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2014年7月 7日 (月)

The Masked Empire 17(1)

 最終章。ここまで読まれた方には(ごくわずかでしょうが)感謝します。要約とか面倒くさくなってきたので、ここからベタで。

***

 胸の鼓動の高まりは激しかったが、セリーンは、氷のような冷静さをギャスパードに見せつけながら立っていた。「わたくしのチャンピオンが負傷しており、あなたは癒し手によって完璧な状態を保っている今このとき、戦いをはじめるというのですか?」

 ギャスパードは笑い、その声太い高笑いは、独特の美しさを保つ大広間の壁の中にこだました。「セリーン、もしわしがそうするつもりだったなら、リエンヌにおぬしのエルフの手当てを命じたりしなかっただろう。メイカーズ・ブレス、わしがただ単に、ああまで強く押し退けなければ、あの娘はあの忌々しい化け物の下敷きになって死んでおった」 彼は死んだヴァーテラルのほうを身振りで示した。

 セリーンは息を止めた。あの巨大な生き物が襲いかかったとき、彼女の心臓は一瞬とまった。彼女はできうる限りのことをしたが、自分自身を餌にして化け物の気を引き付け、まかり間違えば殺されてしまう危険を冒すことだけはできなかったし、自分の愛する女性の姿が化け物の爪の下に消え去る様子をただ見守るしかなかったことは、一生忘れることができないだろう。「では、裏切りは企んでいないのですね、これまですでになしたもの以外は?」

 ギャスパードはため息をつき、首を振った。「そのほうが楽だったろう。そして地上の誰ひとり知る由もないのだから」 それから彼は微笑んだ。「だが、わし自身が知ることになる。そしてわしは誓いを立てた身。よって、わしらは名誉にかけてこの決着をつけるのだ、セリーン」
「あなたがわたくしのチャンピオンと対決することによって?」とセリーンが尋ねた。「そして魔法は、おのおの身に着けているもの以外は用いずに?」 彼女は、敢えて強調するためリエンヌを見た。

 オーレイの正式な決闘では、持ち込む装備の種類、許容される魔法、そして用いられる戦いの方法についてまで決まりがあった。この地下の穴倉の中には決闘用の剣がない以上、セリーンが望みうるのは、リエンヌがその魔法でギャスパードを強化したり、ミシェルを呪ったりすることがないよう、確かにすることのみだ。

「それでよかろう」とギャスパードが頷いた。「そしてわしが勝てば、おぬしのエルフたちに害は加えないとさえ、ここで誓おう」
 セリーンは、ブリアラが彼に力ない笑顔を送るのを目にし、まるで恋人を取られたかのように怒りがこみあげて来るのを感じた。「あなたが勝てば、わたくしは死ぬわけですから、あなたがナイフ耳と呼ぶ者たちへの誓いを守るなど、到底信じがたいこと」

 ギャスパードは肩をすくめた。「どうとでも受け取るがよい、セリーン。サー・ミシェル、リエンヌの癒しが必要なら、ぜひ申し出られよ」 彼は死んだヴァーテラルのほうを振り返り、顔をしかめた。「あのような不気味な怪物に危うく食われるところだったのだ、まさか必要ないなどということはあるまいな」
「かたじけない」とミシェルが言った。「ご厚誼に預かります」

「そしてわしのほうは、しばらくの間、あの化け物の忌々しい酸を鎧と盾からこすり落とすことにする」 ギャスパードはミシェルに頷き、やや距離をおいて、まだいくつかの長椅子が壊れず残っていた別の場所に引き取った。ミーリスが彼に付き従い、依然首を振りながら用心深く歩を進めた。リエンヌはとどまり、しばらくの間その輝く両手をミシェルの身体にかざし、それから後に続いた。

 ギャスパードも、彼に忠実な者たちも聞き耳を立てることのできないところに去った後、セリーンは長椅子に再び腰を下ろした。今、寝台で眠ることができるなら、帝国の半分でもくれてやったことだろう。「そして全てが、たった一度の戦いにかかっている」と彼女はつぶやいた。
 『ゲーム』。彼女の全ての業績。何年にもわたって異なる派閥からの忠誠を集め、セダス大陸最大の帝国を文明化の時代に導こうと努めてきて、そのあげく、今この地中深いエルフの墓地の中のたった一度の戦いで全てが決する。
「ミシェル」と彼女が優しく言うと、彼が近寄ってきた。ブリアラとフェラッサンも近寄ったが、この瞬間は彼女と彼女のチャンピオンのためのものだとわきまえ、少し離れたところに立った。 

「女帝陛下」 彼はお辞儀した。
 彼女は気を強く持った。「彼に勝てますか?」
 彼は背筋を伸ばした。「彼はシェヴァリエです、女帝陛下。十分に訓練を積み、優れた装備に身を固め、そして死を賭して戦う覚悟です」 彼は息を継いだ。「しかし拙者は、彼に勝つことができ、勝つつもりです」
 セリーンは、自分でも止めていたことに気付かなかった息を吐き、そして微笑んだ。「そして勝てそうになかったとしたら、それを認めたのでしょうか、ミシェル?」
「認めんでしょうな、陛下」 彼は微笑んだ。「しかし、拙者がその言葉に偽りなき男であると、是が非でも示してご覧にいれましょう」
「示すまでもありません。そしてわたくしが玉座を取り戻したなら、それはあなたのおかげです、わたくしのチャンピオン」
「滅相もない」 彼は微笑んだまま首を振った。「玉座にお戻りになられたなら、それはご自身のお力によるものです、陛下。死者たちの鎧を身に纏い、敵なすものの喉を掻き切る姿を目にした者が、陛下が統治者として相応しいお方であることに疑いを挟むことなどありえない」
「ありがとう、ミシェル。武運を」 彼は再びお辞儀をし、数ペース離れたところまで行くと、両肩を回し、両腕を伸ばした。

 セリーンが振り返って見ると、ブリアラとフェラッサンがまだ近くに立っていて、彼女が何か言うのを待っていた。「フェラッサン」と彼女は言った。「ギャスパードは名誉ある決闘を行うことに同意しましたが、ハラムシラルでわたくしを最初に襲ったとき、あれは裏切りでした。彼を信じるわけにはいきません。彼のアポステイト、あの娘リエンヌは、戦士たちに力を貸し与え、敵を弱める魔法を用います」

「そうですな」 フェラッサンは、リエンヌが今はギャスパードの手当てをしているほうを見た。「クリエイションの魔法。彼女の治癒の力と似たようなもの」
「それとも、あなたが身に着けている指輪のようなもの」とブリアラが言った。「レディ・マンティロンがあなたに贈ったもの」
 彼女の声は強張っていた。セリーンは、彼女がまだ傷の痛みに堪えているに違いないことに気が付いた。「そう、黒き狼の指輪も似たような魔力を有しているのでしょう」 彼女は自分の指の古い指輪をくるくると回した。
「実を言えば・・・」 フェラッサンが言いかけ、肩をすくめた。「まあいい、似たようなものだ。しかしながら、彼女の呪いの技・・・、敵を弱める技こそ、君が気に病むべきものだ。あの娘はやたらと腕がたつ」
「もし彼女が試みたら」とセリーンが尋ねた。「阻止できますか?」

 フェラッサンは頷いた。「できるでしょう」 彼は首をかしげて、面白そうににセリーンを見た。「私が、ミシェルに力を貸す魔法を使えるなら、あるいはギャスパードを呪うことができるなら、君はそれを使うよう望んだのだろうか?」
「ミシェルはギャスパードに勝てると言いました」とセリーンは言った。「彼の自信を信じましょう」 フェラッサンはかすかに微笑んで頷き、それから歩み去った。

 そしてセリーンとブリアラだけが残った。彼女は片手を差し出し、ほんの少し躊躇した後、ブリアラはそれを取って腰を下ろした。彼女の鎧は化け物に切り裂かれたまま身体に引っかかっており、その下の彼女の衣服は引き裂かれ、血だらけだった。

「あの化け物が・・・」 セリーンの言葉は途切れた。「危うくあなたを喪うところでした」 彼女の目前にはまだ、化け物が彼女の上に立ち、今まさに襲い掛かろうとしている様子が見えた。彼女の目前にはまだ、ブリアラが射かけ、巨大な化け物の怒りを大胆にも真っ向から浴びている姿が見え、その間セリーンは、激しい動悸に見舞われながら、ただ立って見つめているだけで、ヴァーテラルが自分のほうに倒れかかってくる危険を冒すことなく手助けすることもできなかった。

 ブリアラの手がセリーンの手の中で強張ったが、彼女は顔をあげなかった。「それでも、私はここにこうしている」
「あと少しです、愛しい人」 セリーンが囁いた。彼女はディーモンから受け取ったキーストーン、子供の拳ほどの大きさのルビーを取り出し、しばらく握りしめた。「ギャスパードが死んだら、わたくしたちはエルーヴィアンを手に入れる。それらを用いて、わたくしたちはオーレイを手に入れる。そしてそれによって」 彼女は後を続けた。「わたくしたちは、あなたの民に新しい生活をもたらす」 それがどれだけかかったとしても、エルフたち自身の安全と、オーレイの安全のために。 

 ブリアラは頭を下げ、その瞳から一筋の涙が流れ落ちた。「そんな素晴らしい贈り物を私に」 彼女の指はまだセリーンの指に絡めてあり、セリーンの指輪を弄んでいた。「贈り物・・・、レディ・マンティロンは、これをいつあなたに?」

 セリーンは手を離した。彼女はキーストーンを腰の小袋の中に仕舞い込み、それから片手を掲げ、彼女が決して目で追うことができないほど謎めいた形に縒り合されたパズルの指輪を見た。「本当に、よく覚えていないの。父が死んだ後で、わたくしは一人ぼっちだった。彼女が憐みを感じたに違いない、宮廷の孤児であるわたくしに。ああ、思い出したわ、彼女はこの指輪が、わたくしがいつも抜け目なく振る舞うために役立つだろうと言った、いずれ必要になるだろうと」
 ほろ苦い物語。また別の人生では、それが真実でさえあったかもしれない。

 ブリアラは頷き、また一筋の涙を流し、それは彼女の足を覆う青いドレイクスキンの鎧の上で弾けた。「確かに必要だった」 彼女はセリーンを見上げ、瞳を潤ませながらも微笑んだ。「あなたが抜け目のなさを失うなんて考えられなかった。それがいつも愛していた理由のひとつ」

 彼女は身体を近付け、驚くべき力でセリーンを引き寄せてキスをした。彼女の柔らかい唇は今は荒々しく、ブリアラがセリーンの顎から喉にかけて唇を滑らす息は熱かった。ブリアラは強い腕の力でセリーンを包み込み、セリーンがキスを返すときには近くに引き寄せ、両手でセリーンを固く抱きしめ、セリーンの首と腰を支えていた。
「このことは決して忘れない」 ブリアラが囁き、身体を離した。「ギャスパードに返さなくてはいけないものがある」
 彼女は立ち上がり、今はぼろぼろになっている鎧を照れくさそうに両手で引き下げ、戦いの後まだ立ち直れずにいることを示すように、足を引きずり、疲れ切った様子で立ち去った。

 しばらくして、セリーンはミシェルのところに出向いた。「支度は済みましたか?」
「むろんです、陛下」 彼は以前より力強く、再びくつろいでいるように見え、息遣いは穏やかだったが、ただその鎧はへこみ、酸で爛れたままだった。セリーンは、ギャスパードの鎧もまたさほど違わない姿であることを祈った。

「ならば受け取りなさい」 彼女は二つの指輪を差し出した。「あなたとギャスパードの戦いでは、最良の武器と魔力を有した装備を用いることが認められています。身に着けることのできる全てのものを用いるのは、不名誉なことではありません」
 しばし躊躇した後、ミシェルは頷いた。「稽古用の剣で打ち合うわけではありませんからな」と彼は言い、上質のシルヴァライトの剣を掲げ、素早く回した。ルビーの指輪を小指にはめると、刃全体にたちまち焔が踊った。彼はレディ・マンティロンの贈り物の指輪を別の指にはめると、瞬きして、その重さを確かめた。

 それから彼は、へこみと傷だらけの盾を手にした。「かたじけなく存じます、陛下。命あればいつでも」
「あなたはシェヴァリエであり、サー・ミシェル、そしてわたくしのチャンピオンです。わたくしのために勝利を」
 彼女がギャスパードのほうを向くと、彼もまたオーレイの運命を決する戦いの備えを終えていた。

***

 続きます。

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