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2014年9月23日 (火)

Last Flight 2(2)

 お待たせしました。リア重だったもので・・・。
 ようやく続きを進めることができそうです。どこからだっけ?

*** 

 ガラヘルがすでに金髪から埃を払い、こっそり拝借したグリフォン用の飲み水でいつものように顔を洗い終えていることに気が付くと、イセヤは笑いを噛み殺した。ここでは無駄な努力ともいえるが、ヒューマンよりも美しいとされるエルフの中でも、特別美形である彼の場合は事情が違うのかもしれなかった。高い頬骨、華麗な緑色の瞳、その笑顔は女性と、少なからずの男性をも骨抜きにしてしまう。イセヤは、彼の見てくれが自分よりもずっと良いことを率直に喜んでいた。セダスに住むエルフの女性にとって、美しさという恩恵は毒を伴う。

 だが今日の兄は、他の者たち同様笑っていなかった。アンティヴァ・シティーの雰囲気を険しいと呼ぶなら、ここ王宮は葬儀の最中のようだ。
 ハブルを先頭にしてグレイ・ウォーデンたちが城内の防塁の中を進む間、出会う召使いたちは彼らに希望に満ちた視線を送り、黄金のドレイクの紋章が入った陣羽織姿の衛兵たちは尊敬の眼差しを向けた。謁見の間までは、ハブルの早足でも果てしない時間がかかるように思われ、アンティヴァの王宮は、セダス一大きいと思っていたワイズホプトの要塞に次ぐ規模なのかもしれないとイセヤは思った。

 ようやく、紅色と黄色の薔薇で満ちた王宮内の庭園を過ぎた頃、彼らは王と女王が待つ小さな部屋に出た。ウォーデン・コマンダーのトゥラブは、がっしりした赤ひげのドワーフで、アンティヴァの指揮を執っており、他には二十名のアンティヴァン・ウォーデンたちと、おそらく上級貴族と思われる豪奢な出で立ちの少数の男女がいた。

「ハブル」とウォーデン・コマンダーが頷き、しゃがれ声で言った。「道中難儀はなかったか?」
「特には」とハブルが言った。彼は王と女王に正式な会釈をした。アンティヴァの王族たちが計ったような頷きを返す。エラウディオ王は四十半ば頃だろう、とイセヤは推測した。王の風格はあるが、何かの動作の前に目に見えていちいち躊躇する臆病な男だった。その妃であるジュヴァナは若干年上に見えた。鮮やかな栗毛色の髪には太い白髪が幾筋も混じっており、強張った顔は笑い皺のおかげで和らいで見えた。

 ふたりの結婚は、王族の世界では稀に見る恋愛に根差したものであるとの噂を、イセヤは思い出した。女王は裕福で誉高き商家の出自だが、その血脈はアンティヴァの王宮にとって恥ずべきほど卑しいとされていた。いずれにしろ、エラウディオ王は彼女を娶ることに決め、ふたりの仲は、長きにわたって国民たちの認めるところとなった。女王ジュヴァナが熱心な芸術愛好家であり、首都の美化に相当な富を費やしたことも、その一因に疑いない。彼女の影響力により、アンティヴァはセダスにおける芸術と文化の中心地のひとつとして、オーレイの偉大な都市群や、衰亡を続けるテヴィンター帝国に比肩することとなった。

「わたくしどもの守りのため参られたのでしょう?」 女王ジュヴァナが尋ねた。大声ではなかったが、あまりに静まり返った部屋の中で、彼女の言葉は謁見者の間に響き渡った。「アンティヴァが救いの手を欲するまさにその時に?」
 静かな凛々しい懇願を退けるのは容易なことではなかった。だが明らかに、グレイ・ウォーデンたちはそのつもりであった。ハブルとトゥラブが視線を交わし、それからヒューマンのほうのウォーデンが首を振った。「違います、陛下」

 女王のしかめた顔で額が曇った。「違うと? この街とともにあまりにも多くのものが喪われてしまうのです。彫刻も、音楽も、絵画も。わたくしどもの図書館も。わたくしどものモザイクも。それらの作品だけではなく、それを造り出した知識とともに。それほど多くの人生の遺産をわたくしどもが放棄すると、よもやお考えではありませんでしょうね」

「アンティヴァ・シティーを守ることはできません」とハブルが平板な調子で言うと、ふたりの王族にそれぞれ目を配った。「大した時間は持たない。数日、あるいは数週間、それも運が良ければ。それ以上は無理です。備えを行うための十分な警告もなかった。ダークスポーンはアンティヴァをあっという間に引き裂いてしまった。この街には蓄えられた十分な食糧もなければ、訓練を受けた十分な兵士もおらず、彼らを武装させる十分な武器も鎧もない。海路は多少助けにはなりますが、しかしダークスポーンが兵糧攻めを試みるはるか前に、やつらは壁を乗り越えてしまう」

「われわれの壁はとても頑丈だが」と、エラウディオ王がおそるおそる意見を述べた。
「そのとおりです、陛下」とトュラブが、不愛想なドワーフにしては精一杯の丁寧さで同意した。イセヤには、彼がここの者たちを好きになりはじめており、喜んで彼らの希望を打ち砕くつもりなどないことがわかった。「それが故、数週間は持つかもしれないと申し上げている」

「では、あなた方にできることは何もないと?」と女王が尋ねた。彼女の謳い上げるような声に不信が忍び込み、薄く、脆くなった。「グレイ・ウォーデンともあろう方々が、左様にあっさりと敗北を認めなさるのか? 詩人たちがあれだけ伝説を謳い上げているというのに、あなた方はわたくしたちの街ごと、わたくしたちの国土を丸ごと、まだ最初の攻撃すら受けていない今、見捨てよと言われるのか?」

「その街は、海を背にして逃げ場なく、その後背地は尽くダークスポーンの手に落ちたのです」とハブルが言った。じれったさと憤りがその声に忍び込んでいたが、その表情は慇懃な仮面のまま凍りついている。「アンティヴァ・シティーを地図でご覧になったことはございますか? 援軍も、補給も受けることはできない。国土の他の部分は、陛下がたの城壁にやつらの群れが張り付いたときには蹂躙された後です。ダークスポーンは攻城兵器を用いない、確かにそのとおりだが、そもそも必要ないのです。オーガがジェンロックどもを壁の上から投げ込んで、街の人々の上に叩き付ける。ジェンロックが地面に激突して生き残るかどうかはまるで問題じゃない。十分な数の奴らが降ってくれば、ブライトの汚染がまき散らされ、アンティヴァ・シティーはそれで終わりとなる。しかもそれはアーチ・ディーモンが現れない場合の話。もし現れれば、数日すら持たないでしょう」

 王族たちは蒼白となった。イセヤは振り返ってアンティヴァン貴族たちの顔を盗み見た。彼らもまた、怖気を奮っているように見えた。彼女自身も、少なからず恐怖を感じていた。最後のブライトがセダスを襲ってから二百年が経ち、トスやハンター・フェルの物語は、とっくの昔に子供向けのお話でしかなくなっていた。
 今や、化け物たちは彼らの寝台の下から這い出してきており、その爪はとても鋭い。

「ハブルのウォーデン部隊を呼んだのは、街から脱出する機会を得るためです」とトゥラブが、変わらぬ頑固な忍耐強さを示して言った。「あなたがたは民をリアルト湾に逃がす十分な数の船舶をお持ちだ。大きめの島々に民を避難させることができる。ダークスポーンは泳ぐことはできず、船を持たないので、陛下がたとその民はそこでなら安全なのです」

 エラウディオ王は一分近く目を閉じ、計算をしていた。「三分の一でも逃げることができれば幸運だろう」
「踏みとどまって戦えば、誰一人救えません」トゥラブが言った。「陛下、このウォーデンたちは陛下の民を救うために命を賭す覚悟です。だが、陛下が民を安全なところに導いていただけなければならない」
「考えておこう」と王は静かに言った。彼が両手を掲げて音をたてずに合わせると、それは謁見の終了を意味していた。
 ウォーデン・コマンダーのトゥラブとハブルは会釈した。他のウォーデンたちとともに、イセヤもその仕草を真似し、指揮官たちに付き従って部屋から退いた。

「本当に、おれたちに街を守って欲しいと思ってるのかね?」 再び薔薇の庭園を抜けて戻るとき、ガラヘルが彼女にそうつぶやいた。「絵と噴水のために?」
 花を愛でる気持ちはイセヤから失せており、肌に陽光を浴びていてすら彼女は寒さを感じていた。彼女は、街の城門の外で身を寄せながら固まり、今や喪われようとしている救いを絶望的に欲している群衆たちのことを忘れることはできなかったが、城門の中の人々も絶望的に救いを欲していることに代わりはなく、籠城して持ちこたえるという無理な望みに王と女王が固執するなら、それもまた喪われてしまうことだろう。

「もちろんよ」と彼女は兄にささやき返した。「彼らも民に違いはない。希望を欲している」
「おれたちは希望を与えてやった」とガラヘルが答えた。「この世が許す限りの全ての希望を与えてやった。それを受け取らず、その理由がそれだけじゃ足りないからだって?」

 イセヤはみじめな気持で首を振ったが、自分の悲しみを言葉にすることはできなかった。庭園を後にして比較的涼しい王宮の室内にふたりが戻ると、彼女は身震いした。太陽はほんの少しも彼女を暖めてはくれなかったが、闇もまた耐え難いものであった。

 トゥラブは、ウォーデンたちを衛兵用の兵舎のひとつに導いた。ブライトが間近に迫っているというのに、召使いたちは清潔な寝具を用意し、乾燥したラヴェンダーの花束さえ壁際に飾っていた。
 イセヤにはその香りが苦痛であった。ダークスポーンに美の概念はなく、この世をより住みやすくするための細やかなもてなしの心意気も意味はない。やつらの通過した後には殺戮と破壊と汚染のみが残り、ラヴェンダーが生えることは二度とない。

 彼女は寝台に腰掛け、アンティヴァを救いに来たウォーデンたちのために召使いたちが用意した、おそらくとっておきの毛布に指をはわせた。
「皆を救わなくちゃ」と彼女はつぶやいた。だが彼女は、誰に向けるわけでもなく、とても静かにそう言ったのであり、耳にした誰かがいたのだとしても、答えることはしなかった。

***

 いや、元々ここはベタ訳するつもりだったんだよね・・・。すみません、じっくりまとめる時間が足りないときはベタ訳が増えてしまう。このペースじゃあまずいなあ。

(追加:ああ、もう少しあったのを見落としてました。書き足した)

Turab トゥラブ
King Eraudio エラウディオ
Giuvana ジュヴァナ

 

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