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2014年7月13日 (日)

The Masked Empire Epilogue(3)

 シェヴァリエたち。

***

 ミシェルとギャスパードは、エルーヴィアンが彼らをヒューマンの世界に送り戻した、ちっぽけなエルフの廃墟から外に出て呻いた。彼らは雪で覆われた、何本かの低木の他は吹きさらしの平原に立っていた。日没が雪におぼろげな赤味のある色合いを与え、ミシェルにエルーヴィアンを思い出させた。その色には、もう二度とお目にかかれなくても構わなかった。

 氷のような風がミシェルの薄い外套を貫き、彼は身震いしたが、まだ本格的な冬ではなく、シェヴァリエとして、厳しい状況で生き残る訓練は積んでいた。
 もっとも、彼はもうシェヴァリエではないのだった。
「メイカーズ・ブレス」 彼の後ろでギャスパードが言った。「あの呪われた道のことを思うと、少々寒気を覚えるな」
「たしかに、閣下」 ミシェルは木々を見た。「ここがどこかおわかりですか?」
 ギャスパードは目を細め、それから笑った。「わからんのか? 記憶が正しければ、わしらはヴァル・シェヴィンから馬で一日ほどのところにおるはずだ」

 ミシェルは首をすくめ、 悔しそうな顔をした。「ブレヴィンが拙者の爵位を手に入れてから、何度か訪れたことがあるのですが、馴染みがあるとは到底言えません」
「ブレヴィン?」
 ミシェルは、その貴族の名前と名声を無傷のままにしておくべきだったかもしれないと思ったが、彼はとっくに死んでいる。それだけではなく、ミシェルはもう嘘をつくことに疲れていた。「そうです、モントフォートの。彼は、子供の頃に街で戦っている拙者を見かけた。彼は一族の衛兵とともに拙者に訓練を積ませ、最後には拙者に爵位を与えた・・・、見つけて来たというべきでしょう。彼は、拙者には見どころがあると言っていた」
「間違ってはおらんかった」とギャスパードが言って、頷いた。「彼がはじめてでもあるまいが」 彼は振り向いた。「隧道がわしらのすぐ後ろで閉まった。どこにあるかすらわからん」
「魔法の類であることに疑いはありません」 ミシェルは見ていなかった。冷たい空気の中、彼の傷は痛み始めた。

 彼らは、ふたりともゆっくりした足取りを維持していたが、それでもデールズからヴァル・シェヴィンまでわずか数日で到着しており、伝書の鳥が旅するよりも速かった。彼らは口数少なく、力を温存し、脅威に対して警戒を怠らなかったが、やがて脅威など来ないことがわかった。夜休む前には、おのおのが自分の傷の包帯を締め直した。

「なんとも惜しい話だ。ドレイケン皇帝がエルーヴィアンのことを知っておられたとしたら。オーレイの版図は一体どこまで拡大していたことだろう」 ギャスパードが首を振った。「それもわからなくなった。セリーンのエルフがどちらに与するか決めない限り」
 ミシェルは遠い西の地平線の下に、陽光の最後の銀の輝きが隠れていくのを見つめていた。「彼女はもうセリーンの手の者ではありません、閣下」
 ギャスパードがまた笑った。「そうだったな。そしておぬしもではないか、それを言うなら」

 ミシェルは彼の方を振り向いた。 「それで、これからどうなるのでしょう?」
「そんなこと知るか」 ギャスパードは身体の両脇に身体を回して筋を伸ばし、顔をしかめた。「おぬしから受けた傷のおかげで、わしの戦士としての日々は終わったらしい。しかもあれは、わしがおぬしの剣を砕いただった」
「拙者の身の上はどうなるかという意味でしたが、閣下」
 ギャスパードはミシェルのほうを振り向いた。「アカデミーがおぬしの籍を剥奪し、処刑を命じるであろう」
 ミシェルは頷いた。彼もギャスパードと同じだけ、規則を知っている。

「教えてくれんか」 しばらく後にギャスパードが言った。「なぜ、あっさりわしを殺さなかった?」
「約束をしたからです」とミシェルが言って、首を振った。あのヴァル・ロヨーの倉庫の外に出たときには、自分の秘密を守ることが最高に重要な問題だと思っていた。その約束の対価について知っていたなら、彼は違う決断をしたのだろうか?
「だがなぜ、それを守る?」 ギャスパードが詰った。「おぬしは真のシェヴァリエでもないのであろう、息子よ」
 ミシェルは剣に手をかけようとして、そこにないことに気が付き、代わりにダガーを手にした。「シェヴァリエたちが、拙者の名前を除籍したうえで殺すと言うなら、それは彼らの権利でしょう」と彼は言って、刃先を向けたギャスパードを睨み付けた。「だが、彼らにも拙者の名誉まで剥ぎ取ることはできない。そして拙者は、そのような侮辱を看過することもしない」
「ほらな?」とギャスパードが言って、微笑んだ。「だからこそ、わしはおぬしのことをアカデミーに伝える気にならんのだ」
 ミシェルは瞬きをした。「意味が分かりませんが」

「サー・ミシェル」 ギャスパードは首を振った。「おぬしはわしを正々堂々と打ち負かした。おぬしは、それ以外のすべてを失うことになっても名誉を重んじた。おぬしは、全きシェヴァリエの鏡だ、その身にどんな血が流れているかに関わらず」 彼はまた遠くの方、隧道があったほうを見やった。「二百年前、彼らは同じことをしたひとりの女性を殺したが、フレヤンが規則を変えたことで、彼女はサー・アヴェリンとなった」

 ミシェルは、大公が話すにつれてダガーを降ろした。彼はそれを鞘に戻しながら、静かに話した。「シェヴァリエに残れとおっしゃるのか」
「おぬしはシェヴァリエに相違ない。それをどう活かすかはおぬし次第だ」 ギャスパードがくっくっと笑った。「だが、セリーンのチャンピオンには戻れんだろうがな・・・」
「無理でしょう、閣下」 セリーンの処置は極めて明確だ。彼が裏切ったことにより、再び彼女の目の前に姿を現したなら、彼の生命はそこでおしまいだ。

「そしてわしは、わしの方に仕えよと申し出て、おぬしを侮辱するつもりもない」 ギャスパードが見やると、ミシェルは感謝を込めて頷いた。「とは言え、わしらはこの帝国の炎と死を目の当たりにすることになる。わしとセリーン、テンプラーどもとメイジども。オーレイが弱るのを見て、フェラルデンとテヴィンターがどう動くかはメイカーのみぞ知るところだ。事態は、良くなる前に一層悪くなる。わしがセリーンに叛旗を翻したのは、わしがその難事にあるオーレイを導くに相応しい男だと考えたからで・・・」 彼は言葉を止め、かすかに微笑んだ。「・・・そして、わしが玉座を欲していたから、というのが正味の話だ。だが何が起きようとも、この帝国には、肩書きなんぞを守ることよりも、名誉を重んじる者たちが必要なのだ」
 ミシェルは息を呑んだ。「かたじけない、閣下」
「わしへの感謝は、ここぞというときに何か役立つことをなして示してもらおう」とギャスパードは言って、手を伸ばした。ミシェルはそれをしっかり握りしめた。

 大公は、兵隊の行進曲を口笛で吹きながら、ヴァル・シェヴィンに向かって歩き出した。ミシェルは、彼が去るのを見送り、大公の姿が黄昏の中に消えてしまうと、しばらく立ったまま、星々を見上げていた。

 彼には、どこに向かうべきか見当もつかなかった。
 彼には鎧もなく、馬もなく、シェヴァリエであることを示す剣すらなかった。誰かが道で彼に出くわせば、逃散した農奴か何かと思うだろう。
 そして、それはそれで間違ってはいないのかもしれなかった。長い間で初めて、サー・ミシェルには、守るべき大いなる嘘もまたなかった。

 彼には、たったひとつだけ背負っている負い目があり、今や彼はそれに思いを馳せていた。それはセリーンに仕えていたが故に被ったものであったが、ミシェルは、自分ひとりでそれを背負うべきことは承知していた。
 ミシェルの行いによって、ディーモンのイムシャエルがこの世界に野放しになっている。やつがオーレイのどこにいるのか、世界のどこにいるのか見当もつかないが、どこにいるのだとしても、やつは混沌を巻き起こし、無辜の人々を危機に陥れている。

 ミシェルは隠密でもなければ、追跡者でもなかった。あのディーモンを発見するのは、一生の仕事になるかもしれないし、それさえも見つけることができればの話だ。
 だが、それも目的に違いはなかった。
 彼はでたらめに方角を選び、新しい人生に向かって歩み出した。

*** 

 やばい。馬鹿な野郎である私は、やっぱ、こちらのふたりのお話の方が好きだった。

 小枝を投げたり、コインを投げたりして、進む方角を決め、でたらめ(ランダム)に歩き始める。ハリウッド映画などのラストシーンで何度も使われたモチーフですが、好きなんだなあ。
 ミシェルは、ディーモン・ハンターとしての人生を選ぶことになった。遍歴の騎士(knights-errant)、本来の意味とは違いますが、結果的には同じことですね。というか、明らかに著者はそう思わせようとしている。
 「ドン・キホーテ」(いや、お店じゃねえから)のお話は長くなるのでやめますが、野郎たるもの、どうしてもロマンチック(ロマンスの意味ではないから)なお話には惹かれてしまうわけで、ましてや見つかるかどうかもわからないディーモン狩りなんて言ったら、もうそれだけで外伝書いて欲しい。

 この話、DAIに繋がるかどうか、ビミョーなところですが・・・。

 ここまでで、ブリアラ以外の登場人物たちは、すっからかんの状態から再スタートということになりました。セリーンは、まあ少なくとも僻地での返り咲きは果たしたとはいえ。

 フェラッサンだけが残っています。
 次回が最後。もう少しお待ちください。

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