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2014年7月 9日 (水)

The Masked Empire 17(2)

 決闘の開始。

***

 お互い合意のうえで、ミシェルとギャスパードはヴァーテラルと戦った場所から離れたところで決闘をはじめることにした。散らばる瓦礫は滑りやすく、ミシェルもギャスパードも、岩に足をとられるような恥ずべき形で決着をつけることは望まなかった。

 大広間の大きなすり鉢の底近くでは、迷宮の入り組んだルーンが平らな部分の大半を覆っていた。しかしながら、ルーンの輪の外縁と大理石の長椅子の一番先頭の列の間には、おおよそ幅十ペースほどの開けた場所があった。ミシェルが見たところ、迷宮のほうに向かって僅かに傾斜していたが、足で踏んでみると、戦いの構えにさほど影響を及ぼすほどではなかった。

 長椅子の列は彼の左手にある。ルーンの輪の縁は右手だ。ルーンの輪の丁度前には、他の者たちが立っていた。リエンヌとミーリス、セリーンとブリアラ、そしてフェラッサンは彼女たち皆より少し離れたところに。

 彼の前には大公ギャスパードが立っていた。彼の盾はミシェルのものと同様、依然酸で爛れたままで、彼の鎧には、彼があれほど必死に消し去ろうとしていた引っ掻き傷の跡が残っていた。ミシェルが正確に狙えば、その傷を剣で貫くことができるだろうし、そしてミシェルの打撃は弾かれることなく、多少容易に盾を捉えることができるだろう。

 彼は以前にもシェヴァリエたちと戦ったことがあるが、それは名誉ある決闘のときもあれば、セリーンの不興を買った者たちとの戦いのときもあった。それらは、このエルフの遺跡に足を踏み入れるまでではあったとはいえ、彼の戦歴の中でもっとも困難な戦いであったが、同時にまたもっとも単純な戦いでもあった。

 彼らは皆アカデミーの訓練を受けていた。彼らは同じ稽古を、同じ技術を知っており、同じ教えを学んでいた。不意打ちはなかった。戦いは、より真剣に訓練を重ねて来た者が勝った。
 そしてそれは常にミシェルだった。

 ミシェルが剣を抜くと、焔がその刃に揺らめき、そして流れた。ギャスパードは焔に気づいて微笑み、彼の剣を抜いた。「不名誉の前に死を、サー・ミシェル」
「不名誉の前に死を、サー・ギャスパード」 ここでは、そしてただここでは、シェヴァリエの身分こそが、他のどの身分よりも重んじられる。

 彼らは剣を捧げて敬礼した。
 それから彼らは動き出した。
 ギャスパードは盾を高く構えて動いた。ミシェルはそれに一撃を浴びせ、低く突き出されるギャスパードの剣を後ずさりしてかわした。その剣に盾を振り降ろして弾き、肩から体当たりしてギャスパードの盾を脇に逸らすと、上段から斬りかかった。
 ギャスパードのほうが間一髪早く、大公が身をかわすとき、ミシェルの刃先の焔がギャスパードの兜の羽根飾りを舐めた。
 盾同士がぶつかり合い、ふたりの身体が押し合い、そして離れ、円を描くように動いた。

 ギャスパードがにやりと笑い、その口ひげが歪み、それから上段の逆手打ちを打ち込んできたが、ミシェルはあっさりと受け流した。即座にギャスパードが再び打ち込んでくるのを受け流そうとしたとき、ミシェルはそれがけん制であることに気付き、代わりに身体の向きを変え、突然逆向きに繰り出された下段の突きに盾の正面を当て、片足を貫かれるところを防いだ。ギャスパードの盾が横腹に叩き付けられたが、彼はそれを無視し、低い蹴りでギャスパードの片膝の裏を打った。

「くそ」 大公が足を滑らすと、ミシェルは身体を回して離れ、踏み込み、踵で向きを変え、次に身体を回し、逆手の一撃に全身の体重を乗せた。ギャスパードは盾を掲げたが、焔の剣は酸で弱った金属を切り取り、ギャスパードの鎧の胸板、丁度肩の下の部分に叩きつけられた。
「はっ、見切れていたものを」 大公は後ろによろめき、顔をしかめ、身体を素早く回転させるにあわせ剣を振り回し、ミシェルが追い打ちをかけるのを防いだ。その動きの最後に、彼はしかめ面で頷き、再び剣を捧げた。「おぬしはあっぱれなチャンピオンだ」

 ミシェルが戦いの間に口を開くことはめったになかった。それは常に気を散らせるものだと彼は思っており、そうする者たちは、自信をひけらかそうとする間抜けか、言葉を別の武器として用いようとするずる賢い者だと考えていた。

 ギャスパードが、激しい振りで再び打ち込んできた。ミシェルは盾で受け止めたが、ギャスパードが身体を押し付け、ミシェルに反撃の暇を与えなかった。盾同士がぶつかり、ギャスパードはさらに近くに踏み込んで、踵でミシェルの足を踏むと、乱暴に押しやった。

 アカデミーの訓練生たちの多くは、その動きによって背中から地面に押し倒され、喉に剣を押し付けられる羽目になった。ミシェルは片膝をつき、押し倒す力を頭上に逸らし、それから高い突きを繰り出した。再び金属が悲鳴をあげる音とともに、彼の焔の剣がギャスパードの鎧を切り裂き、こんどは大公の肩甲の半分を切り落とした。
 ミシェルは、間違いなくギャスパードに、たとえ致命傷ではないとしても、戦いを続けることができないほどの深手を負わせた手ごたえを感じ、大公はよろめき後ずさった。 

 その瞬間、ミシェルは大公のことを見損なっていたことに気が付いた。いくらかの貴族は、ほんの最小限の訓練のみをこなし、シェヴァリエの黄色の羽根飾りを手にした後は学んだことを忘れてしまうのだが、ミシェルはギャスパードが、戦いのための最良の状態をずっと維持してきていたと思いこんでいた。彼は長く続く戦いの過酷さには不慣れだったのかもしれず、あるいは優れた鎧にあまりに頼りすぎていたのかもしれない。どちらにしろ、決闘は終わった。

 ミシェルは立ち、戦いを終える慈悲の一撃を与えるため身構えた。
 その瞬間、ギャスパードのよろめいていた身体がくるりと一回転し、大公の片足のブーツがミシェルの胸板を蹴り上げた。
 ミシェルは、ふらつき後ずさりする間にも盾を掲げ、続く追撃を逸らした。だが、ミシェルが当然次には突進が来ると予想している間にも、盾でしのぐはずだった一撃は、彼の守りの斜め上に逸れた。かぎ形を描くような繊細な剣の動きで、ギャスパードは鎧の腿当てを貫いてミシェルの腿を鮮やかに切り裂いた。
 あるいは彼は、ギャスパードのことを見損なってなどいなかったのかもしれない。 

 彼は依然としてよろめき、足全体に走る熱いナイフで切られたような痛みのため、危うく地面に倒れそうになった。彼は自分を奮い立たせて剣を振り降ろしたが、ギャスパードは横跳びしてその一撃をあっさりかわした。力を込める唸り声をあげると、大公は、ぎざぎざになって依然くすぶり続けている盾の上端をミシェルの面頬に打ち付けた。

 目もくらむような痛みがミシェルの目を襲い、彼は本能的に跳び退ったが、次の一撃は彼の盾を貫いて、鎧の胸板を切り裂いた。それが当たったのは丁度腿の上の部分の、あのデーリッシュの戦がしらがまぐれで彼の鎧を貫いたところであり、ミシェルはのけぞり、再び胸板に打ちつけられた蹴りの強烈な威力を感じると同時に倒れた。

 背中を何か固いものに打ち付けられたミシェルの鎧は、きしむような悲鳴を上げた。それは大理石の長椅子だった。彼は方向を見失い、心の中に描いていた戦場の位置関係もわからなくなったが、かつての訓練では、それは鞭打ちの罰を受けるべき過ちだった。彼は無理やり目を見開き、何もかもが赤い幕を通して見える熱さと痛みのため激しく瞬きした。まだ目は見えた。面頬が打撃のほとんどを受け止めていた。彼はギャスパードがとどめの一撃を繰り出そうとしている姿を見た。

 彼は盾を掲げ、一撃を逸らし、代わりに胸板にまたもう一度蹴りを、肺の息を根こそぎ吐き出させるような痛打を浴びた。次の一撃で盾が脇に弾かれ、彼がそれと一緒に身体を横転させると、さらなる一撃は、彼がさっきまで寄り掛かっていた大理石の長椅子から石の固まりを削り取った。

 痛みに翳む視界の中、ミシェルはギャスパードを見た。
 大公は再びにやりと笑い、勝利を確信しており、ミシェルはその男の見通しに異を唱えることはできなかった。

*** 

 "Death before dishonor"は決まり文句のようですね。不名誉のそしりを受けるくらいならその前に死ぬ、という意味。

 続きます。

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