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2014年9月25日 (木)

Last Flight 3(2)

 ブライトに関する言葉では、Corruption。Taint。ここら辺の日本語にずっと前から困っているのです。Taintは、普通に「汚染」でいいかもしれない。格好つければ「穢れ」ですが、「不浄」を含む深い意味を持つ言葉なので使うのは逡巡する。「汚穢」(おわい)となると一般的には意味が違う。

 Corruptionは、一般には「腐敗」(古くは生物学的な「腐敗」や冶金学的な意味の「腐食」でもあったが、今はもっぱら「汚職」など社会的・政治的な意味に用いる)、あるいは「堕落」や「頽廃」だったり。もちろん(薬物犯罪などの)「汚染」のときもある。ダークスポーンの世界に「堕ちる」意味をコノートしてるんでしょうね。こっちは難しい。グレイ・ウォーデンがアーチディーモンの歌の調べに眩惑されるのは「堕落」を連想させるのですが、なにも自ら望んでなるわけではない。

 変な言葉を編み出して悦に入るのは嫌いでもあるので、ここでは不浄をも意味する「穢れ」がいけそうなので用いることにします。残念なことに、(ごくまれな例外を除いて)グレイ・ウォーデンのCorruptionに禊(みそぎ)はなく、待つのはただCallingのみなのですが。

 下にいきなり登場します。

*** 

 「それが、穢れだ」 後に、兵舎で夕餉が供されるのを待つ間、ウォーデン・コマンダー・トゥラブが彼女にそう告げた。イセヤは、このいかつい見かけのドワーフに近づく勇気をついに振り絞ることができたが、予想に反してとても話しやすい相手であることを知った。赤い剛毛の顎ひげと傷だらけの灰色のプレート・メイルの下には、部下思いのコマンダーが隠されていた。

 彼は、古参も新参も含めて全ての者の耳に入るよう、声を張り上げたが、概ね新米に向けられたものであるのは間違いない。「穢れは、我々にダークスポーンの存在を察知する能力を与え、汚染から身を守る力を与え、やつらと同じ経験をももたらす。アーチディーモンの呼び声もそのひとつだ。コーリングのとき聴こえるのと同じものだが、穢れが骨にまで染み渡るにつれ、より強くなる。あまり長く待ちすぎると抗うことができなくなる。おぬしらの責務は、まだ選択ができるうちにコーリングに応じることだ」

「アーチディーモンの声を聴いたら進行は早まるのですか?」とイセヤが尋ねた。
 トゥラブは鋼鉄とシルヴァライトの鎧を鳴らしながら肩をすくめた。「かもしれん。我々それぞれにとって訪れ方は多少異なる」
「うん、そいつは楽しみだ」とガラヘルが言って、両膝を両の掌で叩いた。「おっ、見ろよ、食事が来たぜ。その話を聞いたおかげで、食欲が俄然湧いてきたみたいだ」

 イセヤは、兄のおどけ振りに対して微笑もうとさえしなかった。 給仕が運んできた台車の上からお椀をひとつ手に取り、パンとシチューで満たした。食事はどれも味がしなかった。甘い蜜のケーキでも、発酵した豚の糞でも、彼女には同じに感じられただろう。

 グレイ・ウォーデンに選ばれたときは大変な誇りを感じたものだった。ウォーデンが最良の者しか徴用しないことは誰でも知っていた。最も鋭敏な弓手、最も才能あるメイジ、最も賢い戦術家。ヒューマンの街でエルフが置かれた奴隷もどきの身分から脱して、兄とともに、自分の気概をより差別の少ない立場で試す機会だったのだ。

 もちろんコーリングについては知っていた。ウォーデンたちが、ジョイニングの儀式で摂取したダークスポーンの汚染にいずれ抗し難くなって狂気と死に導かれることは、グレイ・ウォーデンのことを知る者なら誰でも知っていた。三十年かそれ以上はかかるが、最後には、それだけ長生きすることができた者は一人残らず屈服せざるを得ない。唯一の選ぶ道は、ディープロードに身を投じ、命果てるその時までできるだけ数多くのダークスポーンを葬り去るという自殺任務を遂行することだ。それがコーリング。それ以前に死ぬことを免れたウォーデン全員を待つ定めであり、ウォーデンたちに影のように付きまとう、予め決められた運命だ。 

 だが、それはいつもずっと遠い先の話に思えた。現実離れしていて、悲劇的であり、まるで物語の最後で主人公が陥る結末のようだ。自らの生命の炎を断ち切るなど、今までイセヤが想像することができた事柄には含まれていなかった。群れの光景と、アーチディーモンの歌声の響きが、そのひとりよがりの思いを揺さぶっていた。
 彼女は味のしない食事を摂り、思考もやめて飲み、空になった器を給仕の台車に戻したことさえ覚えていなかった。

 食事が済むと、ウォーデン・コマンダー・トゥラブと、ハブルを含む最も古参のシニア・ウォーデンの何人かが、王と女王に二度目の謁見をするため立ち去った。残りの者たちは暇つぶしのカードやダイスに興じたり、アンティヴァ・シティーにやってくる前の、下品で、多くはまずありそうもなさげな武勇伝を披露しあっていた。 

 彼女は輪の中に加わらず、ほとんど話を聞いてさえいなかったが、ガラヘルが次から次へとほら話を騒々しく披露して、聞き手たちの耳障りな笑いを取っているのは聴いていた。兄には、仲間たちの心から不快な考えを消し去って、ついでに自らも気晴らしをするという才能がある。彼女にその力の持ち合わせはなかった。彼女は、ウォーデン・コマンダーとその一行が戻るのを待つため、ただ座っていた。 

 彼らがしくじったことは、その険しい顔に書いてあった。

「女王はまだ戦いを欲している」とトゥラブがしゃがれたバリトンで皆に告げた。「そして、彼女がその思いをあまりにはっきりと知らしめたため、アンティヴァ・シティーにはもはや選択の道は残されてない。事実上すべての五体満足な船長は安全な沖合に船を出し、すべての身体の不自由な船長たちは、船員たちから見捨てられた。昨日行動を起こしていれば、王と女王は秩序ある脱出に寄与することもできたかもしれないが・・・、今となっては、この王宮の者たちを脱出させるに足るだけの船さえ残されてはいない」

 ウォーデンたちは、その報せに静かに聞き入っていた。それからガラヘルが金髪の巻き毛を片手でかきあげると、答えのわかりきった問いを発した。「それでどうするんです?」
 トゥラブは残念そうに首を振った。赤ひげをまとめている小さな真鍮の輪が互いにぶつかって音を立てた。「忠義深い船長たちの船が三隻残されている。それらを用いてできるだけ多くの戦力を脱出させる。メイジ、弓兵、テンプラー。ブライトと戦うに際して著しい能力と技倆を有する者、誰であってもだ」
「そして政治的なコネのある者たち」 傷のある女性ウォーデンが蔑むように言った。背にした長く黒い杖がメイジであることを示しているが、イセヤは面識がなかった。

「そうだ」とトゥラブが認めた。鎧を着けた片手を掲げ、ウォーデンたちの不満げな呟きを抑えた。「彼らも戦力に相違ない。我々が徴用できる兵隊を保持している者もいる。支援を提供できるだけの領地を保有している者もいる。我々には食糧、軍馬、武器、補給、そして資金が要る。商人たちと貴族たちはそれらを提供することができる。故に価値がある」
「一方で貧しく、我々に何も提供できない者たちは、ダークスポーンのただ中に置き去りにされる」 女性ウォーデンが鼻を鳴らした。「それで、私らは何様になるつもり?」

 トゥラブは肩を回してすくめ、やりかけのカード遊びの席の真ん中に置いてあったエール酒の入ったマグを取るために部屋を横切った。「ダークスポーンよりはまだましだろう。メイカーズ・マーシー、デンジ、これはブライトなんだぞ。好きでやってると思うか? 間抜けな王族たちがだらだらと無駄に余計な一日を過ごしたあげく、救えたはずの何百人もの民が死ぬんだ。それでもまだ最悪の部分じゃない。我々自身が王族たちを運び出す。他の者たちの脱出は海路で行うが、エラウディオ王とその女王は、その他一握りの取りまきたちとともに、グリフォンに乗せてアンティヴァ・シティーから連れ出すことになった」

 傷のあるメイジ、デンジがあまりにも大きくのけぞったため、杖が後ろの壁に当たって音をたてた。「誰が乗せるの?」
「おぬしとハブルだ、実のところは。ブラックタロンとスクリアクスが、最強最速のグリフォンだからな。空から襲う最悪の脅威から逃れる可能性が一番大きいだろう。オスティヴァー、フェナダール、それから他のメイジたちは船で行く。彼らの才能は海上での戦いになったとき最も役に立つ。私も彼らと同行し、船長たちとその護衛たちが、契約を履行するのを見届けなくちゃならん。残りの者たちは他のグリフォンに乗る。全員が乗客を乗せる。ただしひとりずつ」

 トゥラブがひとりひとりの顔を見回す、ぼさぼさの赤い眉毛の下のその眼差しは、異論を寄せ付けないものだった。「それ以上乗せて、グリフォンの機動性や耐久性を損なうことになるのは避けたい。第一の任務は、王族たちを生きたまま連れ出すこと。わかったか?」
 イセヤは他の者たちとともに頷いた。話がわかったかどうかは、本当のところは定かではなかったが、そう言うのは分別を欠いているように思えた。

「よかろう」 トゥラブはエール酒を呑み干した。「これからおぬしらにグリフォンを見せてやる。急いで相棒を決めるようにしろ。朝まで待つだけの時間はない。これから二時間以内に、この王宮から全員脱出してもらうつもりだ」

***

 メイカーズ・マーシー(Maker's Mercy)は「勘弁してくれ」ってところでしょうか。
"Have mercy!" "Mercy!"とか言いますね。 

デンジ Dendi
オスティヴァー Ostiver
フェナダール Fenadahl

スクリアクス Skriax

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