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2014年7月 5日 (土)

The Masked Empire 16(1)

 第十六章、いよいよラス前。とはいえエピローグもあるので作業的にはラス前の前なのですが。

 そういえばディックの「最後から二番目の真実」"The Penultimate Truth" をもじった題名の話が受けているとかいないとか。エリスンの「世界の中心で愛を叫んだけもの」"The Beast that Shouted Love at the Heart of the World"の題名をもじったものといい、安易かつ無意味なパクリにサイファイ・ファンとして純粋な憎悪しか感じません。

 あー、ここの表題のRain Dancing Vanityは、別に筒井先生の「ダンシング・ヴァニティ」を安易かつ無意味にパクったのではなく、「ヴァニティの雨乞いブログ」をただ訳しただけなんですが、全く気付かず、かぶってました(笑)。

***

 サー・ミシェルの計算では四日が経っていた。ギャスパードが用意した乾いた食糧と、フェラッサンがデーリッシュの野営地から持ってきた固いパンで四晩過ごした。鎧を着て一日中歩いた後、固い石の上に四晩寝ていては、ミーリスから受けた痛みから完全に回復することはできなかった。ギャスパードから命じられて彼の治療を行うミーリスの手は身を切るほど冷たく感じられ、彼女の視線は燃えるような憎悪を孕んでいた。
 四晩にわたり、ブリアラと一緒の毛布で寝る女帝を、彼は感情を押し殺して見守った。

 他の者たちと同様、女帝たちが誰かと寝床をともにするのは奇妙だと思わないか。その夜、ギャスパードが静かに問いかけてきた。彼は自分の鎧の胸板についた小さな傷を、手持ちの道具で可能な限り慎重に均していた。その傷はミシェルの鎧のへこみと異なり、修理しないままでは剣に貫かれてしまう。剣を研いでいたミシェルは、多少はそう思う、と答えた。

 彼女に何の思いも抱いていないのか、とギャスパードは軽く笑いながら尋ねた。彼女のことを気にかけているが、そのような感情は抱いていない、とミシェルも笑いながら答えた。そして、悲惨な恋に堕ち、嫉妬や激情ゆえに身を滅ぼしたシェヴァリエの話は、若い頃数えきれないほど耳にした、と付け加えた。

 呪われたダークスポーンの手にかかったほうがましだ、とギャスパードが胸板の汚れを落としながら言った。磨き油が欲しければ分け与えるという彼の申し出にミシェルは礼を言い、剣の傷を見つけ、その修理に取り掛かった。ヴァル・ロヨーなら、傷んだ剣は投げ捨ててしまうか、刀鍛冶に修理させるところだが、ここエルフの死者の間でそんな贅沢は許されない。しばらく作業を続けた後に彼は、自分も農奴の娘と寝床を共にすることがある以上、女帝に偉そうなことは何も言えない、と言った。
 もっともだ。ギャスパードは唸りながら全身の力をかけて鎧を磨き上げ、出来栄えを検分した。ただそれだけの話であれば。

 ミシェルの剣についた傷は、次に何か固いものに当たった途端にそこから折れてしまいそうだった。彼は顔をしかめ、砥石を取り出した。シルヴァライトはとても固いため、一度傷がついてしまうと研ぐのは難しく、誤ったやり方では刃先を台無しにしてしまう。「そして、拙者が疑念を抱いていることを認め、閣下の側に付くべきだとお思いか?」
「そんなことをすれば、今この場で叩き斬る」 ギャスパードはためらいなく答えた。「わしらはシェヴァリエ、名誉と任務に誓いを立てた身だ。そしておぬしは、チャンピオンとして誓いを立てた」
「彼女に対して噂を流しはじめたとき、閣下が名誉を気にされているようには思えなかった」
「帝国にとって必要なことをしたまで」 ギャスパードは胸板を一本の指先でなぞり、顔をしかめた。「わしは勝つために戦った。アカデミーでは何と教わったのだ? 名誉は妨げない・・・」
「・・・戦術を」 ミシェルが古い教訓の後を引き継いだ。「そして、栄光は手に入らない、愚直さからは。そうです、閣下」

「セリーンは常に『ゲーム』の達人だった。メイカーズ・ブレス、そもそも、だからこそ玉座を手に入れたのだ。わしは彼女の定めたルールの範疇で動いていたに過ぎん」 ギャスパードはため息をついた。「正直に言えば、わしの最大の後悔は、あのバードをおぬしに差し向けたことだ。つまり、彼女におぬしの名を貶める材料を探させたのだ」

 あの倉庫の中でメルセンドレに挑発されたときの記憶は、彼の血を凍りつかせた。だが彼もまた長い間にわたって『ゲーム』を見てきており、ギャスパードが何を知っているか尋ねれば、自分が恐れているということを暴露してしまうことはわかっていた。そうする代わりに、彼は肩をすくめた。「言われるとおり、閣下は『ゲーム』を手掛けていた。それは噂と当てこすりによるもの。その点からいえば、退屈な人生を送ってきた拙者は幸せだったのでしょう」

「たとえそうであっても、サー・ミシェル、シェヴァリエが同輩になすべきことではなかった以上、わしに謝罪させてくれ」 ギャスパードは微笑んだ。「中央の間を見つけたとき、休戦は終わり、わしらふたりは全力で命のやり取りをすることになる。そのことはおぬしも、わしもわかっておるが、わしらは名誉にかけて、『ゲーム』にも、噂にも、嘘にも邪魔されることなく戦う。自らの分別を知り、その知識を誇りとともに抱くことを世界中に示すふたりの男として」

 ギャスパードは真実を知らなかった。知っていれば大公はその情報をもっと早く、ハラムシラルで自分たちを攻撃する前に用いていたに違いなかったが、彼の心の一部は、ギャスパードがいつかそれを攻撃に用いるのではないかと待ち受けていたのだ。

 彼は、あの忌々しいメルセンドレが、彼女が見つけた秘密を材料に彼を脅迫したとき、その息の根を止めようとして自分の血がたちまち沸き立ち、力が湧き上がったことを覚えていた。彼の頭蓋の底のほうにあった小さな緊張、あまりに長い間そこにあったため、あることさえ忘れていたそれがほぐれ、彼の心の中から爽やかな救われた思いとともに洗い流された。彼は解放された。彼はサー・ミシェル・デ・シェヴィンとして生き、そして死ぬことができる。
「いいでしょう、閣下」と彼は言い、剣の傷を修理する作業に戻った。

 翌日、メイカーさえも呪う道をまたひとつ歩いた後、彼らはエルーヴィアンを通り抜け、今までのどれよりも大きな円形の部屋に出た。
 その部屋は、昨晩ブリアラがパンを焼くのに用いた小さな火と似た、大きな黄金の火鉢に灯る魔法の炎に照らされていた。周囲の壁には、鎧姿か、または杖を手にした姿のエルフが彫り込まれた数えきれないほどの支柱があって、何十ものエルーヴィアンを両脇から挟み込み、それら巨大な鏡のてっぺんの上の天井には、数多くの化け物たちの姿が彫り込まれていた。ミシェルが目にしたのは、ディーモン、ドラゴン、そして呼び名も知らない化け物たちだった。

 大広間の床は、緩やかな傾斜をもつ鉢の形になっていた。斜面の高いところには、良質の大理石でできた長椅子が内側に向けて並んでいる。低いところには、床に描かれたルーンが、ミシェルには理解できない紋様を形作っており、歪んだ蜘蛛の巣の形がそれぞれ重なり合い、一部は様式化された生き物のように見え、また炎や稲妻のように見えるものもあったが、それ以外には単純な図形もあり、何の意味があるのか不明な方向に曲がりくねっていた。それらは彼に、途中の道にあったルーンを思い出させたが、眩い光で燃えるように見えてもいなければ、どことなく形も異なっているようだった。

 広間の中央、ルーンの巨大な円の中心には石でできた大きな台座があり、表面には何の飾りもなかったが、その真ん中ただ一か所だけ、セリーンがディーモン・イムシャエルから渡されたルビーが丁度嵌められるような形になっていた。 そのときまでミシェルは、ディーモンはただ単に彼らを死に導くためここに送り込んだのではないか、と半信半疑であった。

「驚いたな」とギャスパードが言った。彼の声は部屋中に響き渡り、壁にこだました。「支柱に彫られた耳の先を削り落とせば、ヴァル・ロヨーにあってもおかしくない」
「ここは霊廟ではないですね」とブリアラが言い、彼女の声が響き渡らないことに、ミシェルは小さな不安の疼きを感じた。「フェラッサン、ここは何? 葬儀の間?」
 エルフたちは、ミシェルや他の者たちよりもずっと前に部屋に入っており、ブリアラとミーリスはその豪華さに見とれているようだった。フェラッサンだけが無感動に見える。
「一部は」と彼は言った。「だが信者たちは、歎願のためにここを訪れてもいた」

「何に対して? お前らの野蛮な神にか?」とリマッチェが尋ね、冷笑した顔の頬の傷が歪んだ。
「私たちの先祖、ウーセナラに就いた者たちに」 リマッチェが口を挟んだことにフェラッサンが腹を立てていたとしても、その素振りは見せなかった。
「歎願者たちは迷宮を歩き」と彼は言い、歪んだルーンの塊を指し示した。「そして、彼らが価値ある者であれば、欲している答えをその夜の夢の中で見出すことになる」
「歩くと言っても・・・」 リマッチェは台座を取り巻くルーンを見た。 「何か手がかりがあるのか?」
「なんだ、見えないのか?」とフェラッサンが言って、微笑んだ。「では、君は価値ある者ではないのだ」
 リマッチェは剣に手をかけたが、ギャスパードの素っ気ない身振りを見て思いとどまった。

「ならばおぬしには、あのごちゃごちゃの中に道が見えるのだな?」 フェラッサンが頷くと、ギャスパードはセリーンに顔を向けた。「ではどうやら、従妹よ、わしらの休戦もそろそろ終わりに近い」 彼は彼女から歩み去り、まだ剣を手にしてはいないものの、戦いの構えを取っていた。「わしらはエルーヴィアンを目覚めさせる鍵を手にしておる。もしわしが勝てば、わしのエルフが道を開く。おぬしが勝てば、おぬしのエルフがそうする。ただひとつの問いは、決着をつける方法だ。再び魔法を解き放って、また別の、メイカーに呪われしディーモンがわしらを殺しにやってくる危険を冒すのか、それともおぬしのチャンピオンとわしが、男と男として戦うのか」 

 ミシェルは、自分の身をセリーンとギャスパードの間に置き、肩から振り返りもせずに言った。「陛下?」 ミーリスは、すでにギャスパードの側に歩み寄ってミシェルのことを熱烈な期待に満ちた瞳で睨んでおり、一方ブリアラは間合いをとって、リエンヌとミーリス両方への視界を確保していた。
 リマッチェは、セリーンからギャスパードに移した目を細めて考え込んでおり、それに気づいたミシェルは、戦いがはじまったらできるだけ早くリマッチェを始末しておくことを銘記した。公爵の剣の腕前はたち、シェヴァリエの掟に縛られることもないので、戦いが始まったら、もっとも効果的な瞬間に意表をついて攻撃してくることは疑いようもない。

 だが、セリーンが口を開く前に、リエンヌが割り込んできた。
「違う。違う、私たちはエルーヴィアンを手に入れてなどいない何も手にしていない。何かが目覚めている。何か古くて怒れるものが」
 ギャスパードが一瞥を浴びせた。「リエンヌ、何か言いたいのなら・・・」
「発動することを強いられた魔法がある。感じるのです、閣下、それが・・・」 リエンヌの目が見開かれ、何かを探しているように周囲を見回した。それから彼女は顔をしかめた。「回り中にいる。それとも・・・」 彼女は上を見た。
 石が砕ける大きな騒音とともに、一行の頭上に天井が落ちてきた。

*** 

 シェヴァリエ、騎士の恋についての話題ですが、アーサー王朝の時代、騎士ランスロットと王妃グィネヴィア、騎士トリスタン(トリストラム)と王妃イゾルデ(イスールト)の世から、悲恋と決まっている。騎士の淑女への思いはプラトニック・ラヴに限るというのは、実は後付けのフィクションの「ルール」であるようです。まあ、考えてみれば当然でしょうね。

 ミシェルが、自分はセリーンの「庇護者」役であると強調しているということは、逆に言えば自分の彼女に対する恋愛感情を押し殺していることを意味するわけで、そのことはギャスパードの目にも明らかでしょう。そうでなければ小説は、セリーンほどの妙齢の美女に、似たような年恰好の男性がそんなにも始終側に付き従っているにも関わらず、恋慕の念を抱かない「理由」を示さなければならない。シェヴァリエという身分も、チャンピオンという職責も、エルフとのあいのこという出自も、ブリアラという恋敵の存在も、すべて「恋愛感情を吐露しない、できない」ことの理由であって、恋愛感情を持たない理由にはならないわけですからね。

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