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2014年7月13日 (日)

The Masked Empire Epilogue(1)

 エルフたち。

***

 ブリアラは、隧道から午前の陽光の中に歩み出た。
 地面は白い色で覆われ、蒼白い光をとらえてきらめいていた。彼女がエルーヴィアンの間を歩いていた間、この冬初めての積雪があったことのしるしで、今時分にはオーレイのほとんどの場所が雪に覆われているだろう。彼女の前には、葉の落ちた枝に雪を纏い、風の中に揺らしている木々があった。彼女の後ろには平原が広がり、遠くのほうがもやのように白くけぶっていた。

 木々の様子から見て、彼女はデールズの近くにいるようだ。彼女はフェラッサンの求めに応じてここに舞い戻ってきたが、本当は一刻も早くヴァル・ロヨーに向かいたいところだった。彼女にはなすべきことがあった。

 エルーヴィアンによって、彼女はオーレイ中を馬上のシェヴァリエよりも早く移動することができた。そしてそのシェヴァリエが彼女を目にすることは決してない。
「厳しい冬になりそう」 ミーリスが凍えながら、彼女の背後から言った。「ギャスパードでもセリーンでもいいから手早くことを済ませなければ、多くの者たちが死ぬ」
「戦争には、しばしばそんな結果がつきものだ」 光の中に出て来たフェラッサンが言って、目を細めた。

「飢えるっていう意味」 ミーリスがぴしゃりと言った。
「そして、あなたに何の関係があるの?」とブリアラが尋ね、彼女のほうを振り向いた。「デーリッシュが害を受けると? あなた、他の部族のことを心配しているの?」
「いつもよ」とミーリスが言った。彼女は木々を見ており、ブリアラには彼女が自分のいる位置を見極めていることがわかった。彼女の一族はこの近くに何年も暮らしていた。ブリアラには、ミーリスが生存者を探し出すつもりなのか、死者を埋葬するつもりなのか、それとも単にこの場を去るつもりなのかわからなかった。それはどうでもよかった。「あなたが気にかけているのは・・・、あなたのエルフたち」
「私の平ら耳たち、そうよ」 ブリアラは背後の隧道の入り口を振り返った。数ペース離れてみても、それは見事に紛れており、探そうとしていない限り見つけることはほとんど不可能だった。いずれにしろ彼女はそこにあることを知っており、いまだに彼女の身体の中に響き渡る魔法のおかげで、彼女の身体の一部のようにさえ感じることができる。「私は、私の民のことをとても気にかけているわ、ミーリス。そして初めて、私は彼らを救う手立てを手に入れた」
「もしその秘密をデーリッシュに手渡すなら」とミーリスが言った。「私たちは・・・」
 ブリアラが面と向かって笑うと、デーリッシュの女は黙り込んだ。

「どこのエイリアネイジであっても、そこに住むエルフ一人残らず、あなたたちは伝説の生き物だと考えている」 彼女はミーリスに言った。「ハラムシラルが陥落した時にさえ降伏しなかったエルフたち。彼らはあなたたちを恐れるか、あるいは感化される・・・、いまだ戦いをやめず、古い魔法を司る者たちとして。彼らは、あなたたちがここで、ディーモンと戯れ、古い遺物を探すだけではなく、自分たちを窮地から救おうとしていると考えていて、そしてもし、あなたたちが実際に彼らを救ってきたのなら、あなたたちは今頃、アーラサンをその手に奪還できるに足るだけの、忠義深い軍隊を手に入れていた」 彼女は微笑んだ。「でもそうはしなかった。あなたたちは、彼らは実際には自分たちの民ではないと考え、死ぬに任せた。だから、私が彼らを救うの。私が戦い続けるの」 彼女は隧道の入り口のほうを身振りで示した。「そして私が古の魔法を手にするの」

「私はあなたの敵じゃないわ、ブリアラ」 ミーリスは視線を落とした。「私はあなたの手助けをした」
「あなたが欲しがるものを私が手にしていたから」 ブリアラは微笑み続けていた。「そしてあなたの民は私の民でもあり、彼らがそれを忘れていてもそう。私はデーリッシュと一緒に働くつもりだけれど、それは彼らが全ての私の民を救うときのみ。次に出会った部族には、そう伝えておいて頂戴」

 ミーリスは息を呑み、頷いた。彼女はフェラッサンのほうを向いた。「あなたの部族に連れて行ってはくれないの?」
「君が私の部族の者たちに会いたくなるとは思えない、ダーレン」とフェラッサンは言った。「だが、どこの部族が受け入れてくれるとしても、幸運を祈るよ」
「どこに加わるにしても」とミーリスが言った。「ディーモンと取引するようなことのないところにするわ」 彼女は木々の中に歩み去った。彼女の杖は、新鮮な朝の雪と同じ色をしていた。

「彼女を殺すべきだったと思います?」 デーリッシュの娘の姿が木々の中に消えたとき、ブリアラは尋ねた。
 彼女の横で、フェラッサンが肩をすくめた。「それはこれから君が確かめることになるんじゃないのかな」 彼女はくすりと笑い、彼は彼女のほうを向いた。「本気なのか? 君はエルーヴィアンの道を、君の民を救うために用いるつもりなのか?」

 ブリアラはしばし黙考した。「セリーンとギャスパードは軍に用いようと考えていたけれど、それはあくまで彼らの戦いのためのもの。私はこの道を用いて、他には飢えるしか道のないエルフの住むエイリアネイジに食糧を送り届ける。私はこの道で、進軍する軍勢の先回りをし、標的に警告し、あるいは彼らの背後に回って、兵站線を叩く」
「どっちの軍の動きを邪魔するんだい?」

 ブリアラはフェラッサンのほうを見やり、冬の寒さに震えはじめながらも、微笑んだ。「勝ちそうなほう。なんでしたっけ? アナリスとアンドルイリ?」
 フェラッサンは微笑んだ。「君は彼らの戦いを長引かせ、その混沌の中で、君の民たちがその縛めから解き放たれるように企てる」
「うまくいく、そう思う」 ブリアラは腕で自分の身体を抱きしめた。
「ハラムシラルは、たったひとりの貴族のために蜂起した。私は、私の助けになるエルフたちをオーレイの全ての街で見つけることができるでしょうし、それだけじゃなく、あまりに戦いに怯えている者たちであっても、冬にその子らが飢えを凌ぐ手助けをしてあげることで、目や耳として働いてもらえるようになる」

「それは」とフェラッサンが言って、しばらく間を置き、そして言い終えた。「我々の民の古い遺産の類稀なる使い途だ、ダーレン」
「フェンハレルにも認めていただけるでしょう」とブリアラが言うと、フェラッサンがぎょっとさせるような笑い声をたてた。
「かもしれんな」 彼女の師匠が言った。「私にはとてもそうだとは思えんが」

「ああ、忘れるところでした」と彼女は言った。「エルーヴィアンを用いる合言葉。ふたりが離れ離れになったときのため、それは・・・」
 彼の指先が彼女の唇に当てられ、彼女は言い澱み、驚いて彼を見た。
 フェラッサンは再び微笑んだが、その目は悲し気で、ブリアラがこれまで思い描くこともできなかったほど、知恵に満ちていた。「よすんだ」

 彼女はしばらく静かに彼を見つめ、それから思い至った。「行ってしまうのですね」
「そうせねばならん」
「デーリッシュの元へ?」
 彼は鼻を鳴らした。「連中? 勘弁してくれ」 それから彼は真剣な顔つきに戻った。「だが、オーレイのエルフたちのことは心配無用のようだ。そうでない事柄は他に山ほどあり、私には他ですべきことがまだ残されている」

 彼女は頷いたが、その目はひりひりと痛んだ。彼に残って欲しいと乞い願ったとしても、意味がないことはわかっていた。彼女の心の奥底にある抗い、まだ学ぶべきことが残っており、彼抜きでそれがなしえないこと、それらが声になる前に彼女は押し殺した。今まで出会った中でもっとも賢き男は、彼女が彼女の民のため自由を勝ち取ることを信じていた。そして自分でも驚くことに、彼女は彼の見通しが正しいことを疑いもしていなかった。

「ならば、最後にひとつだけ教えて下さい、ハーレン。これは・・・」 彼女は身振りで隧道の方を示し、それから森を、ここから数日分の行程だけ離れているだろう、ヴァーネーン一族が死に絶えた場所を、さらには北の方、彼女の民が自由を手にするかもしれない戦いに揺れたハラムシラルのほうを示した。「これは、あなたがずっと目論んでいたことなのですか?」
 彼は最後にくすりと笑った。「そうじゃない、ダーレン。これは君が自分で成し遂げたこと」 彼は身体を寄せると、彼女の額に優しくキスをした。彼の唇は焼きごてのように熱く、彼女の頭はしばらくの間ぐるぐる回った。
 彼女が再び目を開けたとき、ひとりきりで、周囲のどこを見渡しても、フェラッサンが立ち去った痕跡を見つけることはできなかった。

 ブリアラは隧道を振り返った。彼女はもはや震えてはいなかった。おそらくフェラッサンがいくばくか残してくれた魔法の痕跡が、彼女を冬の寒さから守ってくれているのかもしれず、あるいは単に目的を思い定めたことで、身体が火照っているだけなのかもしれなかった。
 彼女は符牒を口にした。背後の隧道が、あたかも最初から存在していなかったかのように閉ざされた。

「フェンハレル・エナンサル」 恐るべき狼の恩恵。
 彼女は、それを無駄にはしない。

***

 おっさんとして、フェラッサンのブリアラに対する気持ちは痛いほどわかってしまう・・・。
 ま、おっさんちゅうか、ディーモンと「ダチ」になるくらい長い間暮らしてきたお方なんですけど。

 最後は、"She would make it count."、地の文は過去形ですから、"She will make it count."ということ。フェンハレル神から与えられた恩恵(blessing)を「大切にする」、「頼りにする」、「無駄にしない」というところでしょうか。

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