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2014年6月25日 (水)

The Masked Empire 15(1)

 戦いはまだ続く。

***

 第十五章

 サー・ミシェルは、ここまでの苦痛を経験したことはなかった。スラムでの子供時代にも、アカデミーの厳しい訓練の間にも。
 フェラッサンがエルフの少女の呪文を打ち破ったのがなんであれ、それが彼をも救った。エナジーの残渣が彼の四肢に安らいだ温かさを送り、重圧を受けて間違いなく折れていると感じられる肋骨の激しい痛みを和らいでくれる。それでも、彼のギャスパードに対する一時的な有利さは失われた。大公はミシェルを取るに足らない相手と見なしているだろう。彼が何とかして立ち上がり、膝の震えをどうにかして抑えようとしている間にも、それはわかっていた。

 だがギャスパードは仕掛けてこなかった。彼はミシェルを見てさえいなかった。その代りに、彼は部屋の遠くの端を見つめ、剣と盾でモリ漁師の構えを取っている。それは守りの構えで、疲労から立ち直ろうとするときに用いられ、そしてほとんどのシェヴァリエが、相手に太刀打ちできないときに選ぶ構えだと嘲り笑うものだった。瞬きしたミシェルがギャスパードの視線の先を追うと、そのわけがわかった。

 部屋の中の最も大きな三つの石棺が開き、そこから屍が立ち上がった。だが、先刻ミシェルが数知れぬほど倒した爪の生えた単純な化け物たちとは異なり、そいつらは、彼の訓練が想定していたあらゆる敵の範疇を明らかに越えていた。

 化け物のうち二体はただの骸骨だが、やつらが立ち上がると回りの空気が魔法で輝き、とげのついた、ごつごつして近寄ることがぞっとするほど難しく思える鎧が、やつらの身体を包み込んだ。二体ともミシェルの背丈ほどもある大剣を手にし、とげのついた兜の下には、虚ろな眼窩に冷たい光が燃えている。ミシェルはこの手の化け物の話を聞いたことがある。レヴナント、目につく生きるもの全てを葬り去る恐るべき戦士。

 三体目は、ミシェルにもその名前がわからなかった。それは宙に浮きあがり、エナジーの渦が激しい黄金の風のようにその回りを取り巻き、それが赤色と黄金に輝くローブの形になった。その骨ばった爪にはエナジーがパチパチと鳴り、それ以外の武器は身に着けていない。その頭の回りには、魔法が黄金の頭蓋帽を造り出し、その下では、灰色の肌がまがいものの顔を形作り、石炭のように燃える両眼は悪意に満ちた眼差しを投げ掛けている。

「エラハレル」 フェラッサンが吐き出すように告げ、ミシェルは、そのエルフの声がとてつもなくすさまじい怒りと恐怖を帯びていることに驚いた。「やつは、あー、ディーモン・メイジだ、いうならば。だが実態は、その呼び名よりなお悪い」

 ミシェルは、他の者たちを振り返った。ブリアラとセリーン、それにリマッチェも立ち上がっている。フェラッサンは彼が先ほど用いた魔法のため疲弊しているようだ。ギャスパードのメイジたちの具合はさらに悪い。エルフの癒し手はまだ地に伏し、震えており、若い貴族のほうは意識がない。
 ギャスパードの兵たちは誰一人生き残っていなかった。爆発で死んだか、より悪いことには、エルーヴィアンが破損した際に、鏡と鏡の間のあのおぞましい道に永久に取り残された。

「ギャスパード!」 セリーンが鋭く言った。「力を合わせるべきではありませんか」
 大公は彼女を振り返り、次に墓から蘇った恐怖を見やった。「よかろう」 彼はミシェルを見やり、その唇にかすかな笑いを浮かべた。「では参るぞ、同輩。戦場でシェヴァリエと会いまみえることがどれだけひどい過ちであるか、この化け物どもに教えてやろう」

 ギャスパードには、ミシェルがようやく立っていられるだけであることがわかっていた。勇気づけか蔑みのつもりかわからなかったが、そのどちらであっても、ミシェルが背筋を伸ばすために十分な喝を入れた。彼は剣を掲げてモリ漁師の構えを取り、盾の握りを固め、ギャスパードに厳粛に頷いた。「いいでしょう」

 それから、彼は重々しく前進し、その一歩ごとに、へこんだ鎧が両肩と脇腹に当たる痛みに顔をしかめた。ギャスパードも足取りを合わせた。全力で突進はしない。なぜなら得体の知れない強力な化け物に突進するのは愚か者のやることであるからだ。軽い足取りなら、鎧に包んだ全身の力を第一撃に乗せることができる。

「ディーモン・メイジを倒さねばならん!」 後方からフェラッサンが叫んだ。「ダーレン、道を開け!」
 稲妻のような素早さで矢が右側のレヴナントの鎧を打ち、同時に岩が左側のやつに直撃した。息せき切りながら、ミシェルはレヴナントどもの間を抜け、メイジの屍、フェラッサンがエラハレルと呼んだそれに駆け寄った。
 彼が手の届くところに近づいた時、そいつは両手をあげた。エナジーが頭上から降り注ぎ、ミシェルは両膝をつく。部屋がぐるぐる回り、感覚のなくなった指から剣を取り落さず済んだのは、ひとえに長年の訓練の賜物に他ならない。

 諦めるのは簡単だった。彼は部屋中の屍を倒したのだ。任務を全うしなかったなどと責められる謂れはない。シェヴァリエにも限界はあり、古代のエルフ・メイジの蘇った屍は間違いなく強敵と呼ぶに相応しい。遠くのどこかで、炎が唸り、稲妻が砕け、フェラッサンが魔法を呼び起こしている。

 そのとき地面がまたしてもミシェルの足元で揺れ、吐きたくなるような捻じれとともに、自分がメイジの屍の前ではなく、レヴナントの一体の前に立っていることに気が付いた。そいつの鎧の胸板と脛当てからは一ダースもの矢が飛び出しているが、そいつは気にもかけない様子で大剣を握っている。

 ミシェルが掲げる盾が辛うじて間に合ったが、振り降ろされた一撃はこの世のいかなる者がそのような武器を振り回すよりも素早く、その力は危うくミシェルの腕から盾を引きはがしそうなほどであった。彼がよろめいてる間にも、目にもとまらぬ速さで剣が再び振り降ろされ、ミシェルの守りを打ち破り、彼の身体はもんどりうって後ろに倒れた。

 ミシェルは石棺のひとつに激しく打ち付けられ、その物理的な衝撃は彼の心にかかった霧を振り払うに十分だった。正気を取り戻した途端、彼は自分に向かって大剣が振り降ろされるのを目にした。ふらつき、背中は石で塞がれ、ミシェルに身を守る手立てはなかった。
 ギャスパードの盾がその一撃を食い止めた。
 大公自身も、その一撃の威力を受けて跪いた。彼は跳び込んできた、ミシェルは遅まきながら気が付いた。間違いなくとどめとなったはずの一撃を阻止するために。レヴナントでさえそれには不意をつかれたようで、そいつは一瞬後ずさりした。

 ギャスパードは今ここで死んでしまうかもしれない、そうミシェルは気が付き、そしてもし彼がそのとおりになれば、あまりに怯え、疲弊しきって戦うことのできなかったもうひとりのシェヴァリエを守ったあげく、死んだことになる。
 サー・ミシェル・デ・シェヴィン、オーレイの女帝セリーンのチャンピオン、彼はそんな伝説を残すわけにはいかない。

 咆哮をあげ、ミシェルは飛び跳ねると、レヴナントの腕に斬りつけ、肘の丁度下あたりの魔法の鎧と古代の骨を切り裂いた。地面に落ちる代わりに、腕はそのままの場所に残り、ミシェルは、傷つけた部位から魔法の巻きひげが蛇のように現れるのを見た。ミシェルは自分の盾の縁をその傷に突っ込み、レヴナントが怒りに満ちたシューという音をたてるとともに身体を近付け、剣の柄がしらをそいつの顔にお見舞いした。

 そいつは呻き、激しく身体を揺らし、ミシェルの盾から腕を引きはがして、おぞましい剣を用いようとしていたが、やがてもう一方の腕を振り上げ、小手をつけた指を爪のように折り曲げた。
 ギャスパードが野蛮な笑い声をあげながら、レヴナントのもう一方の手を手首のところから斬り飛ばした。大公はミシェルと目を合わせ、小さく頷いた。それからふたりはレヴナントから身体を離し、揃って振り向くと、古代の戦士の両脇からそれぞれ一撃を見舞った。

 ミシェルの振りは胴体を切り裂いた。ギャスパードの振りはその肩を切り取った。この世のものではない化け物が後ずさりし、魔法の束をほとばしる鮮血のようにまき散らしていると、ミシェルの耳の近くを一本の矢が音を立てて飛び去り、レヴナントの兜の下でシューと音を立て、爆発とともにしゃれこうべの後頭部を打ち砕いた。
 古代の骸骨は、身体中が壊れ、砕け散り、剥き出しの骨の姿でそのまま地面に倒れた。

 ミシェルは身体をまっすぐ起こし、彼を立たせ続けているこの戦いの激情が、いつ何時立ち消えるかわからないことに思い至った。もう一体のレヴナントは、地に伏したリマッチェ公爵の傍に立っていたが、そいつもまた倒れかけており、その全身を覆った氷は魔法の鎧さえ軋ませ、それが砕けるにあわせ金切り声をあげた。その胸板に一本の矢が命中し、次に部屋中に火の玉の爆音が轟き、煙が晴れたときには鎧と剣は消え去っており、ただ黒焦げになった骸骨が地面に崩れ落ち、同時に塵と化した。

 メイジの屍は宙に浮きながら進み出て、その掲げた両手の間にはパチパチとエナジーが音を立てている。
 ミシェルはそいつに突進し、闇雲に剣を振ってその化け物が放とうとしている魔法を邪魔しようと試みたが、彼が近づく前に、セリーンが石棺の影から歩み出て、両手のダガーをそいつの背中に突き刺した。

 そいつは怯み、解き放とうとしていたのがどれだけ恐ろしい呪文かわからなかったが、それも遮られ、ミシェルにとっては十分な時間が生まれた。
 彼の一撃は、素早く鮮やかに化け物の頸を刈り取った。大公ギャスパードがほぼ同時に駆け寄り、そいつの肩から股にかけて切り裂いた。
 屍に憑依していた邪なディーモンは逃げ出し、打ち負かされ、さらにもう一体の古代の骸骨が床に崩れ落ちた。

 セリーン、ギャスパード、そしてミシェルは、危うく彼女らを葬り去るところだったその化け物の傍らに立っていた。いまや惨めな姿にしか見えないそれは、かつてはローブだったぼろ布を纏うただの骸骨だった。あまりに多くの骨が無慈悲に散乱しているので、はっきりそう言うのは難しいが、その骸骨は小さく見えた。生きていた頃には、そのエルフのメイジの背丈は自分の肩までもなかったのではないだろうか、とミシェルは思った。
 彼はメイカーに簡単な祈りを捧げた。このメイジがどんな野蛮な神々を祀っていたのか知らないが、屍をディーモンどもに憑依されるような謂れはなかったであろう。

 それから彼はセリーンを見た。彼女も骸骨を見ていたが、計算高い注意を払っていることから見て、彼女が熟考していることが知れた。彼女は両手のダガーの握りを変えており、彼女の視線は骸骨から離れず、ギャスパードのほうを見ようとしておらず、それは大公が、普通は彼女の注意を引くはずの低い笑い声をたてても変わらなかった。

 彼女は彼に警戒されたくないのだ。
 ミシェルは、彼女がそう考えていることがわかった。彼女がほんの僅かだけ身体の重心をずらしたのは、彼女の刃がギャスパードの喉を容易に切り裂けるようにするためであり、戦を終え、休戦を無視すること以外に何の代償も払わず、彼女が再び玉座に戻るためであることがわかった。

 誰も気が付いていない、ミシェルを除いては。彼は攻撃する必要すらなく、ただ何もせず立っていて、セリーンがギャスパードの不意を突く間、黙っていればいい。ミシェルは異議を唱えるべきかもしれないが、セリーンがシェヴァリエではない以上、ミシェルとギャスパードが重んじる名誉の掟に彼女が従う謂れもない。 

 だが、ミシェルこそは、シェヴァリエだった。
「ギャスパード」とミシェルが言って後ずさりし、剣を下げた。「休戦はこれで終わりか、それともまだ続けるおつもりか?」
 彼は、セリーンの瞳の苛立たし気なきらめきには、気づかないふりをした。

*** 

 戦闘シーンが続いて、正直しんどいんですけど(笑)。でも、ここでもまた、ターンベースト、テーブルトップRPGの香りがぷんぷん漂ってますね。

 ミシェル視点なので、もう一体のレヴナントとリマッチェの戦いはどうなったのかなあ、ブリアラの矢がいつの間に爆弾になったのかなあ、ディーモン・メイジあんまり出番がなかったけど、どうやって食い止めたのかなあ、とかまあ、そういうのは読者が想像しましょうね、ということでしょうね。

(ディーモン・メイジなにしてたの、への言い訳としては、レヴナントが鎧と剣を身に着けていたのは、ディーモン・メイジの魔法だったのです、というものかな。レヴナントが倒されてからはじめて前に出て来たってことで。それからミシェルに絶望か諦観を与える呪文を投げたり、DAシリーズではおなじみの相対する敵を入れ替える呪文を使ったり、小技は使ってるようですね) 

 前回とあわせ、サー・ミシェルに艱難辛苦が襲い掛かりますが、どんだけ打たれ強いんだと。
 また、ギャスパードが同輩シェヴァリエの窮地を救うシーンは前にも出てきました。ここら辺は、剣と魔法の物語に限らず、騎士道もののロマンチシズムとして、笑って見過ごすところでしょうね。・・・、涙ぐんだりしてませんから。

 まあしかし、女帝と大公の休戦が続くとして、結局どんなパーティーになるのか、数え上げると面白いですね。

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