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2014年9月

2014年9月30日 (火)

【DAI】マット・ローズ氏Tumblrから

 ごめんなさい、あたしゃやっぱ、こっちのほうがいいわ。

 DAのコンセプト・アーティストのTumblr。他にも色々載っているのでご興味あれば。

http://mattrhodesart.tumblr.com/

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 チャントリー。デザインはカークウォールぽい。
 ひとりだけ顔が抜かれているのは、誰だろう。筒井先生?(いや女性でしょ)

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 クナリだけど、ひとりだけヒューマンかエルフがいるのは、もしやあの方?
 女子クナリが小さく描かれていて、コンセプトがまだ固まっていなかったみたいだ。

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 仮面の帝国、オーレイですね。泣く子も黙る、つかよく見るとほんと怖い。
 おっさんの頭と体がデッサン狂ってますね。切り貼りしたか。

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 テヴィンター・インペリウム。ちょっち難しかったかな。
 左手の海龍のようなエンブレムがそう。

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 インクイジション。

 ローズ氏によれば、これらは、まだゲームになってすらいない過程から数多くのデザインが試されていたことを明らかにするため、そして各派閥(ファクション)のデザインの傾向がどのようになっているかわかるようにするため、という二つの意味で公開されたのだそうだ。

 

 

【DAI】ここまで必要なのか。

 これは一目見てやりすぎだと思いました。

 DAIのキャラクター・クリエーションのデモ。

https://www.youtube.com/watch?v=nZilJMncZ6g

エンベッド版

https://www.youtube.com/embed/nZilJMncZ6g

 こんなの今までにもあったよ?

 うそこけ。ないよ。
 少なくとも、こんな気持ち悪い、そこらにいそうな、電車降りた途端にスマホいじって邪魔になって、張り飛ばしたくなるような間抜け面のおばはん、おっさんが造れそうなものはなかった。

 うう、キャラメイクでうなされそうだ。
 なんすかね、他に圧倒的な差をつけて見せつけないといけないってことですかね?
 ここまで必要なんですかね?
 でも、これで驚いていると、フェイシャル分野ではFFがあっさり追いついたり、追い抜いたりすんのかな?

Daicc
 エスカレータとかの前でスマホ見て立ち止まってんじゃねえぞ。

2014年9月29日 (月)

Last Flight 6(2)

 毎度のことですが、DA小説の記事がはじまると、読者が減る減る(笑)。理由はもちろんはっきりしているんですが、あくまで老後の愉しみなんで続けます。

***

 一週間後、テンプラーたちがやってきた。

 煉瓦色の砂塵がゆっくりと動くのは到着の何時間も前、正午頃から見えはじめた。時折、灼熱の太陽に反射する鎧のきらめきが見えたが、ワイズホプトの塔の上で望遠鏡を覗く見張りがいなければ、テンプラーとはわからなかっただろう。
 見張りによれば、禁断の地をものともせず渡ってくるのは、重い鎧を身に着けたたった五人のテンプラーたちと、荷馬車を引くロバ一頭。

 ヴァルヤは、他のホスバーグのメイジたちと一緒に弓兵の覗き穴から見守りながら、意図せぬ同情の痛みを感じていた。 望遠鏡なしではひとりひとりの顔まで見えないが、見たくもなかった。戦いになったら、相手が人々だと感じないほうがやりやすい。
 だが彼女は、携帯式オーヴンに身を包んでいたわけではなかったとはいえ、アンダーフェルズの地を旅する難儀さを覚えていた。テンプラーたちに来てほしくはなかったとしても、彼女は憐憫で心を痛めていた。 

 同僚たちは徐々にその場を離れて行ったが、彼女は何時間もそこにとどまり、テンプラーたちが赤い大地を進んでくるのを見守っていた。彼らがブロークン・トゥースの足元まで辿りつき、登攀路に入ると姿が見えなくなった。彼女は時間をつぶすため、イセヤの日記を読み続けようとしたが、まったく気が入らなかった。不安のため文字のインクは霞んで見え、ページをめくる前ごとに、何度も杖を手にしてその感触を確かめていた。

 とうとう、這い進むような永劫の時間の最後に、ワイズホプトの城門が開く音を聴いた。問答する声が耳に届いたが、はっきり聞き取れなかった。耳慣れない震えるようなバリトンが広間に響いた。
 テンプラーの主導者に違いない、ヴァルヤはそう思った。好奇と恐怖半々に突き動かされ、彼女は杖を手にすると、城門まで降りて行った。

 ブロークン・トゥースの日は暮れようとしていたが、テンプラーたちは日没のため赤く見えるのではなかった。鎧も肌も塵塗れであったのだ。ロバも全身塵に覆われ、苺色の糟毛のようにみえた。
 彼らは疲労困憊しており、何かを無理強いしているようには見えなかったが、ヴァルヤは念のため玄関広間の闇に姿を隠した。テンプラーに対する恐怖はあまりに深く植え付けられており、鎧の胸に描かれた炎をあげる剣を見ると、長年培った用心深い敵意が蘇る。彼らと自分の間には、半円形に並ぶグレイ・ウォーデンたちが立ちはだかり、視界を遮ってくれているのが救いだった。

 サルウェが、南方のウォーデンたちからの報せについて尋ねると、先頭のテンプラーが、何もない、と答えた。バリトンの主の口髭は汗で固められた塵で覆われ、その色もわからなかったが、ヴァルヤはそれ以外の顔の部分が見えなかったにも関わらず、彼がホスバーグからやってきたのでないと思った。あそこの上級テンプラーは全員知っていたが、この男には馴染みがなかった。そうでなくとも訛りに聞き覚えがない。

 テンプラーたちが最初に訪れた二カ所のウォーデンの拠点は完全に無人であり、その理由も不明だった。地元の民は、ウォーデンたちから予備の馬や家畜を二束三文で買い取っていた。彼らは急いでいるようだったが、それが何故なのかも、どこに向かうのかも告げなかった。その地域にダークスポーンの噂はなく、テンプラーたち自身も一度も遭遇することはなかった。

 逃亡したというのか、とサルウェが疑わしげに尋ねると、テンプラーも同じ疑いを抱いているようだった。赤い塵を巻き散らかしながら首を振り、逃亡の企てを秘密にしておくことはできないし、一カ所だけならまだしも、二カ所同時というのはあり得ない、と言った。
 片方が他方を説得したのかもしれない。どちらも少数づつしかいなかったのだから、と顔に向う傷のあるウォーデンは、自信なさげに応じた。 

 そうかもしれない、とテンプラーが肩をすくめると、鎧からまた赤い塵が落ちた。そして、何もわからないが、彼らに出会わなかったことだけは確かだと告げた。テンプラーたちは、二つ目のウォ-デンの拠点を過ぎてから、帝国街道をチャーヌーまで抜け、それから北に逸れてここまでやってきた。彼らは道中、他の者たちから手紙や書簡を預かってきていたが、それらは徴用された者たちの家族からのものや、貴族からの伝書であり、グレイ・ウォーデンからのものはひとつもない。もし途中で彼らの誰かに出会ったなら、こんな遠くまでやってくる必要もなかった。 

 サルウェは頷き、カロネルに前に出るよう身振りすると、テンプラーたちが手紙をここまで運んでくれたことに礼を述べ、同僚がこれから部屋に案内すると言った。そして、今夜はゆっくり休んだ上で、ここへの避難については明日の朝に話し合うことにしよう、と告げた。

 彼らも避難民なのか? その考えはヴァルヤの頭の中に混乱を呼び起こした。テンプラーたちはホスバーグのメイジたちを追跡してきたのだと思いこんでいたが、まるでそうではないようだ。自分たちがここにいることすら知らないらしい。

 チャーヌーよりも南からやってきたというのなら・・・、この世界を半分横断してきたことになる。過去二か月にわたりセダスの地図とにらめっこして来た彼女には、その旅がいかに長く、過酷であるか正確にわかった。飼料の確保が比較的容易であり、穏やかな夏の季節であっても、決して気ままな旅とはいかない。

 彼らも、メイジ・テンプラー戦争から逃れて来たのだった。彼女はそれからの数週間で、他にも多くのことを知った。そのテンプラーたちは、セレスティン湖からさほど遠くない南オーレイの出身であった。主導者であるディギエーは騎士団のナイト・ルテナント、騎士副長であった。カークウォールの大虐殺とホワイト・スパイアの大騒動を耳にして、同じ考えの少数の同志たちとともに、紛争には加担しないことを決めたのだった。

 当初は八人いたが、道中ふたりが死んで、ひとりが逃亡した。ヴァルヤがその細部を知るのは苦労したが、死も逃亡も、テンプラーのレリウム中毒に関連していることがわかった。脱走を計ったとき有していた貯えは、ワイズホプトまでもたなかったのだ。
 それは、彼女が他の者たちから仕入れた乏しい噂からわかったことだった。彼女は、直接テンプラーたちと話をすることはなかった。彼らを避け、目を合わせないように身を隠した。彼らには彼女を疑う理由も、かりに疑ってもそう告げる権利もなく、馬鹿げた振る舞いには違いなかったが、彼女はそうしないではいられなかった。長い間の習慣は簡単には捨てられない。 

 彼女は、狼の群れを見つめる牝鹿のようだった。ラロスというドワーフのテンプラーは、自分の体重を支えるのに精いっぱいで、どのみち鎧はきつくて着れなくなりそうなのに、甘い菓子をつついてたべるのを我慢する姿は見ていて忍びなかった。唯一の女性であるレイマスは、冷ややかで超然としていたが、部屋で捕まえた昆虫を外に運び出して必ず逃がしてやる優しさがあった。

 そして、責務を喪ったディギエーは、ウォーデンたちとともに、あるいはひとりで武芸の稽古に勤しむか、小さな礼拝堂で熱心に祈りを捧げていた。彼はほとんど眠らず、食事も摂らず、祈るばかりで、頬はこけ、日に日にやせ細っていった。

「彼は平穏を求めているのさ」 ある朝、ホスバーグのメイジたちが書庫に集まったとき、セイカがそう告げた。季節は秋に変わりはじめ、アンダーフェルズの短い灼熱の夏は遠くに過ぎ去ったようだった。朝は身が引き締まるほど涼し気で、正午までその冷ややかさはほぐれず、厳しい夜を予感させた。
「メイジとテンプラーの間の?」とヴァルヤが尋ねた。他の者たち同様、彼女も借り物の灰色の外套を身につけ、ワイズホプトの手ごわい隙間風から身を守っていた。今はそれで間に合うが、数週もすれば、暖を取る別の手段が必要になるだろう。書庫で何時間もただ座っているだけでは、何の足しにもならない。

 年少のほうのメイジは頭を振り、読んでいた古い地図の方に向き直った。彼らはすでに小部屋にあった文書の半分は調べ尽くしていたが、依然として別の地図、日誌、血の付いた手紙の束が出てくるのだった。彼らはこれまでに、ウォーデンの謎の失踪に関する四つの事例、喋ることができ、理屈のわかるダークスポーンの事例ひとつ、そしてグレイ・チェンバレンが意味を見出すかどうか不明だが、それでも彼に進言することにした関連する事件を二、三見つけていた。

「彼自身の平穏さ」とセイカが言った。「彼が正しいことをしているという、メイカーからの何らかのお告げだよ。さらには、彼がグレイ・ウォーデンになったからといって、チャントリーの責務に背くわけではないというお許し」

 ヴァルヤは瞬きした。「彼はグレイ・ウォーデンになりたがっているの? どうしてそんなことわかるの?」
「だって、聞いたから」とセイカが粘り強く言った。彼の目は大きくて黒く、まじめくさっていた。「テンプラーとだって話はできることくらい、わかってるよね」
「おそらく、あなたはね」 ヴァルヤは口籠った。「私は見ることさえ無理」
「やってみればいい」とセイカが言った。「彼らだって、もうじき僕らの同志になるかもしれないじゃないか、僕らの運が良ければだけど。もしメイカーがディギエーの求めるお告げを授けるなら、ファースト・ウォーデンが抗争でどちらの側にも与しないと決めるのなら」

 ヴァルヤは躊躇った。「どうすればそんなことができるの?」
「メイカーのお考えは彼のみぞ知る。それについてはどうしようもない。でもファースト・ウォーデンについてなら・・・」 セイカは調べていた地図の端を指で丸めると、黄色くなった羊皮紙を彼女に示した。「僕らが何か有益なものを見つける。僕らが役に立つと示せる何かを。第四のブライトについて、グレイ・ウォーデンが見つけたがっている答えが何であっても、それを見つける。何か見つけた?」
「まだ何も」とヴァルヤはいった。「でもそれでいいなら、見つけてやるわ」

***

 ハリポタ度合がどんどん増大していきます・・・。すんません、私はこの類は、実は苦手です。だからといって手抜きはしないけど。セリフの訳がどんどんハリポタ「映画版」みたいになってくる。うわあ。

 最初はpack mule、荷物を運ぶラバと書いてあるが、途中でdonkey、ロバになっている。ま、pack muleというとどっちも区別してないんでしょう。MMOなどで、荷物を持たせるだけのためにロール(キャラメイク)するキャラクターをそう呼びますね。ちょっと悲しいね(笑)。

 ディギエー  Diguier
 仏語ではディグュエイに近いようですが、書きにくいので。 それとここでは英語読みに統一したい。最後の"r"は読んじゃうでしょ。ディジェーになっちゃうかもと思ったが、F1のフレンチ・チームであった「リジェ」はLigierだったので違うか。

 ラロス Laros
 レイマス Reimas

 

 

 

 

2014年9月28日 (日)

Last Flight 6(1)

 ふたたび、「今」の時代のワイズホプト。

***

 第六章

 9:41 ドラゴン

 ホスバーグのメイジたちがワイズホプトに到着して二か月が経っていたが、未だ彼らのジョイニングについての話題が出ることはなかった。ヴァルヤには、ウォーデンが彼女たちを軍団に欲しているかどうかも定かではなかった。毎朝、霊廟つきの図書館で調査を行い、毎夕、埃っぽい講堂に集まり、ダークスポーンとの戦いについて学んだが、グレイ・ウォーデンになることについての話に及ぶことはなかった。他のサークルからも避難したメイジたちが数名到着していたが、彼らもホスバーグからの避難者以上のことは知らされていなかった。

 それはある意味、救いともいえた。第五のブライトが終わりを告げてからわずか十年。セダスの歴史上、直前のブライトから百年以内に新しいものが発生したことはない。ヴァルヤは、世界に破滅をもたらす惨劇を終焉させることの意味は理解していたが、自分の生きている間にブライトが起きないというのに、ダークスポーンの汚染によって狂気と穢れに見舞われる人生を送る意味はないと思われた。 

 だが、また危惧もあった。彼女たちがグレイ・ウォーデンでないのなら、ただの避難民だ。兵士でなく避難民なら、彼女たちの召喚を求めるチャントリーを、ウォーデンが拒絶することはできないのではないか。
 その不確かさが、彼女を悩ませていた。 

 ある朝、その悩みに耐えきれなくなり、彼女は、日が高く登る前にカロネルがよく書物を読んでいる小さな中庭を訪ねた。緑と白のタイルは削れたりかすれたりしていたが、まだ美しく、周辺に幾何学的なモザイクを描いている。真ん中で小さな噴水がばしゃっばしゃと水を吐き出し、早朝の青い日陰にさらに涼しさを与えていた。
 それも長くは続かない。アンダーフェルズの夏は短いが酷暑であり、この中庭の魔法のような穏やかさを間もなく焼けるような日差しで消し去ってしまう。それでもあともう少しの間だけは、素晴らしかった。 

 ヴァルヤは、その平穏を、これから問おうとしている謎の答えを知ることで損ないたくないとさえ思った。だが彼女は、平和の幻想よりも、答えを欲していた。 

 「自分たちは、いつジョイニングの儀式を受けるのでしょう」 彼女からそう問われたカロネルが、書物から頭をあげるまでには間があった。彼の表情からは、その質問を歓迎しているのか、困惑しているのかはわからなかったが、驚いているのは間違いないようだった。読みかけの部分に親指を挟むと、彼は首を振って金髪を後ろにはねあげ、「どうしてここにいるのがわかったんだい」と感情を交えずに尋ねた。 

 ヴァルヤは、肩にかけた鞄から折りたたまれた手紙を取り出した。紫丁香花(ライラック)の強烈な香りを振りまくそれは、おそらく中身も同じように強烈なものなのだろう。ある意味、自分たちが置かれた状況をものともせず、べリスが未だに向こう見ずな乙女の夢物語にかまける暇を見つけていることに、ヴァルヤは感心していた。
 カロネルに手紙を差し出すと、彼女は言った。「自分たちの中には、あなたの行動を逐一把握している者がいるの。この手紙を手渡すと約束したら、あなたの日課を全部教えてくれたわ」

 金髪のエルフはため息をつき、面白がると同時に苛立っていた。手紙を受け取ると、目もくれずに本の表紙に挟み込んだ。紫丁香花の香りが嫌が応でもあたりに漂う。「驚くほどしつこい娘だな。そして本当に子供だ。君たち皆と同じように」
「だから、ジョイニングの儀式に招かれないのですか?」

「それもある。君たちに仕事を与えているのが別の理由だ。君たちの半分がアーチディーモンの血で窒息死してしまったら、あの退屈な古い手紙の束や地図を、この私が代わりに調べるという本当にとんでもない話になる」 カロネルは頭をもたげて彼女を見た。「それはともかく、どうしてそんなにジョイニングの儀式を受けたいんだ? 私の身勝手は横に置いても、あれはおぞましい体験だよ。試練を受ける何人もが死ぬ。今はブライトもないし、ここにいる君はすでに安全な身だ。どうして急ぐのかわからんね」

 ヴァルヤは中庭の反対側の長椅子から埃を払って腰掛けた。石は冷たく、ざらつき、彼女の前に座った数えきれないウォーデンたちのため削れて前に傾斜していた。彼らの影に腰掛けるのは、幽霊の足跡に立つのと似たような感じがする。ワイズホプトの歴史の重みが、再び彼女にのしかかっていた。
 彼女はなんとかそれを振り払った。彼女はまだ歴史に抱かれてはいない。「私たちが本当に安全かどうか定かではないから、急ぐのです」

 ガラヘルの瞳が正真正銘困惑しているように輝いた。「ここで誰が君たちを脅かすんだい?」
 ヴァルヤは浮かない顔で肩をすくめた。「ホスバーグで私たちを脅かした者たち。テンプラー。チャントリー。アポステイト・メイジを恐れる者たち。あなたはエルフでしょう。デーリッシュの刺青がないから、私と同じようにエイリアネイジで育ったのでしょう。ならば、自分たちの仲間と思っていない相手から守られなければならない気持ちがわかると思います」

 年上のエルフの微笑みが少し悲し気になった。自分たちの民と一緒に、不安定な、だがかけがえのないデールズの自由を享受する恵まれた者は少ない。デーリッシュ・エルフが顔に粗野で奇抜な刺青を施すのは、彼らの独立を宣言しているのだ。だがヒューマンとともに暮らすエイリアネイジのエルフにそんな機会はない。顔に何も彫らず、目立たぬ忘れられた存在でいたほうがいい。注意を引いて安全でいられる試しはなく、決して賢いことでもない。「そのとおりだ」 彼は間を置いた。「君はウォーデンになりたいのか?」 

 ヴァルヤは自分の袖のほつれを見つけ、上の空でそれを弄んだ。「わかりません」 彼女は顔をあげ、好奇半分、挑発半分で尋ねた。「あなたはどうでした?」
「私もわからない」とカロネルが答えた。 彼は書物から親指を抜くと、それを完全に閉じ、長椅子の上、脚の横に置いた。「今とは時代が違う。世界も違った。フェラルデンは、ブライトが勃発した直後だった」

 彼の眼差しは噴水に彷徨い、水の流れを見るともなく見ていた。声は柔らかく、抑揚がなかった。「推測どおり、私はエイリアネイジで生まれた。フェラルデンのエイリアネイジ。ブライトの影が国中に広がろうとしているときに、いるべきところじゃない。皆おののいていた。食糧は乏しかった。ケイラン王がオステガーで戦死したと聞かされた夜には、暴徒がエイリアネイジを襲った。それが初めてでもなく、最後でもなかった。私の両親は店を焼かれた。靴職人だった。平凡だが、真っ当な仕事だ。私たちにはその店しかなかった。

 私がグレイ・ウォーデンになったのは、ブライトからヒューマン世界を救うためではなく、自分自身を救うためだった。ヒューマン世界なんてどうでもよかった。むしろ、シェムレンが私の家族を焼こうとしたように、奴らが焼かれる様を眺めたかった。機会があれば、奴らをアーチディーモンの喉にひとりづつ投げ込み、そんなことのできる自分を幸せ者だと思ったことだろう」 

 カロネルの言葉は怒りを帯びておらず、調理用の食材を読み上げるような落ち着いた単純さだけがあった。その無表情が隠しているに違いない苦痛の深さに気付き、ヴァルヤは心の奥で身震いした、
「でも、あなたはともかく、ジョイニングの儀式を受けることにしたのでしょう」と彼女は言った。「この世界のため身を投じる覚悟で」

「ああ、そんなことを言うつもりはないよ」  カロネルは長椅子の上に鞘に納めて置いてあった剣の柄に手をやった。彼の指が柄頭のグリフォンの紋章をなぞるが、目はそれを見ていなかった。「私は依然ここにいて、世界も依然ここにある。ブライトは私に犠牲を強いなかった。落後した数匹のジェンロックと出会った以外、戦いに臨んだことすらない」

 涼し気な青い目でヴァルヤを見つめたまま、彼は紋章から手を離した。「ブライトからは無傷で逃れたものの、ダークスポーンの汚染のせいで、私は二十年のうちに死ぬ。運が良ければ三十年。ウォーデンにならなかった場合に比べて随分と短い。 だから君が、まだそんなに若いうちに、ウォーデンになる差し迫った必要もないときに、急いで決断するべきではないというのは、私自身が、もう一度決断し直す機会が欲しいからなんだ」

「テンプラーが来たらどうなるのです?」とヴァルヤが尋ねた。ほつれはようやくプツリと切れ、彼女の指の間には小さな毛玉が残った。彼女がそれを投げ捨てると、石畳の間に飛んで見えなくなった。「ウォーデンでもないのに私たちを守ってくれるのですか? 本当に?」

私は守る」とカロネルがわずかに微笑んで言った。彼女が笑いを返さないのを見ると、彼は優し気になった。「ああ、君たちはここにいれば安全だ。世界の他の誰もと同じくらい。そのためにジョイニングの儀式を受ける必要はない。だが、それ以外の問題については、ファースト・ウォーデン自身もわからないと思う。チャントリーが何を言うか、何をするかを見極めるまで待つだろう。それから 彼はチャントリーとテンプラーの間の、あるいはテンプラー内部が分裂するあらゆる可能性を分析したがるだろう。メイジの叛乱がこの先どう転ぶかも知りたがるだろう。それらがはっきりしてはじめて、ファースト・ウォーデンは立場を決めるんだと思う。慎重な男だから」
「むしろ臆病な男ではないのかしら」 ヴァルヤは辛辣に言った。

 カロネルは肩をすくめた。「政治は慎重にやらないなら、最初からやるべきではないゲームだ。そしてファースト・ウォーデンは、ゲームから降りることはできないみたいだ。であれば、注意深く立ち回るしかないのさ」 彼は書籍と剣を手にして立ち上がった。「長居が過ぎたようだ。君には図書館での仕事があるんだろう、確か勘違いでなければ。生きたままでなければ終えられないやつが」

***

 恋文・・・。「今」の時代のお話は、どうしてもハリポタ風学園ものの印象が強く感じられてしまいます。ここでもまた香りのお話。ライラックの和名はムラサキハシドイ(紫丁香花)。「丁香」(ちょうこう)はクローブ(Clove)のことで「丁子」(ちょうじ)ともいいます。
 薔薇に関する記述の部分ですらドキドキしていた私が、あらかじめ知っていたはずがないじゃないですか。
 この先お花にまで詳しくなっていってしまうのだろうか。

 ジョイニングとコーリングに関する部分。(著者を代弁する)ヴァルヤ、あるいはここではカロネルがとても思い悩んでいる記述が多い。

 個人的には正直「ちょっとくどくないか」と思う。でも、そらそうなんでしょうかね。予め命数が定められている人生、気が気ではないほうが普通であろう。ましてやブライトの勃発がない「平時」においては尚更である。んー、納得はしないが、理解はできます。

 「穢れがウォーデンを狂気と死に導くまで長くて三十年」というのは、実はリード・ライターであるゲイダーさんのチョンボなんですけどね・・・。DAOの中でうっかりそう書いてしまったので変えようがなくなった。

 以前訳した、大勢のUKのファンとのインタヴューで、彼は非常に後悔していると述べていた。

 インタヴュー原文はここ。

http://swooping-is-bad.livejournal.com/1286233.html

 拙訳はここ。(上の記事を5回に分けて訳していますが、その4回目)

http://vanitie3.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/da2tuk-f1c6.html

 

 原文と訳文、それぞれ関連部分を下にコピペしておきましょう。

(原文)

TUK: On that note, you've said that it takes about thirty years more or less between the Joining and the Calling, ish, [DG grimaces audibly and visibly]...sorry! What can accelerate or decelerate that process if anything, or is it something you created that you now regret?

DG: It's something I put in Alistair's dialogue that I now regret! Afterwards I was like, "Wow, thirty years is a long time for that time frame." I didn't really intend when I was writing it, and only afterwards when I went back I said "Oh...I guess it does sort of implies thirty years after you take the Calling, doesn't it..." Sorry, after you take the Joining. That wasn't really my intention. But it's out there now so I'm like, okay, thirty years. But the idea is also that it varies. Thirty years is the maximum that you could probably expect. It's going to vary for an individual according to their willpower and the level of their interaction with the darkspawn. During a Blight you can expect that the Grey Wardens are going to have shorter lifespans. Outside of a Blight the Grey Wardens would tend to live longer. We have instances in the game of people going on their Calling after five or ten years. Alistair's thirty year quote shouldn't be taken as gospel, that's the way I like it.

TUK: I'm really glad you said that because I took it that you wouldn't live past thirty, and it was only the fact that everybody else seemed to think it was the opposite that pulled me with them.

DG: Well, if Duncan was  thirty years old, he would look pretty good for thirty. Yeah, so it's supposed to be a maximum thirty years after you take the [Joining] but it can vary, so I'd say the rule of thumb right now is between ten and thirty years, is the most common.

(訳文)

Q: ジョイニングとコーリングの間は三十年くらいだと言われてましたが(ゲイダーさんが音でも画面でもわかるように顔をしかめる)、すみません! それは伸びたり縮めたりできるものなのか、それともそんな設定をして後悔してますか?

A: アリスターのセリフに後悔してるところがあるよ! 「わあ、三十年とか書いちゃったけど、物語のタイムフレームはみだしちゃったじゃないか!」って。そう書くつもりはなかったんだが、後から考え直して「ああ、コーリング(いや失礼ジョイニング)から三十年後っていう意味にとられちゃうなあ」と気づいた。そんな気はなかったんだ。でももう世に出てしまったので、まあ仕方がない、三十年ね。でもばらつくんだ。たぶん三十年は最長のケースだ。本人の意志とか、ダークスポーンとの関りあい方で違ってくる。ブライトの時期にはグレイ・ウォーデンの寿命は縮む。それ以外の時期は比較的長生きだ。五年後か十年後にコーリングに赴く者の例もゲームにあった。アリスターの三十年説を金科玉条のように考えるべきではない。そんな風に思うのがいいね。

Q: そう言われて本当にうれしくて、私は三十歳までしか生きられないというふうに受け取っていて、他の皆は全員がそうじゃないと考えているように思えることすら、私を間違いのほうに引き込もうとしてると思っていたから。

A: もしダンカンが三十歳だったとしたら、ずいぶん貫禄があるね。そう、ジョイニングから最長三十年だよ。そしてばらつく。だからざっくり言えば十年から三十年の間が一般的ということだよ。

2014年9月27日 (土)

Last Flight 5(2)

 「本物の」アーチディーモンが登場したのは、これまでゲームではDAOのみ。
 小説では・・・。
 実ははじめてなんです。"Asunder"のは、あれは「空想」でしたからね・・・。

***

 兄は気がふれていた。相手は瞬きする間もなくハブルとデンジを葬り去り、そして一方ガラヘルといえば、ジェンロック一匹すら倒したことがないのに、正面からそいつにぶつかろうとしている。

 アーチディーモンも驚いたようだ、そんな感情があればの話だが。翼をさっと広げ、帆のように風を受けるとガラヘルとそのグリフォンとの衝突から身をかわした。アーチディーモンの下半身が前にせり出す。後脚の爪が空を切り裂き、棘のついた尾でガラヘルを打ち据えようとする。 

 それはかすりもしなかったが、そのときイセヤは兄の企みがわかった。アーチディーモンと戦おうとしているのではない。できるだけ長い間やつを混乱させ、仲間を逃がそうとしているのだ。そして彼のグリフォンは、九分どおりやり遂げることができそうだった。
 だがその「九分どおり」が、兄と乗騎の命とりにもなるのだ。 

 幽霊のような紫のエナジーの柱が夜空を切り裂く。アーチディーモンは、光り輝く穢れをガラヘルに向けて吐き出した。だがグリフォンは宙に留まり、眩い「反」光の縁のところで小さな黒い影に見えた。アーチディーモンがデンジとハブルや他の者たちを葬った瞬間に、ガラヘルか、あるいは彼のグリフォンがどうにかして、その必殺のひと吹きがどこまで届くか見極めており、それを丁度避けるだけの間合いを取っていた。
 本当に見極めたのだとしても、または完璧なまぐれだったのだとしても、とても信じられなかった。 

 イセヤは片方の踵でリーヴァスの脇を触り、進路を彼らのほうに向けさせようとした。大きな獣は躊躇し、彼女はリーヴァスが決断に要した何分の一秒の間か、空中で反応が途絶えたことを感じ、それから前に突進して、ガラヘルと丁度反対側に位置するよう、アーチディーモンの右側に出た。

 イセヤにとってありがたいことに、他の誰も自分たちの愚かな真似につき合わなかった。カイヤとタイヤ、そしてアンダーフェルズの部族の男は、ブライトの黒い雲の間を抜け、一目散に視界から逃れようとしていた。あと数分も経てば、彼女たちの脱出は成功する。
 あと数分。二分か三分、あるいは四分。それだけ稼げれば。 
 彼女は歯を食いしばり、リーヴァスを急かした。

 二千フィートのかなたから、風がアーチディーモンの匂いを運んでくる。イセヤのうなじの髪がちくちくした。強烈に不快な、まったく非情な、地下の冷たい死の場所の匂い。ぼろぼろの歯から吐き出すはらわたの、毒にまみれた河底の泥の匂い。全き穢れ。

 同じ穢れの響きがイセヤの心の隅に浮かぶ。アーチディーモンの不思議な呼び声の歌が、微かにほとんど気が付かないくらいではあるがまだ残っており、むしろその全てを聴くことができないために気が狂いそうになる。

 とはいえ、コーリングの前兆であることを知る彼女は、それを聴きたいのではない。だが無視するのは困難、いや不可能だった。締め出すことはできない。あまりに恐れ、あまりに不慣れで、やがて来る試練がいかに希望のないものであるかをあまりに気にかけている。 

 だから彼女は手綱を緩め、リーヴァスに進路を選ぶ完全な自由を与えた。荒っぽい、愚かな賭けだった。イセヤは彼女の新しいグリフォンに、熟練の騎手が何年もの間で築き上げるのと同じ連帯を示すように求めたのだ。
 だがそれしか道はない。

 リーヴァスは躊躇しなかった。グリフォンは空に駆け上り、眼下の戦場から立ち上る温かい空気を力強い黒い翼で打ち、上昇する速度をさらに稼いだ。
 イセヤはその煙い熱気の中に焼けた肉の臭いを嗅いだが、その意味するところを思いあぐねるのはやめた。今はアーチディーモンだけが問題だ。 

 彼女たちは、そいつに急接近していった。一千フィート。五百フィート。そいつの影が彼女たちを覆う。ぼろぼろの翼が、リーヴァスの頭上に崖のようにせりあがる。イセヤは、ドラゴンの表皮からその肉の中の穢れが結晶化したかのように飛び出している、血に塗れた棘の不気味な細部までつぶさに見て取ることができた。
 百フィート。危険空域に入った。やつが首を回してその顎を開ければ、あの一吹きで自分たちを葬り去ることができるだけ近い。

 だがやつは気にもかけなかった。その注意は依然白ぶちのグリフォンとその乗り手たちに釘づけとなっていたが、彼らは今や左に進路を変え、やつの注意を生き残りのウォーデンたちが脱出する方角から逸らそうとしていた。

 イセヤは鞍に寄り掛かり、杖を掲げてフェイドを探った。こちらの世界に魔法の一握りを掴みだし、リーヴァスが右に急旋回する直前、アーチディーモンに向けてラヴェンダー色に縁どられたエナジーを放った。メイジのスピリットの弾丸は、骨の棘が並んだドラゴンの側面に命中し、シューッと音を立てた閃光が皿ほどの大きさの鱗の間で光り輝く。だがアーチディーモンは気づいてもいないようだ。

 だが直後にリーヴァスが激突したのには気がついた。グリフォンは両の爪をアーチディーモンの横腹に深く沈め、鱗と棘をふたつかみ引きずり出す。グリフォンが身体を離すと、濃い、冷たい血が雨のない雲の間に降り注いだ。ドラゴンは魂を切り裂くような音声の悲鳴をあげ、鞭のように尾を空中で振り回す。
 翼を胴体の脇に固く折り曲げ、リーヴァスはその場で落下してそれを避けた。イセヤの胃もグリフォンとともに落下し、喉には恐慌の塊が湧き上がった。隣では、アマディスが悲鳴を上げた。

 アーチディーモンの尾が彼女たちの頭上を払い、それはイセヤの髪の幾筋かを棘で掠めとるほど近かった。巨大な頭を振り返ると、黒い焔が燃える大釜のような目を片方、彼女たちに向ける。あの破壊的な一吹きで薙ぎ払うためには角度が足りなかったが、それも長く続くとは思えない。 

 クロッキーテイルを追撃することはやめ、ドラゴンは空中でその全身を回し、彼女たちの方に向きを変えて来た。
 リーヴァスは踊るように身を翻しながら、がむしゃらな羽ばたきで位置を変え、時折ドラゴンの脇腹に爪を立てては、アーチディーモン自身の身体を盾代わりにし続けた。あまりに巨大なため、その胴体がとてつもない障害物となる。グリフォンが十分接近したままそれを利用し続ければ、彼女たちは安全だった。

 あと二分は持ちこたえられるかもしれない。他のウォーデンたちは視界から去った。イセヤは、皆嵐の向こうでは安全だろうと推測した。ガラヘルも逃げる機会はあったはずだが・・・、彼はそうしなかった。かわりに戻ってきて挟撃を試みた。

 クロッキーテイルが遮蔽物にしていた暗い灰色の雲から進路を変えて現れると、その毛深い耳が速度のため平らになっていた。
 射程距離ぎりぎりのところで、ガラヘルの乗客であるカリエンが蛇のくねった杖を掲げ、フェイドからファイヤーボールを呼び出した。それはアーチディーモンにまっすぐ飛んでいく間に、速度と、その実体を増していった。

 ドラゴンの胴体で緩和されたとはいえ、ファイヤーボールの威力はリーヴァスの毛並みを乱し、皆を熱波で洗った。そして古の神の穢れた表皮を焼き焦がし、そいつに再び怒りの咆哮をあげさせた。

 アーチディーモンは身体を持ち上げ、長い首を振りかざして両方の敵を同時に視野に収めようとしていたが、どう向きを変えようが、一吹きの範囲に収めることができなかった。そして、リーヴァスに背を向けることなく、クロッキーテイルとその乗り手たちに接近することもできなかった。 

 徒労をやめると、アーチディーモンは息を吸い込みはじめたが、あまりに強力な吸引は雲までその喉に引き込み、グリフォンたちの翼の羽根は引き寄せられて前方になびいた。リーヴァスは悲鳴をあげ、アーチディーモンの吸引から逃れようとしていた。クロッキーテイルもおそらく同じように鳴いているのだろうが、ダークスポーンの吸気のせいで、イセヤの耳には何も届かなかった。彼女は紫のエナジーの奔流が来るのを身構えて待ったが、それは来なかった。 

 やつの一吹きは、今度は、純粋な死の渦巻だった。
 アーチディーモンが彼女たちに向けたのは、間違いなく魔法の類であったが、イセヤの知るいかなるものとも違っていた。呪文にはフェイドを意味するものは何もなかった。夢と悪夢の王国のいかなるものも、アーチディーモンが放ったその中には含まれていない。
 それは霊的にも、物的にも、闇の竜巻だった。貪欲な風が彼女たちをその口に引き寄せ、彼女たちの生命の活力を、霊的な力もろとも奪い去ろうとしていた。
 イセヤはアーチディーモンの竜巻が彼女の力を奪っており、近くに引き寄せられるにつれ、その威力が強まるのを感じた。近づき過ぎれば激突することになるが、そのはるか以前に死んでしまっていることだろう。

 彼女にできることはなかった。リーヴァスは全力で竜巻に抗っているが、徐々に負けていた。羽根が翼からもぎとられ、螺旋を描きながら闇の中に消えていく。カラスの羽根のように光沢のあった羽枝はもろく白い骸骨のように血の気を失っている。健康なピンク色だった羽柄も死んだように蒼白で中空だ。イセヤは、自分の手が竜巻に吸われて白くなっていることに気が付いた。向こう側では、クロッキーテイルも抗い、そして同じ戦いに負けていた。

 灰と白のまだらグリフォンの背中ではカリエンがなんとか身を起こそうとしていた。羽根つきの頭巾はもぎ取られ、竜巻の中に消えていた。彼は杖を手離さないよう、両手で必死に掴んでいる。帯に結んであった小袋はあっという間に引きちぎられ、クロッキーテイルの主翼と羽角の柔らかく白い下羽とともに、渦を描いて消えていった。だが、メイジはなんとか起き上がり、アーチディーモンの回りの空に、輝く青い線からなる、獲物を締めつける格子牢を生み出した。

 呪文は、古の神の動きを止めるにはまるで力が足りなかった。アーチディーモンは鼓動一回分だけ金縛りになったが、鱗のついた胴体をゆすって、まるで雨水のように魔法を振り払う。格子牢は粉々になって砕け散った。 

 だが、カリエンがふたつめの呪文をやつに向けて放つまでは持ちこたえた。
 イセヤは、彼がどんな呪文を唱えたのかわからなかった。竜巻に近づくにつれ、彼女の視界はぼんやり霞んできていた。呼吸以外の何に対しても意識を集中することができず、それも急速に困難になっていた。彼女の肺の空気さえ、再び吸い込む前に吸い出されていた。

 それでも衝撃波は感じた。カリエンがアーチディーモンに何を放ったかわからないが、彼の最初の呪文の消え去りつつある痕跡を、激震を伴う強烈な新星の爆発に変えた。それは両方のグリフォンを渦巻の中から叩き出し、空中でどうしようもないほどきりきり舞いさせ、アーチディーモンの近くから飛び去るよりもずっと早く、遠くへ放り投げた。

 イセヤの頭はまるでオーガに殴られたように後ろにのけぞった。口の中が血だらけになり、呼吸を取り戻そうとして喉を詰まらせそうになった。それを必死に吐き出し、一方の手で鞍を掴むと、もう一方の手で杖を握った。腰の回りのアマディスの腕は、まるで締め付ける鉄のガードルのようだ。何度も何度も、上下にも左右にも錐もみし、その間ずっと落下を続けていた。そしてついに、ふらふらになりながらも、リーヴァスが息を切らして態勢を保持すると、ようやく正しい姿勢に戻った。

 リーヴァスは、それをやっとのところでやり遂げた。彼女たちは最初の位置よりもずっと下にまで降りていた。二、三百フィートも離れていない地面に激突するまであとほんの少しだったと思うと、イセヤはぞっとした。

 すでに日はとっぷりと暮れ、ブライトの止むことのない嵐の雲が星空をしみのように汚しており、ダークスポーンの群れと、残りの荒廃した土地を見分けることはできなかった。だがアンティヴァ・シティーは遠くの方で燃えており、その城壁は、まるでその中に呪われた炎を揺らす器のように見えた。

 その夜、一体どれだけの者が死んだのかはメイカーのみの知るところだが、少なくとも、彼女たちは脱出した。
「降りて」 イセヤは彼女のグリフォンに告げた。あまりにも疲れ切っており、あまりにも震えがとまらず、今夜これ以上飛び続けることは考えられなかった。
 彼女たちが生き残ったのは奇跡だった。ワイコムを見つけるのも、また別の奇跡だ。メイカーに対して、一晩にふたつもの奇跡を求めるなど、彼女には気乗りがしなかった。

***

 アーチディーモンとの空中戦ですから、まじめにベタ訳。

 鳥の(ちゅうか鳥のアナロジーを用いたグリフォンの)羽の部位。初めて聞いた(読んだ)日本語もありました・・・。一応調べて訳したので変なことにはなってないと思うのですが。
 "The Masked Empire"の馬に続いて、鳥にまで詳しくなっちゃうとは。

2014年9月25日 (木)

Last Flight 5(1)

 お気づきのとおり新方式なんてほとんど形骸化していて、いつもの「にせ要約」方式に逆戻りしています。それというのも、このLast Flightが読みやすく、解釈しやすいからなんですけどね。
 なんかさくさく進むなと思ったら、Asunder(ペーパーバック400ページ)よりもずっと短い300ページくらいでした。ところが、あれだけ四苦八苦したThe Masked Empireは320ページだから大して変わらない。やっぱスタイルの違いはかなり大きいようです。

 何度か言っていますが、グリフォン・ライダーというこのジャンル、故アン・マキャフィリイ(Anne McCaffrey)の「竜騎士」(Dragonriders of Pern)シリーズとどうしても比べられてしまう。マキャフィリイがあまりにも有名なので、同じジャンルに飛び込むというのは、実はとてもリスキーなお仕事なんですね。ただしあちらはファンタジーのスタイルを借りたサイファイなんで、見かけ以上に似ているわけではないのですが。

***

第五章

5:12 エグザルテド

 アンティヴァ・シティーの鐘々が鳴り渡る。長く大きく轟き渡り、雷鳴が青銅に囚われたかのよう。大音声は耳をつんざかんばかり。 

 イセヤがグリフォンたちの待つ高見まで戻ると、眼下の街が燃え盛っているのが見えた。チャントリーの大聖堂の窓は橙色に輝き、通りは黄金の河のようだ。
 日没ではない。アンティヴァ・シティーが燃えている。煙が厚く空を覆い、城壁からあがる人々の叫び声は鐘の音によってたちまちかき消されるが、同じことを告げている。武器を手に、武器を手に、街が襲撃を受けている。
 ダークスポーンがやってきた。

 ウォーデン・コマンダー・トゥラブは間違っていた。アンティヴァ・シティーは数日も持ちこたえることなどできなかった。ダークスポーンはすでに城門から侵入し始めている。イセヤは、オーガの大きなツノが家屋の回りを動き回るのを見た。人々はいたるところで叫び、逃げ、死んでいた。 

 後から来たデンジが、お前の気にすることではない、ただちにグリフォンに乗れ、と告げた。若いエルフは呆然としたまま頷いた。リーヴァスの背に跨ると、アマディスの手を引きあげた。ヒューマンの女は、ちょうど昨日のイセヤのように後部の鞍に腰を据えた。

 イセヤは手綱を握り、黒い羽根の生えた首の上に前のめりになって、これまで口にするのを夢にまで見て来た一言を告げた。「飛んで」

 リーヴァスは王宮の石だたみに爪を立て、筋肉を固くし、黒い翼を二回羽ばたいて、中空に浮かび上がった。イセヤの顔を風が洗い、めまいがするほどの揺れの中、世界は眼下に小さくなっていき、純粋な陽気さが、ひとときの間ブライトの恐怖を脇に追いやった。彼女は飛んでいた。
 そして足下では、アンティヴァ・シティーが死にかけていた。
 その眺めは彼女の生まれたての喜びを奪い去った。遠目であることと、煙のせいで細部が目に入らないのは幸運だったが、人形のような人々の姿がオーガの手で建物から引きずり出され、炎の中に投げ込まれているのはわかった。組織的な抵抗はどこにもなかった。ときどき、一人きりの、あるいは少数の小さな人影が、ダークスポーンの波に囲まれて戦っていたが、流れに呑まれる小枝のようにあっさりと消え去った。 

 グレイ・ウォーデンはブライトを打倒すると誓ったはずだが、今は逃げ出している。その不正義が、イセヤの喉に棘のように刺さっていた。
「まず、生き残る」 アマディスが後ろで言った。別の女性の声はエルフを身じろぎさせた。彼女が同乗していたことを忘れていたのだ。「生き残り、そして報復する」
「ダークスポーンにどうやって報復するというの? 殺すことはできても、奴らは気に病んだりしない」
「じゃあ、殺しましょう」 アマディスがあまりにあっさり言ってのけたので、イセヤは拍子抜けした。彼女が乗客のほうを振り返ると、相手は無表情に惨劇を見下ろしていた。短い黒い髪だけがアマディスの顔の中で動いていた。

「あなた、何者?」 イセヤが尋ねた。「ただのアンティヴァン淑女じゃないでしょう。剣の扱いに長けている」
 アマディスは笑った。「アンティヴァン淑女のことなんて大して知らないでしょうに。クロウから編みものの稽古を教わる者だっているのよ。でも、たまたまだけど、当たっているわ。私はアンティヴァの生まれでもなんでもない。私の家族はスタークヘイヴンにいる。ここで友人たちや良人を見つけるように送り出されたの。次女は、得られる助けをなんでも必要とするのよ」
「スタークヘイヴンの淑女が殺し屋?」
「中にはいるわ」 アマディスは微笑んで見せたが、冷たい黒い瞳は笑っていなかった。「中にはとても長けている者もいる。ブライトのときには役に立つ、そう思わない?」

 イセヤは前に向きなおり、髪を耳の後ろにまとめた。固く結んでいたが、グリフォンが速すぎて、またほつれてしまったのだ。顔を風に向けていなければ、長い茶色味を帯びた金髪は瞳を無残に打ち据えてしまう。「殺さなければならないダークスポーンの数は多い」
「そうでもない。たった一匹でしょう? アーチディーモンを倒せば、ブライト全体が崩壊する」

 アマディスが話す間にも、ブライトの奇怪な嵐はふたりの目前に広がっていた。病んだ紫色の稲妻が灰色の幕を突き刺し、あらゆる方角の雲を切り裂いて、その下腹に幽霊のような光を投げかけていた。
 その嵐のただ中をアーチディーモンが飛翔していた。その翼はぼろぼろで巨大、胴体には曲がりくねった棘の筋。瞳には不吉な炎が燃えている。外見はドラゴンに似ているが、内部がそれほどまでおぞましいドラゴンなどいない。闇がその回りを取り巻いており、闇こそがその魂だ。

 そいつは、放たれたばかりの矢のように空を駆け上り、重力などあっさりと無視して、編隊の先頭を飛ぶグリフォンを追撃した。紫色の「反」光の奔流がアーチディーモンの顎からほとばしり、そのとき覗かせた一本一本のぎざぎざの歯が、一瞬だけ悪夢のように鋭く浮き出て見えた。 

 そしてグレイ・ウォーデンたちとそのグリフォンたちが錐もみし、螺旋を描きながら、まるで黒ずんだ雪片のように落下していった。イセヤにはどれがどれかわからなかったが、それらの、ダークスポーンの群れの中に堕ちていく小さくなった姿は、デンジと、ハブルと、アンティヴァの女王、そしてその父なのか叔父なのかわからない誰かだった。さらには彼らの乗っていたグリフォン、ブラックタロンとスクリアクス、最良の二頭だった。 

 苦い衝撃に揺さぶられ、彼女の舌の上に突き刺すような痛みが走った。トゥラブも他の者たちも、もちろん彼女に警告を与えていたが、彼らが死ぬことがあるなんて、実際にはまったく信じていなかった。こんな風に、あっけなく、戦らしさの欠片もなく死ぬなんて。彼女は、彼らの悲鳴さえ聴いていなかったのだ。

「こっちに来るわよ」とアマディスが言った。
 彼女の言うとおりだった。邪悪な空にその翼を大きく広げると、アーチディーモンは向きを変え、残りのウォーデンたちの方に向かって素早く滑空してきた。その後ろでは、雲から雲に伝わるように光る稲妻が、積乱雲の大きく太い柱の間を水平に、ジグザグに走っていた。

 イセヤは、鼓動一回分の間だけ、鞍の上で凍り付いた。それから彼女は、ガラヘルが進路を変え、迎撃に向かう様子を見てとった。気でもふれたのか

 彼が選んだ白ぶちのグリフォンは驚くほど速かった。クロッキーテイルは翼を胴体に寄せて折り曲げ、脚を固く縮め、まるで急降下するハヤブサのように空中を切り裂いていった。アーチディーモンが他のウォーデンたちに取りつく前に、そのグリフォンが辿りつくのは不可能に見えたが、イセヤがその二体の角度と軌道を見ると、どうやら兄は、それを狙っているらしいことがわかった。

*** 

 ええ・・・。主要登場人物リストとか、まだ作成をはじめなかった理由がお分かりになったかと思います。

 

Last Flight 4(2)

 んー、なんとかの軌跡IIが本日到着した・・・。メイカー、我に艱難辛苦を与え給え?

***

 若きウォーデンたちが降りると、広間に人影はなかった。壁を伝う薔薇は長い昼の陽ざしの後の黄昏の中で萎れ、王宮室内の白檀の香りの風にそよいでいる。その薔薇の花と、棘のついた枝の間を飛び回る黄色い胸をした小鳥たちの他、動くものはなかった。衛兵も庭師も持ち場を放棄したようだ。

 話が広まったんだろう、とガラヘルが言った。彼の顔から気さくな笑いは消えており、手は帯に差した黒い握りの二本のナイフから離れない。もし民を恐慌が襲ったなら・・・。
 イセヤは背負っていた杖を取りはずした。ルーンをあしらった鋼鉄が魔法のうなりをあげる。彼女は金属の中にフェイドからの奇妙な反響を、この世のものとそうでないものの両方とも感じることができた。彼女はその雰囲気のエナジーを、意志の力で炎にも、稲妻にも、氷にも変えることができ、また純粋な全き破壊をもたらすこともできる。 

 だが、いくらその力を実感したとしても、それを実際に他人に向けるとの考えは彼女の胃を軋ませた。杖を固く握りしめ、不気味に空っぽな広間を進んでいきながら、本当に戦いがはじまると思うか、と傍らを行く兄に尋ねた。
 そうでなければいいが、とガラヘルが答える。だが民が自らの主君たちから裏切られたと考えれば・・・。

 民はそう考え、暴力に訴えた。イセヤは、青銅製の大きなドレイクの彫像を曲がったところで、最初の犠牲者を目にした。当初彫像の翼に隠れていた女性の亡骸が徐々に姿を現す。彫像の目の紅玉のような色の血が、犠牲者の雪のような純白の衣裳に染み渡っている。金の縁取りのある袖から、彼女が王族か、そうでなければ貴族であったことがわかった。身を守った証の傷が皆無であるので、不意打ちを受けたのに違いない。伏せたままの顔はよく見えない。イセヤは、女性が苦しまずに死んだことを祈った。

 まだある、とガラヘルがぶっきら棒に言って、女性の屍の横を通り過ぎた。直後にイセヤも、干戈の交わる音、フェイドから魔法がこの世に持ち込まれるときのシューッという音を聴いた。
 音の出どころは謁見の間だった。一斉に気が付いたウォーデンたちは、一団となって駆け出した。
 アンダーフェルズの男が誰よりも早かった。エルフたちを追い越した彼が部屋の扉を開けた。

 中は戦いの真っ最中だった。ハブルとデンジが机を一つ横倒しにして盾がわりにしている。彼らの目前には半ダースもの衛兵の死骸が、デンジの魔法で焼け焦げたり凍りついたりして、またハブルの剣で斬りつけられたりして横たわっていた。その倍の数の衛兵たちがまだ立っており、血に飢えた叫び声が壁にこだましている。

 エラウディオ王もまた、その屍の中に横たわっていた。彼自身の衛兵の手にかかったのだ。アンティヴァン近衛兵の曲刀が死んだ主君の胸に垂直に刺さっており、その黄金の飾り房は鮮血に染まっていた。
 女王はまだ生きており、一握りの怯えきった貴族たちとともに玉座の影に隠れている。グレイ・ウォーデンがいる限り、敵は彼女たちに手出しすることができないが、ハブルもデンジも疲労困憊しているように見えた。

「臆病者を手渡せ!」 叛逆した衛兵のひとりが叫んだ。「おれたちの敵は貴様らではない! 裏切り者の恥知らずどもだけが望みだ」
「渡さないよ」 デンジが薄笑いで返した。「連れ出すように命じられてるんだ。私らは命令に背いたりしない」 扇状の氷が彼女の杖からまき散らされ、二人の男を立ったまま凍りつかせた。三人目の男が、この世のものでない冷気から身を守ろうとして腕を掲げたが、凍り付いた血が深紅のつららとなって自分の身体から飛び出してくるのを見て金切り声をあげた。 

 扉が開くと何人かがそちらを振り返った。ガラヘルが跳び込んでいく。彼とアンダーフェルズの刺青男は横に並んで、まるで何か月も一緒に稽古をしてきたかのように戦った。アンダーが刃のついた戦用の棍棒を大きく振り回すと、エルフは素早く前後に動き、態勢を崩した敵の弱点を見つけるや否や、尽く突き刺した。

 二人の後ろではイセヤが、フェイドから魔法を可能な限り早く呼び起こし、スピリットのエナジーを形作る間も惜しんで、パチパチ音を立てる紫色の玉に変えて敵に投げつけた。彼女の急ごしらえの呪文は敵を殺すまでには至らなかったが、衛兵たちはその弾幕によろめき、他のウォーデンたちにとどめを刺された。 
 彼女は恐怖も、他者を傷つけることに対する罪の意識も忘れていた。敵対する存在を全て破壊したいという衝動的な欲求だけを感じていた。

 そして戦いは終わった。二組のグレイ・ウォーデンに挟まれ、残りの衛兵たちもすぐに倒された。最後の二人が降伏を申し出たが、その懇願の最中にデンジが別の氷の扇で息の根を止めた。

 アンダーは胸と腕からだらだらと流血していたが、傷は見た目ほど深くはなさそうだった。ガラヘルも眉のところに切り傷をこしらえ、敵の鎖鉄球が当たった横腹がすでに痣になっていた。どれも魔法の力で介入しなければならないほど重傷ではなく、それらを除けばウォーデンたちは無傷だった。

「ここから連れ出すんだよ」 デンジが、生き残った貴族たちのほうを身振りで示しながら命じた。「今すぐに」
「王はどうするの?」 カイヤが神経質そうに尋ねた。つるつる頭の少女は、イセヤがそう感じているのと同じくらい具合が悪そうだ。切迫した戦いが済んだ今、自分たちが造り出した惨状を目の当たりにする機会が生まれていた。

「ダークスポーンが殺した」とデンジがあっさり答えた。「王が最期の瞬間にその民の造反にあったなんてことを世界中に知らしめることはできないし、どのみち間違っていない。ブライトがアンティヴァ・シティーを呑み込まなければ、こんなことははなから起きなかった。ダークスポーンこそが、エラウディオ王の死の原因、直接的かどうかはともかくね」
「でもそれは事実と異なります」 女王が突然言葉を発し、立ち上がった。その蒼白の頬には幾ばくか血の気が戻ってきていた。
「それはまるで違う」
「あなたの民の士気を挫かないためには、それが事実なんだ。後からいくらでも議論をふっかけていただいて結構、そんな贅沢が許されるのであればね」とデンジが言った。彼女はきびきびと動いて貴族たちを前に連れ出し、若いグリフォン・ライダーたちにひとりづつ手渡していった。ハブルがひとりひとりの名前を告げたが、イセヤはこんがらがった肩書きも、神聖なる家名も、はなから覚えておくことができなかった。

 彼女の乗客は小柄な、たくましい身体をした三十がらみの女性だった。彼女の滑らかな黒髪は、上流の貴族というよりも、まるで兵士のように短く刈られていた。アマディスと言う名だったが、イセヤはその家名まで聴きとることはできなかった。

 だが彼女は、隠れていた場所から出てくるや否や、アマディスが即座に衛兵の屍から武器を奪っていたことに気づいていた。黄金の飾り房の付いた曲刀と、三本の曲がったダガーを選ぶと、そのヒューマンの女は小型の刃物を帯に差し、手慣れた様子で並べ直していたので、初めて剣を手にしたわけではないように思われた。

 ガラヘルの乗客はカリエンという名だった。年配で、背の高い、赤と黄金のメイジのローブをまとった男だ。羽根つきの頭巾で顔は見えなかった。イセヤの印象に残ったのは、とがった顎と蒼白く薄い唇、そして濃い茶色の髪の毛だった。彼の杖は、稲妻に撃たれて死んだ木の枝に巻き付く銅の蛇の形に似せて造り上げられていた。職人芸は卓抜であり、杖の全ての部分が力を意味しているが、イセヤは、戦いの間に彼が何かをしていた姿を目にしてはいなかった。
 彼女はそれをいぶかしく思ったが、それも短い間だけだった。目の前で王が弑されたにも関わらず、彼にとってはそれすら脅威ではなかったのかもしれない。

 カイヤとタイヤは残りの二人の貴族を乗せることになった。王が死んで欠員が生じたため、アンダーフェルズの男には割り当てがなかった。残りのふたりのうち一人は、きつめの白い頭巾をかぶったずんぐりしたご婦人で、輪の中にメイカーの輝く太陽を描いた黄金のペンダントを身に着け、それを両手で握ってひと時も離さなかった。残りのひとりはその娘だろう、とイセヤは思った。若くてやせているが、丸いほっぺの顔がよく似ていた。

「では」 最後の貴族を騎手のウォーデンに紹介し終えると、デンジが言った。「行こう。ワイコムが目的地だ、忘れるな。私らが遅れても、決して待つな。皆の任務は乗客たちを無事逃がすことだ。それだけがお前たちの任務だ。彼らを救うためにグリフォンをあてがった。ぬかるな」

*** 

アマディス Amadis
カリエン Calien

 名無しの男は「アンダーフェルズの男」と呼んだり、「アンダー」と呼んだり。ちょっとわかりにくいかもしれないが、DAワールドの国名表記はとても洒落ている。アンティヴァ人はアンティヴァン。フェラルデン人はフェラルダン。オーレイ人はオリージャン。アンダーフェルズ人はなんとアンダー。そして複数だとアンダース。

 つまり、リアル地球でも国名とその国籍名の呼び方がさっぱり統一されていないのを真似している。特に英語の場合はエイジアン(すでにここからはじまってますよ、奥さん)が安易(笑)。ジャパニーズ、タイワニーズ、ヴェトナミーズ、バーミーズ(ビルマ人ね)、なんとかニーズなのに、なぜか突然カンボジアン、なんとかリアン。呼びやすいものを欧州の真似して後付しただけなんでしょうね。

 ゆえに、フェラルデン人とかオーレイ人とかいう無味乾燥な言い方をしたくないので、お付き合い願いたいところです。

Anderfels、アンダーフェルズ。国名、地名。
Ander(s)、ここでは、アンダーフェルズ人。形容詞ならAnderで、「アンダーフェルズの」

(余談)騒がれていたスコットランドですが、スコットランド人はスコット(scot、またはスコッツ、scots)と呼ばねばならない。あるいは本来のスコティッシュ(Scottish)。これをスコッチウイスキーだからといって、スコッチ(scotch)と呼んではならないそうです。非常に良くない意味なんだって。もちろんウイスキーを頼むときはスコッチです。

 あたしゃ、スコットランドが独立した暁には、ハイランド・モルト・ウイスキーがめちゃ高くなると聞いて大変心配していたのだ(それだけかよ!)。

 DAのアンダーフェルズとアンダー(ス)の関係は、きっとこのスコットランドとスコット(スコッツ)の関係からきてんじゃないでしょうかね。他に類似の例があったら教えて下さい。

Last Flight 4(1)

 グリフォンの名前の読み方にも苦労します・・・。発音がいまいち不明なのと、そもそも名前には含意があるので、それを日本語に訳するのと二重に。

***

第四章

5:12 エグザルテド

 グリフォンは注意深く選べ。五頭のグリフォンが休み場としている高見に向かう途中、トゥラブが五人の若いウォーデンたちに助言した。ガラヘル、イセヤ、つるつる頭の双子の姉妹であるカイヤとタイヤ、そしてむっつり黙り込んでいる、身体中に部族の刺青が入ったアンダーフェルズの男だが、彼の名をイセヤは知らなかった。

「これから何年もの間の人生を共にする相棒を選ぶのだ。ともに食べ、戦い、長く孤独な守りにつく。おぬしらの命、おぬしらの相棒の命は、おぬしらがグリフォンたちと分かち合う信頼に負うことになる。損なえば、これまでになく最悪の敵を作ることになるぞ」
「女房みたいだな」 とぼとぼと後ろに続くガラヘルが苦笑いした。

 トゥラブは取りすまして頷いた。「うまい言い方だ。おぬしの奥方が、おぬしの六倍の目方があって、飯どきにヤギを生きたまま喰らって、脚一本だけでおぬしの体中の骨をボキボキへし折ることができるならな」
「クナリをたらしこんだことも、一度あるけどな」とエルフがぼそぼそ言った。
 それは、ウォーデン・コマンダーから鼻先の笑いを勝ち取った。 

 目的の場所に辿り着くと、ドワーフは他の者たちに道を譲った。長い登りの後で、イセヤは紅潮し、汗をかいており、姉妹はつるつるの頭に輝く汗をぬぐっていたが、トゥラブは息さえ乱していなかった。 

 ここにいるのは、訓練を終えたばかりか、先の乗り手をブライトの戦いで喪ったグリフォンだ、とトゥラブが言った。フェナダールや他の者たちが脱出直前にここに運んできた。良い相棒が見つかるはずだ。トゥラブは助言もするが、最終的に選ぶのは若い彼らとグリフォンだ。

 イセヤは陽光を遮りながら身繕いしているグリフォンたちを見た。遠くから近づいていくことにした彼女は、不思議と人見知りするような感覚を覚えた。獣たちはいつも思っていたよりも大きく、より美しかった。 

 たくましい黒いメスが、エルフが近づくにつれ頭をあげた。瞳は他より明るい琥珀色で、深い黒色の羽根の中で黄色のダイヤモンドのように輝いている。嘴に薄く入っている亀の甲らの印の表面はざらざらで、縁の近くではかすれていた。彼女がこれほど息を奪われるものを目にしたことは、今までにない。

 そのメスはまた怯えていた。首の横には、毛のない灰色の肌が剥き出しになった長い筋が残っている。回りの羽根が生え揃っていないことから見て、最近の傷が魔法の力で治癒されたに違いない。

 名前は何、とエルフがつぶやき、グリフォンの装具の前の名札を見た。
 リーヴァス。彼女は声に出して読んだ。エルフの言葉で、「自由」。
 その名が呼ばれるのを聞くと、グリフォンのふさ毛の生えた耳が上を向いた。嘴を開いてひと声啼くと、大きな頭をイセヤの肩にいきなり乗せてきた。ライオンのような麝香の香りが鼻一杯に広がり、グリフォンの顎の回りの血流と骨髄も感じられた。

 重さに耐えかね、イセヤは膝を屈したが、それを気にかけてもいなかった。決まったみたい、彼女は通りかかったウォーデン・コマンダー・トゥラブにそう告げた。
 ドワーフは立ち止まり、ひげ面が思慮深げになった。そのようだ、と彼は合点した。リーヴァスは前の乗り手をほんの二、三週間前に喪った。ダルシラルというデーリッシュ・エルフだった。トゥラブは彼女に、彼を知っているかどうか尋ねた。

 イセヤは首を振った。ただ同じエルフだからという理由で、全てのエルフがお互いに知り合いだなんて、どうしてそんな風に考えるのだろう、と少し苛立つ気持ちになったが、長続きはしなかった。彼は率直な疑問を述べただけであり、自分のグリフォンが決まったという畏怖と幸せのただ中で怒りを持続させることなどできなかった。

 彼は良きウォーデンだった、とトゥラブが言って、彼についての記憶を振り払うようにしばらく黙り込んだ。リーヴァスは、跳びかかってきたオーガに引きずり降ろされ、殺されかけた。ダルシラルが命を捨てて乗騎を救った。それ以来扱いが難しくなった。飼育長に言わせれば乗り手の死を嘆き、そして怒っているのだそうだ。立ち直らせることができれば、軍団にとって大きな貢献となるだろう。リーヴァスは最良のグリフォンのうちの一頭だからだ。

 彼は、鎧を陽光で輝かせながら歩み去った。イセヤが向き直ると、グリフォンは話をするトゥラブのほうを見ていたようだった。
 そうなの? 彼女は囁いた。嘆き悲しんでいるの? 
 リーヴァスは再び鼻を鳴らして他の仲間を見回した。だがイセヤが歩み寄ると、彼女も一歩近づき、イセヤのことを温かい獣の羽根の臭いで包み込んだ。

 ガラヘルは、四十フィートほど離れたところで、奇妙な姿のオスのグリフォンの首を掻いていた。その獣は、まだ成熟しきっていない若くひょろっとした体形で、その色はとても風変りだった。大きな白い斑点が腹から身体の前四分の一を覆っており、それ以外は茶色っぽい灰色のまだらだった。

 グリフォンのほとんどは様々な灰色をしている。完全な白色または黒色のものはごく稀な存在であるが、ぶちは尚更少ない。戦さ用のグリフォンは、その色ではなく、速度、知能、技倆で選ばれるが、灰色のものが支配的だった。他の色は劣性で、ウォーデン部隊ではめったに見かけない。 

 ガラヘルの新しい友は、その色だけが奇妙なのではなかった。一方の耳は、通常のように先端が後退しているのではなく前に垂れ、尾は急にかくんと曲がって毛が大きくふんわり広がっており、ほとんどのグリフォンが持つ長い流線形のライオンの尾ではなく、キツネの尾に近かった。 

 全体から見て、その若いオスは極めて風変りな見かけのグリフォンだった。そしてそのオスは、ガラヘルが首を掻いてやるとごろごろ喉を鳴らしていた。エルフの胸に頭を押し付け、兄をそのまま押し倒さんばかりだった。

「変わった鳥ね」とイセヤが呼びかけた。
「もちろん」とガラヘルが答え、苦しそうに息をした。とはいえ、のけぞらされているのが嬉しそうであり、また即座に前より熱心にグリフォンの首筋を掻いていた。「こいつに決めた。英雄に似つかわしくない者たち、それがおれたちだ」
「名前は何?」

「サンダー、銘板によれば『雷鳴号』だとさ。でも、ピンとこないと思わないか?」 ガラヘルはグリフォンに尋ねた。
 大きな獣は両耳を垂らしてシューっと啼き、舌を突き出した。エルフは、その反応にもったいぶって頷いた。「そう思ってた。じゃあ他のを考えよう。オッドバード、『いかれ鳥』とか。スクラフィー、『ださださ号』? 違うな、あまりにベタだ。スクラグルビーク、『もじゃもじゃ嘴』? うーん、まるで髭剃りが必要なおいぼれの海賊みたいだ。ああ! わかった。クロッキーテイル、『ひん曲がりしっぽ』だ!」

「クロッキーテイル」とイセヤが繰り返した。「戦さグリフォンの名前が、クロッキーテイル
「その方がいいよな?」とガラヘルが甘い声を出して、グリフォンの喉のあたりを掻いた。
 イセヤはそれ以上口出しすることをやめて舌を噛んだ。この世には、兄が自分のグリフォンに下らない名前をつけること以上に憂慮すべきことがいくつもある。そして実際、セダスのグリフォンでたった一頭、馬鹿臭い名前をつけられるのだとしたら、このオスであるに違いない。誰もこの哀れな獣のことを真面目に考えたりしないからだ。

 数分後には、他のウォーデンたちも選び終え、または選ばれ終えた。彼らは荷物袋を積み、新しい乗騎に鞍を置き、手綱を調節した。イセヤが驚いたことには、誰ひとり取り残されず、またそぐわない相棒と組まされたわけでもなかった。ガラヘルが唯一奇妙な一頭を選んだが、他の仲間たちは、彼女と同様、新しい相棒としっくりいっているようだった。

 普通であれば、皆一緒に訓練するのだが。皆が相棒を選び終えると、ウォーデン・コマンダー・トゥラブが言った。ワイズホプトの周囲の気楽な飛行、標的への接近攻撃訓練、急降下と着地の訓練、ゆっくりと徐々に進める訓練。それが何か月もの間続く。

「だがそんな暇はない。ブライトが始まっており、日没前、ダークスポーンの襲撃が始まる前に、この場所から脱出しなければならない。戦場に出る最低限の訓練は済んでいると思うが、戦いは避けてほしい、おぬしらの任務は、あてがわれた乗客ひとりを安全に脱出させることだ。わかったな? ダークスポーンと交戦はしないし、どこかに踏みとどまりもしない。空に、高く、舞い上がり、アンティヴァ・シティーから乗客をできるだけ早く外に逃がす。ハブルとデンジが同行するので、その指示に従え。だがはぐれたら、あるいは彼らがやられたら、ワイコムを目指せ。何か質問は?」 

 イセヤは皆と一緒に首を振った。どこから尋ね始めればいいかわかっていたら、質問はあったかもしれないが、事態の変化はあまりに大きく、あまりに早かった。他の者たちも誰も口を開きたがらないようだった。
 トゥラブは入念に皆を見渡し、それから首を垂れた。そして、謁見の間に戻り、シニア・ウォーデンたちと合流することにしよう、と告げた。

 リーヴァスの鞍から降りるのは難儀だった。イセヤは自分の新しいグリフォンと初めて出会い、最初のもろい絆ができつつある今、そこから離れたくはなかった。心の中では、任務の見通しの暗さから来る恐怖と、とうとう正式のグリフォン・ライダーになったという歓喜が互いに争っており、ウォーデン・コマンダーはそれを狙ってお膳立てしたのかもしれないと思った。避けられないかもしれない運命に直面することから、これ以上気を紛らわせてくれることはないからだ。

 それでも運命に直面しなければならないことに変わりはない。渋々ながら、彼女はリーヴァスの背から降り、傷のある首筋を叩いて別れを告げ、ウォーデン・コマンダーに続いて王宮の涼しい青色の翳の中に戻った。

***

 こういう部分、動物好き、特に猫好きだったりすると「わかるわかる」、「あるある」なんですかね・・・。猫とグリフォンは違うけど。ライオンやワシ・タカを飼っている人は稀だろうけど。
 繰り返し登場する動物の匂いの記述。私は苦にしないし、アレジー(アレルギー)になったこともないが、イヤな人は本当にイヤなんだそうですね。

 ちなみにムスク(musk)は麝香の(ような)香り。麝香(ジャコウ)は知る人ぞ知る、オスのジャコウ鹿のメスを引き付けるいわゆるフェロモン的な分泌物。
 そして「ライオンのような麝香の香り(leonine musk)」と言われると、日本語ではもう何が何だかさっぱりわからない。「ライオンの匂いのような、ジャコウジカの分泌するジャコウの香りのような香り」?
 「カモシカの脚のような脚」ネタに通じるものがある。

 セダスに「ライオン」ていましたっけ? ああ、オリージャンが獅子の紋章を用いているか。
 じゃあ(ナグ以外に)「ブタ」っていましたっけ? だいたいブタは野性にはいないよね。「ヤギ」はいるんだな。「ヒツジ」はいるのかしら?
 動物ネタ、色々突っ込みたくなるところはありますが、ま、ざっくり現在の地球と同じような生態系ってことになってるんでしょうね。

 グリフォンの飼育長は原文では"roostmaster"。"roost"はニワトリなどの小屋。いくらなんでも小屋番ではないでしょう。馬でいうところの厩舎長ですね。ところが"stablemaster"というとこれは相撲部屋の親方(笑)。競走馬の世界の厩舎長は"head lad"だそうだ。おそらくブリティッシュ。同じくブリティッシュで"Master of the Horse"というとこれは由緒正しい貴族の職名で「主馬頭」。古代大陸国なら「司馬」。"Last Flight"の世界で言ったら、グリフォン・ライダーの指揮官である"High Constable"を指す役職でしょうね。

カイヤ Kaiya
タイヤ Taiya

リーヴァス Revas
(当初「レヴァス」とやっていたが、日本語で書きにくい・読みにくいのと、テキスト読み上げが「リーヴァス」とハッキリ発音しているので、それでいいかと)

クロッキーテイル Crookytail
(crookは「クロック」に近いんですね。これもテキスト読み上げどおり)

(すでに作中で亡くなっているキャラクター、グリフォンの名前の候補などは省略・・・)

Last Flight 3(2)

 ブライトに関する言葉では、Corruption。Taint。ここら辺の日本語にずっと前から困っているのです。Taintは、普通に「汚染」でいいかもしれない。格好つければ「穢れ」ですが、「不浄」を含む深い意味を持つ言葉なので使うのは逡巡する。「汚穢」(おわい)となると一般的には意味が違う。

 Corruptionは、一般には「腐敗」(古くは生物学的な「腐敗」や冶金学的な意味の「腐食」でもあったが、今はもっぱら「汚職」など社会的・政治的な意味に用いる)、あるいは「堕落」や「頽廃」だったり。もちろん(薬物犯罪などの)「汚染」のときもある。ダークスポーンの世界に「堕ちる」意味をコノートしてるんでしょうね。こっちは難しい。グレイ・ウォーデンがアーチディーモンの歌の調べに眩惑されるのは「堕落」を連想させるのですが、なにも自ら望んでなるわけではない。

 変な言葉を編み出して悦に入るのは嫌いでもあるので、ここでは不浄をも意味する「穢れ」がいけそうなので用いることにします。残念なことに、(ごくまれな例外を除いて)グレイ・ウォーデンのCorruptionに禊(みそぎ)はなく、待つのはただCallingのみなのですが。

 下にいきなり登場します。

*** 

 「それが、穢れだ」 後に、兵舎で夕餉が供されるのを待つ間、ウォーデン・コマンダー・トゥラブが彼女にそう告げた。イセヤは、このいかつい見かけのドワーフに近づく勇気をついに振り絞ることができたが、予想に反してとても話しやすい相手であることを知った。赤い剛毛の顎ひげと傷だらけの灰色のプレート・メイルの下には、部下思いのコマンダーが隠されていた。

 彼は、古参も新参も含めて全ての者の耳に入るよう、声を張り上げたが、概ね新米に向けられたものであるのは間違いない。「穢れは、我々にダークスポーンの存在を察知する能力を与え、汚染から身を守る力を与え、やつらと同じ経験をももたらす。アーチディーモンの呼び声もそのひとつだ。コーリングのとき聴こえるのと同じものだが、穢れが骨にまで染み渡るにつれ、より強くなる。あまり長く待ちすぎると抗うことができなくなる。おぬしらの責務は、まだ選択ができるうちにコーリングに応じることだ」

「アーチディーモンの声を聴いたら進行は早まるのですか?」とイセヤが尋ねた。
 トゥラブは鋼鉄とシルヴァライトの鎧を鳴らしながら肩をすくめた。「かもしれん。我々それぞれにとって訪れ方は多少異なる」
「うん、そいつは楽しみだ」とガラヘルが言って、両膝を両の掌で叩いた。「おっ、見ろよ、食事が来たぜ。その話を聞いたおかげで、食欲が俄然湧いてきたみたいだ」

 イセヤは、兄のおどけ振りに対して微笑もうとさえしなかった。 給仕が運んできた台車の上からお椀をひとつ手に取り、パンとシチューで満たした。食事はどれも味がしなかった。甘い蜜のケーキでも、発酵した豚の糞でも、彼女には同じに感じられただろう。

 グレイ・ウォーデンに選ばれたときは大変な誇りを感じたものだった。ウォーデンが最良の者しか徴用しないことは誰でも知っていた。最も鋭敏な弓手、最も才能あるメイジ、最も賢い戦術家。ヒューマンの街でエルフが置かれた奴隷もどきの身分から脱して、兄とともに、自分の気概をより差別の少ない立場で試す機会だったのだ。

 もちろんコーリングについては知っていた。ウォーデンたちが、ジョイニングの儀式で摂取したダークスポーンの汚染にいずれ抗し難くなって狂気と死に導かれることは、グレイ・ウォーデンのことを知る者なら誰でも知っていた。三十年かそれ以上はかかるが、最後には、それだけ長生きすることができた者は一人残らず屈服せざるを得ない。唯一の選ぶ道は、ディープロードに身を投じ、命果てるその時までできるだけ数多くのダークスポーンを葬り去るという自殺任務を遂行することだ。それがコーリング。それ以前に死ぬことを免れたウォーデン全員を待つ定めであり、ウォーデンたちに影のように付きまとう、予め決められた運命だ。 

 だが、それはいつもずっと遠い先の話に思えた。現実離れしていて、悲劇的であり、まるで物語の最後で主人公が陥る結末のようだ。自らの生命の炎を断ち切るなど、今までイセヤが想像することができた事柄には含まれていなかった。群れの光景と、アーチディーモンの歌声の響きが、そのひとりよがりの思いを揺さぶっていた。
 彼女は味のしない食事を摂り、思考もやめて飲み、空になった器を給仕の台車に戻したことさえ覚えていなかった。

 食事が済むと、ウォーデン・コマンダー・トゥラブと、ハブルを含む最も古参のシニア・ウォーデンの何人かが、王と女王に二度目の謁見をするため立ち去った。残りの者たちは暇つぶしのカードやダイスに興じたり、アンティヴァ・シティーにやってくる前の、下品で、多くはまずありそうもなさげな武勇伝を披露しあっていた。 

 彼女は輪の中に加わらず、ほとんど話を聞いてさえいなかったが、ガラヘルが次から次へとほら話を騒々しく披露して、聞き手たちの耳障りな笑いを取っているのは聴いていた。兄には、仲間たちの心から不快な考えを消し去って、ついでに自らも気晴らしをするという才能がある。彼女にその力の持ち合わせはなかった。彼女は、ウォーデン・コマンダーとその一行が戻るのを待つため、ただ座っていた。 

 彼らがしくじったことは、その険しい顔に書いてあった。

「女王はまだ戦いを欲している」とトゥラブがしゃがれたバリトンで皆に告げた。「そして、彼女がその思いをあまりにはっきりと知らしめたため、アンティヴァ・シティーにはもはや選択の道は残されてない。事実上すべての五体満足な船長は安全な沖合に船を出し、すべての身体の不自由な船長たちは、船員たちから見捨てられた。昨日行動を起こしていれば、王と女王は秩序ある脱出に寄与することもできたかもしれないが・・・、今となっては、この王宮の者たちを脱出させるに足るだけの船さえ残されてはいない」

 ウォーデンたちは、その報せに静かに聞き入っていた。それからガラヘルが金髪の巻き毛を片手でかきあげると、答えのわかりきった問いを発した。「それでどうするんです?」
 トゥラブは残念そうに首を振った。赤ひげをまとめている小さな真鍮の輪が互いにぶつかって音を立てた。「忠義深い船長たちの船が三隻残されている。それらを用いてできるだけ多くの戦力を脱出させる。メイジ、弓兵、テンプラー。ブライトと戦うに際して著しい能力と技倆を有する者、誰であってもだ」
「そして政治的なコネのある者たち」 傷のある女性ウォーデンが蔑むように言った。背にした長く黒い杖がメイジであることを示しているが、イセヤは面識がなかった。

「そうだ」とトゥラブが認めた。鎧を着けた片手を掲げ、ウォーデンたちの不満げな呟きを抑えた。「彼らも戦力に相違ない。我々が徴用できる兵隊を保持している者もいる。支援を提供できるだけの領地を保有している者もいる。我々には食糧、軍馬、武器、補給、そして資金が要る。商人たちと貴族たちはそれらを提供することができる。故に価値がある」
「一方で貧しく、我々に何も提供できない者たちは、ダークスポーンのただ中に置き去りにされる」 女性ウォーデンが鼻を鳴らした。「それで、私らは何様になるつもり?」

 トゥラブは肩を回してすくめ、やりかけのカード遊びの席の真ん中に置いてあったエール酒の入ったマグを取るために部屋を横切った。「ダークスポーンよりはまだましだろう。メイカーズ・マーシー、デンジ、これはブライトなんだぞ。好きでやってると思うか? 間抜けな王族たちがだらだらと無駄に余計な一日を過ごしたあげく、救えたはずの何百人もの民が死ぬんだ。それでもまだ最悪の部分じゃない。我々自身が王族たちを運び出す。他の者たちの脱出は海路で行うが、エラウディオ王とその女王は、その他一握りの取りまきたちとともに、グリフォンに乗せてアンティヴァ・シティーから連れ出すことになった」

 傷のあるメイジ、デンジがあまりにも大きくのけぞったため、杖が後ろの壁に当たって音をたてた。「誰が乗せるの?」
「おぬしとハブルだ、実のところは。ブラックタロンとスクリアクスが、最強最速のグリフォンだからな。空から襲う最悪の脅威から逃れる可能性が一番大きいだろう。オスティヴァー、フェナダール、それから他のメイジたちは船で行く。彼らの才能は海上での戦いになったとき最も役に立つ。私も彼らと同行し、船長たちとその護衛たちが、契約を履行するのを見届けなくちゃならん。残りの者たちは他のグリフォンに乗る。全員が乗客を乗せる。ただしひとりずつ」

 トゥラブがひとりひとりの顔を見回す、ぼさぼさの赤い眉毛の下のその眼差しは、異論を寄せ付けないものだった。「それ以上乗せて、グリフォンの機動性や耐久性を損なうことになるのは避けたい。第一の任務は、王族たちを生きたまま連れ出すこと。わかったか?」
 イセヤは他の者たちとともに頷いた。話がわかったかどうかは、本当のところは定かではなかったが、そう言うのは分別を欠いているように思えた。

「よかろう」 トゥラブはエール酒を呑み干した。「これからおぬしらにグリフォンを見せてやる。急いで相棒を決めるようにしろ。朝まで待つだけの時間はない。これから二時間以内に、この王宮から全員脱出してもらうつもりだ」

***

 メイカーズ・マーシー(Maker's Mercy)は「勘弁してくれ」ってところでしょうか。
"Have mercy!" "Mercy!"とか言いますね。 

デンジ Dendi
オスティヴァー Ostiver
フェナダール Fenadahl

スクリアクス Skriax

2014年9月24日 (水)

Last Flight 3(1)

 前回、細かいところですが、アンティヴァ(ヒューマンの国)の王族に言いにくい話を切り出すのは上位者であるウォーデン・コマンダーのドワーフではなく、ヒューマンのシニア・ウォーデンだったですよね。そういうところ切り捨てられないよねえ。
 著者は女性で(私が好きでやっているのではないが、やたら「美形」、「美形」出てくるところで察していただけるかと)、エスニシティもユニークな人のようです。

***

第三章

5:12 エグザルテド

 翌朝、ウォーデン・コマンダー・トゥラブはウォーデンたちを二人一組に編成し、脱出可能路、防御拠点、そしてダークスポーンの動向を探るため、上空からの偵察に送り出した。アンティヴァンから最良の地図を受け取り、ヤギの群れの通り道やけものみちに関する情報は得ていたが、トゥラブはそれらとダークスポーンの進撃の現状を照合することを望んだ。

 イセヤは、それが完全に最後の手段であることはわかっていた。ヤギの道からアンティヴァンを百人も逃がすことができれば恩の字だし、それもダークスポーンの注意をかなりの間逸らすことが必要だ。だが王と女王が迅速に行動しなければ、道はそれしか残されないのかもしれない。

 ハブルの腰にきつく両手を回してグリフォンの揺れに備えている彼女の胸に、その考えが暗くのしかかる。ブラックタロンの筋肉が飛翔を始めるため伸縮するのにあわせて眼下の地形は荒海のように上下し、翼の羽ばたきは埃の嵐を打ち据えた。イセヤが息を止めていたのは、埃で喉を詰まらせないようにするためでもあったし、本能的にくつろぐことを避けるためでもあった。グリフォンの飛行の魔力に魅了されないことなど、まったく不可能だった。

 空中に浮かび上がり、螺旋を描いて王宮の上空へ舞い上がると、やがて王宮の庭園が金色に縁どられた緑色の小さなタイルのように、衛兵たちが青銅色の蟻のようになった。城門の外の避難民たちの天幕は、焦げ茶色と灰色の染みで、船着き場は涼しげな碧の海に沿った棘のある白い縁だ。 

 昨日よりも船の数が減っているのを見て、イセヤは、脱出がはじまったのかと尋ねた。ハブルは首を振り、ブラックタロンの向きを沿岸に向けてから答えた。彼は王からは何も聞かされていないが、船長たちの多くは待てなかったに違いない。王との謁見が終わるやいなや、ウォーデンは街を救わないという話が広まったのだろう。夜に紛れて一ダースもの船が逃げ出した。一隻の船長が近衛兵に捕まり、この朝絞首刑とされたが、流れは変えられないだろう。ダークスポーンに殺されるくらいなら、縛り首のほうがましなのだ。

 何もできないのか、というイセヤの問いかけに、ハブルは、おそらくそうだが、試みることはできると答えた。それから彼はブラックタロンを下降させると、ダークスポーンの様子を観察すれば、王族たちを震え上がらせ、道理をわからせるような何かが見つかるかもしれない、と言った。

 ブラックタロンは、アンティヴァ・シティーを取り巻く緑の土地の輪の切れ目までは雲の上に留まり、ダークスポーンの群れに近づいてからは注意深く下降して行った。眼下に広がるダークスポーンの群れは、ぼろぼろのバナーの回りに密集した、穢れた肉のもつれあった絨毯だ。やつらはつぎはぎの鎧を身に着け、信じられないほど粗野なつくりのぎざぎざの武器を手にしていた。

 この上空から、個々のダークスポーンの顔まで判別はできなかったが、イセヤには、姿かたちと進み方からそれぞれの種類の区別がついた。ジェンロックは短躯でがっしりしており、まるで四脚の蜘蛛のように這い進む。ハーロックは背が高く、筋骨隆々としていながら、ジェンロックと並ぶとほっそりして見える。直立して進むやつらの姿はヒューマンに似ているが、鼻のない白い顔は本物と見紛うべくもない。死んだ瞳、爛れた肌、魚の腹のような頬を伝う赤黒い瘡蓋を見れば尚更だ。

 そいつらの上に聳え立つのがオーガ。角の生えた蛮獣で、古い痣の色の革のような肌をしている。黒い爪は、大きさも恐ろしさも斧の刃に喩えられる。イセヤがワイズホプトで学んだことによれば、オーガには恐るべき正確さと骨を砕くような威力で岩を遠くまで投げ飛ばす力があり、飛行中のグリフォンとウォーデンにとって脅威となる数少ないダークスポーンの種類のひとつだ。

 当初、アンティヴァ・シティーの外にたむろする群れの中には幸いにもそう多くはいないように思われたが、それは群れ全体の数が多すぎるため少なく見えるだけだった。背筋に寒いものを感じながら、イセヤが数え直したところ、少なくとも五十のオーガが、数えきれないほど多くのダークスポーンに囲まれていた。会戦となれば、戦場にはグリフォンの倍の数のオーガがいることになる。ハーロックとジェンロックを度外視しても、到底勝ち目のない戦いだ。

 もちろんやつらを度外視することなどできない。それら小型の敵がどれだけの数がいるかわからなかったし、通常の軍隊の規模を見積もる手段は、ブライト相手には役に立たない。ダークスポーンには、鍛冶屋も、召使いも、荷車も、調理人も付き従わず、便所すらいらない。それらを必要としない、雲霞のような冷酷な群れがあるだけだ。

 身体を震わせながら、若いエルフは目を逸らした。私たちに勝ち目はない。
 ない、と言って、ハブルはブラックタロンの手綱を弾いた。前のめりになってグリフォンに命令を伝えると、嵐の雲目がけて再び舞い上がった。アンティヴァンにも勝ち目はない。自分たちが目撃したことが、王族が考え直すに足りていることを祈ろう、そう彼は続けた。

 グリフォンが雲の中への上昇を始めたとき、イセヤは、微かな、心の中に染み入るような不思議な調べを聴いた。耳で聴くのではなく、身体の中から湧き起るような、自分で口ずんでいるかのような旋律。今まで聴いた中でもっとも美しい歌であり、これまでは想像することなど決してできなかっただろう。疼くような、この世のものではないそれは、彼女が今までになくした郷愁に満ちた至福の記憶へと誘うようではあるが、それを取り戻す手立ては決してない。

 ブラックタロンの金切り声がイセヤを瞑想から揺り戻した。グリフォンは手綱に逆らうように激しく首を振り、ハブルの手の中からそれをもぎ取らんばかりだが、シニア・ウォーデンはそれを固く引っ張っていることに自分でも気が付いていないようだ。彼の身体は鞍の上で凍り付いており、イセヤには顔こそ見えなかったが、彼も自分と同じようにあの調べの虜になったのだろうと思った。

 自分の無謀さにたじろぎながら、彼女は、彼の後頭部を横手で叩いた。ハブルは正気に戻り、毒づき、即座に手綱を緩めてブラックタロンに動きの余裕を与え、それから半身で振り返って面目なさげな顔をイセヤに向け、礼を言った。
 あれは何だったのか、とエルフは震えながら尋ねた。ハブルは雲の壁がダークスポーンの群れと彼らの間を隔てるようになるまで答えず、答えるときの声は固く緊迫していた。アーチディーモン。

 イセヤは鞍にどっしりと深く腰を下ろし、紐帯が身体を座席にしっかりと固定していたことに安堵した。彼女の唇から小さな呻きのような声が漏れ、風に流されていった。彼女の両足も背骨もゼリーになってしまったかのようだった。

 当然、ブライトはアーチディーモンを伴う。アーチディーモンこそがブライトの原因なのだ。だが穢れた古の神の一柱がダークスポーンの群れのどこかに蟠踞しており、それと自分たちを隔てるのが、この空とブラックタロンの翼しかないという考えは落ち着かないものだった。だが最も恐ろしいことは、アーチディーモンがあの海沿いの美しい不運な街に今にも襲い掛ってもたらす全き破壊以上に恐ろしいことは、彼女の心の中に湧き起った、あの調べの大変な美しさだった。

 それからアンティヴァ・シティーに戻るまでの間、イセヤはブラックタロンの背中で身を丸くし、黙したまま、ダークスポーンの恐怖とやつらの歌の甘美さのふたつを、どうにも結びつけることができないでいた。

*** 

 第四のブライトのアーチディーモン。もちろん呼び名は「後日」あてがわれることになるのかもしれませんが、(Dragonの時代には)アンドラル(Andoral)と呼ばれている。また「奴隷たちのドラゴン」(the Dragon of Slaves)とも呼ばれる。

2014年9月23日 (火)

Last Flight 2(2)

 お待たせしました。リア重だったもので・・・。
 ようやく続きを進めることができそうです。どこからだっけ?

*** 

 ガラヘルがすでに金髪から埃を払い、こっそり拝借したグリフォン用の飲み水でいつものように顔を洗い終えていることに気が付くと、イセヤは笑いを噛み殺した。ここでは無駄な努力ともいえるが、ヒューマンよりも美しいとされるエルフの中でも、特別美形である彼の場合は事情が違うのかもしれなかった。高い頬骨、華麗な緑色の瞳、その笑顔は女性と、少なからずの男性をも骨抜きにしてしまう。イセヤは、彼の見てくれが自分よりもずっと良いことを率直に喜んでいた。セダスに住むエルフの女性にとって、美しさという恩恵は毒を伴う。

 だが今日の兄は、他の者たち同様笑っていなかった。アンティヴァ・シティーの雰囲気を険しいと呼ぶなら、ここ王宮は葬儀の最中のようだ。
 ハブルを先頭にしてグレイ・ウォーデンたちが城内の防塁の中を進む間、出会う召使いたちは彼らに希望に満ちた視線を送り、黄金のドレイクの紋章が入った陣羽織姿の衛兵たちは尊敬の眼差しを向けた。謁見の間までは、ハブルの早足でも果てしない時間がかかるように思われ、アンティヴァの王宮は、セダス一大きいと思っていたワイズホプトの要塞に次ぐ規模なのかもしれないとイセヤは思った。

 ようやく、紅色と黄色の薔薇で満ちた王宮内の庭園を過ぎた頃、彼らは王と女王が待つ小さな部屋に出た。ウォーデン・コマンダーのトゥラブは、がっしりした赤ひげのドワーフで、アンティヴァの指揮を執っており、他には二十名のアンティヴァン・ウォーデンたちと、おそらく上級貴族と思われる豪奢な出で立ちの少数の男女がいた。

「ハブル」とウォーデン・コマンダーが頷き、しゃがれ声で言った。「道中難儀はなかったか?」
「特には」とハブルが言った。彼は王と女王に正式な会釈をした。アンティヴァの王族たちが計ったような頷きを返す。エラウディオ王は四十半ば頃だろう、とイセヤは推測した。王の風格はあるが、何かの動作の前に目に見えていちいち躊躇する臆病な男だった。その妃であるジュヴァナは若干年上に見えた。鮮やかな栗毛色の髪には太い白髪が幾筋も混じっており、強張った顔は笑い皺のおかげで和らいで見えた。

 ふたりの結婚は、王族の世界では稀に見る恋愛に根差したものであるとの噂を、イセヤは思い出した。女王は裕福で誉高き商家の出自だが、その血脈はアンティヴァの王宮にとって恥ずべきほど卑しいとされていた。いずれにしろ、エラウディオ王は彼女を娶ることに決め、ふたりの仲は、長きにわたって国民たちの認めるところとなった。女王ジュヴァナが熱心な芸術愛好家であり、首都の美化に相当な富を費やしたことも、その一因に疑いない。彼女の影響力により、アンティヴァはセダスにおける芸術と文化の中心地のひとつとして、オーレイの偉大な都市群や、衰亡を続けるテヴィンター帝国に比肩することとなった。

「わたくしどもの守りのため参られたのでしょう?」 女王ジュヴァナが尋ねた。大声ではなかったが、あまりに静まり返った部屋の中で、彼女の言葉は謁見者の間に響き渡った。「アンティヴァが救いの手を欲するまさにその時に?」
 静かな凛々しい懇願を退けるのは容易なことではなかった。だが明らかに、グレイ・ウォーデンたちはそのつもりであった。ハブルとトゥラブが視線を交わし、それからヒューマンのほうのウォーデンが首を振った。「違います、陛下」

 女王のしかめた顔で額が曇った。「違うと? この街とともにあまりにも多くのものが喪われてしまうのです。彫刻も、音楽も、絵画も。わたくしどもの図書館も。わたくしどものモザイクも。それらの作品だけではなく、それを造り出した知識とともに。それほど多くの人生の遺産をわたくしどもが放棄すると、よもやお考えではありませんでしょうね」

「アンティヴァ・シティーを守ることはできません」とハブルが平板な調子で言うと、ふたりの王族にそれぞれ目を配った。「大した時間は持たない。数日、あるいは数週間、それも運が良ければ。それ以上は無理です。備えを行うための十分な警告もなかった。ダークスポーンはアンティヴァをあっという間に引き裂いてしまった。この街には蓄えられた十分な食糧もなければ、訓練を受けた十分な兵士もおらず、彼らを武装させる十分な武器も鎧もない。海路は多少助けにはなりますが、しかしダークスポーンが兵糧攻めを試みるはるか前に、やつらは壁を乗り越えてしまう」

「われわれの壁はとても頑丈だが」と、エラウディオ王がおそるおそる意見を述べた。
「そのとおりです、陛下」とトュラブが、不愛想なドワーフにしては精一杯の丁寧さで同意した。イセヤには、彼がここの者たちを好きになりはじめており、喜んで彼らの希望を打ち砕くつもりなどないことがわかった。「それが故、数週間は持つかもしれないと申し上げている」

「では、あなた方にできることは何もないと?」と女王が尋ねた。彼女の謳い上げるような声に不信が忍び込み、薄く、脆くなった。「グレイ・ウォーデンともあろう方々が、左様にあっさりと敗北を認めなさるのか? 詩人たちがあれだけ伝説を謳い上げているというのに、あなた方はわたくしたちの街ごと、わたくしたちの国土を丸ごと、まだ最初の攻撃すら受けていない今、見捨てよと言われるのか?」

「その街は、海を背にして逃げ場なく、その後背地は尽くダークスポーンの手に落ちたのです」とハブルが言った。じれったさと憤りがその声に忍び込んでいたが、その表情は慇懃な仮面のまま凍りついている。「アンティヴァ・シティーを地図でご覧になったことはございますか? 援軍も、補給も受けることはできない。国土の他の部分は、陛下がたの城壁にやつらの群れが張り付いたときには蹂躙された後です。ダークスポーンは攻城兵器を用いない、確かにそのとおりだが、そもそも必要ないのです。オーガがジェンロックどもを壁の上から投げ込んで、街の人々の上に叩き付ける。ジェンロックが地面に激突して生き残るかどうかはまるで問題じゃない。十分な数の奴らが降ってくれば、ブライトの汚染がまき散らされ、アンティヴァ・シティーはそれで終わりとなる。しかもそれはアーチ・ディーモンが現れない場合の話。もし現れれば、数日すら持たないでしょう」

 王族たちは蒼白となった。イセヤは振り返ってアンティヴァン貴族たちの顔を盗み見た。彼らもまた、怖気を奮っているように見えた。彼女自身も、少なからず恐怖を感じていた。最後のブライトがセダスを襲ってから二百年が経ち、トスやハンター・フェルの物語は、とっくの昔に子供向けのお話でしかなくなっていた。
 今や、化け物たちは彼らの寝台の下から這い出してきており、その爪はとても鋭い。

「ハブルのウォーデン部隊を呼んだのは、街から脱出する機会を得るためです」とトゥラブが、変わらぬ頑固な忍耐強さを示して言った。「あなたがたは民をリアルト湾に逃がす十分な数の船舶をお持ちだ。大きめの島々に民を避難させることができる。ダークスポーンは泳ぐことはできず、船を持たないので、陛下がたとその民はそこでなら安全なのです」

 エラウディオ王は一分近く目を閉じ、計算をしていた。「三分の一でも逃げることができれば幸運だろう」
「踏みとどまって戦えば、誰一人救えません」トゥラブが言った。「陛下、このウォーデンたちは陛下の民を救うために命を賭す覚悟です。だが、陛下が民を安全なところに導いていただけなければならない」
「考えておこう」と王は静かに言った。彼が両手を掲げて音をたてずに合わせると、それは謁見の終了を意味していた。
 ウォーデン・コマンダーのトゥラブとハブルは会釈した。他のウォーデンたちとともに、イセヤもその仕草を真似し、指揮官たちに付き従って部屋から退いた。

「本当に、おれたちに街を守って欲しいと思ってるのかね?」 再び薔薇の庭園を抜けて戻るとき、ガラヘルが彼女にそうつぶやいた。「絵と噴水のために?」
 花を愛でる気持ちはイセヤから失せており、肌に陽光を浴びていてすら彼女は寒さを感じていた。彼女は、街の城門の外で身を寄せながら固まり、今や喪われようとしている救いを絶望的に欲している群衆たちのことを忘れることはできなかったが、城門の中の人々も絶望的に救いを欲していることに代わりはなく、籠城して持ちこたえるという無理な望みに王と女王が固執するなら、それもまた喪われてしまうことだろう。

「もちろんよ」と彼女は兄にささやき返した。「彼らも民に違いはない。希望を欲している」
「おれたちは希望を与えてやった」とガラヘルが答えた。「この世が許す限りの全ての希望を与えてやった。それを受け取らず、その理由がそれだけじゃ足りないからだって?」

 イセヤはみじめな気持で首を振ったが、自分の悲しみを言葉にすることはできなかった。庭園を後にして比較的涼しい王宮の室内にふたりが戻ると、彼女は身震いした。太陽はほんの少しも彼女を暖めてはくれなかったが、闇もまた耐え難いものであった。

 トゥラブは、ウォーデンたちを衛兵用の兵舎のひとつに導いた。ブライトが間近に迫っているというのに、召使いたちは清潔な寝具を用意し、乾燥したラヴェンダーの花束さえ壁際に飾っていた。
 イセヤにはその香りが苦痛であった。ダークスポーンに美の概念はなく、この世をより住みやすくするための細やかなもてなしの心意気も意味はない。やつらの通過した後には殺戮と破壊と汚染のみが残り、ラヴェンダーが生えることは二度とない。

 彼女は寝台に腰掛け、アンティヴァを救いに来たウォーデンたちのために召使いたちが用意した、おそらくとっておきの毛布に指をはわせた。
「皆を救わなくちゃ」と彼女はつぶやいた。だが彼女は、誰に向けるわけでもなく、とても静かにそう言ったのであり、耳にした誰かがいたのだとしても、答えることはしなかった。

***

 いや、元々ここはベタ訳するつもりだったんだよね・・・。すみません、じっくりまとめる時間が足りないときはベタ訳が増えてしまう。このペースじゃあまずいなあ。

(追加:ああ、もう少しあったのを見落としてました。書き足した)

Turab トゥラブ
King Eraudio エラウディオ
Giuvana ジュヴァナ

 

2014年9月18日 (木)

Divinity: Original Sin コンパニオン・パッチ来たのはいいが

 やる暇ない。

 じゃなくて、コンパニオンが二人追加されたが、New Gameからやり直さないと出ないよー、だって。

http://www.pcgamer.com/2014/09/15/divinity-original-sin-update-adds-two-new-companions-the-bear-and-the-burglar/

 ま、そうだろうけど。
 あのさあ、その二人を登場させるところまで行き着くのにどんだけ時間かかんのよ・・・。
 二周やる元気も時間もないんですよ。

 そして、そのふたりとは、なんとレンジャーとローグ。
 最初から入れてくれていたなら、私のナイトとウィザードと、完璧な組み合わせができたのに。

 これからプレイ始める人は幸福である!

 でも、この雰囲気だと、後二人ぐらい出す気なのかな? ひとりはレヴェルアップしていくとかなり面白くなりそうなウィッチあたり。もうひとりは無難にファイターあたり? 

 私はまだレヴェル12あたりだから、丁度中間くらいかな。いつ一周終われることやら。

Last Flight 2(1)

 それでは、新方式(ベータ版(笑))を試して見たいと思います。なお、固有名詞等で明らかに読み方の違いが判明した場合には、過去に遡って直したりしますのでご了承ください。

 また私の勝手な都合とココログの不具合防止のため、以前の小説紹介時よりも、幾分短めに切っていくことにします。

***

第二章

5:12 エグザルテド

 イセヤの二度目のグリフォン騎乗は、出陣のためだった。

 イセヤも兄ガラヘルもまだ新兵そのもので、ふたりがグレイ・ウォーデンにリクルートされてからようやく一年経ったばかりであり、グリフォン・ライダーの赤い翼隊に配属されたのも四か月前でしかない。まだ馬に木製の翼をつけて行う地上の模擬訓練の最中で、先輩の後ろに縛りつけられて行った飛行訓練の経験は一度だけ。それは高所を飛行することに耐えられない新人を仕分けするためのものだった。空中戦闘の訓練は一年先のはずだった。

 だがブライトは待ってくれない。

 四か月前、新たに目覚めた古(いにしえ)の神の声に呼応したダークスポーンは北方から湧き出した。群れは古代ドワーフの地下ディープロードを地上のヒューマンの目にとまることなく進行し、不意打ちを受けたセダスの諸国は、なんら有効な防衛策を講じることができなかった。

 アンティヴァがまず襲われ、あっというまに領土を喪った。周辺の街や村の民兵も防塁も役にはたたず、人々は殺戮され、あるいはなお悪い運命の待つディープロードの奥底に連れ去られた。

 優美な橋と彫刻で有名だった河の街セレニーは、包囲されてから四日もたなかった。それから数週もすれば、河の流れに乗って運ばれてきた多くの死屍がアンティヴァ・シティーの人々の目に触れることになり、日々その数が増すにつれ、人々の恐怖も高まって行った。

 さように絶望的な状況下で、若きウォーデンの訓練に費やす時間などない。イセヤが先輩ウォーデンの後ろに跨ってアンティヴァ・シティーまで飛んだとき、上空から首都の危機的状況が見て取れた。
 青く輝く湾に面したアンティヴァ・シティーの内陸側は、緑の農地と果樹園に囲まれ、それがセレニーの廃墟まで川沿いに続いていたが、その肥沃な周辺部の外側では、アンティヴァの領土がブライトの毒の中に呑み込まれていた。 

 数千ヤード上空からでも、群れの通り過ぎた痕跡ははっきりわかった。その空を濁ったような黒雲が覆い、枯れ果てた木々が萎びた小川の回りを見張る骸骨のように立っている。穀物畑はしおれて腐り、ひしゃげた灰色の茎が並ぶ中に緑色の部分はまったくなかった。目に留まる生き物はカラスかハゲワシのみで、それらの身体もダークスポーンの骸を漁る間にブライトに汚され、疥癬まみれになって羽根もはげ落ちていた。

 ダークスポーンの軍勢そのものは、ぼんやりした黒い鎧とぼろぼろのバナー群であり、個々の姿を見てとることはできなかった。これまでごく限られた数しか目撃されていないアーチディーモンの他に空を飛べるダークスポーンはいないが、弓と呪文から逃れるためグリフォンは高度を保っていた。ハーロックとジェンロックの大群がエミッサリーとオーガどもを取り囲む姿は雲が覆い隠しており、イセヤはひそかに安堵していた。

 軍勢の上を飛び過ぎると、雲の上の薄く冷たい空気の中に長時間グリフォンたちをとどまらせることを避けるため、彼女たちはまた降下した。ここまでアンティヴァに人影はなく、皆死んだか、逃げたか、隠れていた。だがアンティヴァ・シティーの城門の外には多くの避難民のキャンプが設営されていた。ぼろ布と絶望を身に纏い、荷車やその場しのぎの寝床に住まい、手に入るものは何でも口に入れる。彼らの放つ悪臭はすさまじかった。城門は固く閉ざされているので、ブライトが首都にまで達したとの報に接したとしても、彼らには他に向かうべき場所がなかった。

 あれでは長くはもたない、というイセヤの呟きは、風とグリフォンの翼のたてる音にもかかわらず、前に乗るシニア・ウォーデン、ハブルの耳に届いたらしい。イセヤは彼のことを詳しく知らないが、灰色の髪をした彼は歴戦の生き残りで、ほとんどの時間をワイズホプトから遠く離れた地で、乗騎ブラックタロンの背中で過ごしていた。容易に恐れを抱く男ではないが、彼が振り返って、まったくだ、と答えたときの顔は険しかった。

 数分後、彼女たちはアンティヴァ・シティーの上空を旋回していた。風になびく髪を片手で抑えながら、イセヤはブラックタロンの両翼の間から身を乗り出して、ものの本で幾度となく読んでいた誉高き首都を、そのとき初めてわが目で見た。

 輝ける宝石と呼び慣わされた港湾都市は、上空から見てもその噂にたがわなかった。ブライトはまだ首都まで達しておらず、青緑石と海緑色のタイルと大通りの大理石の対比も鮮やかな海原通りは、おそろしいほど美しかった。黄金広場は、その両端に至るまで並ぶ何ダースもの黄金の彫像が燃えるような陽光を照り返して眩く見える。そして宮殿は息を呑むほどの壮観で、細い尖塔とステンドグラスの窓が沈みゆく太陽に輝いていた。 

 だが思ったより港に船の影は少なく、何隻かの国王軍の戦船と、アンティヴァの黄金のドレイクが描かれた小型の船舶がちらほら見える他には、商船らしき姿はほとんどなかった。できるだけ多くの乗客から上乗せの船賃をたんまり取って、すでに安全な沖合に逃げ出したのだろうか。小さな魚釣り船すら姿はなかった。

 通りにも、市場にも、またさして人影はなく閑散としていた。ブライトが城門まで達する前に、住民たちは家の中に閉じこもり、息を潜めて嵐の過ぎるのを待っているのかもしれない。 

 彼女たちは城壁に囲まれた宮殿の中庭に降り立った。二ダースのグリフォンが、同じ数のグレイ・ウォーデンとともに宮殿に配置されたが、それらが巻き起こす騒動と混乱は城内の召使いたちには荷が重すぎた。グリフォンはとても気難しい。縄張りにうるさく、普通でさえ短気で、長期間の飛行の後は特に気が立っている。城壁の上に飛びたつものさえおり、近寄ろうとする者は誰彼かまわず翼で打ち、喚き声をたてる。

 アンティヴァンたちは、ウォーデンたちにはパンとワインを振る舞ったが、グリフォンたちのことは敬遠していた。イセヤにすればそれも仕方がないと思えた。彼女は数か月にわたってこの生き物と暮らし、世話をしつつ、その移り気な気質を把握することを学んだが、それでさえなお、この空飛ぶ捕食獣から時折威嚇されているのだ。 

 成獣のグリフォンはくちばしからしっぽまで十二フィート以上に育つが、翼幅はそれ以上になる。オスは一千ポンドを超え、メスはそれよりほんの少し小さい。嘴はヘラジカの腿骨を難なくへしおり、爪はプレートメイルを造作なく切り裂く。グリフォンをより長時間、より過酷な環境においても乗騎として用いるため、グリフォン・ライダーには小柄なグレイ・ウォーデンが選ばれる傾向にあるが、健康なグリフォンは、完全装備の兵二人を背負って飛び、戦うことができる。グリフォンは、気性が荒く、恐れを知らない捕食獣、野生美と苛烈な憤怒に満ちた生き物。

 イセヤはグリフォンたちを愛していた。その力と優雅さ、麝香にも似たライオンのような匂いも。彼女が撫でると喜んで細めになる明るい黄金の瞳、地面を揺るがすような喉をごろごろ鳴らす声。そして上空では彼らの何物にも一切束縛されない自由、そして彼らが選んだ乗り手と分かち合う、とてつもない飛行能力。 

 なぜなら、常にグリフォンが選ぶ側だからだ。彼らが望まない乗り手を押し付けるのは徒労である。嫌う者に従うくらいなら、さっさとどこかの山に逃げてしまう。彼らは決して従者にはならないし、奴隷でもない。相棒であり、対等な存在。そうでなければ敵となってしまう。 

 それが、新米のグリフォン・ライダーの訓練に長期間を要する理由であり、イセヤがアンティヴァンたちが彼らを嫌うのが仕方がないと思う理由でもある。犬でも馬でもなく、オリージャン貴族の中には宝飾のついた革紐に繋いでいる者がいるという、まだら模様の狩猟猫ですらない。彼らは誇り高く、嫉妬深く、野性であり、賢い者はそのことを決して忘れない。

 イセヤは、善意の召使いが野獣たちの怒りを買わないように願ったが、その夜は彼女がグリフォンの世話をする当番ではなかった。彼女は他のウォーデンたちとともに王宮の中に、兄と並んで入って行った。

*** 

 あ、あかん、ここの部分の情報量は、圧縮・要約なんてできないよ。
 ま、最初なんで、サーヴィス、サーヴィス。

 アンティヴァ(Antiva)は、アンティーヴァ(ティにアクセント)が近いのですが、日本語で書くと間延びするので。なお、首都はアンティヴァ・シティーで(アンにアクセントかな)、こちらは短め。
 アンティヴァン(Antivan)は、ここではアンティヴァ人のこと。イタリーとイタリアンの関係。

 固有名詞は読み方暫定。主要登場人物(グリフォン)は逐一書き出しておきましょう。   

 イセヤ (Isseya)
 ガラヘル(Garahel)
 ハブル (Huble)
 ブラックタロン(Blacktalon) 

 グリフォンは、「黒爪号」なーんてやりたかったが、後から出てくるグリフォンの名前で苦しくなるのでやめた。

2014年9月17日 (水)

Last Flightを読み進めて

 Last Flight、二章以降も読み進めてみました。
 Kindleの読み上げ機能がとっても重宝しています。自力で(目で追うだけで)読むよりも、各段にスピードは速まっている。ごく限られた時間しか読んで(聴いて)いないのに、すでに第4章あたりにさしかかっています。
 「読み上げ機能」、当初はご多分に漏れず(ほんとうに機械的に読むだけだろうと)バカにしていたのですが、聴くに堪えないレヴェルでは全然なくなっている。
 固有名詞はさすがに「?」なときが多いですが(ワイズホプト "Weisshaupt"のように英語由来ではない単語は、「シャプ」とかなんとか、正直なんと言っているのかさっぱりわからない)、イントネーションも工夫がされていて、ときたま変なときがあるくらい。

 この分野さほど詳しくないので、日本語(漢字かな交じり)でも高い水準で成立するのか(しているのか)どうかしらないのですが、やっぱ表音言語の英語は楽なのでしょうね。もっとずっと規則的に発音される仏語はさらに完璧に近いのかな?

 Last Flightの中身ですが、んー、最初の印象どおり展開もアニメチックな趣きが強いと感じます。その分、ゲイダーさんやパトリックの書いたものより読みやすいのも間違いないのですが。
 第一章最後で主人公が発見した手記の主は、伝説のエルフ・ウォーデンであるガラヘルの姉妹、Isseya(イセヤと読んでおきます)でした。彼女もガラヘル同様、ウォーデンのグリフォン部隊にリクルートされていた。
 だが今回もまた、"sister"は姉なのか妹なのかまだわからない(笑)。途中でわかるのかどうかさえ定かではない。日本人はこれでは困るので、とりあえず「妹」にしておきましょう。よって、第一章最後の"brother"という呼びかけは、「兄さん」となるわけです。直しとかなきゃ。
 後先考えないほど自由奔放な行動派で金髪超美形の「兄」と、寡黙で人付き合いが苦手で慎重な性格の(エルフなんでおそらく普通に美形な)「妹」。すでにこの時点でアニメの乗りっすよね・・・。

 ダークスポーンの包囲に見舞われたアンティヴァの首都、アンティヴァ・シティーから国王他の上流階級の者たちを脱出(エヴァキュエイト)させるのがグレイ・ウォーデンのミッション。ただしグリフォン隊の乗騎は数がごく限られており、騎手の他一度にひとりづつしか空輸できない。

 ウォーデン・コマンダーは、自衛手段をほとんどもたない首都の防衛は最初から無理であるとして、冷徹に脱出を勧告するのですが、安穏な生活を手放したくない国王たちは、なんとか踏みとどまりたいあまりに決断を先延ばしにしそうな雰囲気。ありがちなデザスターの予感。
 
 悩みは、紹介方法ですね・・・。Asunder、クライマックス以外は基本要約方式で各章の一か所か二か所だけ台詞をべた訳。The Masked Empireのときは、基本要約で一部べた訳。この方法は時間がやたらかかるし、本当に疲れるので避けたいのですが、楽ちんな全部べた訳はさすがにまずかろうと。勝手に流用されて(それ自体は構わないが)こちらがお縄になるというのはご免だから。
 なんらかの瑕疵を織り込まなければならないが、(途中を省略する、一ページとばすなどして)物語の意味が通じなくなるのは困る。

 お気に入りのシーン(各章で一カ所か二か所)についてはべた訳、それ以外は「あらすじ」程度の記述。
 労力を減らすため、そんな感じでやっていきたいと思います。他になんかアイデアあったら教えて下さい(べた訳して読みたい人だけに配信して読ませるってのは、コピペを防ぐ手立てがなく、なんの意味もないので不可)。

2014年9月16日 (火)

あ、今見たら

KindleにLast Flightが来てるよ!
やべー、読む時間ぜんぜんないよー。
やっぱ二章はExalted にとんでいる。
(そんな短いのTwitterで言えよ)

でもでも、Twitter の字数越えちゃうけど、Kindle の読み上げ機能が使えるよ!
やったねパパ、これでDivinity遊びながら聴けるじゃん!
いや、そこまでバイリンガルじゃないから、君。
固有名詞問題が解決か?
アイルファス、ヴァルヤ、べリス、ペイデン、セカ、サルヴ。やっぱちょっと違ってた。んー、機械なんでワイズホプトがぜんぜん言えてないなあ。

2014年9月15日 (月)

Divinity: Original Sin 創業者も喜ぶ。

 ほんとに時間のかかるゲームです・・・。プレイ時間はSteamカウントですでに50時間は突破しているが、まだ中盤に差し掛かったあたりですかね。予想最終プレイ時間は100時間超。

 休みのうちにストーリーの目鼻立ちくらいはハッキリさせておこうと思い、結構やってました。ところがさっき少し休憩して戻ってきたら、いきなりアップデートがはじまっていた・・・。むうん。

 そういうのは連休中じゃなくて平日にやってくれんかな(いや、祝日なの日本だけだろう)。

 ただ、丁寧にバグやら不具合を修正しているようで、安心ですね(そこは途中で投げ出したTOEEとは違う)。

 Larian Studios の創業者 Swen Vinckeも思いの他ご満悦のようで、どんな人か(ベルジャン?)よく存じ上げないが、PC Gamerに彼のブログの内容が紹介されている。

http://www.pcgamer.com/2014/09/12/larian-studios-founder-writes-about-divinity-original-sins-success-what-comes-next/?ns_campaign=article-feed&ns_mchannel=ref&ns_source=steam&ns_linkname=0&ns_fee=0

・売り上げは50万本を優に越えた(訳:Kickstarterに頼ったゲームとして、これはかなり画期的なことなんでしょうね)。うち90%がSteam経由。リテールは10%しかない。(訳:Steamとリテールのどちらがピンハネ率が高いのかはともかく)損益チャラポンライン(俗に言うブレークイーヴン)を突破した。

・しばらくはこのD:OSのサポートを続ける。次回作のベースになるものでもあるから。大画面でのCo-opのほうが、友人と隣同志に座ってLAN経由で遊ぶよりも面白いのではないかとの考えから、コントローラー・サポートについていじくりまわしたりしている。

・D:OSにも様々な趣向を追加するためであると同時に、次回作の水準をあげることをも見据えて、ゲームエンジンも改良していく。 

・手始めに大規模なコンパニオン・パッチ、声優の追加導入などが検討中。
(訳:やっぱ、あの数も中身もおざなりな「コンパニオン」はなんとかせねばと思ったんだね。しかも穴埋め要員の「ヘンチマン」たちは実際パーティーに同行させないとレヴェルがぜんぜんあがらないのだ。遊んでいても主人公たちと一緒に勝手に経験値がもらえるコンパニオンふたりはどうしてもベンチ・ウォーマーとなってしまいがち)

 彼によれば、「濃密なゲーム世界を、オールドスクールの趣きに立脚しつつ、可能ならば新しく革新的なゲームプレイ・システムとともに創造すること」("creating dense game worlds with hopefully new and innovative gameplay systems based on old school values.")を目指すそうで。やっぱ経営者のお言葉は、実際には何言ってるかさっぱりわからないことになるんですね。この相反するふたつのこと(オールド・スクールと革新)を一気に実現するということか。

 ただ、彼のいう"RPG craft"というのはよい表現であると思います。壺つくりのような「手づくり」感は、確かにD:OSでも十分感じられ、そこの部分のノスタルジアに各ゲームサイトのレヴュアーが呼応して高評価につながったってことでしょう。数百人の大スタジオがやっている"development"でも"production"ではなく、"crafting"。

 そして、次回作ではクラウド・ファンディングはもう用いない。もっとも有名なKickstarterでさえ、とても限られたファンドであるから(結局D:OSだってバッカー2万人程度しか集まらなかったはず)、自ら資金を調達できるようになった成功者としては、そのチャンスを後進に譲るのが筋。
 ま、悔しいですが、そういうところはあちら(Larian Studiosはベルジャンの会社です)の経営者はポリシーがきちんとしていると認めざるを得ない。善行をテーマにCRPGを造っている会社が、パブリック・エネミー・ナンバー・ワンという、笑えない事態も現に起きてはいるのですが・・・。 

 さ、そうなると、同じKickstaeterでファンドを募集し、7万人以上のバッカーを集めたObsidianのなんとかInfinityが気になってくるのではないでしょうか。私は気にしてませんが。だってあの人たち、納期をまもって、まがりなりにもまともに動くゲームを造ることは、過去にもできなかったし、これからもできないし、最初からできない人たちだから。ちなみに私のすでに振り込んだお布施については、うんともすんとも言ってこない。一体どこいったんだよ!

 長い、冷ややかな、目で見ておきたいと思います。

2014年9月14日 (日)

Divinity: Original Sin 画像いくつか

 DAIもめでたく日本語版同時発売となったので、もはや逐語訳はいらなくなり、ここでは気ままにプレイ日誌を書けるなあと思っていたのですが、さすがに画像がないと寂しい。

 とはいえ最低200時間はかかるというゲームプレイなので、今までみたいにカメラ連射というわけにもいかず、なんかツールがいるよな、と思っていたのですが、先日すでに入手していることに気が付いた・・・。

 NVIDIAのShadowPlayとかいうやつがそれ。グラボの管理アプリとしてついてくるやつですが、アップデートしていたら対象となるヴィデオゲームの録画機能がついていた。
 誤作動の責任取りたくないのか「ベータ版」(笑)だそうですが、ゲームに特化していて、なかなかよさげなんで、Original Sin(対象です)で試しておこうと思った次第。

 とはいえ、このブログの容量では動画を載せるわけにいかないし、YouTubeやCloudに載せる代物でもない。それとプレイ映像をだらだら見せるのは不親切だと思っているので、まあ、5分くらいキャプチャした映像の中から、スナップショットを何枚か載せておきます。
 (これが思いのほか面倒・・・。やっぱツールは要るようです。なんか良いものがあるだろうか)

 丁度、序盤の山場である(だろう)、主人公たち(Source Hunters)がずっと追跡していたソーサラー(このゲーム世界では、普通の"Sorcerer"ではなく、"Sourcerer"なんすけどね)とついに対決シーンに差し掛かっていたところだったので、やってみた。

Fb1
 どのRPGゲームでも私の一番のお気に入り魔法はFB。ちがうよあっちじゃないよ、ファイアー・ボールだお!

Fb2
 炸裂! ちゃんと軌道を描いて火の玉が飛んでいきます。

 ところが、火につおい敵がいたらしく、一部炎で回復しちゃってますね(笑)。ま初手なんでいいか。

Pg1
 ソーサラーは生身だろうから、ポイズンが利くかな。ヘンチマン(傭兵)のローグ君が、ポイズンクラウドの矢を放ったら、案の定効果あり。

Pg2
 なにが驚いたって、そのポイズンクラウドにつっこんできた、火の好きな敵のわんちゃん(ヘルハウンドかな)が、仲間まで道づれにして見事に大爆発(笑)。実はこのゲームのポイズンミストは非常にフラマブルな(燃えやすい)設定なのです。おかげで一気に敵の数が減ることに。

Fe1
 最後は、ファイアー・エレメンタルを召喚して、ポイズンとファイアの交互攻撃。ソーサラーはほとんど何もできないまま、敢え無く斃れました。 

 省略しましたが、ナイト二名も実は相当役立ってくれている。とはいえ、炎とか水とかポイズンとかの雰囲気(アトモスフィア)が異常に重要なこのゲームのコンバット。剣を振りかざしてのうきん突撃したら命がいくつあっても足りない。
 ご覧のとおり、最後のほうは地面の大部分が焼け焦げてますもんね。

 ナイトたちには炎から身を守る手段を用いるのが丁寧なゲームプレイなんでしょうけど、Normal難易度なら、まともな装備をきちんと集めて、適切なレヴェル(敵レヴェルと同じレヴェルで戦うのが基本)を守っていれば、なんとかなることでしょう。

2014年9月13日 (土)

Divinity: Original Sin

 GameSpotのケヴィンのレヴューにそそのかされて、Original Sinを始めていますが、だいぶ印象は違いますね。

 「自分で探索することが大事」という記述から、フリーワールド、オープンワールドと勘違いしていたが、基本は、結果的にかなりの一本道。もちろん、一本道であることと、どこが次の一本道化なのかは自分で見出さなければならないですが。ま、無理すれば入り口で痛い目にあうからすぐわかるって感じですかね。  

 自分がどこまで進んでいるのかも定かではないですが、おそらく序盤の山場くらいかな。
 以下、浅いネタバレ込みでの、ここまでの感想です。

 一番がっかりな点は、コンパニオンが二人しかいないらしいこと。主人公は(Co-opを想定しているようで)二人選べるのですが、私は素直に剣のナイト(男性)と魔法のウィザード(女性)とした。
 シーフ・レンジャー系やウィッチなる風変りなメイジについては、きっとコンパニオンが出てくるのだろうと思ったわけです。(主人公ふたりと、あとふたりの4人パーティー編成)

 ところが、真っ先に仲間になるのはナイト(女性)、ウィザード(男子)。むむむ。
 ウィザード男子はヒーラー系であり、私のパイロマスター狙いとは違うのでいいんですが、ナイトふたりはさすがにかぶってる(笑)。

 そしてそれ以外のコンパニオンが一向に現れない。そのうち「ヘンチメン」が雇えますよ、という展開になったので、コンパニオンは本当に二人きりなのか心配になり、ちょっとだけIGNのプレイガイドをカンニング。

 いないんだ。

 レヴェルアップが遅いこのゲームで、それでもだいぶレヴェルは進んでしまっていた。慌ててシーフ系のヘンチマンを雇いましたが、レヴェル差がありすぎてどうにも・・・。
 レヴェル差がひとつでもある敵パーティーとの戦いには、相当無理しないとまず勝てない。敵はリスポーンしない。

 IGNのガイドでも、最初の主人公ふたりは、まじめに考えて選んでも色々な理由でボツになっても仕方がないとは書いてありましたが・・・。
 スキルアップ方式も見かけは(たとえばSkyrim風の)馴染みあるもののように見えながら、一癖も二癖もあることがやがて判明するし。 

 ま、確かに昔のヴィデオゲームってそうでしたけどね・・・。
 とことんつき合えばスルメのように(略)なんだろうけど、そこまで時間ないんだけどなあ。

 謎、パズル、クエストはたしかに面白いものが多く、答えはどこにあるのか、いつわかるのかすら自分で確かめなければならないので、やらされ感がないのはいいですね。セリフは少々古風な英語ですが、きわどいジョークもあり、基本シニカルなノリなので気に入ってます。

 そして主人公ふたりの性格・ポリシー(Traits)はセリフ選択時にだんだん決められていくのですが、その違いから頻繁に言い争うことになる(正しくは、敢えてもめさせるため正反対になるよう仕向けた)。そして、両者がもめたときはじゃんけんゲームで決着するというのは、ケヴィンも面白がっていましたが、なかなか素晴らしい仕掛けだと思います。
 性格・ポリシーの違いは、ゲーム上のスタッツの有利・不利にも影響するんですが、堅物の善なるナイトとイケイケ自分勝手魔女など、最初から決めてセリフを選んでいくほうが一貫性があっていいようです。途中で性格修正(反省)のチャンスも(いつ訪れるかは来るまでわからないけど)ありますし。 

 ターンベースト・コンバットについては、誰が作ってもTOEE(テンプル・オヴ・エレメンタル・イーヴィル)のようになるのは仕方ない。どれだけコンバット方法が面白いかにかかっているのですが、敵の手口は結構多彩なんで飽きはこない。

 特筆すべきは、環境(むしろ雰囲気、アトモスフィア)の要素が大きいこと。パイロマスターは、ファイア・エレメントやファイアー・ボールを手に入れると俄然面白くなりますが、当然地面が焦土になりがちで、味方キャラが不用意に入れば火だるまになってしまうとか、火を消すため雨を降らせれば水蒸気で視界が悪化するとか、やたら毒(酸かな)をばらまく敵がいると、戦場がどんどん狭くなるとか。弓兵がそうした雰囲気を造り出す矢を放ってくるので、あっというまに戦場がカラフルになってしまい、ちょっと辟易することもあるくらい。   

 ただし、これは言っても仕方がないんだろうけど、普通に街中を歩き回るときの動作がいまいち円滑じゃないかなあ。

 んー、できればこのゲームの良質な部分を、もうちょっと予算をつけて3Dでやってみてほしかったなあ。斜め見下ろしは、どう頑張っても低予算ゆえの苦肉の策にしか思えないんですよね。

2014年9月12日 (金)

【DAI】これほしい。

 俵ばにの意味不明な短歌がずっとブログの最初のページであり続けるというのは、さすがに避けたかったのですが、ネタも時間も気力もなかった。

 ようやくなんとかDAI繋がりのネタが。まあ、少ししょぼいけど。

Bagandwallet

 このバッグと財布欲しいっす。

 BioWareのグッズはこれまでも碌なものがなかった(別にBioWareに限らないけど)。

 今回は初めて、真剣に買うことを考えました。

 海外出張が増えると思ったので、メッセンジャー・バッグ(クーリエ・バッグ)は、日本のもの(んー、実際には大陸国製ですが)を買ってしまったのですが、これがいいなあ・・・。

 財布もまあまあいい感じですしねえ。

Inquisitionheraldry_2

 あーっ、こっちのほうが安くていいかも。

 太平洋のこっち側の島国に送ってもらえるのだろうか。

 できるみたい。運賃高いけど。

 どうしようか。

2014年9月 6日 (土)

よりぬき俵ばにさん

 DAIとは一切関係ないし、元のゲーム(DDOというMMO/MO)と元の短歌(別の俵さん)知らないと、私が頭がおかしい人みたいに見えるでしょうから、スルーで構いません。

 実際、選り抜くほど数はないんだけどね・・・。

 それと、具体的な細かい説明は長くなるし、当時の現場に立ち会っていない人にはピンと来ないでしょうから、なんとか一般にも通用するような解釈を載せておきます。

アーチリュートをぶら下げているピュアバードいてもいなくてもPoPエリート
(とあるエリートクエストでは、六人パーティー中一人だけ戦いに参加せず、扉の外でレヴァーを操作する者が必要。要するに一番要らない子。要するにマルチビルドじゃないピュアバード。アーチリュートを背負っている)

アップデート前夜あわてて買いし日のDドアスクロの一束終わる
(超強力過ぎるゆえに次回アップデートで廃止が予告されたスクロール・アイテム。前日あわてて買いだめして、それを爪に火を点すようにちまちま使うみっともないローグたちの様)

蛇行するビルドには蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよと
(CRPGファンには説明不要。DDOにはなかったが、別ゲームではナーフくって引退って人も。ご愁傷様(笑))

なんとなくわかったような気になって「失敗ビルド」とその子を呼べり
(最後にはこっち(呼ばれたほう)が勝つ。だがその時には笑った奴はもういない)

日曜はお父さんしている君のため止めてもいいよDDOサバ
(でもやっぱり家族サーヴィスせず、別のMMOを遊んでいたりして)

良品には属性縛りがあることの何か悲しきオークションめぐり
(属性には本当に泣かされた。完璧な剣で、しかもお値段お手頃。でも秩序(アクシオマティック)が欲しいのに混沌(アナーキック)・・・)

フェーヴァーを急がぬ暮らしを始めれば急がぬ人また多しと気づく
(フェーヴァーとは、レイド・クエストの全難易度のコンプを目指して集める特典付きポイントのようなもの。しゃかりきに集めるのに疲れて回りを見ると、皆ほどほどでやめている)

レイドルートそこに光を見る人と闇を見る人いて並びおり
(12人レイドのボスルートは確か一度に二つずつしか出なかった。笑う人あれば泣く人あり。最後は殴り合い同然になる人たちも・・・)

クルシブルの流れを何にたとえてもたとえきれない水底(みなそこ)の石
(自薦では一番の名作。「石」とは、死んだキャラクターを示す残渣。急流の水底を泳がされるクエストでは、壁面いっぱいにつき出している棘ぶすまに刺さって、あえなく土座衛門となるキャラクターが後を絶たない。六人パーティーなのに五つの石が並ぶなんてことも・・・)

「風よりも火だね」とレジを頼みし人,オファリングの橋のうえなすすべもなく進めず
(バフ間違い。レジとは属性レジスタンス魔法のこと。中途半端な知識で間抜けな目に会う様)

ネクロポリスの旅の終わりのワン・フット・インの夜の「ゾンビジュース」ひやでください
(大名作ですが、ゲーム知らないとなんのこっちゃという代表。あのちんけな酒場の「ゾンビジュース」で、戦いにすさんだ心が夜な夜などれだけ癒されたことか・・・)

ソロエリートになれぬ多数の側にいて繰り返し読む攻略記事
(日本人はきっと戦争強いだろうなあと思った。絶対ソロ不可能と思われるレイドもひとりでクリアする人が何人も)

二週間先のアップデート情報嬉しくてそれまでできないことを忘れる
(DAIを待つ心境にも似たり? 当時USとJPのアップデートはかなり隔たりがあったので、英文記事を読んだ耳年増が続出)

ガランダの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくにちたったらだあれもいない
(過疎ゲームでした。MMOもCRPGも、面白いから続く(売れる)わけじゃない)

砂漠の宝箱ついに手つかずのスレイ矢が気になっている
(苦労してたどりついた宝箱。またしても要らないアイテムかよ!)

JWBが盾のデザインにまで口出すなんてもう他にいないのかと思うデザイナー
(JWBとはDDOのデザイナー/ライターのひとり。まあMLみたいにフォーラムでようけ喋る人でしたわ。デザイナーとしては優秀だったけどね。MMO老舗のTurbineだったしね)

「勝ち負けの問題じゃない」と諭されぬ問題じゃないなら勝たせてほしい
(これも説明不要かな。レイドなどに参加することだけには意味はない。失敗してへらへらしている人に向けた歌。勝たないと。ゲームなんだから)

「DQ2が好きだ」なんてエリ2回クリアだけで言ってしまっていいの
(DQ2はクエスト名。最大難易度のエリートレヴェルをたった二回クリアしただけでわかったつもり)

 ああ、ひとつひとつに、あの頃の私と仲間と見ず知らずの者たちの、血と、汗と、涙と、鼻水が染みついている気がします。思い出は美しすぎて。くだらないことでパーティーで罵倒し合ったこともまた懐かしい。

 さて、最後は日本人なら知っている、別の俵さんの大名作のパロディーで締めくくりましょう。「ワイプ」とはレイドやクエストのパーティー全滅のこと。パーティー・ワイプアウト。

「グダグダじゃねえか」とあなたが言ったから七月六日はワイプ記念日

【DAI】Skyhold

 DAIの主人公の本拠地(ストロングホールド)はスカイホールド(Skyhold)と呼ばれるのだそうだ。

 GameinformerがMLとプロデューサーのキャメロン・リー(CL)のインタヴューを掲載している。

http://www.gameinformer.com/games/dragon_age_inquisition/b/playstation4/archive/2014/09/04/dragon-age-inquisition-skyhold.aspx

Skyholdfeature6103
 いい感じですが、左下の画枠の中の絵は、The Masked Empireの表紙絵のように見えますね。ま、出版元Torが許しているんでしょうけど。

 「お前、ロマンス対象は露骨なネタバレだとか言って触れないのに、同じネタバレに相違ないストロングホールドのことはぺらぺら話をするのか。自分の都合よいことだけ載せる新聞社と何が違うのか?」 

 少なくともこの場末のブログに何を書いても何の意味もない点が違うけど、あんなのと一緒にされても癪に障る。
 全訳するのが楽だけど、要点をまとめて(細部をぼかして)みましょうか。

・主人公には、当初から本拠地が与えられるわけではない。ゲーム当初の拠点は古参プレイヤーには馴染みの村。ゲーム進行にあわせてスカイホールドが手に入る。

・最初はただの廃城、ボロ屋(fixer-upper)。インクイジションの活動が進展するにつれ、より広い範囲の清掃・補修が行われ、ゲームで用いることができるようになる(つまり、アンロックされる)。やがて衛兵、使用人なども増えていき、商人たちが訪れるようになったりする。

・外観・内装など見た目については、プレイヤーの趣味に合わせて選ぶことができる。Simsのようにほぼ完全な自由が与えられるわけではないが、違った種類の紋章や象徴、エルフ主人公ならデーリッシュの木彫り細工を用いる、などの様々な選択肢が用意されるので、他のプレイヤーのスカイホールドとまったく同じ見かけになることはない。

・スカイホールドのカスタマイゼーションには、プレイに直接影響を与える仕掛けはない。それによって、プレイに対する効果最大化を目指すプレイヤーたちの選ぶ結果が、誰でも全く同じものになることを防いでいる(min-maxer、マンチキン、いわゆる「最強厨」が意味をもたないことになる)。

・主人公は、ここにあるウォー・テーブル(War Table)から、世界に影響を与える指示を出す。アドヴァイザーたちの報告を聴き、自らの代わりにエージェントたちを各地に派遣して、様々な課題に対処する任務を実行させることができる。

・インクイジションの勢力の拡大は三つの尺度(リソース)で表される。

「影響力」(influence)は、インクイジションの「経験値」に相当するもので、冒険や任務を達成すれば増加する。新しいレヴェルに達すれば、グローバル・アップグレードのポイントを消費して、ポーションの携帯量の増加や、クラフティング素材の追加収穫などに用いることができる。

「権力」(power)は、(「影響力」がただ増加していくだけなのに対して)まるで貨幣のように獲得し、消費するものである。「権力」はメイン・ストーリーを進展させるため用いるが、ウォー・テーブルで未踏の地をアンロックすることにも用いる。

「時間」(time)もまた当然重要なリソースであり、インクイジターは全ての事柄を自分自身で手掛けることはできない。代わりにオペレーション(operations)と呼ばれる特別任務(これも「権力」によってアンロックされる)をエージェントたちに与え、リアルタイム進行でその達成を目指すことになる。決まった時間(一日やそれ以上の場合もある)が経過すると任務が達成され、報酬を獲得する。いくつかの特別任務には、何層もの段階を経て達成されるものがある。

・主人公はスカイホールドの中を実際歩き回り、思い思いのお気に入りの居場所にいるインクイジションの仲間たちと会い、交流することができる。いくつかのロマンスもここで進展する。

・スカイホールドの玉座は見せかけだけではない。主人公はここでいくつかの裁きを下すことがある。

 もちろん、過去にはDAOAにもストロングホールド(Vigil’s Keep)があり、「城主」となるプレイヤーが補修・改造することができたが、その範囲は限られ(一本道で)、見かけが大きく変わることもなかった。
 ObsidianのNeverwinter Nights 2、そのエキスパンションであるStorm of Zehir にもそれぞれストロングホールドが用意されていたが、最終的には誰がやってもほぼ同じ内容になる点では変わらない。  

 「裁き」とは「領土」の民の刑事上、民事上のいさかいを解決する判決を下すこと。これもまたDAOAに、さらにはBulder's Gate 2にもあった。

 SkyrimなどBioWare以外のゲームにもあるように、ストロングホールドの発想は何も目新しいものではなく、むしろ使い古された趣向。そして個人的には、満足いくような感想を持っているものはまずありません。

 よってDAIでは、そのよくある手法をどれだけ上手に洗練された形で見せてくれるのか、それにかかっているのだと思います。

 まさにゲイダーさんが言う、ストラテジー・ゲームがストーリーを生み出すだけに十分な「人格」を付与するという点。その出来栄えがどうかというところに注目したいと思います。 

2014年9月 5日 (金)

【DAI】Romances in Dragon Age Inquisition

 なるほど、これですね、BioWare ForumのMLのポスト。

http://forum.bioware.com/topic/512958-romances-in-dragon-age-inquisition/

 では早速読んでいきたいと思いますが、ネタバレ・ブログに違いないここであっても、あからさまにネタバレするのはいかがなものかと思うので、記事後半の具体的な内容は省略させていただきます。私個人もあんまり事前に読みたくないのもある。

 とはいえ、コメント欄までどうこうするつもりはありません。どこぞの新聞社のように、自分が読みたくないネタバレを黒塗り・改竄するようなことはしない。
 つまり、ネタバレをされたくないのにコメント欄を読んでしまって、コラテラル・ダメージを受ける可能性はあるということ。その点はどうしようもないのでご注意下さい。 

 MLのエクスキューズ(以下に訳出)を読んでみたところ、完全にマーケティング側の要請であることがわかる。わりと以前にここでも話題にしましたが、「ゲームを隅々までプレイすることにかかる時間の長さ、分量の多さ」と「カジュアル・ゲーマーの評価」はおおむね反比例する。ましてや二周、三周するようなコアなゲーマーはごく少数派。

(一方で、「思てたのとちゃうやんけ」というコア・ゲーマーの暴動を防止する意味ということも考えられるが、パブリック・エネミー・ナンバーワン、蛙の面になんとか、のれんに腕押し、糠に小判(ん?)、猫に釘(やめなよ)、鉄面皮で知られるEAが、(わずかな売り上げにしかならない)少数の者たちの怒りの叫びに反応するとは思えない。現にME3の際に不用意に反応してしまったBioWareのふたりの創業者のドクターたちは、責任をとって辞任せざるを得なかった。独裁者たるもの、自らの過ちを決して認めてはならない)

 目指せ500万本、あるいは1000万本のEAマーケとして、DAシリーズのファン層では比較的薄いと思われる、ただしマーケットの太宗を占めるカジュアル・ゲーマーを取り込まなければならないのは必須命題でしょう。

 ロマンス一挙公開は、BioWareとしての苦渋の決断、苦肉の策、断腸の思い、泣いて馬謖を(それ関係ない)、敵は本能寺(全然違う)という感じでしょうか。

 よくよく思い返せば、DAOもDA2も、ロマンサブルなキャラクターは誰であるか予めわかってたんですよね、確か。しかもどちらも一言で説明できるほど簡単なルールだった。
 今回は、色々と複雑な関係になる(んでしょう、読んでいないからわかんないけど)ので、こういう措置が必要だったと考えればいいのか。

***

 DAIのロマンスについて、しばし話をしてみたいと思うが、いかがか?

 次のような質問が出るのは当然至極だ。「どうして、どのキャラクターがロマンス対象だなんて公表するんだ? 謎はそのままにしておいて、プレイヤー自身にプレイしながら解明させるほうがよいのではないか?」 一部のプレイヤーがネタバレが完璧にない状態でプレイをはじめたいと思うのはもっともなことだが、DAIの世界は広いのだ。ストーリーは非常に長い時間をかけて紐解かれることになり、フォロワーとの関係づくりも同じだ。その結果、あるフォロワーがロマンスに興味を抱いていないことに気が付くまで、プレイヤーはこのゲームを大変な時間をかけてプレイすることになる。

 繰り返すが、その種の発見を好むプレイヤーは多い。また多くのプレイヤーは、誰とのロマンスであっても興味を抱いておらず、そして我々は、それぞれのフォロワーについて、ロマンスかそうでないかに関わらず、彼らとの関わり合いを持つことを選んだプレイヤーに対して、実りあるストーリー・アークを用意している。だが我々が思い至るようになったのは、多くのプレイヤーにとってロマンスが、我々がかなりの開発時間をかけているその趣向が、驚くほど重要な意味を持っていることであり、また彼らは、特定のキャラクターとのロマンスに心を砕きながら、最後にはただ失望に苛まれる羽目に陥らないよう、予め警告を受けることを好むということだ。

 この情報のはしがきとして、我々がロマンスをデザインするにあたっての目標について、いくつか述べておきたい。第一に、我々はプレイヤーに選択を与えるようにしたい。それは誰に対しても全ての選択が与えられるという意味ではなく、プレイヤーがどんなタイプの主人公を選んだとしても、複数のロマンスの可能性があるという意味だ。これは、あるプレイヤーが、ある特定のキャラクターに個人的に興味を惹かれることを保証するものではなく、それはたとえゲーム内の全てのキャラクターが誰とでもロマンス可能であっても同じことだが、そうではなく、理想的には、ロマンスが我々の開発過程において後から取ってつけたものではないことを、それぞれのプレイヤーに対して知らしめることになる。

 第二に、我々は我々のキャラクターにゲーム内での一貫性を持たせたい。全ての主要なDAIのキャラクターは、あるストーリー・アーク、個人的な諸目標、そしてプレイヤーとこれまでともにしてきた旅の展開についての考えを有しているので、ときとしてロマンス・アークが彼らにとってそぐわないこともあり、またそぐうこともある。どちらにしろ、我々はあるキャラクターがロマンス相手にならないことを正当化しようとするつもりはなく、そのキャラクターとのロマンスが、ストーリーの他の部分に照らし合わせてどのくらい似合うものであるかどうか、そのロマンスが面白いストーリー・アークを補強する理由は何か、といった点に着目しているのだ。 

 最後に、あるキャラクターがロマンス対象であるからといって、常に恋愛が成立することを保証するものではない。それらのキャラクターは各自が意図と選好を有しているのであり、プレイヤーがゲーム内で行った選択は、キャラクターたちとの恋愛関係に決定的な影響を与えることになる。それは意図的なものだ。

 それらのことを念頭に置きつつ、ここで誰が誰とロマンス可能であるかについて公表することにしたい。DAIをプレイする前に、この種の知識を得ることに興味がないのであれば、これを警告と受け止め、これ以上読み進めないように願いたい。

*** 

 前述のとおり、ここでやめときます。お知りになりたければ原文をお読みになるか、どこぞに載っている翻訳をご覧いただくのが良いでしょう。

「(一部のプレイヤーは)特定のキャラクターとのロマンスに心を砕きながら、最後にはただ失望に苛まれる羽目に陥らないよう、予め警告を受けることを好む」

 ま、気持ちわからんわけでもないが、かなり極端な考えではないかという気もします。
 無に帰すかもしれないからこその恋心ではないんかな?

 語られぬ湯殿にぬらす袂かな 芭蕉

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