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2014年10月 8日 (水)

Last Flight 8(2)

 前回の短さはさすがにまずかろう、とは思いますが、あまりに女性ホルモン満載なくだり、ほんとに気力が途絶えた。
 気を取り直して書き足そうかと思いましたが、やっぱ、「ありのままで」? ぶっ。

*** 

 ガラヘルの金槌の腕は最悪だった。慎重さと忍耐が求められる大工仕事は、エルフの射手にとって呪いであった。射つ、口説く、下ネタを話す以外、彼は一切興味がないのだ、とアマディスが文句を言う。

 そのマーチャーの女にしても大差なかった。ただし彼女は、自分には不向きな町人の仕事に手を出さないだけの分別がある、と言い募った。代わりに、フリー・マーチズの貴族社会の様々な友人たちや親戚たち、同業の傭兵隊の馴染みの隊長たち、その他戦争の際に有益となる知り合いたちに手紙を書いた。それらの手紙の配達をガラヘルに託すこともしばしばで、おかげで彼はグリフォンに乗って、朝から晩までワイコムを留守にすることが多かった。

 とうとうある朝、アマディスが手紙の詰まった袋と宛先の一覧をガラヘルに渡したとき、見かねたイセヤが、兄に遣い走りをさせていたら、ウォーデン・コマンダーが怒り出すのではないか、と彼女に問い質した。

 アマディスは驚いたように黒い瞳を見開いて、そんなはずがないと答え、黒髪を振りながら笑い出した。魔法も鋸も使えない彼がアラヴェルを扱ったら、漁船を陸の上で沈没させてしまうだろう。だが、おかしな見かけのグリフォンに乗れば、彼はセダスの隅々まで驚くべき速さで往復できるし、その魅力を振りまいて、貴族の男女やこわもての殺し屋たちを自分たちの目的に従わせることができる。ルビー・ドレイクの姫君隊長の手紙を、グリフォンに跨ったグレイ・ウォーデンから受け取る意味は軽く見るべきではない。それは孫に語り継ぐ類の話だ。授かるほど長生きすればだが。 友人に自慢し、部下を敬服させる話だ。敬服しない者たちには、力づくでも従わせるという警告にもなる。どのみち、相手にとって抗うのはとても難しい。

 つまり政治か、とイセヤが不快を顕わにして言った。それが、アマディスがこの書類机つきの個室を与えられている理由でもあり、ワイコムの鵞鳥の羽根が矢羽にするため皆むしられたのに、贅沢な羽根のペンを与えられている理由だ。いくらスタークヘイヴンの支配階級相手にしても、頑として実利的なセナステが似合わない厚遇をするものだと思っていたが、実は功利的な理由だったのだ。
 

 政治だ、アマディスが人好きのする笑顔で言い返す。イセヤもそのゲームには慣れたほうがいい。戦争は剣を用いた政治であって、自分たちはそれに勝つもりなのだから。
 自分の得手は魔法だ、とイセヤがつぶやき、手紙を書いているヒューマンの女を置いて立ち去った。 

 だが、それらの手紙は役に立った。毎日、ガラヘルは支援の約束を取り付けて戻って来た。プリンス・ヴェイルは、ワイコムからの難民のスタークヘイヴンへの避難を快諾した。アマディスが従兄弟の約束を簡単に信じるなと忠告しても、勝利の感覚を味あわせることに違いはなかった。もちろん実際に勝利を手にするには、ワイコムの民を手遅れにならないうちに連れて行かなければならない。 

 時間はなくなっていた。五体満足な男女は皆駆り出され、昼夜兼行でアラヴェルの建造に励んだが、ブライトが到達する前に三十台よりも多く完成させることは困難に思われた。イセヤは、ダークスポーンの襲撃で街が滅びるのを見なくて済むように、自分が命令どおりに脱出第一陣の護衛につけることを願っていた。

 それでも街の民は憑かれたように働き、イセヤが「硝子の林檎」でアラヴェルの考えを話してから一週間後には、脱出第一陣分のアラヴェルを完成させていた。
 十八台が二列に並び、引き具で繋がれた。十九台目は、イセヤが行った着陸時の衝突実験に耐えられなかった。

 フリー・マーチズを速やかに進むとは到底思えない脆そうな乗り物に、街の民二百五十人ばかりが詰め込まれ、食糧、衣服、そして貴重な家宝が、目を見開いた子供たちとその親たち、勇敢な顔つきで抱き合っている彼らの間の薄い木でできた船殻に積まれている。場所を節約するため、ほとんどの者が一張羅を身に着けており、彼らの晴れ着姿が場の空気に珍妙な彩りを与えていた。
 鶏と鵞鳥は、船側に結び付けられた籠の中で不機嫌な鳴き声をあげ、時折り舞い散るその羽根が、超自然的な雰囲気に演出を加える。 

 クロッキーテイルとリーヴァスが各列の先頭に位置し、それぞれ九台のアラヴェルを牽引することになる。ウォーデン・コマンダー・セナステが新調した引き具の、つめもの入りの革帯にいくつも並ぶ輝く銀のメダリオンが、朝もやの光の中で宝石のように輝いていた。グリフォンたちがどれだけ強力でも、これだけのとてつもない重量を空中に持ち上げることができるとは思えず、そして魔法を用いなければ、そのとおり不可能だった。 

 魔法をもってしても無理かもしれない。イセヤは、その考えを無理やり脇に押しやった。ローブの袖を手首と肘のところで固く結び、髪留めを直し、別の列の先頭に立つウォーデンに目をやる。ガラヘルはその男の隣に座り、グリフォンを安心させるように何かつぶやいている。クロッキーテイルを操るのは彼だが、アラヴェルを宙に浮かべるのは同乗するメイジの仕事だ。
 一方イセヤは、何もかも自分ですることになるので、もう一人分の乗客の席を生み出すことができる。

 彼女は深呼吸して、別のグリフォンの乗り手に、準備はいいか、と尋ねた。 
 準備よし。ガラヘルの返答は、イセヤが感じているよりも上機嫌なように聞こえた。別のメイジが厳粛に復唱する。

 イセヤは左手でリーヴァスの手綱を絡め取り、両手で杖を固く握った。フェイドとの繋がりを開くと、杖を通じて別世界のエナジーが身体に流れ込むのを感じた。スピリットたちとディーモンたちのからかうような囁きが彼女の思考の縁に触れ、彼女の魂を通して魔法の爪弾きがこだました。

 彼女はそれらの囁きを押し退け、魔法の力を集めた。何度も練習したように、イセヤはそれを柔らかい、底の広い円錐に変えた。枕のような形で、底のほうは雲のような緩衝材になるよう散らされている。形の定まらないその平らな底が、船列全体を支え、呪文を浸透させるように十分に広くなっており、アラヴェルの隊列がバラバラになることを防いでくれる。
 優しく、彼女はリーヴァスに告げた。飛んで。自分の背骨を折ることなく、不可能と思われる荷重を引きあげることができるのだ、イセヤを信じたグリフォンが黒い翼を羽ばたくと、エルフは、力の円錐を地面に押し付けた。 

 グリフォンの背後ではアラヴェルの列が、まるで木と綱と金属でできた芋虫のようにくねりながら持ち上がった。息を呑む音と悲鳴がイセヤの後方からあがり、すぐ後にはクロッキーテイルも彼女たちの隣で二列目を浮かび上がらせていた。

 アラヴェルを結ぶ綱と鎖が悲鳴をあげるが、メイジの呪文によってそれらも持ち上がり、持ちこたえた。船団は地面から二十フィート上空で安定する。なんの荷重もかかっていないグリフォンたちが滑らかに前方に進み出し、それぞれ宙に浮いた漁船の長い列と、活気づき、また恐れおののく乗客たちを引っ張りはじめた。

 二頭とも、さらにはイセヤも、それほど低く飛ぶことには不慣れであった。リーヴァスの両耳はぴったりと頭蓋に張りつき、荒い鼻息は木々の先端の近くを飛ぶ緊張を示している。イセヤは、もっと高く飛ばせてやりたかったが、力の円錐が支えるためにはこれが精一杯だった。高く飛べば魔法がしくじり、アラヴェルは地面に墜落してしまう。
 信じて。彼女はグリフォンに懇願した。
 リーヴァスに聞こえたかどうかはわからなかった。片方の黒い耳が持ち上がったが、風のせいかもしれない。いずれにしろ、グリフォンはまっすぐ水平に飛び、高木を避ける際には、上昇するかわりに迂回した。 

 彼女たちは、フリー・マーチズの地表をなぞるように、岩肌や、低木、そこにいるはずの家畜がことごとく屠られた牧草地の上を飛んだ。ちらりと見える小川や渓流の銀色の輝きも、イセヤがほとんどそれと気づく前に、後ろに流れ去って行く。
 リーヴァスが全速で飛んでいるのではないことはわかった。長旅に備えて力を温存しているのかもしれなかった。だがそれほど低空を飛んでいれば、地形はいつもより随分早く、視界から流れ去っていく。

 三十分ほどすると、後方のワイコムは影も形も見えなくなった。あたりにはミナンター河の支流がいくつか流れており、船団が上空を通過するときには、イセヤの力の円錐のせいで水面がへこんで見えた。水上で魔法を維持するには用心がいる。予期せぬ渦や逆流のためアラヴェルを安定させるのが難しくなるのだ。そのためエルフはリーヴァスに、支流は素早く通過させ、その後は川沿いを進ませるようにした。

 北の方、アンティヴァン・シティーがあったところ、まだあるかもしれないところには、地平線にブライトの汚れた黒雲が見えた。慈悲深いことに、ほとんどは木々に隠れて見えない。だが、時折木々がまばらになるところでは、爆発の周縁に沸き立つように膨張する雲のため紫色になった空、苦悶を電撃で示すような雲間を伝う音のない稲妻が、イセヤにも見えた。 
 陽の光は決してこぼれず、雨も決して降らない。地平線には、嵐の影だけが広がっていた。 

 それさえも滅多に見えず、さほど遠くない北方にあるはずのアンスバーグについては何も見えなかった。低空を飛んでいるため、視界には木々か丘しかはいらない。放棄された農場の上を飛ぶときには痩せた犬が物欲しげに吠え、まだ住民のいる農家では、木を打ち付けられた窓の中から疑わし気な目が見上げていた。

 陽は正午までゆっくりと登り、それから日没に向かって容赦なく傾いていった。アラヴェルの船団は、グリフォンたちとメイジたちに小休止を与えるため、また乗客たちに食事と休息の機会を与えるため、二回停止した。だが、この旅の恐ろしさと切迫さを知る乗客たちの中で、船から降りて強張った身体を伸ばそうとする者はほとんどいなかった。誰しもが、スタークヘイヴンの城壁に守られる安全を望んでいた。 

 そして夕焼けで空が赤くなる頃、とうとうその堂々たる城壁が見えて来た。高い灰色の石壁が同心円状に囲む湾曲した山が夕日に映える。北の方ではミナンター河が街の水門から流れ込み、海鳴りに似た低い音を立て続けていた。街自体は、広い大通りが取り巻く緑の丘の上にそびえる大理石の宮殿の威容が目につく他、近づく船団からはその城壁しか見えなかった。

 城壁の塔に掲げられた槍旗には、赤地に三匹の黒い魚が雪のように白い杯を取り囲む様子が描かれていた。少なくともイセヤには魚に見えたが、沢山のとげと渦巻き模様のせいで良くわからなかった。それらが何であれ、赤い陣羽織と鋼鉄の鎖帷子を纏った兵たちによって厳重に守られていた。 

 プレートメイルに身を包み、金の胸飾りをつけた将校らしき兵士のひとりが、近づくグレイ・ウォーデンたちに片方の小手を挙げ、歓迎の挨拶を叫んだ。
 ガラヘルが感謝の言葉を叫ぶ。他の者たち同様に疲弊しているはずなのに、その声は至って陽気だった。彼がクロッキーテイルを降下させると、イセヤともうひとりのメイジが、高度を下げるグリフォンに続いて丁寧にアラヴェルを降下させていく。着地には慎重を期して五分も時間をかけた。空中アラヴェルが有用なことはわかったので、今度はどの一台も損なわないことが重要であった。
 だが着地は円滑にいった。木の軋む音と、船側の金網が鳴る音を立てながら、船団はミナンターの河岸に底を着けた。ワイコムの難民たちは、不安げな様子で船を降りはじめた。

 空中での長旅を終え、乗客たちが平衡感覚を取り戻そうとしている最中に、スタークヘイヴンの城門が開いた。食糧と水、そして葡萄酒を手にした人々が駆け出してくる。ワイコムの英雄たち、万歳。ひとりが叫ぶと、群衆がすぐに続いた。グレイ・ウォーデン、グレイ・ウォーデン、ワイコムの英雄たち! 

 いつまでそう呼ばれるのかしら、とイセヤはため息とともにつぶやいた。スタークヘイヴンはダークスポーンに一矢報いた勝利に沸き立っている。やつらの群れから、たったこれだけのワイコムの民を救い出したというささやかな勝利。だが彼女は、あと数百もの難民が続くことに気づいたとき、すでに緊迫した状態に置かれた街がその熱気を維持できるかどうか疑わしいと思っていた。 

 その疑いを共有している者もいた。自分たちに居場所はあるのか、年配で丸顔の女性が、責めるような震える声でイセヤにそう尋ねた。彼女は明るい青色の孔雀と真紅の薔薇が描かれた派手な絹のスカーフを肩に纏っている。おそらく彼女にとって取って置きの品物で、手織りの地味な衣服との間には強烈な落差があった。彼女の口元の皺は、衛兵を見上げるとき震えていた。籠城の最中に難民にまわす余分な食糧などあるはずがない。
 余分な兵なら歓迎される。エルフが答えた。彼女が正直に告げられる希望はそれだけだった。苦難のとき、手助けは常に歓迎される。

 女性はスカーフを留めている木彫りのブローチを握りしめ、自分は老婆で兵士ではない、と言った。自分は戦えない。
 今はブライトなのだから。イセヤの答えには冷酷さが混じり、自分でもそれに気が付き、老女がたじろぐのもわかった。だが過度の疲労のせいで、彼女は我慢がきかなかった。老婆でも戦えるし、戦わなければならない。アラヴェルに乗り込んだときにそう心に決めたはずだ。ワイコムの皆を逃がすことはできない。船も、グリフォンも、メイジも足りない。老婆の席に座るはずだった誰かが代わりに死ぬ。だから戦わなければならない。そうでなければ、自分の努力を徒労に終らせ、代わりに死ぬ誰かの勇気も無駄にした老婆のはらわたを自分が抜いてみせる。
 女性の口が驚愕のため大きく開いた。意味不明なことを口籠り、踵を返すと、荷降ろしをしている群衆の中に逃げ込み、あっという間に姿を消した。

 ガラヘルがクロッキーテイルの引き具を外し、解放されたことを伝えるためグリフォンの横腹を叩いて、それからイセヤのほうに近づいてきた。「さっきのは・・・、兵を鼓舞するには随分変わったやり方だったな」
「それはあなたの仕事でしょう」 イセヤが兄に唸った。「あなたこそカリスマのある指揮官でしょう。ここまで皆を連れてくるまではやったけど、後は知らないわ」
「真実の欠片もないな」とガラヘルが陽気に言った。「だが、まあいい。疲れてるんだろう。来なよ、プリンス・ヴェイルの歓迎の宴とやらを楽しもうぜ。一晩しかないんだから」
「明日にはワイコムに戻らなければならないことなら、わかってるわ」とイセヤがうんざりして言った。ダークスポーンがワイコムの城門に迫る前に、できるだけ数多く往復する手はずになっていた。一日中船団を支え、導いた後の疲労困憊を経験する前であれば、それもまずまず良さそうな考えに思えたものだった。

「いや。カヴァラスとスタークヘイヴンのウォーデンたち三人がワイコムまでアラヴェルを連れ帰る。彼らが到着したら、ウォーデン・コマンダー・セナステはまた別の連中に交替させる。そうやってできる限りアラヴェルを往復させる。だがお前とおれはワイコムには戻らないし、スタークヘイヴンに留まりもしない。アンダーフェルズで任務がある、忘れちゃいないだろうけど。だから今夜は葡萄酒でも馳走になって、皆の歓待を受けようじゃないか。一晩だけ英雄を演じればいいさ。朝になれば、おれたちはまた一介のグレイ・ウォーデンに戻るんだからな」

***

 この章、最後までずっと女性ホルモン満載だった・・・。ちょっと勘弁して。
 ん、老婆にブチ切れたところ?
 野郎はおばあちゃんにはブチ切れません。切れてもあんな仕打ちはしない。
 まったくもって女性視点ではないですか。

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