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2014年6月22日 (日)

The Masked Empire 14(3)

 続きます。

***

 「ああ、正常だ」とフェラッサンが言って、杖を掲げた。光が灯り、部屋の他の部分が明るくなった。
 そこは巨大な円形で、少なくともヴァル・ロヨーの玉座の間ほどの広さがあり、いくつも続く石棺の列で一杯だった。天井のルーンはフェラッサンの杖の灯りを受けて優しく光っており、あの道で見舞われた目もくらむような痛みはない。
 そして、この巨大な円形の室内の壁に等間隔に並ぶのはいくつものエルーヴィアンだった。

「ここが中央の部屋か?」とミシェルが尋ねた。ここのエルーヴィアンのうちどれかひとつがヴァル・ロヨーへと導くものなら、自分たちは日没前に宮廷に戻ることができるが・・・、それはあの忌々しい道を再び歩くことを意味する。
 さらには、女帝がブリアラをどう扱うか決心しなければならないことも意味するが、それは彼女の問題であって、彼のものではない。
「違うだろう」とフェラッサンが言った。「だが、少なくとも我々にいくつか選択肢を与えてくれる。それぞれのエルーヴィアンは他のものと道のひとつを介して通じており、そのうちのひとつが、全てのエルーヴィアンを目覚めさせることができる部屋に繋がっている」

 セリーンは顔をしかめた。「でも、あのディーモンがわたくしたちに与えた宝石は、すでにどれでも必要なものを目覚めさせることができる。それを用いてヴァル・ロヨーに戻ることができるのではないですか?」
「もちろん」 フェラッサンは部屋全体を指し示すような仕草をした。「このうちどれが、あなたをそこまで導いてくれるかおわかりか?」 セリーンはため息をつき、フェラッサンが笑った。「ああ、お気づきかな。イムシャエルは、そのルビーがあなたを中央の部屋まで導くと言っていた。それがなければ、あなたはしばらく長い間、テヴィンターのど真ん中に出ることのないよう祈りながら、闇雲にうろつき回ることになる」

 セリーンは苛立たし気に頷いた。「わかっています。あの道を非常に不快に感じる者もここにはいるのです。あれを体験する機会はできるだけ減らしてほしいというのが、わたくしの束の間の願いであることは許していただきたい」 彼女は腰の小袋から宝石を取り出して掲げた。「わたくしたちが向かうべきは・・・、あれですね」と彼女は言って、部屋の向こう側にある鏡のひとつを指差した。「その前に休息したほうがいいかもしれませんが」 そう言いながら彼女はミシェルに微笑みかけた。
「あの世界に再び踏み入る前に、数分程度の安息を得るぐらいは構いませんよ、陛下」 首を振った彼は、床の上の何かぼんやりして歪な形のものに目を奪われた。「とはいえ、あの道を拙者たちよりも不快に感じた者たちもいたようですが」

 彼の視線を他の者たちも追い、床の上に転がる古代の骸骨の残骸が、長い歳月によってぼろ布と化した、かつて上質な絹だったものを身に纏っているのを見た。いくつかの屍は寄り添い、まるで最期のときを前に慰め合っていたかのように骨が互いに絡みついている。他の骨はそれぞれ離れて横たわり、子供たちのように身体を丸めていた。
「武器がない」 しばらくしてそう口にした彼は、好奇心のため亡骸のひとつに近づこうとした。
「気を付けて」とブリアラが言った。彼女は腰をかがめ、目を細めて地面を見つめながら、石だたみに優しく指を這わせており、しばしの後ミシェルは、彼女が罠を探していることに気が付いた。

 石棺の端に静かに腰かけているフェラッサンがミシェルに答えた。「召使いたちだ、衛兵たちではない。エルーヴィアンが動かなくなってここに閉じ込められた。この部屋には普通の出口が見当たらないことにお気づきか」
「それは・・・」 ブリアラが自分の目でそのことを確かめ、再び床に視線を戻した。「・・・悲惨な話ね」 しばらくしてから彼女が言い、二つの石の隙間をナイフで探っている。「この部屋の罠の中心を見つけたみたい」

「彼らはどうしてここに閉じ込められたのかな」とフェラッサンが言った。「エルーヴィアンは一斉に動かなくなったわけではないのか? 彼らは逃げていた最中で、外に出ることのできる部屋に行き着くことを祈りつつ辿りついたのが、不幸にも・・・、ここだったのかもしれない」
 この風変りなエルフの声には、どこかおかしなところがある。ミシェルは鋭い目つきで振り返った。この大きな部屋を見渡すフェラッサンの両目は焦点を結んでおらず、指は石棺を奇妙な調子で叩いていた。ミシェルは、デーリッシュ・エルフたちが朦朧状態となり、彼の縄を解き、彼が逃げる間も無視していたときの感覚を思い出していた。

「フェラッサン・・・」
「想像できる?」とブリアラが尋ねたが、その指はまだ石の隙間に突き刺したナイフを操っている。 「ここに囚われ、そのまま死んでしまうことを宣告されて・・・、でも何のために?」 彼女の声もまた張り詰めているように聴こえた。「彼らをここに閉じ込めた貴族たちの、誇りと名誉のため?」
「貴族たちもまた、地上で手ひどい扱いを受けたに違いないと思いますよ」とセリーンが優しく言った。
「陛下、お待ちください」 ミシェルは、後ろ髪にちくちくするような感じを受けていた。

 ブリアラは、ふたりの声が耳に入っていないようだった。今や彼女の声色は粗野なものになっている。「彼らが自分たちのゲームに興じてる間、召使いたちは血を流して死んでいく。ここに隠れて、見つかるのを待つ間、自分たちよりも身なりの良い屍たちに囲まれながらね!」
「彼らの最期の瞬間は」とフェラッサンがそっと言った。「飢餓と憤怒に満ちていただろう」
 ピクピクと震え、カタカタと音を立て、地面の骨が動き始めた。

「陛下、屍どもが」 ミシェルが踏み出し、フェラッサンの横っ面を鋭くひっぱたいた。エルフが瞬きしながら首を振っている間、ミシェルは振り向くと、ブリアラにも平手打ちを食らわせた。
「わかっています、チャンピオン」 セリーンはダガーを手にした。「妙案はありますか?」
 アカデミーのほとんどの訓練は、鎧を身に着けた相手との戦いが中心だったが、それよりも一般的ではない敵との戦いへの備えなくして、シェヴァリエがその卓越を名乗ることなどできない。ミシェルはメイジと戦うテンプラーの技倆、ダークスポーンと戦うグレイ・ウォーデンの戦術を学んでいた。
 そして古戦場跡での不気味な試練を通じ、鎧の中で身震いしながら、ミシェルは死者との戦いについて学んでいた。

 敵は何ダースにも及んだ。まるで死んだ哀れなエルフの召使いたちが、皆この部屋に集まってきたかのようだった。屍たちは古代の骨をキーキー、カタカタ鳴らしながら、ぼろ切れを引き裂きつつ、足を引きずるようにして立ち上がろうとしており、しゃれこうべの眼窩には冷たい光が宿っている。

「武装していないだけ、ましですね」とセリーンが言って、ゆっくりと円を描くように身体を回した。彼らは取り囲まれていた。
「いや」 ブリアラの声は震えていたが、自分を取り戻していた。「奴らの手、奴らの歯を見て」 骨どもが背伸びし、身体を曲げ、その手は残忍な爪の形になり、口にはきざきざの牙が光っていた。

「フェラッサン!」とミシェルが呼び、剣を握り、盾を構えた。「魔法は使えるか?」
 フェラッサンは、石棺のひとつの上に跳ねあがり、杖を魔法の道具ではなく、ただの武器として構えた。
「もちろん」と彼は言った。「ただしそうすることで、弱ったヴェイルをさらに弱め、あの類をさらに多く部屋に招き入れることになるがね」

「ならばどいていろ」 屍たちはついに立ちあがり、爪を構えながら、前によろよろと進んできた。もはや喉は残っていないが、牙の生えた口からは捕食者の不気味なシューッという音をたてていた。ミシェルは彼我の勢力を計り、動いた。「ブリアラ、彼と一緒に高い場所に登り、やつらの後列に矢の雨を降らせろ。陛下は、拙者の側面をお守りください」
 彼らに聴こえたかどうか確かめるため待つこともせず、ミシェルは盾を掲げ、戦いに取り掛かった。

 戦士は、盗賊を殺し、公式な決闘で他の戦士を倒し、または何か巨大な獣を退治することで名誉を受ける。それらの敵は皆生きており、その戦いは、意志と力を、生きる欲望に取りつかれた何か別のものと相対させるものだ。
 屍やダークスポーンとの戦いは、だが、屠殺でしかない。名誉も、栄光もなく、この世界に棲む化け物を一匹減らしたという冷めた自負しかもたらさない。

 ミシェルは盾で屍の一体を押し戻し、剣を振り降ろして別の一体のしゃれこうべを打ち砕き、近づこうとする三体目に肩から体当たりした。彼は踏み出し、ダガーのように鋭い爪先を盾で払いのけ、他の屍の肩を再び頭上から振り降ろした剣で打ち砕いた。
 彼が三体目を、それから四体目を打ち倒しても、奴らは一向に学ばなかった。それは単純で、夜明けから日没までの間、ずっと完全武装で走り回るのと同じように単純だった。もし彼に、奴らに圧倒されないくらいの規律と力があれば、奴らを残らず粉々に砕いて塵に戻してやることができる。疲弊か恐怖のためひるんでしまえば、彼は死ぬだろう。

 盾で受け、踏み出し、斬りつけ、踏み出す。彼の息遣いはきつく、胸を締め付けるようになっていた。彼の周囲全部で、屍がシューと音を立て、歯をむき出して唸っている。爪が彼の盾の端を掴む。剣が重くなってきたこともあり、屍に盾をそのまま預け、それを次の一歩を踏み出すきっかけにしようという誘惑も魅力的に感じられた。
 ミシェルは、そうした誘惑に負け、疲労を隠すため派手な動きを試した仲間の訓練生の姿を目撃したことがある。一瞬の後、屍たちはその仲間の喉を切り裂いてしまった。

 屍の手から盾をねじり取ると、彼はその手の後ろにある身体に斬りつけ、またしても別のしゃれこうべを、メイカーもお許しにならないだろう上段からの振り降ろしの一撃で打ち砕いた。盾で受け、踏み出し、斬りつけ、踏み出す。
 彼の視界の端には、セリーンがダガーで群れを切り刻んでいるのが見えた。鉄も鋼も骨にはほとんど利かないが、セリーンのシルヴァライトの刃は屍の爪を刈り取り、続く焔が鈍い黄色を黒に変える。屍をほとんど倒していないとはいえ、彼女はミシェルの側面に奴らを寄せ付けないように保っており、それで十分であった。

 群れの後方では、ブリアラが後から後から矢を放つにつれ、射的の土器の的のようにしゃれこうべが次々に割れていった。ミシェルの単純な作業と同様、それは武芸の型というよりも実践訓練に近いものだった。
 盾で受け、踏み出し、斬りつけ、踏み出す。ミシェルは地面に落ちた腕の骨に足を滑らせ、立ち直り、大きな弧を描いて剣を振り、彼に殺到することができないよう、近くの屍たちを遠ざけた。雑、あまりにも雑。彼の昔の教官たちなら、それを理由に彼の皮を剥いでしまったであろう。疲れと怠惰による雑な足取りが踏み外しを生む。長剣が、その輝くシルヴァライトの誇り高き刃が、巨大な石槌のように感じられ、彼の心の奥底では、長い稽古の間に必ず聴こえる囁き声がはじまっていた。

 それぞれの振りにもっと時間をかけ、刃先が当たったら一秒休め。
 盾を落として剣を両手で握れ。両手で操った方がずっと楽だ。
 それよりもいいのは、逃げることだ。過ちを犯して殺される前に逃げ出せ。うっかり足を滑らせて、ただの見せかけであったことがばれ、スラムの子というお里が知れる前に。

「拙者は」 彼は食いしばった歯の間から唸った。 「サー・ミシェル・デ・シェヴィンだ」
 盾で受け、踏み出し、斬りつけ、踏み出す。
「拙者はサー・ミシェル・デ・シェヴィンだ」 別のしゃれこうべが砕け散る。三体の屍が彼の鎧に爪を突き立てるが、彼は盾の一振りでそいつらの手を打ち砕いて塵に還し、後方に押し戻し、自分の態勢を立て直したが、両脚は燃えるように痛んでおり、背中は悲鳴を上げていた。

「拙者はサー・ミシェル・デ・シェヴィンだ!」 一本の矢が彼の顔のそばを音を立てて飛んでいき、屍のしゃれこうべに命中すると、彼は盾で受け、踏み出し、また別の一体に斬りつけ、それから次の標的に踏み出し、そこではじめて目前の巨大な部屋が、ばらばらになった四肢と打ち砕かれた骨がまき散らされているだけの埋葬場と化しているのを目にした。

 彼は大きく喘ぐように息を吸うと、石棺に寄り掛かり、不覚にも声を立てて笑った。どれだけ多くの屍が蘇り、また倒されたか見当もつかないが、自分の心の奥底の部分の暗い声は間違っていた。かつての教官たちも、さぞ誇りに思ってくれることだろう。

 そのとき、彼らの背後から声がした。
「おぬしは、まさしくサー・ミシェル・デ・シェヴィン」と大公ギャスパードが言った。「そしてわしは、わしのバードの復讐を遂げるときを、心待ちにしておった」

*** 

 つべこべ言わずに、次回へっ。

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