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2014年6月 5日 (木)

The Masked Empire 13(2)

 久々に、ギャスパード登場。できるだけベタ訳で行ってみましょう。

***

「どういう意味だ」 ギャスパードは、内心とは裏腹に辛抱強さを示して言った。「木が襲ってきただと?」

 彼は偵察を急き立て、農奴の小さな村の南を過ぎてデールズに向かう道を追跡させていた。彼は、毎晩気前よく褒め、良い食事を与え、毎日の日中には命令を吠え、遅れには怒鳴り散らした。犬にも、馬にも、人にもそうやって接し、それでいつもうまく行ってきた。

 偵察たちの言葉を信じれば、彼らはセリーンの跡を辿っており、徐々に近づいていた。昨夜の雨のせいで足跡を追うのが難しくなったことは、ギャスパードにもわかっていた。
 そして今、灰色の朝の光の中で、明らかに怯えた様子の偵察のひとりが、その顔も両手も傷だらけで彼の前に立ち、事態が彼の予想よりも一層悪くなっていることを告げている。

「奴らが動いたのです、閣下」と偵察が言った。気丈にもその声は確かだった。「魔法の類です。我々は足跡を追っていて、何らかの獣との戦いの跡を見つけました。そのとき木々が動いたのです。自分の前にいた兵たちは殺されました」
 ギャスパードは呻き、鞍の上で他の馬上の者たちの方に顔を向けた。
「リエンヌを呼べ!」

 代わりにリマッチェが馬を寄せてきて、ギャスパードの馬の隣に轡を並べた彼の軍馬が挨拶代わりにいなないた。「何か問題でも?」
 ギャスパードは偵察を見下ろし、彼の顔の横に血が滴り落ちてきているのを見た。「手当てを受けて来い」と彼は命じ、偵察はお辞儀をすると駆け去って行った。ギャスパードはリマッチェの方を向いた。「木があやつの部隊を襲ったのだそうだ」

 リマッチェは唇を噛みしめた。「なるほど」
「ただの兵士の戯言だと笑い飛ばすと思ったがな」とギャスパードは言って、片方の眉を吊り上げた。
 リマッチェは微笑んだ。「その可能性もあるかもしれませんが、閣下、ここはライデスからさほど離れていないことをお忘れなく。私のシェヴァリエたちが、森の中の何物かを始末するよう農奴たちから懇願されたと聞いたことがあります。戦の跡に近いこともしばしばで、そのような場所では死者たちがなかなか眠りに就かない」

「死者たちは」と、リエンヌ・デ・モンツィマードが言った。「さようなことはいたしませぬ」 彼女は小さな黒い牝馬に跨り、その足並みはあまりに静かで、濡れた草の上を近づいてくるのさえ、ギャスパードも気が付かなかった。

「では、屍が蘇り、武器を手に生者を襲う物語の数々は?」とリマッチェが尋ねた。
「スピリッツ」 リエンヌは、鞍から身を乗り出して森の方を身振りで示した。「デールズの至る所で、かつて大きな戦いがありました。その猛威、その死に思いを馳せていただきたい。閣下が敵を斬り倒すときの、戦の激情に思いを馳せていただきたい。閣下が敵を蹂躙し、彼らの命が草を浸すときの」

 ギャスパードは頷いた。「わかった、リエンヌ。それがどうした?」
 彼女は微笑んだ。「スピリッツは、灯りに群がる蛾のように、暴力の回りに集い、できるだけ間近で見ようと強く求めるため、この世界とフェイドを分かつヴェイルが、薄く引き延ばされてしまう。それが破れたところからスピリッツが忍び入り、私たち命定めある者たちが授かりしものを味わおうと必死になる」 彼女は遠くを見つめた。「弱きものらは、屍のように逆らわない相手を選び・・・、そして、スピリッツはかつて目にした戦いを再現しようとする、それが命というものだと思いこんだことを真似しようとする、ところが、我々定命の者たちの目には、蘇った屍が襲ってくるようにしか見えないのです」

「木々についてはどうだ? 」 ギャスパードが彼らの前に広がる森の方を顎で示して尋ねた。「偵察たちは、木々が命を宿して襲ってきたと言っておる」
「シルヴァン」とリエンヌが言って、頷いた。「その本質は屍と同じですが、スピリッツは人間の死体の代わりに木々に憑依したのです」 彼女は馬を降り、前方の森を見て顔をしかめ、それから杖を手にした。「力をお貸しいたしますが、火が要ります」

 ギャスパードも馬を降り、湿った草と前方の濡れた森を見て顔をしかめた。「火を放つのは難しいだろう」
「では、代わりに血を流すことにいたしましょう」 リエンヌが肩をすくめてそう言って、歩きはじめた。「何ダースかの者、それ以上はいらない。さもなくば、落後者が道に迷うか・・・、見つかってしまう」
 ギャスパードはいまだ馬上にいるリマッチェに睨むような目を向けた。「弓兵に火矢を用意させろ。シェヴァリエたちには徒歩(かち)で進むと告げよ。それぞれ二十、志願を募れ」
「閣下」 リマッチェはお辞儀をし、乗馬に拍車をいれた。

 ギャスパード、リマッチェ、そして四十人の戦士たちが最初のシルヴァンを見つけたのはそれから二、三時間後であり、叩き潰され、ずたずたに引き裂かれたギャスパードの兵士のひとりの屍と、セリーンたちの馬の一頭だったに違いないものの近くだった。木が不意に揺れ、裂け、命を帯び、それ自身を人の形のなにか不気味な模倣のような姿に変えた。リエンヌは輝く光を放つ絵文字(グリフ)を地面に描き、それが純粋な白いきらめきをあげると、シルヴァンは根茎を地面からもぎ取り、激怒の咆哮を上げながらたじろぎ、後ずさった。ギャスパードの射手たちが降り注いだ火矢は、化け物に苦痛を与えているようであり、リエンヌが放った白い光のたくさんの矢がその樹皮を引き裂くと、ついにそれは崩れ落ち、焦げ付き、燃え上がった。

 リエンヌは、ギャスパードの方を向いて微笑んだ。「まだ他にもいるでしょう」
「であれば、そなたがいてくれて助かったな、お嬢さん」 ギャスパードは笑って、偵察たちに歩を進めるよう身振りした。

 彼女と偵察たちが前進すると、リマッチェがギャスパードの傍らで歩を止めた。「閣下」
 ギャスパードがそちらを見た。「心配事か、リマッチェ?」 
「閣下のアポステイト」とリマッチェはしかめ面をした。「彼女には恐るべき力があり、またモンツィマードの娘を悪く言うつもりもないのですが・・・」
「怖いのだろう?」 ギャスパードが微笑んだ。「貴公とわしは、この現世に生きる者たちだ、リマッチェ。宮廷や戦場で解決できる問題なら、わしらはお手のものだ。だが、スピリッツやフェイドのこととなると・・・」

 リマッチェは首を振った。「彼女の顔をご覧になられたか? スピリッツどもは彼女に語りかけており、または彼女がそれを欲している。そして彼女は、サークルのハロウィングの儀式を受けていないのです」
「それはそのとおりだ」とギャスパードが認めた。「貴公は、彼女の魔法抜きであの木の化け物の相手をしろと言うのではあるまいな?」 リマッチェの顔つきを見て、彼は頷いた。「そうだろうとも。今のところは、メイカーがわしらに与え給うたこの世界には、わしらの思いもつかぬ恐るべきものが存在していることを認めざるを得んのだし・・・、そしてリエンヌ・デ・モンツィマードもまた、そのうちのひとつなのかもしれん」
「そして、その木々よりも、彼女のほうが危険な存在となることはないとお考えか?」とリマッチェが尋ねた。
「わしはテンプラーではないが」 ギャスパードが冷淡に言った。「心臓を剣で一刺しすれば解決するのもよくある話だ」
 リマッチェは言葉もなく頷き、兵たちに身振りした。

 時が経つにつれ、彼らは他のシルヴァンどもも見つけ出し、ギャスパードは兵たちに、その大きな化け物を安全に始末する手口に従うよう命じた。毎回、リエンヌの魔法が化け物を追い詰め、ギャスパードの射手たちが火の矢を射かける。兵たちは過敏になり、この世のものではない化け物と戦うことへの不快さを口にしていたが、シルヴァンが彼らに近づくことができる前に倒れ、死んだ木に戻るのを目にすると、兵たちの隊列はギャスパードが望む規律あるものに戻っていた。

 そして、その日の午後になって、森が彼らを襲ってきた。

 ギャスパードの偵察のひとりが、何か見つけたと叫んだ。それは枝に引っかかった衣服の切れ端だったが、そのとき枝が動き、偵察の頭に巻き付いた。警告を発する暇もなく、大きな枝が捻じれ、伸び切ったそれがバチンと音を立てて折れ、宙に舞った偵察の頭が肩のところからもぎ取られ、身体は回転しながら血をあたりにまき散らした。

「弓兵!」とギャスパードが叫んだ。「火矢を放て。リエンヌ!」
「火が尽きました、閣下!」と射手のかしらが叫び返し、ギャスパードが毒づいた。
「ならば、撃て、撃つのだ、何もせんで突っ立てるよりましだろう!」
 リエンヌが目前に絵文字を描くと、それは燃え上がり、輝き、シルヴァンは咆哮し、たじろいで後ずさりしたが、その幹に突き刺さる矢は意味がないようだった。
「側面から、まだ来ます、閣下!」
「シェヴァリエ、構え!」とリマッチェが叫び、自らも剣を抜いた。
 リエンヌの魔法で退いたシルヴァンが再び近づいてきて、射かけられる矢を無視し、その枝を巨大な棍棒のように振り回した。

 弓兵たちが後退する間、ギャスパードもシェヴァリエたちの隊列に加わり、叩きつけ、斬りつけた。大きな枝が彼の盾に打ち付けられ、その一撃一撃が彼を跪かせる。彼は隣の男が倒れ、突き刺されるのを感じ、そのシェヴァリエにとどめを刺そうとする一撃に盾を打ち付けて横に逸らした。彼が枝を斬りつけ、叩き切ると、黒い樹液があたり中に噴き出した。

 そのとき、剣を掲げると同時に、彼は身体にみなぎるエナジーを、若く威勢が良かった時分以来感じたことのなかった腕力と活力を感じた。彼の両脇にいる者たちが雄叫びをあげ、ギャスパードが見やると、彼らの身体の回りを魔法の輝きが取り巻いていた。

 リエンヌの仕業か。それがなんであれ、ギャスパードは彼女から贈られた力を受け取ると勢いよく立ち上がり、手にした長剣をまるで稽古用の棒切れのように振り回し、その一振り一振りでシルヴァンの樹皮を刈り取り、幹を深くえぐった。彼の横では兵たちが叫びながら各々強力な一撃を浴びせ、シルヴァンは咆哮し、後ずさりし、そして煙をあげながら崩れ落ち、ただの死んだ木に戻った。

 依然としてリエンヌの魔法の脈動を感じながら、ギャスパードは振り向いた。一方の端では、リマッチェが倒れたシェヴァリエのひとりを守りながら、今まで見たやつらがちっぽけに思えてしまうくらい巨大な化け物が次々と繰り出す一撃を、敢然と受け止めていた。

 そのシルヴァンは巨大で、年期が入った幹は捻じれてこぶだらけであり、枝は掴み取る爪の形ではなく、巨大な木の棍棒のようだった。リマッチェの背丈はその化け物の腿に相当する部分にすら及ばず、また一撃が下されて片膝をついた彼は、それでもまだ倒れた兵を守っていた。

「リエンヌ!」 ギャスパードが肩越しに見やると、彼女が彼の後ろで、汗だくになっていた。彼女の肌は、彼の骨の髄まで震わせているのと同じ輝きで満ちている。「力を貸せ!」
 彼女は息を吸った。「あやつに手は触れさせませぬ、閣下」
 ギャスパードは頷いた。「わしから離れるな!」と彼は叫び、巨大なシルヴァンに突撃した。

 彼が近づくのを見たそれは、これまで倒した単純な化け物と異なり、なにがしかの機転が利くようだった。ギャスパードは、それが彼のほうに正対するように向きを変え、巨大な棍棒を掲げ、もう一方の腕でかかってこいと挑戦しているような身振りをするのを見た。

 そのとき、濃く黒いエナジーがそいつの身体を横切り、巨大なシルヴァンは震え、後ろによろめいた。
「汝は古き、木、そしてかつて、幾世紀も昔、汝は燃えた」 リエンヌがギャスパードの後ろで言った。彼女の言葉は大きな声で告げられたのではなかったが、魔法がその中に息づき、空気を切り裂き、まるで火の矢のように化け物に突き刺さった。「思い出せ

 巨大なシルヴァンが悲鳴を上げ、身震いすると、ギャスパードがその前に駆け寄って斬りつけた。魔法が彼の身体の回りで音をたて、彼は自分の小手に握った刃が変化するのを、小さなずれが生まれて角度をほんの少し変えるのを感じた。彼の刃がシルヴァンに沈むと、その小さなずれのおかげで、ギャスパードが目にすらしていない継ぎ目に刃が当たり、黒い樹液を吹き出させた。彼の回りでは兵たちが気が狂ったように剣を振り回し、その全ての一撃が的確に命中し、深く突き刺さり、隠れた弱点を見出しており、木は悲鳴をあげ、咆哮した。

 そのとき巨大なシルヴァンが枝を振りまわしたが、それは力なく、ぎこちなく、ギャスパードが横にかわした一撃が近くの地面に打ちつけられると、彼は強烈な反撃の一振りを浴びせかけ、樹皮を剥ぎ取り、その下に黒い樹液を噴き出している白い樹肌を剥き出しにした。間髪おかずに逆手に握りを変えると、彼は剣を深々と突き刺した。

 巨大なシルヴァンが動きを止めると、ギャスパードは突然冷たい風が森の中を通り過ぎ、鎧すら通り抜け、骨の髄にまで突き刺さるような悪寒に襲われるのを感じた。シルヴァンは、まるでため息をつき、脱力したかのようように見え、それからただの木に戻ると、黒い樹液はぶすぶすと音をたてて煙になり、ギャスパードがもはや感じることのできなくなった風の中にかき消されていった。

「済みました」 彼の後ろでリエンヌが力なく言い、振り向いた彼は、その途端に彼女が崩れ落ちるのを見た。
 ギャスパードは後ろによろめき、四肢の力が、やってきたときと同じように突然消え去るのを感じた。彼の回りでは兵たちが跪き、頭を振っている。「彼女を手当してやれ」と彼が命じると、弓兵たちが丁重に彼女の身体を抱え上げ、安全なところに運んでいった。

「バカな娘だ」 リマッチェが剣に寄り掛かりながら、荒い息をしている。
「これでもまだ、彼女を刺し殺せというつもりか?」とギャスパードが尋ねると、リマッチェは笑い、それから真顔になって、彼が救おうとしていた倒れたシェヴァリエの容体を調べた。「生きておるのか?」
「そうでなければ困ります」 脈をとりながら、リマッチェが言った。「すでに死んでいた男のため愚かにも命を懸けたとあっては、私の沽券にかかわりますから」

 ギャスパードは彼の肩を叩いた。「貴公を見くびっておったようだ、リマッチェ」
「そのようなことはありません、閣下」 リマッチェは頭をあげ、他の者たちを呼んだ。「誰か、この者の手当てを!」
「いや、見くびっておった。シェヴァリエ以外の者にも名誉は通じることを、わしはなかなか理解しようとせんかった。謝罪させてもらおう」
「オーレイの大公閣下からの謝罪」 薬草の覚えのある弓兵のひとりがやってきて、倒れたシェヴァリエの手当てをする様子を眺めながら、リマッチェが言った。「光栄に存じますが・・・、皇帝陛下からの謝罪ほどの光栄ではないと」
「では、貴公の運勢が良くなることを願おう」 ギャスパードはにやりと笑うと、巨大なシルヴァンの身体から唸り声とともに自分の剣を引き抜き、その後ふたりはリエンヌの様子を見に向かった。

***

 これまでは、いけ好かない陰謀公家、気取り屋として描かれていたリマッチェが、手下を守るため命を懸ける。ノブレス・オブリージュ(仏:noblesse oblige)。
 著者ウィークス氏も、こういうところなかなかの曲者のようです。

 いまどきの日本人に足りないのが、この発想でしょうか。よくビジネスマンごときのトップがこれを口走りますが、「金儲け」ありきの商人とはまったく相反する世界であり、「ノーブル」を僭称するとは不届き千万と言わざるを得ない(つうか商人としても失格)。

 ま、皇族でもない限り、庶民には無縁といっても良い世界ですが。

 グリフ(glyph)はRPGファンにとっては、グリフのままの方がわかりやすそうですが、適当な言葉が見つからず、「絵文字」なんてしちゃいました。もっといい呼び名ありそう。

 リエンヌのサポート魔法。DnDに馴染みのある方は、「ああ、あの魔法かな」とお気づきになったのでしょうかね。腕力・活力・士気アップ(Bull's Strength、および/または Greater Heroismあたりかな)、正鵠を突く攻撃(剣そのものを変化させているようなので、True Seeing はちょっと違うか)などのバフアップを模している(上の描写にもっと近い魔法があるのかもしれない)。地味ですが重宝する魔法。DAでは似ているものにどんな魔法があったか、忘れちゃいました(笑)。そして最後にシルヴァンに食らわせたのは、相手に妄想・発想を強制的に植え付けてしまうPower Wordみたいなイメージかしら。

 そう考えると、彼女はかなり高い水準のメイジであると言えますね。
 セリーン側には、ドルイド系ぽいフェラッサンがついていて、ギャスパード側にはわりと正統派ウィザードぽいリエンヌが付き従う。わらわらとメイジが沢山出てくるAsunderのような話も面白いですが、こちらのパーティー編成は比較的「正統派」。

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