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2014年10月15日 (水)

Last Flight 12(1)

 さっさと行きましょうね。

***   

 くだんのディープロードの入り口は、丘の間にできた醜い斧傷のような不規則な裂け目だった。大昔の地震で口を開けた裂け目は、何十年も、あるいは何世紀もの間、人知れずそこにあったのだろうが、ブライトが静けさを破り、まるで満潮の波のように、その深淵からダークスポーンを噴き出した。 

 だが日中は、丘は静かだった。アンダーフェルズはいつであっても過酷な土地だが、ブライトは最も強靭な生き物さえ打ちのめしていた。乾いた植物や死んだ草が風に揺れ、立ち枯れた木には一羽のスズメさえいない。ブライトの超自然の嵐で朝は翳っていたが、その弱々しい陽光でさえ、ダークスポーンを地下に留めるに足りているようだった。

 小編隊の先頭を飛ぶイセヤは、リーヴァスに着地するように、そして仲間には後に続くように合図した。黒いグリフォンは小さく正確な螺旋を描いて裂け目付近の丘に降り立つ。すぐに続いて、他のグリフォンたちも周囲に着地した。 
 鞍から降りると、イセヤは裂け目に近づいた。地面は乾いて脆く、彼女が踏み砕いた石が深みの中に落ちていく。奥底から、ダークスポーンの汚染の冷たい異臭が漂ってきた。

 裂け目の内側は、長く洗わずにあった茶器のように奇妙に汚れている。その染みのせいで、深さを計るのも、壁がどのように連なっているのかを知るのも困難だった。イセヤが杖の先に魔法の光を灯らせても何も見えなかった。 

 崩落させるのはとても容易く見えたし、それこそ重要なことだった。彼女は他のメイジたち、カリエン、ダナロ、そして奇妙な、美しい、笑わないリズメの三人に集まるよう合図した。その間、ジョラクとフェリスは弓を構えて警戒し、ドワーフの兄弟、タンクとマンクは水筒に入れた酒を分け合って騒々しく口の中を洗っていた。入り口の爆破をもう少し面白がるとイセヤが思っていたドワーフたちはうがいに没頭しており、その熱心さと、フェリスの呆れたような顔つきから、道中で射手の予想どおりのことが起きたことがうかがえた。イセヤは、それが街の頭上でなかったことを祈った。
 メイジたちが裂けた丘の麓に集まると、どうやって封鎖するつもりか、とリズメが尋ねた。

 リズメはメイジ三人の中でもっとも背が高く、意図的に落ち着かなげな様子をしていた。鬘と顔の塗料、その他の化粧によって、見かけは仰々しく非人間的だ。彼女はときには男である日もあり、また女の日もあった。何年も戦いをともにしながら、イセヤには実際どちらなのか、あるいは本当にどちらかであるのかさえ、見当がつかないでいた。このメイジはまるで衣裳を変えるかのように性別を自由に変えることができ、あわせて雰囲気まで造り変えることができた。彼女にとって、男か女かは単に装いの問題であって、自己認識ではなかった。噂では、サークル・オヴ・メジャイに入る前からもその後も、ずっと深刻な虐待に曝されてきたのだといい、ウォーデンに入団してからの彼女の不可思議な外見は、若い時代に自己の認識を保持しようと努力してきた名残りだった。抹消されることを免れた彼女は、自らに抹消できない痕跡を残したのだ。

 今日のリズメは女性の格好で、髪は古い漁師網のもつれた塊り、潮でこわばり、陽差しで漂白された縄だった。瞳は薄い、脱色された青っぽい緑色で、網にあしらわれたくぐもったガラスの数珠玉と同じ色合いをしている。乳白色の魚の鱗をどこかで見つけたらしく、それらを頬と眉毛に糊付けして、夢の中の生き物である妖精フェイの格好をした血の気のない肌を隠していた。

 だが彼女の熾烈な瞳には、夢見がちなところはまるでない。リズメはダークスポーンを嫌悪していた。ブライトと七年間戦ってきたイセヤでさえ、他の者で見かけたことがないくらいの激しさだった。彼女の嫌悪は、リーヴァスがダークスポーンを嫌悪するのと同じであった。猛禽の心の、全身全霊をかけた闇雲な獰猛さ。 

 地震が一番簡単だ、とイセヤが言った。丘を揺さぶれば、裂け目の上に崩れて落ちるだろう。
 あるいは、この穴が見かけよりもずっと大きければ、裂け目の中まで崩れ落ちてしまうかもしれない。そう言ったリズメが身を乗り出して穴の中を見つめる。頬の鱗がフェイドの中で見る涙のように輝いた。
 彼女は突然身体を起こした。今はよそう。疑う暇はない。さっさと崩してしまおう。やつらが来る。
 一体何を、と言いかけたイセヤは、ハーロックの足音と唸り声の響きが近づいてくるのを聴いた。ダークスポーンが急速に近づいてくる。地下の壁の反響から読み取るのは難しいが、群れは三十匹から百匹の間の数のハーロックとジェンロックで、囁くような耳を切り裂くシュライクの叫びが混じっているのは、あの地獄の暗殺者たちも中に含まれていることを意味していた。彼女は本能的に後ずさりした。

 やってしまって、と彼女は言った。
 鱗を付けたメイジが頷き、杖を掲げた。原初の力を駆使して地響きを起こせるのはメイジたちの中で彼女しかいなかったが、他の者たちもそれぞれ破壊の術を繰り出した。イセヤはフェイドのエナジーを念動力に変えてリズメのもたらす破壊力を増幅し、他のメイジたちも補完的な魔法を操った。

 リズメの瞳が、稲妻の電光に照らされた夜空のように白くなった。足元の丘の斜面は揺らぎ、裂け目からはものすごい早さで亀裂が走った。ダークスポーンの見開かれた瞳に輝く陽光を一瞬認めたイセヤは、そこに自らの呪文の力を投げつけ、その衝撃の角度を別のメイジが巻き起こした地震の響きとぶつかるように仕向けた。亀裂は急激に広く長くなり、足元の地面は気味が悪いほど揺らいだ。塵がうねるように舞い上がり、空中はざらざらした砂まみれになった。

 イセヤは後ずさりし、どうしようもないほどくしゃみを繰り返し、瞳に刺さる砂を拭い去ろうとしていた。もやを通して、彼女は丘の内側から不気味な赤い光が、まるで火山の熱い喉が咳き込んだかのように発せられるのを垣間見た。それは地下の隧道のどこかから登ってきたもので、仲間のメイジの呪文によるものではない。

 エミッサリー・・・。塵に向かって叫ぼうとした彼女の言葉は、丘の中腹から噴き上がる炎と岩のため途中で途切れた。熱せられた石の欠片がウォーデンたちの回りで弾け飛び、悪態と悲鳴が一斉にあがる。
 視界を奪った岩と煙の噴出が地上に降り注いでくるその前に、地面は彼らの足元から崩れていく。リズメの推測は正確だった。ディープロードに走る亀裂は、仲間の誰もが思っていたよりも大きかったため、丘はその上にではなく、その中に崩れ落ちていった。

 そしてそこには、ダークスポーンどもが待ち構えていた。

*** 

 続くっ。

 原初の力、the primal forces、DAゲームに登場する、魔法の一派(スクール)。

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