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2014年6月 2日 (月)

The Masked Empire 13(1)

 第十三章です。
 このシーンを読み返してみて、似たような話をどこかで読んだよなあ、と思ったお話は後ほど。

***

 第十三章

 セリーンは、雨の中フェラッサンの杖の緑色の光が照らし出す三つの四角い岩と、その真ん中の地面に開いた穴を見つめていた。
 凍えて、ずぶ濡れで、シルヴァンから逃げる途中打った頭がまだ痛んでいたが、彼女は微笑んでいた。

 エルーヴィアンを通り抜け進む。光の中で突然若返ったように見えるフェラッサンが言った。むしろ、ほんの数少ないその生き残りを抜けてと言うべきか。

 安全なのか、とブリアラが尋ね、セリーンにそっと手を寄せる。革の手袋の上からでもぬくもりが伝わってきた。
 とんでもない、と言って微笑んで、その後は黙り込んだフェラッサンに、セリーンが説明を求める。

 エルーヴィアンは何世紀も前に封印された。そう言いながら穴を覗き込む彼の杖が中の様子を照らし出した。セリーンは、地表から一フットほど下がったあたりから、ヴァル・ロヨーの宮廷で見かけるようなすべすべの石の内壁が始まっていて、その上に描かれたルーンの紋様が杖の光を受けて輝いているのを見た。

 エルーヴィアンは、オーレイ全土に限らず、広くその域外までを繋いでいた。当初は様々な場所に置かれていたのだが、統治者の広間や交易の市場にあったものはほとんど生き残っていないだろう。今でも使うことができるものは、エルフ帝国の偉大な指導者たちの墓陵にあったもののはずだ。支配者たち、戦士たち、メイジたちの。

 盗掘者を遠ざけるための罠があるはずだ。いまだに剣を構えて敵襲に備えているミシェルが言った。フェラッサンが頷き、セリーンはブリアラに見つけることができるかどうか尋ねた。
 ブリアラは顔をしかめ、古代のエルフの罠が今用いられているようなものかどうかわからない、と答えたが、セリーンから腕を離すと、フェラッサンが魔法でさらに眩く輝かせた杖の光を頼りに穴の中を探った。あたりの空地が昼になったかと思わせる明るさに、セリーンは思わず目を閉じた。ゆっくりと目を開き、明るさに慣れると、顔をしかめそうになった。

 ブリアラは穴の近くの土に膝をつき、汚れて憔悴している様子だ。サー・ミシェルの鎧と盾はへこみ、傷だらけで、彼の血まみれの顔は蒼白い。フェラッサンの刺青の下の顔も疲れ切っているようだが、どういうわけか雨には濡れていない。セリーン自身の姿は一体どうなっているのだろう。しばらく身体は洗っておらず、傷を負い、死んだ男たちから盗んだ鎧を身に着けている。

 圧力板、とブリアラが静かに言って、足から先に穴の下に降りて行った。彼女の姿が見えなくなった少しの間、セリーンの鼓動が早まった。再び彼女が穴から首を出し、疲れた顔に笑顔を浮かべた。外した。今のものとあまり変わらないようだ。

 罠はそれひとつだけかもしれない、とフェラッサンが言った。だが用心して、ときどきは調べることにしよう。彼は息を吐き、杖の光を元の明るさに戻した。そしてブリアラの手を借りて、間を開けることなく穴の下に降りた。

 ミシェルがセリーンに頷き、彼女がフェラッサンに続く。突然暗くなった視界の、雨と闇の中に残像が踊っていた。
 目が慣れると目前に下へ降りる階段があるのがわかった。最初の一段は四フィートほどもあり、身を屈めた彼女は突然めまいに襲われて顔をしかめた。ブリアラの手が肩を掴み、優しく身体を降ろすのを手伝ってくれる。礼を言って笑ったセリーンに、ブリアラも微かな笑みを返した。

 彼女が、ブリアラとフェラッサンに続いて階段を下り、鎧をカチャカチャ鳴らしながらミシェルが後ろから従った。夜の空が消え、視界は石の壁に覆われる。

 降りるにつれて階段の幅は広くなり、しばらくすると四人が横に並んで進めるほどになった。段差はふつうの階段よりも少し広く、進むためには不釣合いな歩調を余儀なくされる。セリーンは三拍子の舞踏曲を思い出し、それが鼻歌に出そうになるのを我慢した。奇妙な長さの段差だ、と前に進むブリアラが口にする。古代には自分たちエルフの背丈は今より高かったのかもしれない、とフェラッサンがくすくす笑いながら答えたが、セリーンにはどこまで真面目な話なのかわからなかった。

「ようやく話を伺う時間ができました」 皆で歩く間、セリーンがフェラッサンに言った。「その仕組みはどのように働くのか教えて頂戴」
「奇跡のように」とフェラッサンが間髪おかず答える。
 セリーンが睨み付けた。「その魔法の鏡のひとつに、まるで何かの扉であるかのように踏み入れば、ヴァル・ロヨーに送られるのですか?」

「ああ、そうじゃない」 フェラッサンは唇を噛みながら、上の空で壁のルーンに手を這わせている。「エルーヴィアン、その鏡は我々をこことは違う別な場所に運ぶ。古代の時代、通り道はその異なる世界を渡って、エルフたちをエルーヴィアンから別のエルーヴィアンに運んでいた。願わくば、その通り道が残っているといいのだが」
「願わくば?」 ミシェルが睨み付ける。
「随分経つからな」

「つまりエルーヴィアンが置かれたところはどこであっても」と、ブリアラがゆっくりと言った。「街の一地区のようなもの。その通り道が通じている別の世界が街路で、私たちが街の中心にある広場を見つければ、そこからどこでも望むところに向かうことができる」
「そんなところだ」とフェラッサンが微笑んだ。「街ほど賑やかじゃないが。まず、ディーモンが言った中央の部屋を見つけなければならん。そこでなら、ディーモンのルビーがなくても、望みのエルーヴィアンを目覚めさせることができる。次に、願わくば、どこか君の宮廷近くにあるエルーヴィアンを見つけ、君はそこから出て行って、玉座を取り戻す」

 セリーンは頷いた。彼女には意味がわからなかったし、あるいは少なくとも、その意味が自分の気に入るようなものではなかったせいかもしれないが、フェラッサンには考えがあるように思えた。

 彼女の感覚では小一時間くらい経ったと思える頃、階段が終わり、小さな食堂ほどの大きさの部屋に辿りついた。階段の一番下の段に着いたとき、フェラッサンが足をとめてブリアラに合図を送り、彼女が前に進んで階段の土台を調べ始めた。

「ここは何のための場所でしょう?」とセリーンが尋ね、部屋を見下ろした。壁には石造りの棚が並び、いくつかの小さなフラスコがそこここに置かれており、香水の瓶のような形のものもあった。いくつかの大きな金属の槽には、壁にあるのと同じ紋様のルーンが描かれており、ひとつひとつが祭壇ほどの大きさのある、石の台座の近くの床に据え付けられている。

 部屋は不規則な形をした壁のところで突然終わっており、しばらくしてセリーンは、そこが瓦礫の山であることに気がついた。瓶や槽がいくつも倒れており、そちらの側にあるいくつかの石の台座は、瓦礫で半分覆われ、ひび割れていた。
「陥没の跡か?」とミシェルが尋ねた。
「誰も最初から、こんな造りにはしないだろうしな、シェヴァリエ」とフェラッサンが言った。
「幸運なことに、私たちが探しているものは、時とともに朽ち果ててはいなかった」 彼が杖を振ると光が灯り、部屋の向こう側まで見渡すのに十分なほど明るくなった。

 当初セリーンは、あまりに華美に飾り付けられた扉を見ているのだと思っていた。エルフのとがった耳をした戦士たちの大きな石像が立ち、シェヴァリエに似合いそうな鎧姿に彫られていた。彼らが両脇で支える大きな青っぽい灰色の鏡面は、てっぺんのところでアーチ状になっている。鏡全体を囲む石には捻じれて縺れた紋様が彫りこまれており、それを追っていたセリーンの目が痛くなった。

「ここは玄室であったのに違いない」とフェラッサンが言って沈黙を破った。「死者は、考えうるありとあらゆる虚飾の印とともにここに運び入れられた。繻子の敷布を乗せた寝台、フラシ天の枕、その他全ての。それから死者は洗い清められ、メイジが身体の内側を焼く」 彼は遠くを見つめて微笑んだ。「ウーセナラ、永劫の眠り、それに就く者らは、隠された苦痛のため再びこの世界に舞い戻ることのないよう、召使いたちの手で浄められ、手入れされ、次には、旅路で用いる知恵のひらめきを受け取るため、香り高い油で沐浴される」

 ブリアラが立ち上がった。「また別の圧力板。とても古くて、とても繊細だけど、もう安全だと思う」
「結構」 フェラッサンが部屋に跳び下りる。「古代の魔法の鏡に踏み入り、別の世界を旅する前に、ひと眠りしたほうがいいだろう。ここなら邪魔は入らない」

 セリーンとブリアラが続き、ミシェルが最後に部屋に入った。セリーンが見ていると、フェラッサンは棚から棚へと歩き、そこにあるフラスコに手を伸ばしながらも、決して触らずにいた。ブリアラは浴槽のひとつを検分しており、セリーンは彼女に近づいてその肩に優しく手を置いた。  

 ブリアラが鎧を身に着けているため、それは触れるというよりも、素振りと言うべきものだったが、しばしの間セリーンは、自分がヴァル・ロヨーの寝室に戻り、秘密の通路を通って忍び入ってきたブリアラの、月光の下で蒼白く美しいスピリットのように見える姿を想像していた。
「宮廷に戻ったら」 セリーンは彼女の耳に囁いた。「熱いお風呂に一緒に入らないと」

 ブリアラは笑いをこらえて、セリーンに身体をもたれかけた。「今すぐにでも身体を・・・、綺麗にしたい」 彼女は汗と革の匂いを嗅ぎ、セリーンもまた彼女にそうしてほしかった。「でもフェラッサンが、これは儀式用の沐浴だと言った。きっとひどい感じがするのでしょうね」

 セリーンが浴槽を見下ろすと、どこか気味が悪い感じがした。それは金属に彫られたルーンのせいかもしれなかったし、鋭角な造りと尖った隅のせいかもしれなかったが、その形のどこかが、それは彼女のためのものではないことを物語っていた。「そうね」と彼女は言った。「触らないのが無難」

 「それにしても残念」 ブリアラが優しく言った。「とても美しい。こんなものは今まで見たことがない」 彼女は振り返り、ふたりの鼻同志がこすれるくらいの距離で囁いた。「そしていつの日か、陛下、エルフが自由の身になった暁には、再びこれを用いることができるのですね」
 セリーンは目を閉じ、浴槽と部屋の気味の悪さを脇へ押しやった。「いつの日か」とセリーンは言って、彼女を引き寄せキスをした。

***

 似たような話とは他でもない、小説Asunderで、四人(とゴーレム)が、アダマント要塞の地下に下りていくシーンでした。
 どうやらRPGのライターたちは、謎の地下道に踏み込もうとするときは、主人公にパーティーを組ませる習わしのようです。
 私もひとりやふたりよか、このくらいの人数のほうがずっと好きですが。セリフを区別するのが大変で、どうしてもベタ訳に頼らざるを得ないシーンとなる。

 ウーセナラ、"uthenara" は、エルフの言葉で"long sleep" または "endless dream"の意味で、「永劫の眠り」、「果てしない夢」。リアル人間界で言う「永遠の死」を必ずしも意味しない。
 エルフの魂はヴェイルを通って、ビヨンド(ヒューマンの言うフェイド)を彷徨う。中には(この世界の何世紀にもあたる)長い歳月を経て、やがてこの世界に舞い戻り、夢の記憶を伝える者がごく稀ではあるが現れる。

 セリーンとブリアラの・・・、あれには、もう私は辟易しております。正直、くどい。

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