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2014年10月12日 (日)

Last Flight 10(2)

 あちらエボラで大騒ぎなのに、うちわだのスカーフだの、島国のバカは何をやってるのか。

***

 ブライトはアーチディーモンが打倒されない限り続き、ダークスポーンは際限なくやってくることは皆知っていた。
 でも、ここに辿りつけなければ。イセヤの呟きをカリエンが聞きとがめた。イセヤが鞍の上で肩越しに彼が見えるだけ振り向くと、彼の髪はぼさぼさの普通の状態に戻っていた。ホスバーグの頼りない灯りでは濃い茶色ではなく黒に見える。灰色の瞳も同じようにあいまいで、時折閃めく以外は眼窩の底で深い闇を湛えるのみであった。

 今日の勝利は何の意味もない。何千のダークスポーンを殺しても、何も変わらない。アーチディーモンを倒すまで、必ず新手がやってくる。だがその補充を断つことができれば。ホスバーグにやってくるディープロードを遮断できれば。街の周囲のダークスポーンを殺すことに意味が生まれる。そして、籠城を解くことができる。 

 カリエンは、疑わしそうに首を振った。ディープロードには数えきれない入り口がある。ドワーフが建造したもの以外にも、地震や腐蝕による地割れや裂け目もあり、ダークスポーン自身が掘っている通路もあるだろう。どこからやって来るのか誰も知らず、仮に埋めたとしても、その上に別の抜け道を作るだけだ。 

 誰もがそう言うが、誰も試したことはない、とイセヤが反駁した。やる前から諦めるのではなく、少なくとも試すべきだ。ダークスポーンが地下に戻る跡を付ければよい。
 どんな追跡者もやりたがらない任務だ、とカリエンが応じる。一匹のハーロックを群れから見分けることができたとしても、そのハーロックがディープロードに戻るかどうかわからない。灼熱の夏ならまだしも、冬のさなかに戻りはしないし、追跡者は八つ裂きにされるだけだろう。

 追跡者などを使う気はない。イセヤが言った。代わりにカリエンを使うつもりだ。

 おかしなことを言う、カリエンの唇の隅が、諧謔の全く混じらない笑顔をただ模倣するかのように歪んだ。なぜ自分が役に立つ?
 カリエンがブラッド・メイジだからだ。イセヤは無意識に声を落とした。ふたりは空中にいて、冬の風が発した声をすぐにかき消してしまったのに、カリエンはまだその言葉の形を見つめていた。ホスバーグの灯りからも遠く、ブライトの永劫の嵐の雲を通す月光は微かで弱かったが、そのほとんど完全な闇の中でも、イセヤには彼の顔から血の気が引く様子がわかった。

 危険な告発だった。ブラッド・マジック、邪道の魔術は古代からセダス全土でご法度であり、手掛ける者には死罪が、それも速やかとは限らない形の死がもたらされる。
 だが、イセヤはカリエンの隣で何年も戦い、お互いに何度も命を救い合ってきた。ブライトの厳しい試練がふたりの信頼を築き、彼女に彼の秘密を暴くつもりがあれば、ずっと前から何度もそうする機会があったことを、彼は知っているはずだった。

 どうしてわかった、と静かに尋ねる彼の声は、危うく風でかき消されるところだった。
 自らもメイジであるイセヤには、フェイドと繋がらずに繰り出す魔法がわかる。彼が実際に用いるところを彼女が目にしたことは何度もなく、必ず彼が重大な窮地に置かれたときで、また彼がすでに傷を負った状態だったため、血の力を用いて魔法を増幅する様子ははっきりとはわからなかったが、通常の魔法と何かが違うことに彼女は気が付いていた。イセヤはしばらく間を置くと、カリエンが実際にダークスポーンを内部から操って、ディープロードに導くことができるのかどうか尋ねた。

 彼もしばらく答えなかったが、やがてはっきりと頷くと、いつ始める気かと尋ねた。
 誰にも見とがめられずに行うには今夜しかない。仲間には、今夜の戦いで傷を負ってはぐれたやつをディープロードの入り口まで追跡したことにする。
 ダークスポーンが一匹必要だ、とカリエンが言うと、その手当てはする、とイセヤが答えた。彼女はリーヴァスの手綱を再び取ると、体重を前にかけて速度をあげるようグリフォンに示し、その羽角の傍に顔をやって、狩りの開始を告げた。

 熱意のこもった啼き声をあげ、グリフォンは北に進路を取り、高度を下げ、雲の合間を縫って飛んだ。ブライトのため生気を喪った眼下の地に不自然な動きが見えれば、それがダークスポーンだ。
 グリフォンの夜目は乗り手たちよりも良く利いた。乗騎が速度をあげるため激しく羽ばたきして初めて、イセヤには獲物の存在がわかった。数秒後には、グリフォンは翼を畳み込み、やみくもに急降下を始めた。 

 グリフォンの影の下に見えたジェンロックの少数の集団は、もはや逃げ出すには手遅れだった。リーヴァスは拳のように丸めた爪で最寄りの二匹を叩きのめすと、その首をねじ切って即座に殺した。やつらが剣の柄にかけた腕が動きをとめるよりも早く、グリフォンは残りの敵にとりかかっていた。

 グリフォンの直感は鋭く、訓練は行き届いていた。リーヴァスはジェンロックに決して嘴を立てない。ダークスポーンの血は、その汚染に耐性がなければ恐るべき毒になる。グレイ・ウォーデンがジョイニングの儀式で守られているとしても、その免疫を乗騎と共有しているわけではない。ダークスポーンを一噛みしてしまったグリフォンには、苦痛に満ちた死が待っている。
 だがリーヴァスはその爪を存分に用いて、一分もしないうちに、六匹から七匹のジェンロックを八つ裂きにしてしまっていた。

 イセヤが力場の球で捕えた一匹だけが生き残った。その魔法はリーヴァスの爪からやつを守っているとともに、そいつを金縛りにしている。そいつの悪夢のように黄色く汚れた瞳が、イセヤのほうを困惑に満ちた様子で見つめていた。

 イセヤがグリフォンに落ち着くように宥めると、手綱を握ったままその背中から降りた。優しく、獣を囚われのジェンロックから遠ざけようとすると、グリフォンは一瞬抗い、苛立ちとジェンロックへの嫌悪に満ちた啼き声をあげたが、イセヤが手綱をはなさなかったので、不貞腐れたあばずれ娘のようになって、連れていかれるままにした。

 リーヴァスがちょっかいを出せないくらい遠ざかったところで、イセヤはカリエンを促した。
 彼は前に進み出て、ナイフを握り、自分の手のひらに傷をつけ、ジェンロックの足元から一インチも離れていないところにその血を滴らせた。ジェンロックの醜く扁平な顔から胸中を読み取ることはできなかったが、イセヤ自身のはらわたは不安のため痛んでいた。先ほどまでの虚勢もどこかに消えてしまっており、邪道魔術を目の前で見ることは言い様のない動揺をもたらした。
 だが、これはなさねばならない。これから何が起きるのかわからないまま、彼女は自分を勇気づけた。

 力場がシャボン玉のように消えるや否や、ジェンロックが歩み出た。リーヴァスが気を荒げ、イセヤが囁き声で落ち着くよう命じると、前脚の爪を岩だらけの地面に深く突き刺したまま、喉を鳴らすような声をたてていたが、その場に何とかとどまっていた。
 ダークスポーンが動いた瞬間、カリエンが手を掲げた。ジェンロックは凍り付き、その滑稽な唸り声は、唇のない口蓋の中に消えた。それから水っぽい黄色の目を閉じ、悪い夢から覚めたかのように首を振ると、彼女たちに背を向け、不毛の岩場の方に駆け出していった。

 ディープロードに戻ろうとしている、とヒューマンが言った。追跡すれば入り口がわかるはずだ。
 素晴らしい。イセヤは鞍に再び跨ると、片手でカリエンを引きあげた。空に戻るように告げられたグリフォンは、喜んでそれに従った。
 ジェンロックは北に向かった。ダークスポーンに似つかわしくない一心不乱さで歩みを進めていたが、空の上の追跡者を引き離すことはなかった。 遅い相手を追うために、リーヴァスは相手の頭上で輪を描きながら飛んだ。

 獲物をしばらく追跡した後で、カリエンがかすかに身じろぎし、イセヤに尋ねた。自分の秘密を暴くつもりはないだろうな。
 もちろん、そのつもりだ。ジェンロックを見つめながら、イセヤが言った。ブライトと戦ってきたこの数年で、このような光景を見たのははじめてだった。ウォーデンの虜となり、その意に従うダークスポーン。彼女はもうひとりのメイジに目を向けた。

 自分にもやり方を教えて欲しい。

***

 「邪道魔術」ってのは、"maleficarum"の苦し紛れ訳。 マレフィカラムは、元々魔女などのなす悪行(島国では巫蠱(ふこ)なんてのがありました)のことで、「アナ雪」よりだいぶ面白かったディズニー映画「マレフィセント」(Maleficent、2014)の語源なのはお気づきのとおり。でも森の妖精に「悪行」なんて名前つけないと思うけどね・・・。 

 エボラに絡めるわけではないけど、ブライトの汚染が含意する疫病の感染も恐ろしいが、魔道もまた恐ろしい。これもご承知の方多いだろうが、かつて両者は結び付けられて考えられたりしました。
 インクイジション、異端審問は、その和名のとおりクリスチャニティの(正しくは「教会」の)教義の正統性を認めない、信仰を異にする信者たちを取り締まることであった。
 創作上は魔女などのマレフィカラムを退治する「魔女狩り」などのために編み出されたとされていることも多いが、魔界道に走る輩は元々クリスチャニティを信仰しているはずがないので、「異端」でもなんでもないんですけどね。
 そんなこといったら迷信にかぶれた島国のほとんどの民衆は「異端」になっちゃうわけだから。言うならば「化外」でしょう。

 とはいっても、クリスチャニティ世界を破滅に導く点では同じだと、異端と魔道(化外)もいっしょくたにして、一旦糾弾がはじまってしまえば、松明とくわ持った民衆たちが集まって、手の付けられない大騒ぎになってしまうのでした。

 

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