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2014年5月31日 (土)

The Masked Empire 12(1)

 前回、省略するつもりではなかった部分で、段落一つ抜けていたので追加しておきました。

***

 第十二章

 セリーンはびしょ濡れで震えながら、土砂降りの中、ブリアラがデーリッシュの逗留地を歩いてくるのを目にした。彼女もずぶ濡れだったが、雨で濡れた髪がつるつるして見えるのは、どこかで水浴びをしてきたからだろう。

 セリーンたちに毛布を寄越さなかった衛兵たちは、せり出した崖の下に雨宿りしている。ほとんどのデーリッシュは荷車の中や、荷物を濡らさないように広げた雨避けの下で雨をしのいでおり、セリーンとミシェルだけが雨ざらしだ。

 雨が降り始めるだいぶ前から逗留地は静かになっていた。ミシェルが戻り、キーパーが召喚したディーモンが逗留地中を操っていたことが暴露され、デーリッシュたちの心に暗い影を投げた。歌声やお喋りは止み、戦闘の訓練はおざなりなものになった。その悲しい静寂の中、セリーンはデーリッシュについて、期待していた以上のことを知った。 

 彼らは五十人もおらず、森の中で子供や若者が遊んでいるのでもない限り、これから何年かの間で頭数が増える見込みはない。ここは数あるの部族の中のひとつであるとはいえ、危険を避けるため部族はお互い滅多に交流しないはずだ。ここの他オーレイには、数えるほどの部族しかないのかもしれない。
 ギャスパードが叛乱勢力として抱く恐怖、スラムに住むエルフたちが秘かに抱く希望。その両方を、これだけ少ない彼らの肩に背負わせるには酷であるように思われる。

 雨はセリーンの衣服もずぶ濡れにしていた。ミシェルの横で身体を丸め、ふたりとも精一杯体温を保とうとしている。あたりは暗くなりはじめたが、霧状のもやのため刻限はわからなかった。

 ブリアラは貴族のような優雅さで、何も気にしていないかのように逗留地に歩み入ってきた。衛兵たちを見てもおらず、制止されても無頓着な横柄さであしらう姿はセリーンの微笑みを呼んだ。

 セリーンが横たわっているところにやってきたブリアラは、彼らは雨宿りも許さないのか、と尋ねた。連中には別に懸念すべきことがあるとミシェルが答えたが、その裂けた唇と腫れた頬がブリアラをたじろがせる。
 セリーンが声を潜めてミシェルの発見を伝えると、彼女の訓練が行き届いているブリアラは、話し終える頃には頷き、大きな美しい目を閉じて考え込んでいた。 

 オーレイ中の迅速な移動。時と場所を自由に選ぶことのできる待ち伏せ。妨害されない秘密の兵站線。ディーモンはそれが封じられていると言っていたのか。ブリアラは、唇を読まれないよう衛兵たちに背中を向けた。
 ディーモンは目覚めさせる必要があると言っていた、とミシェルが答える。何らかの理由でデーリッシュが使うことを防いでいる、とセリーンが言った。

 ディーモンはエルーヴィアンの封印を解くことができるが、デーリッシュは「それ」の望むものを渡すことができない。セリーンは、そう告げるミシェルの声が恐怖で強張っていることに気付いた。彼女のチャンピオンは生きている相手との戦いは恐れないが、ヴェイルの向こうからやってきた化け物が相手となると話は違うようだ。彼の誇りを傷つけることのないよう、そのことには触れずにおくことにした。

 自分たちは「それ」の望むものを渡すことができるのか。ブリアラの問いかけに、ミシェルは黙って頷いた。考え込むブリアラの顔を伝う雨は涙のように見える。デーリッシュとの取引材料に使えるのではないかと言いかけたブリアラを、セリーンが遮る。
 デーリッシュに協力する気がないことは、今日存分に思い知らされた。彼らは自分たちの身柄をギャスパードに手渡すか、ここで殺すか決めようとしている。

 ブリアラが口にしようとした、デーリッシュを弁護する言葉は途中で立ち消えた。彼女自身もデーリッシュと時を過ごし、彼らがブリアラの民のことを気にもかけていないことに気が付いたのだろう。セリーンはそう推測した。

 セリーンは、キーパーとの話し合いのことを伝えた。エイリアネイジのエルフを救うとのセリーンの申し出に対し、彼はいっそオーレイの者たちが皆死んでしまったほうがましだと言った。ブリアラはしばらく反論しそうな顔つきだったが、やがて諦めて頭を下げた。
 セリーンが二人きりにするように告げると、ミシェルは彼の縛めが許す限り、荷車の別の端のほうに身を寄せた。

 ブリアラはセリーンの身体を腕で包み込んだ。雨粒がブリアラの黒髪と顔を打ち、衣服は濡れて灰色だった。エルフの耳は両側に広がり、先から雨水がしたたり落ちている。セリーンがこれまで目にした中で、もっとも美しい生き物だ。
 セリーンはブリアラに告げた。一緒にいた間ずっと、ブリアラは自分の民への便宜をしつこく望んでいた。彼女はハラムシラルでの行いのためセリーンに背を向けたが、ギャスパードに対抗するためエルフを犠牲にしたセリーンにそれを責めることはできない。

 凍えながら、セリーンは雨の中の荷車を見た。だが彼らはブリアラの民ではない。
 ブリアラが強く抱きしめ、わかっている、と答えた。
 彼らはブリアラと違い、エイリアネイジのエルフのことも気にかけていない。セリーンの言葉に、ブリアラが身震いするのがわかった。

 
「わかってます。ミシェルがディーモンに、エルーヴィアンを目覚めさせることができるなら、結局デーリッシュは私たちに協力を申し出るかもしれない。ディーモンが彼らを手助けしないなら、彼らには私たちが必要だから」
「わたくしたちに彼らが必要でしょうか?」
 セリーンは、ブリアラの身体が固まり、身を引くのを感じた。彼女はひるまず、ブリアラの目の奥を見据えた。

「私たちに彼らを裏切れと言うの?」 彼女は尋ねた。彼女の声からは何の感情も読み取れない。
「裏切りのためには、破られる約束が必要。彼らは自分たちを囚人にとり、命を脅かし、雨の中に置き去りにした」 セリーンは自分の声が寒さで震えるに任せ、ブリアラがその言葉にたじろぐのを見た。「彼らがあなたを、まるで長い間会えなかった姉妹のように手を広げて歓迎したと言うのなら、もう何も言わない」
 ブリアラは目を閉じた。

「もしそう言うのなら、わたくしも愛する者がその民を見つけたことを喜ぶつもりです。たとえ愛する者抜きで過ごす間、鼓動のたびに胸が痛むことになるのだとしても」
「私もです」とブリアラが囁く。
「ならば、わたくしとともにいなさい」 セリーンは縛られた両手でブリアラの繊細な顎の線を撫で、ブリアラは目を開けた。「わたくしがヴァル・ロヨーに戻るのに手を貸してくれるなら、エルフの民の自由を縛るあらゆる法を廃止して、あなたに貴族の身分を与えましょう」 セリーンは微笑んだ。「エルフの伯爵夫人に」

 ブリアラは息を呑んだ。「それはできない。貴族たちが」
「貴族たちは言い争い、取り乱し、自分たちの忠誠をどこに向けるかのゲームを続けてきましたが、わたくしの方が忠誠を勝ち取らなければならないと考えている彼らが、代わりにわたくしに何ひとつとして与えようとしないことに、わたくしはもう懲り懲りなのです。あなたの民はもっとまともな生活を送るに相応しい」 セリーンはブリアラと視線をあわせた。「貴族たちが恐れているのに反して、彼らのため戦おうとする声はデールズには見当たらない。彼らはアーラサンのエルフではない。彼らはオリージャン。彼らはわたくしの民なのです」 彼女はブリアラの肩を掴むと、優しく引き寄せた。「そして、あなたもわたくしのもの」

 ふたりのキスはゆっくりだが激しく、凍えて青くなっていた唇に荒々しく感覚を呼び戻した。ブリアラの両手がセリーンの腰を這い上がって彼女の顎を包み込むと、セリーンはふたりの身体の間に帯びる熱を感じ、その温かさが彼女の頬を流れ落ちる雨のことを忘れさせた。

 彼女が身体を離すと、ブリアラの顔も紅潮していた。「フェラッサンを探してきます」と彼女は言った。「私たちが注意を引く間、あなたたちは逃げ出してディーモンのところへ」
「フェラッサンは信用できるの?」
「きっと」とブリアラが言った。「私が説得します」

 彼女は立ち上がり、衛兵のほうを向いた。「私はフェラッサンに話がある。ふたりに毛布をあげなさい、この馬鹿ども。キーパーの話が済む前に死んだらどうする気なの!」
 セリーンの目にはヴァル・ロヨーで学んだとわかる自信満々の様子で、彼女が大股で歩いていく間、セリーンは笑顔を噛み殺していた。

 彼女が立ち去ると、彼女はミシェルのほうに向き直る。「聞いていましたか?」
「ふたりきりの話だと思いましたので」とミシェルが答えになっていない答えを返し、問いかけるように顔を見た。
「どう思いますか?」
 彼は微笑みを取り繕った。「必要とあれば、いつでも戦う所存です、陛下」
「戦って勝つと?」
 彼はゆっくりと両肩を広げて顔をしかめた。「奴らの戦がしらに助太刀をつけろという陛下のご命令さえなかったのであれば容易ですが」と彼は厳かに言った。「ともあれ、何とかいたします」

 ディーモンの話のときと同様、彼女のチャンピオンには誇りが必要だった。彼女は微笑み、それを損なわないようにした。「その命令を撤回いたしましょうか、チャンピオン」
「いえいえ。エルフどもは、またしてもヒューマンが裏切って、汚名を上塗りしたと騒ぐでしょう」 ミシェルはにやりと笑い、衛兵たちのほうを見て声を潜めた。「いつ、始めるのですか?」
 セリーンは雨の中に目をやった。「彼らが死に始める頃でしょうね」

***

 ラヴシーンは、ラヴシーンである以外に意味がないので、省略してしまえば丸ごとなくなるし、要約したら意味がわからなくなる。そして、セリーンとブリアラの間のラヴシーンはここまでも結構多い。

 最後の一行のセリフは、"Most likely when people start dying."

 気にし過ぎかもしれませんが、「人」、「人々」とやると「ヒューマン」で、「デーリッシュ・エルフ」のことじゃなくなるんじゃないかと思ってしまうのです。「彼ら」で逃げてニュアンスまで違っちゃいましたね・・・。「人が死に始める頃」のほうが、まさに「他人事」(ひとごと)であることがばっちり通じたはずなんですが。

 

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