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2014年5月 1日 (木)

The Masked Empire 5(4)

 前回までにも間違い(誤字脱字、言葉遣い、誤訳)やもたついたところ散見されるでしょうが、ちょくちょく後から直していますのでご容赦ください。
 第五章ラスト。

*** 

 これはただの比喩であり、エルフを市場や大学に招き入れているセリーンへの誹謗に過ぎない可能性もまだあった。だが彼女にはそうは思えなかった。リマッチェ公爵ははっきり「エルフの愛人」と言っていたのだし、たとえ舞台の上での比喩だとしても、「ゲーム」においては確証でもなければ口にしないものなのだ。

 ブリアラは、長きにわたって隠し続けてきた彼女の人生の一部であったが、いまや彼女を責めるために使われた。ギャスパードとごろつきどもは、彼女から安らぎを、彼女が愛する女性を奪い、彼が欲する戦を手に入れようとしている。

「陛下が玉座にある長い間、芸術と科学の学問を守るため腐心してこられたのに」 闇の中から穏やかな声がした。「それを逆手にとって陛下に向けるなど、ギャスパードはどれだけ冷酷なのでしょう」

 セリーンは、ディヴァインの赤毛の代弁者の、フェラルダンの造作とマスクを着けない顔がひときわ異彩を放つ姿を見た。「劇場はいつでも気まぐれなものよ、レリアナ。そして大学が裏切ることはないと思います」 彼女はミシェルを見た。「他の者たちを探して、何を聞いたか確かめて頂戴。ここを出ます」
「陛下」 ミシェルは頷き、他の召使いたちを引き連れてその場から威勢よく立ち去り、セリーンはレリアナの立つ闇の中に歩み入った。

 彼女は固く縛られた巻物を差し出した。「教授連の何人かは、エルフに関する論文を書くよう依頼されました。ある論文は、大きな耳がウサギに似ていることから、エルフは単に餌食となる生き物であり、生存のための本能にのみ従うが故に信頼するに値しない、としています。別のものは、エルフと姦淫する者はけだものと寝るに等しく、メイカーに対する侮辱をなしている、と記しています」

 二十年にわたり、野蛮人の帝国に対し、世界最大の国家であり続けるに必要な洗練と文化をもたらすため戦ってきたその結果、彼女が救おうと努力してきたまさにその者たちが、彼女を嘲り、殺すと脅迫し、ギャスパードとの戦いを芝居に仕立てて庶民の娯楽に供している。二十年にわたる比較的平和な、啓蒙に満ちた時代、その間のオーレイの安全についてまで脇に追いやられてしまうのも、劇作家らと学者らが、エルフと浮かれ騒いで愛にうつつを抜かす娘の馬鹿さ加減にまで、それらの事柄を卑劣にも貶めたからだ。 

 セリーンは目を閉じた。「それで、このことについて、ディヴァインはどのようにお考えなのでしょう?」
 レリアナは微笑んだ。「ディヴァインが劇場に高い評価をお与えになったことは、これまでついぞございません、輝けるお方」 セリーンが黙り込むと、ディヴァインの代弁者はため息をついた。「エルフはメイカーの子ら、私たちと変わらず、故にかのお方の恩恵を得るに値する」

「でも、ディヴァインがそうおっしゃったのではないでしょう」 セリーンが勘ぐった。
 レリアナはそっぽを向いた。彼女はバードの訓練を受けていたので、全ての動きには大抵何かの思惑があるはずだが、セリーンはその不快そうな仕草は本物だと思った。「私はかつて・・・、エルフと戦友の間柄でした。彼らが傷つくのは見たくない。でもこの件について、あのお方に助力を求めるのは無理」 彼女はセリーンのほうを再び見た。「陛下は、テンプラーとメイジの間の緊張を解すようあのお方に依頼された」
「たしかに」 セリーンは頷いた。「そして彼女の助力はいただけるの?」
 レリアナは息を吐いた。「そのとおり」と彼女は言って、ゆっくりと頷き、「ただし、その代わり、あのお方はこのエルフの件に収拾がつくことを見届けなければなりません」

 セリーンは、この会話がどこに向かうかたちどころに知り、自分の中で心がひしげるのを感じた。彼女は小さなため息をつき、それから言った。「もちろん。自らの領分を果たすつもりなくして、ディヴァインにその行動を迫ることなどできるはずがありません。ジャスティニアをお招きして催される舞踏会を、あなたも楽しみにしておいていただきましょう。わたくし自身は、残念なことにご一緒することはできそうにありませんが」
「ディヴァインにはご理解いただけるでしょう」 レリアナがそう言って、やさしい、悲しげな声で付け加えた。「メイカーの祝福とともに歩まれんことを」

「陛下!」
 セリーンはきっと顔を上げ、背筋を伸ばす間に息を整えた。それはサー・ミシェルの声で、セリーンの側近たちがすぐ後に続いている。彼女が先ほど聴き取りのため向かわせたふたりの召使いたちは取り乱した様子で、ひとりの顎から口に賭けての化粧は、誰かにぶたれたかのように汚れている。もうひとりのマスクの下には筋が走り、まるでさっきまで泣いていたかのようだ。
「何がわかったのです?」 彼女が尋ね、闇の中をちらりと覗き込んだ。レリアナの姿は消えていた。 

「舞台の上でのように」と彼はしかめ面をして言った。「観衆たちは陛下があまりにも・・・、エルフに甘いと」 セリーンは苛立たしそうに手を振ったが、彼は続けた。「陛下はエルフの税を軽くして、我々の法には従わず済むようにしたがっていると言っております。陛下は彼らに憐れみをかけており、中には、陛下がデーリッシュとの間で密約を結んでおり、貴族から領地を取り上げてデールズをエルフに返すつもりではないかと勘ぐる者までおります。陛下のブリアラについての話まで出ています」 ミシェルは壁のほうを見た。「つまり、彼女は、えー、陛下たちは・・・」

愛人、でしょう、ミシェル?」 
「そのとおりです、陛下。そのように言われています」 ミシェルの両の拳は身体の脇で握りしめられている。「お望みとあれば、拙者喜んでロビーまで戻り、そのような言い草は許し難いとはっきり伝えてまいります」

 セリーンは微笑み、そして真顔になった。召使いたちには彼女の力を示さなければならない。「いいえ。ひとつの声を咎めても、代わりに百の囁きが生まれるだけでしょう。わたくしがエルフにやさしすぎると人々が不安に感じるというのなら、その誤解を解くための行いで示さねばなりません」

 数えきれないくらいの選択肢があったが、即座に彼女は、それらを数えるほどまでに削ぎ落とした。新らたに交易を制限する、有無を言わさず大学にエルフの学者を登用させる・・・、それらの行いは一部の者たちには伝わるだろうが、帝国全体にわたってセリーンの力を知らしめることにはならない。

 そのために十分な行いは、たったひとつしかない。レリアナと話をしているときから、すでにそれに気が付いていたが、同時に彼女は心の中で、ブリアラが間違いなく感じるであろう苦しみについて許しを乞うていた。だが、他に道はない。

「兵を集めなさい。ハラムシラルに進軍します」
「陛下?」
「叛乱を打ち砕くのです」

***

 ああ、数学好きのセリーンにとって「ゲーム」とは、あっさり「解」を見つけることを言うのかもしれない、と以前書いたのは、ここを読んだときの記憶があったからなんですね。

 さて、Asunderに描かれた物語とも、時期がラップしてまいりました。Asunderの冒頭は、ディヴァインを賓客として招いた女帝主催の舞踏会のシーン。もっとも女帝は不在でした。

 窮屈な劇場の中から、やっと外に出ることができるので、私の喜びもひとしおです(笑)。

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