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2014年6月29日 (日)

The Masked Empire 15(4)

 主要人物が集合した関係もあり、またエルフとヒューマンではこの世界の「見え方」が違うこともあり、この十五章では視点が頻繁に変わるため、従いサブ・チャプターも増えています。ミシェル、ブリアラ、セリーン、そして今回がもう一度ブリアラ。あともう一回、合計五つのサブ・チャプターがあります。

***

 ブリアラにとって、それからの数日間は魔法の中にかすんでいた。
 起きているときは道を進む。ブリアラ、フェラッサン、そしてミーリスが先行し、どれだけ慎重に進んでも、ヒューマンたちよりずっと先を進んでいることになる。新しいエルーヴィアンに入るたびに半壊した遺跡を探索して、自分たちの他誰もいないことを確認する。それからギャスパードのまずい携行食を、フェラッサンがデーリッシュの逗留地から手に入れた少量の食糧で補い、最後に眠りに就く。

 そこでブリアラは、セリーンと再び一緒になる。ほんの僅かの間だけふたりで抱き合い、眠りの間、ブリアラは巨大なエルフの尖塔が天国に届くのを、魔法で築かれた都市を、笑い、商いをし、戦い、愛するエルフたちを、夢に見た。毎朝フェラッサンに優しく起こされるとき、心はすっきりと晴れ渡っていたが、隣ではセリーンが、まるで泥酔した翌朝のようにふらついていた。ミーリスは、エルフ語で「速き者ら」を意味するシェムレンたちの歩みがあまりに鈍いことを面白がっていた。自分自身も家族を惨殺された身の上のブリアラは、デーリッシュの娘の好きにさせておくことにした。

 そして、彼女のことを無視して道の美しさに浸ることは容易かった。光景にも慣れ、歩を進めるごとに呼びかけてくる微かな歌声を聴いた。まるで自分のいるべきところをついに見つけたような感じがした。光、音、そして灰色に霞んだ世界でさえ、セリーンの邸宅では決して感じなかった、自分の住処であるような感じがする。ブリアラは、覚醒したままの瞑想の心地よさに身を預けていた。

 屍と戦いを繰り広げたものよりも大きな部屋にはその後出くわさなかったが、エルーヴィアンの間を繋ぐ部屋でさえ別の意味で荘厳だった。彼らは、多くの壺とさらに多くの石棺で一杯の部屋をいくつも通り過ぎたが、その中には死の眠りではなく、ウーセナラの永劫の眠りに就く者の寝室もあった。

 そうした部屋に最初に着いた時、フェラッサンは立ちどまり、サテンの敷布の下に半分だけ横臥している古代の屍を見つめた。ブリアラにとって、そこは最初に死闘を繰り広げた部屋と違いがあるようには思えなかったが、フェラッサンの顔は苦悩に歪んでいた。
「無用なことを」と彼が静かに言うので、興味を抱いたブリアラは空想から立ち戻り、そちらを見た。

 屍は休息の姿勢を取っており、清潔で白い寝具によって胸のあたりまで慎重に覆われ、頭と両肩だけが露出していた。覚醒したまま死んだのでもなく、苦しんだ様子もなかった。さすがに肌は、骨にこびりついた皮だけになっている。
 だがブリアラは、屍の喉に一本の薄い切り口があり、枕に古い血痕の跡が微かに残っていることに気が付いた。
「情けのため?」とブリアラが尋ねた。「速やかな死、召使いと一緒に飢えることがないように?」

 ミーリスは冷笑した。「間抜けな平ら耳。ウーセナラの安寧を覚った者に、現世の物質は必要ない。彼らは永劫の長きにわたって眠り、決して飢えることはない」
「ほぼそんなところだ、ダーレン」とフェラッサンが言った。「ウーセナラに就く者のほとんどは、簡素なポーション一本のみで生き続けることができる。水に、肉体を生き続けさせるため蜂蜜と薬草を混ぜ合わせたもの。満月の夜、召使いたちはそれをドリーマーの唇に塗り、新月の夜になったら、ドリーマーの手首の肌の臭いを嗅ぐ。蜂蜜の香りがしたら、身体がまだ調合物を吸収していることを意味するから、ドリーマーにポーションを与え続ける。手首から何の香りもしなければ、ドリーマーがフェイドから糧を得ることを学んだことを意味するから、もうポーションを与えることはしない。それら真のドリーマーたちは、完全な偉業を達成したことを示すため、純白の寝台に安置される」 彼は微笑み、首を振った。「と、古い歌には歌われている」

 ブリアラは、白いサテンの寝具を見た。「復讐のためですね、では」
「なんたる浪費」とフェラッサンが首を振る。「この者は助けになったはずなのに」
「どうやって?」とブリアラが尋ねた。「彼らの帝国は崩壊しつつあった。ウーセナラに就いたものは人々の夢の中に現れることができると言われたではないですか。私たちにエイリアネイジでの幸運を祈る以外、彼らは何をしてくれるのです?」

「何も知らないくせに」とミーリスが言った。「古の先祖たちは、フェイドからこの世界全部を見渡すことができる。我々に、敵がどこにどれだけいるか教えてくれる。ヴェイルが薄い場所では、スピリッツをこちらに送り込んで我々を手助けすることもできる」
「寝ている間に、敵の頸を掻き切ることだってできる!」 フェラッサンの顔が興奮で輝いている。「夢みる者が純粋な魂の持ち主なら、その願いをかなえることができる! あるいは、彼らはただそこに横たわって何もせず、ただ過剰に情緒的なデーリッシュの昔ばなしの題材になるだけなのかもしれない」 彼はにやついた笑いを見せた。

「彼らが我々に何をしてくれることができたか、何もわからなくなった」 ミーリスが床に唾棄した。「どこかの愚かな召使いが、民にとっての善きことよりも、復讐にかまけたから」
 ブリアラが見やった。「あなたはそんな者とは違うはずよ、ミーリス」 ミーリスが向けた怒りに歪んだ刺青の顔に、ブリアラは微笑んだ。「一族の死の責めをサー・ミシェルに負わせたいのはわかるけど、女帝セリーンがエルフにとっての最良の望みである以上、彼女のチャンピオンに手出しはしないほうがいい」

 ミーリスは両の拳を握りしめ、ブリアラは、彼女の瞳に一瞬炎が宿ったのを見たと思った。「お前はどぶのゴミだ、平ら耳」
「そしてあなたは、私たちが生きるため必死に戦っているどぶを目にしたことさえないでしょうね」と、ブリアラが熱を帯びずに言った。「あなたの一族は街のエルフたち、あなたのキーパーが野良どもと呼んだ彼らを引き入れることができた。そうする代りに、あなたたちは馬車に乗って放浪し、私たちの先祖が残した贈り物を探していた。ディーモンを召喚し、自らの破滅を招いた」

 ミーリスは鼻を鳴らし、答えもせずに部屋の向こう側に歩み去っていった。
「冷たいな、ダーレン」とフェラッサンが言って、メイジの後ろ姿を見た。
「あの娘もよ」とブリアラはため息をついた。「彼らに協力していると考えて、私は一体どれだけ多くの情報をあなたに渡したことでしょう? そしてその間、彼らは自分たちのことしか眼中になかった」 彼女は頭を振った。「ギャスパードも、少なくともその点については正直だわ」

「そしてセリーンは、自分のことしか気にかけていないわけではない?」 
「あの人は・・・」 ブリアラは寝台の屍を見た。「あの人は私を気にかけている。そして私を喜ばせるため、エルフを救う」
 フェラッサンは微笑んだ。「正直なのはギャスパードだけでもないようだな」
「セリーンはその人生で権力と贅沢しか知らない。苦境に置かれた者たちのことを理解するため、手助けが要るのは不思議ではありません」とブリアラが言って、自分たちが通ってきたエルーヴィアンのほうを見た。ヒューマンたちはまだ姿を見せない。

「そう言えば、フェンハレルについての古い話がある」
「それは驚きですね、ハーレン」
「傷つくよ」と彼は微笑んだ。「その話では、フェンハレルは狩りの女神アンドリウルに囚われた。彼が断りなくハラを狩ったことが彼女の怒りを呼び、彼を木に縛りつけた彼女は、償いのためこれから一年と一日の間、夜の奉仕に勤しむことを強いた。だがその夜彼女が火を起こしていると、闇の神アナリスが彼らを見つけ、喪われた神々への罪によりフェンハレルを処刑すると言い放った。アンドリウルとアナリスは、フェンハレルの身柄をどちらが手に入れるか決闘で決めることにした」
「それでどうなったのです?」とブリアラが尋ねた。
「君はどう思うんだ、ダーレン?」とフェラッサンが微笑んだ。「これまで何年も私の話を聞いてきたじゃないか」
 ブリアラはしばらく考え込んだ。「フェンハレルは、両方の神を欺き、逃げ出した」

「彼は決闘の最中にアナリスを呼び、アンドリウルの鎧の尻の部分に傷があることを伝えた」とフェラッサンは言って、頷いた。「そしてアナリスはアンドリウルの脇を刺し、彼女は倒れた。次にフェンハレルはアナリスに、その勝利は恐るべき狼のおかげなのだから、自分を自由の身にするべきだと告げた。アナリスはフェンハレルの尊大さをあまりにも無礼に感じ、囚われた彼のほうを振り向いて激しい侮蔑の叫びを浴びせかけたが、そのためアンドリウルが傷つきながらもまだ生きており、自分の背後で立ち上がり、大きな弓で彼に狙いを定めていることに気が付かなかった」 彼は再び微笑み、ブリアラを見た。「アナリスは黄金の矢を背中に受けて倒れ、ひどい傷を負い、二柱の神が傷を癒すための眠りに就いている間、フェンハレルは縄を噛み切って逃げ出した。君は長い間私の話を十分聞いてきたようだ、ダーレン」 彼は、落ち着いた、だが揺るぎない眼差しを彼女に向けた。「もはや自分で書いた方がよいのかもしれない」

「私は神ではありません」 ブリアラはそう言っている最中にも自分が間抜けになったような気分になり、フェラッサンのくすくす笑いに顔を赤らめた。
「今のは決断の話だ」 彼はセリーン、ギャスパード、その他のヒューマンたちが、疲弊し苦痛を受けながら、ようやくエルーヴィアンを抜けて来る姿に目を向けた。「今のところは、女帝の側に戻るがいい」

***

 シェムレン、「速き者」。あるいは「早く進む者」。かつてエルフは不死とされていた。少なくとも(のちのヒューマンにとっては)永久とも思われる寿命を享受していた。頻繁に再生産を繰り返し、あっという間に死ぬヒューマンは、「早く死ぬ者」。

 「指輪物語」へのオマージュですね。「指輪物語」では、(ダーウィニズムの影響でしょうが)その「再生産の頻度」と「限りない多様性」がヒューマンという種族の活力であり、不老不死であるエルフやドワーフ、そしてヒューマンよりはずっと長寿なホビットが活力を喪い、静かに滅んでいく間、世界を支配することになったという造り。

 「指輪物語」では、なぜ不老不死のエルフが、世界を救う戦いに命を懸けるのか。個人的に、考えるのが一番イヤで面倒な話題でした。

 フェンハレルの寓話、みたび。

 んー、どうなんでしょう、世の「神話」に比べるとちょっとひねりが足りない気もするのですが、こんなものですかね。あえて「物語原型」を外そうとしているのはわかります。
 「スロウ・アロー」、ゆっくりした矢の話。王のふたりの娘の話。争う二柱の神の話。
 そろそろ、フェラッサンの謎かけの意味にもお気づきだと思います。みっつとも、直截的な力の行使ではなく、いわゆる「間接的アプローチ」を用いるように推奨している。

 数もなく、力もない(数もまた「力」ですが)。弱者が強者を揺るがすには、自分の力以外のものを用いるしかない。三つの話は「時間」(動的状況変化)、「急所」(出来事の真の原因)、「虚実」(この場合相手の力)を利用するように説いていると言えるかもしれない。

 そうか、よく考えれば「物語原型」、たとえばダビデ(デヴィッド)とゴリアテ(ゴライアス)の話のほうがベタですね。(「急所もの」です)

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