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2014年7月 5日 (土)

The Masked Empire 16(2)

 キリの良いところまで。 

 ***

 ブリアラは大音声を耳にした途端に動き出し、最寄りの大理石の長椅子の下に間髪おかず潜りこんだ。彼女は、そこまで素早く身を隠せず、落下する石に打ちのめされた者たちの苦痛の悲鳴を耳にした。
 長椅子の下に籠もりながら、ブリアラは耳を澄ませた。
 石が地面に激突する振動は彼女の腹に響き、身体を揺さぶった。
 だが、彼女にはそれが崩落でないことはわかった。崩落が起きる範囲が狭く限られるなどということはない。
 そして崩落は歩いたりしない。

 彼女は身体を横転させ、弓を構え、巨大な石柱のようなものが、天井に描かれた空想上の生き物から落ちて来るのを見た。だが、大理石の長椅子を叩き割ったそれが再び自ら持ち上げられたとき、はじめて彼女は、その柱の底に大きな爪がついているのを目にした。よくよく見れば、それは彼女の背丈よりも長い、石の鎧を纏った脚だった。

 生き物は巨大だが、その大きさに似合わないほど痩せた身体をしており、ほっそりした胴体を支える五本の長い脚からは棘が突き出し、昆虫のそれのように節があった。人のそれとさほど変わらない長さの、爪の生えた二本の前脚が突き出されている胸の部分は目の無い頭に続いており、石の牙の生えた口を開き、シューと言う声をあげ、空気を嗅いだ。

 ブリアラは一瞬にしてそれらすべてを見てとり、飛び退けると、他の部分より脆弱と思われた生き物の胸に矢を一本見舞った。その矢は石の皮に弾かれて砕けた。
 それほどの巨体に似つかわしくない素早さで、そいつは彼女のほうを向き、大きな甲羅付きの脚を振り上げると、ブリアラが先ほどまで身を隠していた大理石の長椅子を叩き割った。「フェラッサン、あれは何?」

「ヴァーテラルだ!」と彼は叫び返し、ブリアラはリマッチェとミシェルがその生き物に突進していくのを見た。「たちが悪い、ものすごく、たちが悪い!」

 フェラッサンはまだ攻撃をしていない。何か理由があるのか、それともあまりに敵が強すぎると知っているためなのか。鎧付きの脚が再びブリアラの側に振り降ろされ、彼女は身をかわし、転がり、最寄りの脚の関節部を狙って矢を放った。またしても矢は石の鎧に敢え無く弾かれる。ミシェルとリマッチェが遠い方の他の脚をめがけてそれぞれ斬りつけるが、実りはなかった。

 ヴァーテラルがその脚を地面に叩き付けると、ブリアラの身体の足の下の石が浮き上がった。ミシェルとリマッチェは弾き飛ばされ、地面に倒れるときに鎧の金属音を鳴り響かせ、ミーリスは、刺青の下で死人のように蒼ざめた顔をしながら、前に出て杖を掲げた。ギャスパードはその傍らで首を振り、後ろに立つリエンヌの杖は魔法に輝き、その唸るような音は、ギャスパードをも包み込んでいる。

 「待つんだ!」とフェラッサンが叫んだ。ブリアラは彼の方を一瞥する危険を冒し、長椅子の上に立っている彼の姿を見た。「高いところに登って、やつに手を出すな!」
 ギャスパードは仰天したような顔を向けた。「正気か?」
 「早く!」 ヴァーテラルはシューと声を立て、その顎をギャスパードのほうに向け、空中に酸の霧を吐き出した。盾を持ち上げてその危険な霧を防ぐと、大公は長椅子の上に素早く跳びあがり、手を差し伸べてリエンヌを持ち上げた。彼の盾の酸を浴びたところからは煙が出ており、シューシューと音を立てている。
 ブリアラは後ろに回転して生き物との間の距離を取り、長椅子の上に跳び乗った。横ではセリーンも同じようにしており、ブリアラはミシェルとリマッチェもよじ登っているのを見た。

 しばしの間、誰も動かなかった。ヴァーテラルはその場で向きを変え、不気味な口を大きく開き、空気を嗅いだ。驚くべき素早さで五本の脚の向きを変え、地面を掻きむしった。そいつは困惑しているように見えたが、その瞳の無い顔のため、ブリアラはその感情を想像するしかなかった。

 そうか。
「見えないんだ」と彼女は囁いた。
「そのとおりだ、ダーレン」 フェラッサンの声も静かだった。「我々の動きを、蛇のように地面から察し、この場所を貶める者の罪の意識を味わう。やつは、ヒューマンたちがエルーヴィアンの聖なる場所を侵すのを防ぐためにいる。エルフと戦うのは、自分の身を守るときだけだ」

「そいつはいい」とリマッチェが言った。「だが、ここにいるのは皆が皆エルフではない!」 彼の言葉に、ヴァーテラルが身を屈め、あり得ないほど高く、素早く宙を舞い、リマッチェから数ペースも離れていないところに着地して、爪の下の地面の石を叩き割った。公爵は蒼ざめ口を閉じたが、巨大な化け物はまだ静かにシューという声を立て、前後に動きつつ、彼のことを探していた。

「やつはブリアラを殺そうとした」 ギャスパードは責めるような口調もなくそう言った。ブリアラは、大公が意識を集中しようとして目を細めているのを見た。
「彼女が攻撃した。彼女が平和裏に振る舞っていれば、彼女のことは無視した」
 ギャスパードは頷き、まだ考えていた。「だからエルフならやつには匂いでわかり、攻撃を受けることはない」
 「まあ、こいつに限ってはそのとおり。他のがどうかは、フェンハレルのみぞ知る」

 ヴァーテラルはまだ探しており、リマッチェは長椅子の上で凍り付き、絶望した顔つきで他の者たちを見ていた。怒りの音を立て、化け物が巨大な爪を地面に突き立てると、リマッチェはよろめき、激しく身体を揺らしながら態勢を保った。

「ミシェル、熊を襲う狼の群れだ」とギャスパードが告げ、ミシェルが頷いた。ギャスパードは他の者たちに叫んだ。「皆はやつを惑わせ、引き付けろ! エルフはわしらが仕掛ける間、やつの気を逸らせ!」 ヴァーテラルがリマッチェから離れ、ギャスパードの声に引き付けられると、大公はにやりと笑った。「そうだ、このでかぶつの化け物! わしにかかってこい!」

 ヴァーテラルは再び宙を舞い、巨大な脚の爪が地面から石の塊を剥ぎ取り、ギャスパードが先ほどまで立っていた長椅子を打ち砕いた。飛び跳ねて身をかわした彼が着地すると同時に、ミシェルが化け物の後ろ脚に剣先を何度も降り注いだ。

 ブリアラは、今度は頭を狙って矢を放ち、それは代わりに化け物の肩に当たった。そいつが吼え、彼女のほうを向いたとき、凍り付くような冷気の波を浴びて苦痛の悲鳴を上げた。ミーリスの杖は再び白く輝いており、彼女はしかめ面をしながら、ヴァーテラルの脚に再度冷気を浴びせかけ、薄い氷の層で覆った。化け物がミーリスのほうを向くと、部屋の向こうから岩が飛んできて、弱った脚に命中した。

 ヴァーテラルは苦痛に叫び、フェラッサンのほうを向いたときには、その傷ついた脚を引きずっていた。ブリアラの師匠に逃げる暇はない。ヴァーテラルが攻撃を仕掛けようとする寸前、地面から剥がされた岩が彼の回りを覆い隠したが、一撃を受けたその岩は砕け散った。フェラッサンは地面にひどく打ち付けられ、動かなくなった。

 ヴァーテラルはフェラッサンの身体の上で立ち止まり、棘の生えた脚を一本持ち上げてとどめを刺そうとしていたが、ギャスパードの叫び声を聴いて動きをとめた。「脚の具合はどうだ、化け物?」 彼はそいつの傷を負った脚に斬りつけ、その一撃は石の鎧を貫いて、体液をほとばしらせた。「痛そうだな!」 ギャスパードは力に満ちているように見え、繰り出す攻撃はどれも生身の人間が振る剣よりも激しかった。彼の後ろではリエンヌが杖を掲げ、凄まじい集中力でギャスパードを見つめながら、魔法の力を送り続けていた。

 ブリアラは、ヴァーテラルがギャスパードのほうを向いた途端に、リマッチェとミシェルがそいつの後方に回るのを見た。そいつがリマッチェのほうを向いて爪のついた脚を振り上げると、ブリアラはその剥き出しの下腹を垣間見た。逡巡することなく、彼女は別の矢を放った。
 ブリアラの矢はヴァーテラルの横腹の一本の脚の関節近くに突き刺さり、彼女はそこから体液が溢れ出るのを見た。化け物はまた悲鳴を上げた。「下よ!」とブリアラが叫んだ。「下に潜るのよ!」

 そいつが彼女のほうに向いたとき、彼女は自分がいかに無謀なことを叫んだのか気が付いたが、自分が立っていたところに爪が突き刺さり、石を叩き割る直前に飛び退いた彼女の後ろの地面には、怒りにかられたそいつが吐き出す酸の霧が吹き付けられた。

 そのときセリーンがブリアラの前に飛び込み、宙返りしてヴァーテラルの下に潜りこんだ。
 ブリアラは、怒りとともに追いかけてくる化け物からまだ逃げ続けていたが、視界の端には、セリーンが身体を起こし、両手に輝くダガーが焔を引いているのを見た。彼女は電光のような素早い精確さで跳び込み、ダガーを突き出し、化け物の下腹に埋めた。レディ・マンティロンの指輪が導いたのかどうか、ブリアラにはわからなかったが、ヴァーテラルは苦痛のためつんざくような悲鳴を上げた。

 身体で押し潰そうとする化け物から、身体を回転させて逃れたセリーンは、リマッチェからさほど遠くないところで立ち上がると、ダガーを構えた。ヴァーテラルは彼女のほうを向き、目のない顔を激怒で歪め、牙を向き出し、酸を振りまいていたが、その後ろではギャスパードがそいつの傷ついた脚にまた斬りつけはじめた。

 ブリアラは攻撃のリズムを見てとった。リマッチェ、ミシェル、そしてギャスパードが等間隔に化け物を取り囲む。セリーンが下腹を攻撃し、ブリアラとミーリスが遠方から攻撃を仕掛け、リエンヌはできうるかぎりの支援をする。
 危険で、正気の沙汰ではなく、ミシェル自慢のシェヴァリエたちでさえ備えのない戦いであったが、ブリアラにはうまくいくように思えた。

 ヴァーテラルは、ブリアラが予想したとおりに向きを変え始めた。
 そのとき彼女は、リマッチェ公爵がセリーンの背中に盾を叩き付けるのを、恐怖とともに見た。
「ライデスのために」 彼が静かに言った。彼の目前に倒れ伏したセリーンは、ヴァーテラルの前脚に身体をしたたかに打ち付けた。

「リマッチェ! 馬鹿なことを!」 ギャスパードが叫び、化け物の後ろから執拗に斬りつけ続けたが、手ひどい傷を負った恰好の獲物が目の前に倒れているそいつは、彼を無視した。そいつは身体を屈め、小さいほうの、人と同じくらいの大きさの両腕でセリーンを掴もうとした。

 絶叫しながら、ブリアラが矢を一本、二本と放った。それらは敢え無く的を外れ、ヴァーテラルの爪が得物を掴み上げた。
 サー・ミシェルの身体を。

***

 続くっ。

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