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2014年6月29日 (日)

The Masked Empire 15(3)

 あー、こんなことしてないでBABYMETALの欧州ツアーに行きたいデス(うそ)。

 気づかないうちに、最近ほぼベタ訳になっている。そっちのほうが楽なんで時間がないと流される。今回はやめとこう。

***

 セリーンは、世界の間を渡る道を行く間に、時間の感覚を失っていた。少なくともヒューマンたちにとっては、足取りは遅々として進まない感じがした。フェラッサン、ブリアラ、そしてミーリスは、セリーンやミシェルより早く歩いているように見えなかったが、常に先行し、出口のほうのエルーヴィアンの遺跡で、セリーンの持つ次の世界への道を開くルビーを待っていた。 

 リマッチェは屍の戦士たちとの戦闘で傷を負っており、リエンヌが精一杯治癒したにも関わらず、まだ苦痛を感じているようだ。リエンヌ自身は意識を失った爆発の震えがまだ収まらず、それに加え、彼女はこれまでまともに運動した経験がないようだった。ふたりは集団から遅れ気味で、セリーンが一行の足取りを緩めようと言い出すと、刺すような視線で睨み付けた。

 新しいエルーヴィアンに到着し、古代の墓に入って二、三時間の貴重な休息を取る際にはいつも、リマッチェとリエンヌはふたりでひそひそ話をし、セリーンを、そしてギャスパードのことも同じくらい睨みつけていた。リマッチェの場合は、少なくともセリーンのダガーによって負わされた頬の傷が理由かもしれない。 
 理由はともかく、ギャスパードがミシェルとの決闘に負けた場合、ふたりとも簡単に降伏するとは思えない。彼女か、彼らのほうか、再び日の光を目にする前に死ぬことになるのだろう。
 単純な敵のほうがいかに楽であるか、セリーンは気が付いていた。偽ることもいらず、その感情や真の動機を斟酌することもいらない。殺される前に殺す、ただそれだけだ。

 一方、ギャスパードは、この別世界の道を軍人の精確さで歩く間、上品な会話を持ちかけてきた。
 彼は、エルフの偉業に驚きを隠さず、目を傷めつける光はどうやって克服していたのか不思議がった。エルフには違うように見えるのだ、と告げたセリーンは、ことさら彼と話がしたかったわけではなかったが、彼は休戦中の礼儀を欠かさない努力をしていた。それだけではなく、彼がなにか口を滑らすかもしれないのも会話の相手をする理由だった。
 セリーンのほうが口を滑らすこともありうるが、彼女はその危険を冒す覚悟だった。ギャスパードが認めたように、言葉の戦いで彼に負けたことはない。

 エルフには違うように見える理由は、その大きな目か、それとも呪文の類かとギャスパードが尋ねる。おそらく後者だろう、と言ってセリーンが肩をすくめた。
 ギャスパードはフェラッサンから、自分たちが感じるよりも実際は早く移動していることを知らされていた。馬上を進むより素早い移動で、地上の者は誰も気がつかない。軍にとっての効用は計り知れないものの、自分自身ここで寝るのは好きになれないと彼は笑った。そしてミシェルに、彼ならどこに兵を差し向けるか尋ねた。 

 ミシェルは、真っ先にヴァル・ロヨーに兵を向けると答え、それは大公も同じであろうと付け加えた。ギャスパードは片方の眉を吊り上げ、セリーンの本拠地を堂々と攻撃するのは理に適っているが、チャンピオンの発言としては迂闊に過ぎないか、と咎めた。
 自分は女帝のチャンピオンとして宣誓した身であると、ミシェルは丁重に答えた。そしてエルーヴィアンの真の力は馬よりも船よりも素早く移動できることであり、それによりまず守りを固める余裕が生まれ、どんな噂も打消すことができ、それから兵を結集して大公の要塞に強襲を仕掛けることができるだろうと言った。

 合点がいったギャスパードは、チャンピオン選びは間違っていなかったようだと、セリーンに告げた。セリーンは笑い、チャンピオンの意見に同意だが、それはあくまで女帝である自分自身の軍であると釘をさした。そしてその次に自分がどこに兵を向けるつもりかわかるかと、ギャスパードに謎をかけた。

 リマッチェ公爵は蒼ざめて汗まみれの顔で鼻を鳴らした。セリーンはどうせ本心は答えないのであるから、これは愚者のゲームに過ぎない。
 まったくそうではない、とセリーンが言って、彼を斬り殺せそうな優雅な流し目を向けた。この会話によって、歩む道の不快さを苦も無くひととき忘れることができる。それだけではなく、いずれキーストーンの部屋で決着が付いたとき、負けた方はおそらく生きてはいない。自分の計画を大公に今話しても何の害もないが、それはシェヴァリエの掟によるものではなく、世界最大の帝国を二十年にわたって統治する間に得た、取るに足らない理解によるものだ。 

 その言やよし、とギャスパードが笑って告げ、答えを尋ねた。セリーンは、ライデス、と答えた。激怒したリマッチェが唾棄し、ギャスパードは頭をのけぞらせて笑り、セリーンが「ゲーム」の達人であることを忘れていた、と告げた。

 大公の領地ヴァーチェルを破壊してしまえば、それ以降彼にとって喪うものはなにもない、と説明を加えようとしたセリーンを遮り大公が言った。そうではなく、リマッチェに限らず大公側につく貴族の領地を破壊すれば、他の者は玉座に逆らった者の運命を知って恐怖に駆られるだろう。ギャスパードは、破壊された領地の復讐に燃える断固たる英雄ではなく、盟友たちにとっての危険な存在、いわば歩く疫病になってしまう。

 セリーンのライデス壊滅計画を称賛するギャスパードに対し、自分の領地が俎上に載せられている以上、素直に認めることはできない、とリマッチェが冷たく告げた。それでも優れた計画に違いはない、とギャスパードが彼を咎め、どのみち自分には負ける計画を立てるつもりはないと付け加えた。

 それでもまだ、エルーヴィアンの真の力を引き出したことにはならない、とセリーンが言って、先行するエルフたちのほうを見た。エルフたちは、自分たちよりも素早く移動することができる。
 エルフの軍隊のことを言っているのか、とギャスパードが顔をしかめた。軍隊までいかずとも、帝国のどこにでも誰からも気づかれず出没する偵察隊、散兵として使うことができる、とセリーンが答え、ギャスパードの衝撃を受けたような顔に笑いかけ、こう続けた。仮に大公が生き残り、エルーヴィアンを用いることになったのなら、その発想を自分からの贈り物だと考えてもらいたい。

 ミシェルは、エルフを信用し過ぎることに対する危惧を口にした。ヒューマンの大群の道案内としてひとりかふたりを用いるならともかく、連中が結束して徒党を組めば、そこから叛乱の発想が生まれるのはたやすい。
 彼らはすでに徒党を組んでいるし、ハラムシラルでは叛乱の発想には事欠かなかったではないか、とセリーンが反論する。スラムにエルフの連中を押し込めるとき、シルヴァライトの鎧と軍馬を与える一方で、連中が叛乱の誘惑に囚われないと考えることはできない、とギャスパードが言った。セリーンはエルフに信を置き過ぎている。

 いずれはっきりする、とセリーンは微笑んだが、ギャスパードは笑いを返さなかった。セリーンは自分でハラムシラルの大半を焼き討ちにしながら、まだエルフが信に足ると思っているのか。かのデーリッシュ一族はここの鏡を用いるためにディーモンを召喚した。森の中でも、スラムでも、連中は決して満足しない。たとえ寝室でも。オーレイがヒューマンの帝国である限り。

 セリーンは反駁しようとして口を開けた。彼らが信に足る存在であることを自ら証明する機会を与えるべきだし、それを与えればエルフたちは喜ぶに違いない、と彼女は考えていた。古代テヴィンターは奴隷の背中の上に帝国を築いたが、強制使役による労働によっては、自らの使命を信じる者たちが造り出す偉大な業績をものすることができないことは、歴史が証明している。エルフたちは、愛と、情熱と、忠誠をもってセリーンに、そして彼女が代表する帝国に仕え、そのことがオーレイに、来るべき嵐を乗り越える力を与えるのだ。

 だが結局、その議論に意味はない。来るべきときにセリーンが勝てば、ギャスパードは死に、彼女が負ければ自身が死んでいる。決闘がどう決着しようとも、ギャスパードが間違っていると彼を説得することはできないだろう。
 彼女はため息をつき、沈黙し、先を進むエルフたちに追いつくべく歩を速めた。

***

 これまで、リマッチェのマスクを外した人相についての記述はないですし、セリーンに「顔」を傷つけられたことが、どれだけ彼の憎悪を招いたのかも想像するしかないのですが、ま、私は(冷たい感じの)美形キャラだと思って訳しています。

 アメリカン(BioWareはカナディアンの会社ですが、著者パトリックはカリフォルニアン)が「奴隷」の話を持ち出すときは、全部「眉唾」と思ってしまうのですが、ここで言っていることはまあ正しいのかもしれない。大陸国でも古代の偉業は奴隷を使役して築かれたもの。奴隷職人は技巧が優れていなければただ殺されるだけ。「クリスチャニティ(プロテスタンティズム)こそ資本主義の精神を生んだ」という説が正しいとしても、奴隷にされ、植民地化された民は、やがて解放されても、基本的に働かなくなっちゃった。

 エジプシャンが言い出した、「ピラミッド建造に奴隷は用いていなかった」説の真偽はわかりませんが、以前の説は「当然奴隷を使役したんだろう」という(クリスチャンの歴史家たちの)先入観があったことは間違いない。
 そして修正主義(奴隷を使役しなかった説)が出て来たのは、「自分たちは古代から良き民であった」というナショナリズム定番の要請(たとえば半島国が今盛んにやっている)があったからかもしれませんが、やっぱ上でパトリックが書いているようなリベラリズムの影響があるのかもしれない(ピラミッドのような偉業は、自由意志の産物でなければならない)。
 (もともと働かない、信に足りないから奴隷・植民地化されて当然という)ギャスパードの視点のみならず、セリーンの視点もまた完璧クリスチャン視点なんですね。

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