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2014年5月10日 (土)

The Masked Empire 8(1)

 「捕虜」のことを「囚人」とか情けない間違いもやっていましたが(直した)、兵は拙速を貴ぶ。許していただこう(ブリアラのほうは囚人だけど)。

*** 

 第八章 

 ブリアラは、囚人用馬車の御者台との間の仕切り板を蹴った。しばらく後、間仕切りを開けて中を覗き込んだ衛兵は驚愕した。ブリアラの鎧に矢が突き刺さっている。彼女は咳き込みながら、流れ矢が飛び込んできた、ギャスパードに話しておくべきことがあると途切れ途切れに告げた。
 血糊の代わりになるものはなかったが、疲弊しきった衛兵は気づくまいとブリアラは考えた。すぐに扉の鍵を開ける音がして衛兵が飛び込んできた。
 彼女は顔をあげると、手枷を振り回して衛兵の顔を殴打し、倒れたその喉を引き抜いた矢で刺し貫いた。

 衛兵の痙攣が止まると、彼女は外に出た。牽き馬は連れ去られ、衛兵は殺した男ひとりきりだったが、馬車は依然としてギャスパードの陣地の中にあった。司令部用の幕舎は左手にあり、ギャスパードの軍隊から逃れる最速の道は右だ。御者席に登ると、その道具箱の中に自分のダガーと弓矢を見つけた。
 まだ誰も彼女に気が付いていない。

 エルフは成長する間、周囲の注意を引かないことを学ぶ。セリーンの邸宅ではエイリアネイジに比べてその必要も少なかったが、彼女の母親は、必要不可欠のときだけ注意を引くようにブリアラを躾けていた。

 ヒューマンは狩人だが、農夫でもある。鹿が逃げれば追うしかなく、怯えた兎が凍り付いていれば矢を射るしかない。それが彼らの熟達、技能を示す道だ。
 だが牛の群れの足取りを追える者はほとんどおらず、のんびり悦に入った羊が次に食む草がどれか当てることは熟練に値しないとみなされる。
 ギャスパードの陣地から白昼堂々抜け出すため、今はブリアラが呑気でだらけた羊になるときだ。

 御者席にあった死んだ衛兵の薄い羊毛の外套を身に纏ってドレイクスキンの上等な鎧を隠し、頭巾で耳を隠した。弓は脇に挟んで見えないようにし、馬車の周囲を探してバケツを見つけた。何に使っていたか考えたくもない汚れた古い代物だったが、今このときには金貨以上の価値がある。
 上質の鎧を着てアイアンバークの弓を手にしたエルフは即座に目を引く。だがバケツを手にしてゆっくり、だらしない足取りで歩く彼女は、水汲みにさえ時間をかけるまた別の召使いでしかなく、薄い外套をしっかり引っ張り上げているのも秋の寒さに耐えるために見えるだろう。

 ギャスパードの兵のほとんどが休息しているテント群の間を抜けていく。焚火では食事の支度がなされ、鎧を脱いだ兵士たちの下着は錆や血で汚れていた。包帯や食事など、軍が活動するため必要とするあらゆるものを運ぶ召使いたちが行きつ戻りつしている。そのうち何人かはエルフで、彼女に気が付いて驚いた顔をしていたが、誰も呼び止めたりしなかった。
 形だけの見張りひとりと、ごくわずかな人数の世話役と馬蹄工しか周りにいない馬の列には気をそそられたが、それも通り過ぎた。バケツを手にした召使いは馬に乗らない。

 依然見とがめられず、ブリアラは、ゆっくり、さり気なく歩き続け、偵察と立哨が目に留まったときには立ち止まってバケツを持ち替えた。首筋を伝う汗のことは無視した。
 偵察が立ち話を終え、司令部の幕舎の方に歩きはじめると、ブリアラも再び歩を進めた。
 それが、ほんの少し早すぎた。

 鎖帷子姿の立哨は弩と短剣を身に着けていたが、その水入れの革袋が真新しく、短剣を差している帯の位置がすぐに引き抜くには高すぎることから、ブリアラは男が新米だと見て取った。
 偵察のほうはずっと危険だった。手にした長弓は訓練された兵であることを示し、さらに一組の手斧を身に着けている。足取りががに股なのは、この朝ずっと馬上にいたせいで疲弊していることを示していたが、それでも彼女に不審な点を見て取るくらい警戒は怠っていなかった。鎧の輝きが覗いたのか、外套の下の弓の形に気が付いたか、それとも単に彼女の歩き方が不自然で注意を引いたのかわからない。

 ブリアラは歩き続けた。偵察も歩き続け、司令部の幕舎のある方角、彼女の右後方へそのまま歩き去ろうとしていた。
  彼女の視界から消えた瞬間、男の足取りが変化した。彼にはあからさまな違いこそ気取られないだけの力量はあったが、疲労が本能を呼び覚ましたのか、歩調が突然早まった。彼は円を描くようにして、彼女を追い始めた。

 頭をあげることなく、ブリアラはほんの少し右に向きを変えた。それでもまだ相手が視界に入らないが、近づいてくる偵察と立哨を結ぶ丁度その線上に自分を置くことになる。
 あと五歩。
 おい、そこの娘、と後方から呼びかけられる。水を少しくれ、というような何気ない調子だった。四歩。三歩。彼女はバケツをきつく握った。
 おい、と偵察が叫ぶ。もはや逃げ道はなかった。どんな召使いでも立ち止まって振り返るべきときだ。立哨がぎこちなく歩いている。二歩。一歩。

 衛兵隊、と偵察が叫び、彼女は長弓が持ち上げられるときの革と木が軋む音を聴いた。
 立哨が振り返ったとき、彼女は目の前ほんの二、三フィートのところに来ていた。立哨は彼女の鎧に目を見開き、弩を持ち上げる。ブリアラはバケツを投げつけ、矢が放たれる瞬間に身体を横に投げだした。弩の矢は安物の木材を撃ち抜き、飛び散った破片を立哨の目前にまぶし、彼女は、自分の頭巾を剥ぎ取るくらい耳のすぐ近くを矢が通過する音を聴いた。

 彼女の直後にいた偵察は、向かってくる弩の矢に気付くだけの訓練を受けており、彼女同様、地面に突っ伏した。
 だが疲労のため彼が立ち上がるのが一瞬だけ遅れ、すでに立ち上がっていたブリアラの弓が自分を狙っているのを目にしたときには、その矢が自分の心臓を貫いていた。彼女は振り返り、剣を鞘から抜こうともたついている立哨のほうに踏み込むと、ダガーでその喉を切り裂いた。 

 彼女はまた歩きはじめ、五歩進んだ先で後方の叫び声を耳にし、それから駆け出した。
 木立ちまであと五十ヤードはあった。心臓の鼓動は高まり、後ろも見ずに走り続けた。弩の矢が目の前の草むらに突き刺さる。ドレイクスキンの鎧の背中に別の矢がかすったが、彼女をよろけさせるには十分な衝撃だった。

 木立ちに入ってからも走り続ける。紅葉した低い枝葉が顔を打ち、外套を引き裂く。弩の矢が肩に当たって痛みで息を失い、よろめき、木の根に足を取られ、地面に激突して木の葉を舞い上がらせた。

 蹄の音が聞こえる。
 彼女は森の中は安全だと、衛兵たちがひとりのエルフを追撃しては来ないと考えていたが、追いかけて来る叫び声を聴くとそれも間違いだったようだ。

 立ち上がって枝の間から覗き見ると、少なくとも二十ばかりの兵が追跡してきており、馬上の者も数騎いるようだ。彼女が深みを選んで進めば馬は役に立たないが、この人数を巻くのは至難である。
 彼女は弓を構えた。どのみち逃げ切れはしないし、戦うなら自分のやり方で戦うつもりだった。

 彼女が弓を引こうとしたとき、地面が持ち上がった。一瞬、また射られたのかと思い、周囲が不意に揺れるとともに膝をつく。周囲の地面は、まるで小石を投げ込んだ鳥の水浴び場の水面のように上下している。

 木々が踊り、紅葉した木の葉は音を立てて舞い落ちる。赤色と黄金の暴動がブリアラの目前の空気を満たし、人の姿を見通すことはできず、馬と人の悲鳴や叫び声だけが聴こえてきた。彼女はじっとして歯を食いしばり、地面が揺れるのに任せた。

 木の葉が晴れると、ブリアラはほとんどの兵が膝をついている姿を目にした。乗り手のいない馬もおり、一頭は倒れたまま動かなかった。剣を手にした兵たちは激しく首を回して周囲の敵を探している。 

「アネス・アラ、ダーレン」 フェラッサンの声に、ブリアラは跳び上がった。間違いなくあたりには自分ひとりだったのに、今は師匠がすぐ隣に立っており、いつものように小奇麗な外套姿で、その杖は兵たちに向けられていた。「無事でなにより」

「待っていたのですか?」 ブリアラが尋ねると、師匠が微笑んだ。
「いくらなんでもあのには入らないぞ」 彼は言って身震いした。「ありゃあ、軍隊だから! だが、君は自分の手でうまいこと切り抜けたようだ。あるいはバケツで、か」

 彼の杖が眩い緑色に輝き、頭上ではもやった午後の空に闇が訪れた。稲妻が空を切り裂き、蒼白い雷光がブリアラの視界を奪い、砕けるような雷鳴が腹に響いた。馬が悲鳴を上げるうちにも別の落雷が地面を揺らし、ブリアラが数えきれないほど何度も続いた。

「もういいだろう、君次第でいつでも行けるぞ」 フェラッサンが疲れた笑顔で言った。稲妻の光で照らし出された闇の中、ブリアラが目を細めて見ると、地面に残った焦げ跡と、動きのない、黒焦げになった死骸が目に入った。
「そうね、行きましょう」 ブリアラがそう言って、師匠の後に続き、深い森の中に入って行った。

*** 

 こんな図上再現テーブルトップRPGみたいなシーンの連続、要約するにもほどがあります・・・。
 でも細かいんだよ、ほんとに。Detect(察知)チェック、Scout(偵察)Skill+1、Fatigue(疲労)-2 チェックですか? Novice(新米)‐2チェック失敗、ファンブル!とか・・・。そういうつもりでしょうか。

 一か所だけ、偵察が"Guards!"と叫ぶところ、「新米の立哨」に呼びかけているのではないので「衛兵隊」としてますが、意訳でいいので良い訳がないですかねえ。「敵襲!」じゃないしね。「(ものども)出あえ!」が近いと思ったんだけど、今は通じないか。「曲者(くせもの)」? なんか時代劇がかってるな。
 というか、そもそもこういうとき"Guards!"と叫ぶのかしら。

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