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2014年5月 4日 (日)

The Masked Empire 6(2)

 第六章の続き。

*** 

 女帝セリーンの軍勢は、ハラムシラルに向けて猛烈な勢いで行軍した。ウェイキング海を船で渡り、ライデス領内を通過する。それはラマッチェ公爵の従者たちが主人に対して、それからギャスパードへ完璧な報告をもたらすことを意味するが、それを防ぐことはできなかった。 

 実際、彼女は防ぐことができないことを望んでいた。これはギャスパードが彼女に強いたことであり、軽んじられるべき存在でないことを自ら示すため、オーレイの女帝が叛乱を鎮圧するように仕向けることができるほど自分が利口者だと彼が考えた結果だ。ひとたび彼女が行動を起こすよう強いられたなら、どれだけのことをなすことになるのか貴族たちに思い知らせ、帝国の保全のために敢えて行動を起こさないことを、躊躇と見間違えることが二度とないよう、念を押さなければならない。 

 数百の馬、その倍の数の歩兵、そして四十騎のシェヴァリエたちからなる彼女の軍勢が馬上で、または徒歩(かち)で進軍する間、セリーンは専用の箱馬車の中で、諜報に関する報告を読みふけりながら、自分も馬に跨りたいと思っていた。彼女は旅装であり、馬車から外に出るときに身に着けるべく、マスクは横の座席の上に置いてあった。 

 馬上がここより不便なのは明らかだ。セリーンは日頃欠かさず馬上で過ごす時間を取っていたが、公園での優雅な乗馬や、たかだか何時間かの狩り場のそれと、一日中馬上で過ごすのがまるで違うことはわかっていた。

 だが鞍に跨ればそれは乗馬に違いはなく、ひなが報告を読んでいる必要はない。スラムがどれだけエルフの手に落ちたか? 衛兵がどれだけの数死んだか? 街を脅かす危機に鑑み、どれだけの数の貴族が予定を変更したか? 
 箱馬車の中では、読み、命令を出し、そして待つ以外にすることがないのだった。

 同乗しているサー・ミシェルは、報告によみふける彼女を無表情に見ていた。彼女が報告の紙をくしゃくしゃに丸めると、何か特別なことがあったか尋ねた。

 目新しいことはなにもない、と彼女は答えた。エルフはさらにいくつかの街区を手に入れた。ヒューマンの貧困層が住む地区の街路に立て籠もり、住人たちは持てるだけの荷物だけ持たせて追い出した。ライデスのエルフは、ハラムシラルの自由に加わるため逃げ出しており、ハラムシラルの叛乱者たちは、正義を履行するためメインセライ卿の身柄を差し出すよう要求している。ハラムシラルの衛兵隊は、騒動の激しい地区に回す手数が足りず、支援を求めている。

 後どれだけかかるか、と問われたミシェルは眉根を寄せて窓の外を見た。この調子で進み、休息を最小限に抑えれば一日もかからない。だがハラムシラルには疲弊したまま到着することになる。
 ガラクタ製の鎧を着て、石つぶてで戦うエルフ相手だから、戦い自体に何の心配もなく、早く到着するほうが重要なのだ、と女帝は言った。

 ミシェルは黙って頷いたが、セリーンには彼が顔をしかめているのがわかった。それは思慮にふける表情というよりも困惑している様子だったため、彼女は救われた。こと戦に関するミシェルの判断には信頼を置いており、彼が憂慮しているのなら、彼女も一緒にそうすべきだった。

 異論があるかと問われても、ミシェルは首を振って否定した。だがエルフの馬鹿さ加減、戒厳令下で夜間こっそり抜け出す程度ではなく、衛兵に牙を向け、バリケードを築いていること、それが不思議だと言った。
 飢えて恐れているのだろう、と彼女が肩をすくめる。一部の貴族はいわれもなく弱者に残酷な仕打ちをする。犬ですら何度も蹴られたら、噛み返すことを覚えるはずだ。

 まるで気の毒がっているように聞こえる、とミシェルが咎めた。
 彼女は悲しげに笑った。エルフの民も帝国の一部である以上、彼女は別の方法で解決したかった。彼らにも自分たちと変わらずここに居場所があるべきで、彼らに導きと安全と安寧を与えるのは、自分の女帝としてのメイカーに対する責務だ。だから、自分が今なそうとしていることには気分が滅入るのだ、と言った。

 女帝は、ミシェルのほうはどうかと尋ねる。彼は表情を変えずに、女帝の支配を脅かしたのだから、自分だったらギャスパードがヒューマンの命を脅かす暇を与えず、ナイフ耳数百人くらいさっさと殺してみせただろうと答える。

 いつになく怒りに満ちたミシェルの様子を、セリーンは不思議がった。それと同時にブリアラへの誠実さを欠いたことになる自分自身の胸中も傷んだ。ブリアラが旅立つ前の最後の会話、あのときのブリアラの声に込められた熱意を思い出した。 

 ミシェルにとって心を痛める意味はないのだろう、とセリーンは言った。エルフは農奴だ。自分たちが彼らの喜びも苦労もわからないのは、彼らが自分たちのそれらを理解できないのと同じことだ。彼らにとってみれば、ヒューマンの自分たちは一日中手に入りにくい珍味を食べ、一晩中大舞踏会で踊っているのだ。
 ミシェルはようやくにやりとして、それはそれで当たっているのではないのか、と言った。

 エルフの叛乱は、ミシェルのことを侮辱しているわけではないのだから、怒りを覚える必要はないだろう、と女帝が言う。 
 それは承知している、と言ってミシェルが続ける。法をないがしろにすることは理屈上女帝をないがしろにすることと同義だが、それはまだ理解できる。だがこの叛乱は女帝に対するものであり、農奴、エルフ、ヒューマンの誰であっても直接的に女帝に敵対する行動を起こすことは理解し難い。そして自分はそれに対処しなければならない。そうでなければどうして女帝のチャンピオンとして名乗れようか。

 セリーンは首を振り、その機会はあるから心配するな、今は自分たちの成功を祈るだけだ、と言った。

 ふたりは黙り込み、セリーンは今宵もひとり寝を余儀なくされることを考えていた。だがギャスパードは連れと一緒に寝ていても恐怖を感じていることだろう。叛乱者たちに違いないとはいえ、エルフたちはオリージャンでもあり、その死は償われなければならない。
 ギャスパードが償うのだ。

***

 ここは短めですが、区切りがいいので。

「叛乱者たちは、エルフの民であり、かつオリージャン」

 (政治的(宗教的)信条・思想)(エスニシティ・種族(人種))(国家・国籍・ナショナリティ)

 非常に重要な今日的なテーマでもあり、結果的にウクライナ(ユークレイン)騒動などでホットな話題にもなった。

 だが、いくらセリーンが聡明で斬新な発想ができる人だとはいえ、リアル地球でもたかだかここ一・二世紀でようやく生まれたネイション・ステイトの発想を、崩壊寸前とはいえ、チャントリー支配下のドラゴン・エイジのセダスで自然に思いつくというのは、あまりに早すぎ、すごすぎます(アナクロニズムの一種だが、ファンタジーだから何をやってもいいんだろう)。
 興味の対象は、こんな大きなテーマ、どうハンドリングしていくつもりなのかというあたり。

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