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2014年5月 5日 (月)

The Masked Empire 6(4)

 第六章のラスト。

*** 

 朝が訪れるまでに、戦いのほとんどは終わっていた。
 彼女の輝く白い牝馬に跨って、軍勢と行動をともにする女帝セリーンの皇帝の鎧は、弱々しくけぶる夜明けの光の中でさえ煌びやかに輝いていた。自分が疲弊しているはずなのはわかっていたが、早く目覚める代わりに遅くまで起きていたにも関わらず、夜明けが心に魔法をかけたかのように、彼女は動き回り続けた。 

 エルフたちは近づく軍勢の鎧の音を耳にし、ナイフを先に括り付けた棒切れと酒場の机から作り出した木製の盾で槍ぶすまを組もうと試みた。オリージャン軍は、狭く曲がりくねったハラムシラルのスラムの街路を四列横隊で進軍し、足を止めることもせずにエルフたちを斬り倒した。広場に差し掛かると、騎馬兵が側面から鮮やかな波状の掃討を繰り出し、逃げ出すエルフを蹂躙し、反抗のため集結しようとする者たちがいれば、その心を恐怖で挫いた。

 それが済んでからのセリーンの最大の憂慮は、兵たちが規律を失い、夜の鎮圧が祝宴に化してしまうことであった。エルフたちはスラム以外に逃げるところはなく、機会を与えれば凶暴に牙をむくことをセリーンは知っていた。女帝は馬上で、警護されながらもその姿を曝し、気の早い略奪に向かう素振りの兵がいれば、彼らに別の指図を与えた。

 セリーンたちが軍隊の精確さでエルフのスラムを通過した後、叛乱軍が占拠していた地域は火の海となった。ハラムシラルの貴族の男女は、高地の市場がある広場の、貴族と下層の者たちを隔てる門の外側に集められ、女帝と軍勢が帰還してくるのを沈黙とともに待っていた。貴族たちは護衛とともに先頭に立ち、商人たちや職人たちは召使いたちと一緒にバケツを手にして脇に立っていた。それは先見の明というものだった。セリーンの背後の熱波は灼熱のカーテン同然で、彼女の肺から空気を奪おうとしており、火の粉や燃えさしは、貴族たちを安全に守っていた石壁の上を自由に越えている。

 セリーンは、エルフがここにハラムシラルを打ち建てた時代からその石壁があったに違いないと思った。だが当時のエルフたちは、いつの日かその壁が、外側で焼かれているエルフたちからヒューマンの貴族を守る用に供されるなどとは思いもしなかっただろう。

 サー・ミシェルは集められた貴族の側にいた。彼自身は戦いに参加しなかったが疲弊しているように見え、彼女の後ろで炎上するスラムを見つめる顔には、馬車の中であれほど隠そうとしていた憐れみが浮かんでいた。

 セリーンは軍勢の前で馬を止め、兜を脱いだ。鎧を身に着けているときは例外的に容認されるように、その下は素顔で、蒼白い顔はたじろぐことなく群衆を見つめていた。

 サー・ミシェルが女帝万歳を叫ぶと、灰色の夜明けの光の中、大勢の者たちの声が呼応し、膝を屈した。

 彼女は馬上でその歓待を受けた。それもまた彼女が軍勢とともに馬に跨り、必要のない鎧を身に着けていた理由だった。彼女は血も涙もないと呼ばれるだろう。彼女は気が触れてしまったのではないかと問われるかもしれない。だが彼女には、女帝セリーンがいかに叛乱に対処したかを疑いようもなく目撃した、大勢の生き証人がいる。

 演説が求められたが、彼女の用意した言葉はそぐわず、燃え上がる家屋から出る煙が彼女の髪にまとわりついていた。彼女はハラムシラルのピエール伯爵、自らの街の一部を焼き討ちにする指揮を任せた領主のほうを向いた。

 彼女の声は広場の隅々まで行き届いた。彼女はピエール伯爵に対し、自らの軍勢は休みなくここに進軍してきたこと、必要欠くべからざる措置であったとはいえ、このような真っ当な街の一部を破壊することに喜びを抱くことは一切なかったと告げた。
 ピエールは、許される返答はひとつしかあり得ないことを承知していた。彼は、領地の平和を回復した女帝への感謝を伝え、誇り高き街にこのような度し難い非道が蔓延ったことを悔いた。

 今日から復旧に勤しまねばならないだろうし、兵はその役には立たない、とセリーンは言った。 そして女帝とその軍勢は、ハラムシラルの郊外にある女帝の冬の宮廷に引き上げると告げた。

 彼女の家族が寒い冬の期間に訪れる習わしであった別荘までさほど遠くはなく、長い一夜の後であれ、そちらに向かうほうが望ましかった。兵たちはそこでハラムシラルが供するよりも良い饗応を受けることができ、一方ハラムシラルは死者たちの埋葬に取り掛からなければならない。
 ピエールは馬上でお辞儀をした。女帝の兵たちは皆英雄であり、饗宴にはそれに相応しい賑わいが必要であると告げ、女帝と兵たちが出立した後、食材を見つくろって冬の宮廷に運ぶ旨申し出た。

 セリーンが頷くと、ピエール伯爵はゆっくりと馬を離し、群衆も彼のほうに別れていった。サー・ミシェルが馬に跨り、女帝の側に並び掛け、ふたりの馬は街を後にするため進み出した。
 女帝が任務の首尾はどうかと尋ねると、ミシェルが上々であったと答え、一緒にいた庶民ひとりは抵抗したため射殺したが、彼女のほうは指示通りに争うことなく捕縛したと伝えた。
 女帝は感謝の言葉を告げると、今度は捕囚の様子を尋ねた。ミシェルは、彼女は焼き討ちについては快く思っていないと答える。女帝は、マスクも化粧もない素顔でさえ一切の表情を変えることなく、わかったと言って頷く。彼女の弱みを探る目がどこから見張っているかわからない。 

 セリーンの軍勢が街の門を通過する頃には太陽が顔を出していた。巨大で分厚いその門は、エルフが街を支配していた頃に持ち込まれたという古代の石の上に乗っていた。史書によれば、街の石壁があまりに頑丈なため、「聖なる行軍」の最後の大攻勢で門が破壊された後も、征服者たちは他の要塞部分を手つかずのままに残していた。それにより街には意図せぬ異国情緒の雰囲気が漂い、いくつかの見張り塔も、この世のものとは思えない古代の優雅さのままそびえ立っている。 

 これで済んだとセリーヌが言い、彼女の牝馬の足並みがたてる蹄の音が、石畳の上のそれから、土の地面のものに変わった。ギャスパードの忌々しい手口も失敗に終わった。それにより彼女は、何千かのエルフの命と、ブリアラを失った。

 彼らの前方から、その日最初の商人の隊列が街に近づいてきた。
 意味が通らない、とサー・ミシェルが言った。彼はブリアラを見つけるのに注力していたので、ギャスパードのことまで考えを巡らす暇がなかったが、ナイフ耳への同情についての偽の噂を打ち破るのがいかに簡単か、彼にもわかりそうなものではないか。

 そうだろうか、とセリーンが肩をすくめ、ギャスパードはセリーンが軍を率いた経験がなかったから、なすべきことを成し遂げるだけの鉄の神経に欠けていると思いこんでいたのかもしれないし、またはヴァル・ロヨーに戻る彼女を別の噂話やあてつけが待ち受けており、彼の用意したくだらない醜聞を打ち消すために、またしてもやり合わなければならないのかもしれない、と言った。 

「いや」 ミシェルが顔をしかめた。「いくら悪ふざけに過ぎるとはいえ、大公ギャスパードは紛うかたなきシェヴァリエです。軍略の訓練を受けている。彼はこうなることを予期していなければおかしい
「あなたの言うとおりのようです」 セリーンは手綱をぐいと引いて、乗馬を即座に止めた。「彼は予期していた」

 前方の商人の隊列では、衛兵たちが茶色の外套を脱ぎ捨て、その下のシェヴァリエの輝く鎧を曝した。
 草むらからは、潜んでいた何百もの弓兵たちがその姿を現した。
 セリーンが振り返って兵たちに警告の叫び声をあげると同時に、夜明けの灰色の空が、矢の雨で黒く染まった。

***

 第七章に続く。

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