた。「でも、グレイ・ウォーデンは依然として伝説の英雄のままでいる。私たちはふたりともここにいて、入団を待っている。あなたには、ここに一緒に座って私の話を聞いて欲しかったのだし、怒りや恐れを抱く必要がないことを教えてあげたかった。私たち皆がここにいるのは、真っ二つになってしまった外の世界から逃れるため。自分たちを裏切ることのない大義を、信頼できる同志を見つけるため。私が話したかったのはそういうこと」

「わかったわ」とヴァルヤが言って立ち上がった。彼女は椅子を机の下に戻した。「話は聞いた」
「でも、あなたに通じたのかしら?」 レイマスが尋ねた。
 ヴァルヤは返事をしなかった。彼女はガラヘルの記念碑のある書庫に戻ると、読みかけの日記を手に取り、テンプラーのことは、読まれもしない祈りの書物とともに置き去りにした。

***

 うむむ。この場面については、次の一点を除いて「ノー・コメント」にしときましょう。 

「訓戒とメイカーへの賛歌」は、"Homilies and Hymms to the Maker"。
 女テンプラーは、なに故にその書物を閉じたまま(読まずに)目の前に置いているのか。
 ここら辺、クリスチャニティの造詣が深くないと、解釈をしくじりそうで怖いですね。やめとこう。

 

 

 

 

 

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