フォト
無料ブログはココログ

« Last Flight 3(2) | トップページ | Last Flight 4(2) »

2014年9月25日 (木)

Last Flight 4(1)

 グリフォンの名前の読み方にも苦労します・・・。発音がいまいち不明なのと、そもそも名前には含意があるので、それを日本語に訳するのと二重に。

***

第四章

5:12 エグザルテド

 グリフォンは注意深く選べ。五頭のグリフォンが休み場としている高見に向かう途中、トゥラブが五人の若いウォーデンたちに助言した。ガラヘル、イセヤ、つるつる頭の双子の姉妹であるカイヤとタイヤ、そしてむっつり黙り込んでいる、身体中に部族の刺青が入ったアンダーフェルズの男だが、彼の名をイセヤは知らなかった。

「これから何年もの間の人生を共にする相棒を選ぶのだ。ともに食べ、戦い、長く孤独な守りにつく。おぬしらの命、おぬしらの相棒の命は、おぬしらがグリフォンたちと分かち合う信頼に負うことになる。損なえば、これまでになく最悪の敵を作ることになるぞ」
「女房みたいだな」 とぼとぼと後ろに続くガラヘルが苦笑いした。

 トゥラブは取りすまして頷いた。「うまい言い方だ。おぬしの奥方が、おぬしの六倍の目方があって、飯どきにヤギを生きたまま喰らって、脚一本だけでおぬしの体中の骨をボキボキへし折ることができるならな」
「クナリをたらしこんだことも、一度あるけどな」とエルフがぼそぼそ言った。
 それは、ウォーデン・コマンダーから鼻先の笑いを勝ち取った。 

 目的の場所に辿り着くと、ドワーフは他の者たちに道を譲った。長い登りの後で、イセヤは紅潮し、汗をかいており、姉妹はつるつるの頭に輝く汗をぬぐっていたが、トゥラブは息さえ乱していなかった。 

 ここにいるのは、訓練を終えたばかりか、先の乗り手をブライトの戦いで喪ったグリフォンだ、とトゥラブが言った。フェナダールや他の者たちが脱出直前にここに運んできた。良い相棒が見つかるはずだ。トゥラブは助言もするが、最終的に選ぶのは若い彼らとグリフォンだ。

 イセヤは陽光を遮りながら身繕いしているグリフォンたちを見た。遠くから近づいていくことにした彼女は、不思議と人見知りするような感覚を覚えた。獣たちはいつも思っていたよりも大きく、より美しかった。 

 たくましい黒いメスが、エルフが近づくにつれ頭をあげた。瞳は他より明るい琥珀色で、深い黒色の羽根の中で黄色のダイヤモンドのように輝いている。嘴に薄く入っている亀の甲らの印の表面はざらざらで、縁の近くではかすれていた。彼女がこれほど息を奪われるものを目にしたことは、今までにない。

 そのメスはまた怯えていた。首の横には、毛のない灰色の肌が剥き出しになった長い筋が残っている。回りの羽根が生え揃っていないことから見て、最近の傷が魔法の力で治癒されたに違いない。

 名前は何、とエルフがつぶやき、グリフォンの装具の前の名札を見た。
 リーヴァス。彼女は声に出して読んだ。エルフの言葉で、「自由」。
 その名が呼ばれるのを聞くと、グリフォンのふさ毛の生えた耳が上を向いた。嘴を開いてひと声啼くと、大きな頭をイセヤの肩にいきなり乗せてきた。ライオンのような麝香の香りが鼻一杯に広がり、グリフォンの顎の回りの血流と骨髄も感じられた。

 重さに耐えかね、イセヤは膝を屈したが、それを気にかけてもいなかった。決まったみたい、彼女は通りかかったウォーデン・コマンダー・トゥラブにそう告げた。
 ドワーフは立ち止まり、ひげ面が思慮深げになった。そのようだ、と彼は合点した。リーヴァスは前の乗り手をほんの二、三週間前に喪った。ダルシラルというデーリッシュ・エルフだった。トゥラブは彼女に、彼を知っているかどうか尋ねた。

 イセヤは首を振った。ただ同じエルフだからという理由で、全てのエルフがお互いに知り合いだなんて、どうしてそんな風に考えるのだろう、と少し苛立つ気持ちになったが、長続きはしなかった。彼は率直な疑問を述べただけであり、自分のグリフォンが決まったという畏怖と幸せのただ中で怒りを持続させることなどできなかった。

 彼は良きウォーデンだった、とトゥラブが言って、彼についての記憶を振り払うようにしばらく黙り込んだ。リーヴァスは、跳びかかってきたオーガに引きずり降ろされ、殺されかけた。ダルシラルが命を捨てて乗騎を救った。それ以来扱いが難しくなった。飼育長に言わせれば乗り手の死を嘆き、そして怒っているのだそうだ。立ち直らせることができれば、軍団にとって大きな貢献となるだろう。リーヴァスは最良のグリフォンのうちの一頭だからだ。

 彼は、鎧を陽光で輝かせながら歩み去った。イセヤが向き直ると、グリフォンは話をするトゥラブのほうを見ていたようだった。
 そうなの? 彼女は囁いた。嘆き悲しんでいるの? 
 リーヴァスは再び鼻を鳴らして他の仲間を見回した。だがイセヤが歩み寄ると、彼女も一歩近づき、イセヤのことを温かい獣の羽根の臭いで包み込んだ。

 ガラヘルは、四十フィートほど離れたところで、奇妙な姿のオスのグリフォンの首を掻いていた。その獣は、まだ成熟しきっていない若くひょろっとした体形で、その色はとても風変りだった。大きな白い斑点が腹から身体の前四分の一を覆っており、それ以外は茶色っぽい灰色のまだらだった。

 グリフォンのほとんどは様々な灰色をしている。完全な白色または黒色のものはごく稀な存在であるが、ぶちは尚更少ない。戦さ用のグリフォンは、その色ではなく、速度、知能、技倆で選ばれるが、灰色のものが支配的だった。他の色は劣性で、ウォーデン部隊ではめったに見かけない。 

 ガラヘルの新しい友は、その色だけが奇妙なのではなかった。一方の耳は、通常のように先端が後退しているのではなく前に垂れ、尾は急にかくんと曲がって毛が大きくふんわり広がっており、ほとんどのグリフォンが持つ長い流線形のライオンの尾ではなく、キツネの尾に近かった。 

 全体から見て、その若いオスは極めて風変りな見かけのグリフォンだった。そしてそのオスは、ガラヘルが首を掻いてやるとごろごろ喉を鳴らしていた。エルフの胸に頭を押し付け、兄をそのまま押し倒さんばかりだった。

「変わった鳥ね」とイセヤが呼びかけた。
「もちろん」とガラヘルが答え、苦しそうに息をした。とはいえ、のけぞらされているのが嬉しそうであり、また即座に前より熱心にグリフォンの首筋を掻いていた。「こいつに決めた。英雄に似つかわしくない者たち、それがおれたちだ」
「名前は何?」

「サンダー、銘板によれば『雷鳴号』だとさ。でも、ピンとこないと思わないか?」 ガラヘルはグリフォンに尋ねた。
 大きな獣は両耳を垂らしてシューっと啼き、舌を突き出した。エルフは、その反応にもったいぶって頷いた。「そう思ってた。じゃあ他のを考えよう。オッドバード、『いかれ鳥』とか。スクラフィー、『ださださ号』? 違うな、あまりにベタだ。スクラグルビーク、『もじゃもじゃ嘴』? うーん、まるで髭剃りが必要なおいぼれの海賊みたいだ。ああ! わかった。クロッキーテイル、『ひん曲がりしっぽ』だ!」

「クロッキーテイル」とイセヤが繰り返した。「戦さグリフォンの名前が、クロッキーテイル
「その方がいいよな?」とガラヘルが甘い声を出して、グリフォンの喉のあたりを掻いた。
 イセヤはそれ以上口出しすることをやめて舌を噛んだ。この世には、兄が自分のグリフォンに下らない名前をつけること以上に憂慮すべきことがいくつもある。そして実際、セダスのグリフォンでたった一頭、馬鹿臭い名前をつけられるのだとしたら、このオスであるに違いない。誰もこの哀れな獣のことを真面目に考えたりしないからだ。

 数分後には、他のウォーデンたちも選び終え、または選ばれ終えた。彼らは荷物袋を積み、新しい乗騎に鞍を置き、手綱を調節した。イセヤが驚いたことには、誰ひとり取り残されず、またそぐわない相棒と組まされたわけでもなかった。ガラヘルが唯一奇妙な一頭を選んだが、他の仲間たちは、彼女と同様、新しい相棒としっくりいっているようだった。

 普通であれば、皆一緒に訓練するのだが。皆が相棒を選び終えると、ウォーデン・コマンダー・トゥラブが言った。ワイズホプトの周囲の気楽な飛行、標的への接近攻撃訓練、急降下と着地の訓練、ゆっくりと徐々に進める訓練。それが何か月もの間続く。

「だがそんな暇はない。ブライトが始まっており、日没前、ダークスポーンの襲撃が始まる前に、この場所から脱出しなければならない。戦場に出る最低限の訓練は済んでいると思うが、戦いは避けてほしい、おぬしらの任務は、あてがわれた乗客ひとりを安全に脱出させることだ。わかったな? ダークスポーンと交戦はしないし、どこかに踏みとどまりもしない。空に、高く、舞い上がり、アンティヴァ・シティーから乗客をできるだけ早く外に逃がす。ハブルとデンジが同行するので、その指示に従え。だがはぐれたら、あるいは彼らがやられたら、ワイコムを目指せ。何か質問は?」 

 イセヤは皆と一緒に首を振った。どこから尋ね始めればいいかわかっていたら、質問はあったかもしれないが、事態の変化はあまりに大きく、あまりに早かった。他の者たちも誰も口を開きたがらないようだった。
 トゥラブは入念に皆を見渡し、それから首を垂れた。そして、謁見の間に戻り、シニア・ウォーデンたちと合流することにしよう、と告げた。

 リーヴァスの鞍から降りるのは難儀だった。イセヤは自分の新しいグリフォンと初めて出会い、最初のもろい絆ができつつある今、そこから離れたくはなかった。心の中では、任務の見通しの暗さから来る恐怖と、とうとう正式のグリフォン・ライダーになったという歓喜が互いに争っており、ウォーデン・コマンダーはそれを狙ってお膳立てしたのかもしれないと思った。避けられないかもしれない運命に直面することから、これ以上気を紛らわせてくれることはないからだ。

 それでも運命に直面しなければならないことに変わりはない。渋々ながら、彼女はリーヴァスの背から降り、傷のある首筋を叩いて別れを告げ、ウォーデン・コマンダーに続いて王宮の涼しい青色の翳の中に戻った。

***

 こういう部分、動物好き、特に猫好きだったりすると「わかるわかる」、「あるある」なんですかね・・・。猫とグリフォンは違うけど。ライオンやワシ・タカを飼っている人は稀だろうけど。
 繰り返し登場する動物の匂いの記述。私は苦にしないし、アレジー(アレルギー)になったこともないが、イヤな人は本当にイヤなんだそうですね。

 ちなみにムスク(musk)は麝香の(ような)香り。麝香(ジャコウ)は知る人ぞ知る、オスのジャコウ鹿のメスを引き付けるいわゆるフェロモン的な分泌物。
 そして「ライオンのような麝香の香り(leonine musk)」と言われると、日本語ではもう何が何だかさっぱりわからない。「ライオンの匂いのような、ジャコウジカの分泌するジャコウの香りのような香り」?
 「カモシカの脚のような脚」ネタに通じるものがある。

 セダスに「ライオン」ていましたっけ? ああ、オリージャンが獅子の紋章を用いているか。
 じゃあ(ナグ以外に)「ブタ」っていましたっけ? だいたいブタは野性にはいないよね。「ヤギ」はいるんだな。「ヒツジ」はいるのかしら?
 動物ネタ、色々突っ込みたくなるところはありますが、ま、ざっくり現在の地球と同じような生態系ってことになってるんでしょうね。

 グリフォンの飼育長は原文では"roostmaster"。"roost"はニワトリなどの小屋。いくらなんでも小屋番ではないでしょう。馬でいうところの厩舎長ですね。ところが"stablemaster"というとこれは相撲部屋の親方(笑)。競走馬の世界の厩舎長は"head lad"だそうだ。おそらくブリティッシュ。同じくブリティッシュで"Master of the Horse"というとこれは由緒正しい貴族の職名で「主馬頭」。古代大陸国なら「司馬」。"Last Flight"の世界で言ったら、グリフォン・ライダーの指揮官である"High Constable"を指す役職でしょうね。

カイヤ Kaiya
タイヤ Taiya

リーヴァス Revas
(当初「レヴァス」とやっていたが、日本語で書きにくい・読みにくいのと、テキスト読み上げが「リーヴァス」とハッキリ発音しているので、それでいいかと)

クロッキーテイル Crookytail
(crookは「クロック」に近いんですね。これもテキスト読み上げどおり)

(すでに作中で亡くなっているキャラクター、グリフォンの名前の候補などは省略・・・)

« Last Flight 3(2) | トップページ | Last Flight 4(2) »

ゲーム」カテゴリの記事

Dragon Age Inquisition」カテゴリの記事

DA: Last Flight」カテゴリの記事

コメント

さてさて、DAI(PC版)発売まで2ヶ月を切りましたYO!
まぁ、翻訳の方は無理せずマイペースで、体調万全で。

DAシリーズに出てくる貴族以上の人物の大半が「困ったチャン」なのは、もうお約束ですね。

グリファオンに関わるシーンで、嗅覚に訴えつつ、その場の空気感まで伝えようというのは面白いし試みじゃないでしょうか。
これからの空中での表現も楽しみです。

>つるつる頭の双子の姉妹
スキンヘッドってことでしょうか?気になるw。
カイヤ…、ひょっとして腕組みして仁王立ちしてたりして。

 二か月は長いですよ。つうかOriginal Sinも途中だし、なんとかの軌跡IIも来ちゃったし。大渋滞の予感・・・。

 王侯貴族はバカ。アメリカンの小説ですから鉄板ですね。

 グリフォンがなぜか猫ちゃんに感じられるのがねえ・・・。馬のアナロジーを避けてキティに言っちゃったんでしょうね。ちなみにキティちゃんは猫じゃないですからね!

  
 つるつる頭は、"bald-headed "なんでそう解釈してください。坊主頭じゃ磯野さんちのあいつになっちゃうし、はげ頭だと磯野さんちの(くどいわ)
 スキンヘッドという言葉は時代(設定)考証的にそぐわない。絵的にも一休さんみたいに青ぞりのイメージではないだろうから、つるつるがいいかなって。
 仁王立ち・・・、ああ、川崎さんちの?
 片足で、旦那の体中の骨をボキボキに?

>グリフォンがなぜか猫ちゃんに感じられるのがねえ・・・
ふひ。猫ちゃんとなれば、L様が喜んでるかもww。
グリフォンって、上半身が鷲、下半身がライオン。
ライオンはネコ科ってことで、ジャコウネコへいっちゃったのかなぁ。
際どい高級コーヒーのコピ・ルアクでも有名ですね。
グリフォンと馬(メス)から生まれるヒッポグリフなら、馬へつながるけど…。

>スキンヘッドという言葉は時代(設定)考証的にそぐわない
仰るとおりですぅ。
そっかぁ、Vaniさんのイメージでは、坊主頭というと磯野さんちのアノ子なんだ。(笑)
「穢れ」でもそうでしたけど、言葉選びって本当に難しいですね。

 ジャコウというと香水のイメージですが、実は合成が多いんですよね。
 そして「ムスク」は、もはやジャコウジカとは関係なく、ご指摘のジャコウネコ(ただし匂いの元はジャコウではない)も、それからメロンなどにまで用いられているそうな。だから「ライオンみたいな強烈な香り」で英語なら問題ないのでした。日本語では書いたようにとても無残なことになってますが・・・。
 ちなみにムスクは「きゃん●」が語源なのは知っていましたよ。

 
 言葉選びは気を遣いますよね。現代に通じなきゃ意味ないけど、ファンタジーだとアナクロニズム(時代錯誤)がとても気になる。作家が使っているとおしまいなんですが(ゲイダーさんの「クルセーダー」とか)。
 サイファイならともかく、ファンタジーで変な造語を翻訳で多用すると何がなんだかわからなくなる。中二の自己満足みたいになるのがキライな理由でもあるのですが。
 プロの翻訳家でも「うめえなあ」と唸ってしまうときは結構少なく、一部の人に偏ってるんですね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Last Flight 4(1):

« Last Flight 3(2) | トップページ | Last Flight 4(2) »