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2014年5月29日 (木)

The Masked Empire 11(3)

 少しずつでも前に進む。

***

 セリーンは、午後早い時間にエルフの癒し手に起こされ、他の者たちはデーリッシュの逗留地をうろつき回っていると告げられた。まだぼんやりした頭のまま身体を起こしてその場に座ると、剣を手にした衛兵たちから、彼らのキーパーと話をするよう促された。彼女は、ミシェルと、そしておそらくブリアラも縛りつけられていると思っていた。自分だけが縛られているのは、彼女の人質としての価値をデーリッシュが認めているためのようで、幸先が良いとまで言わなくとも、まずまずの出だしだ。

 セリーンは今、まだ痛む頭で、衛兵たちに囲まれ、キーパーと他のデーリッシュの長老たちの前に座り、自らの命を交渉の場に供していた。ブリアラとミシェルの居場所はわからなかったが、弱さを見せるわけにはいかず、尋ねることはしなかった。

 ギャスパードが打倒されれば、デーリッシュがオーレイで尊敬を集めることになるよう制度を整えるつもりであり、オーレイはエルフの知恵を学ぶことを楽しみにしている。すでに大学にはエルフが入学しており、エルフの民が訪れることは歓迎されるだろう。
 だが、ギャスパードと戦う力はお前にはない。セリーンの言葉に、古の竈の女あるじが、疑念に満ちたしゃがれ声で言い返す。それでも我々の手助けができると思うのか?

 力は、雪玉が丘を転がるように積み重なっていく。セリーンは自信を持って答えた。何も女帝自身のため、ギャスパードと戦えと求めているのではない。ギャスパードより前にヴァル・ロヨーまで帰還する手助けさえしてくれれば、ギャスパードがセリーンと対抗することはできず、謀叛は粉砕され、彼は処刑されるだろう。

 そしてお前が約束を平気で破るに任せる、お前の前に約束した他のヒューマンたちのように。そう言う戦がしらを、キーパーが手振りで黙らせ、代わりにこう言った。お前が敵の兵士の間をすり抜けるため我が民の命を危険に曝し、見返りに何を寄越す気だ。お前たちの建物に訪れる機会だとでも言うのか。

 セリーンは喉が渇いていたが、慈悲を乞えば論争の立場を弱めることになるのもわかっていた。キーパーに何か望みがあるなら、提示してほしい、そう言いかけた彼女の言葉を遮るように、戦がしらが叫び、拳を後ろに引きながら、前に進み出てきた。お前らは、この大地の上に存在していた中でも、最も偉大な帝国を破壊したのだ。さらには、我らの民がテヴィンターから自由を取り戻すためアンドラステに与したとき、お前らは再び裏切った。

 彼女は男の怒りに怯みもせず、キーパーの方を見て言った。この話し合いで過去を変えることはできないが、何か望みがあるなら言ってほしい。
 キーパーは、セリーンが何も理解していないと言い返し、再び戦がしらに手を振って下がらせた。お前は理屈を通して尋ねているが、我々の歴史全部が、我々に対するヒューマンたちの裏切りと侮辱に満ちているのだ。ヒューマンは土地を、文化を、不死の命さえ奪い去った。 

 そして、デーリッシュは、絶好の機会が膝の上に転がり込んできたことに気が付かない、と言って、セリーンが戦がしらを、それからキーパーを睨み付けた。今こそ償いを求めるべきだ。オーレイの街々のエルフたちの立場を良くしたいのか、デーリッシュの移住の自由を欲するのか。居並ぶ者たちの無表情な顔つきを見て、彼女は博打に出た。ハラムシラルの名誉ある領主の身分と、周辺の土地を欲するのか。

 博打は外れた。エルフたちが身を引き、顔の刺青は嫌悪に歪んだが、彼女にはその理由がわからなかった。名誉ある領主の地位。戦がしらが鼻を鳴らす。

 お前たちの性根が我らを汚す、とキーパーがゆっくりと言った。エイリアネイジの哀れな生き物たちをエルフと思っているようだが、我らにとっては永久に失われた従兄弟たちに過ぎない。部族の中には、勢力を増すため、または迷える彼らを憐み、何人か受け入れるところもあるかもしれないが、彼らは我らの民ではない。わかるか、シェムレンの女帝。協力関係を結んで、我らをハラムシラルに居座らせ、シェムレンの商人たちや、古のエルヴェナンのことはすっかり忘れた平ら耳の農奴たちと交わらせ、お前とヴァル・ロヨーのお前の玉座に跪かせようというのか。彼はかぶりを振った。お前とギャスパードが殺し合い、オーレイのすべてのヒューマンが戦のために死に、すべてのエイリアネイジが焼け落ちたとき、その時こそ、我らはハラムシラルに戻るだろう。

 セリーンは衝撃が顔に出ないように平静を装った。では何故、自分たちは話し合いをしているのか。
 阿呆のフェラッサンがお前たちを連れて来たからだ、シェムレンの女帝、と言ってキーパーは顔をしかめた。エルフの民は、三本の木の道のどれに従うべきか決めなければならない。お前たちに形だけの協力を与えて、形だけの見返りを得ることを願うか。同じことを願い、お前たちをギャスパードに差し出すか。あるいは、ここで殺して屍を焼き、お前たちが生きているより死んでいるほうが、ヴァーネーンの部族に災いをもたらさずに済むことを願うか。

 しばらく続いた沈黙は、逗留地の縁から聴こえて来た叫び声で破られた。キーパーと長老たちがその方角を見やる間、セリーンはできるだけ冷静を装って座り、考えをまとめようとしていた。頭痛は鈍いが消え去ることはなく、彼女の機転はいつもよりものろかった。

 彼女はオーレイの女帝である。礼装も、宝石も、軍隊もないが、それらは問題にすべきことではない。彼女は「ゲーム」に二十年間勝ち残ってきた。だがエルフのゲームのルールは異なっており、急いで覚えなければ、ギャスパードが始めたことを、彼らはあっさり達成してしまうだろう。
 それは許されることではなかった。

 どういうことだ。戦がしらが叫んだ。何故、やつは逃げ出したのだ。セリーンが見ると、傷まみれで流血しているミシェルが、偵察たちの手で逗留地の中に引きずられてくるところだった。

 尋問のためか、協力して一斉に脱走する危険を避けるためかわからないが、セリーンは、ミシェルとブリアラが逗留地のどこか別の場所に囚われていると思っていた。
 ミシェルは逃げ出したのか、とセリーンが尋ねる。フェラッサンの飼い猫ですら歩き回らせるべきではなかったのに、シェムレンの戦士を野放しにするはずがない、と戦がしらが言って、セリーンの傍らを困惑した顔つきで見つめていた。
 自分が起きたときには、彼はいなかった。セリーンが言い返す。責めるべきは、縛られた囚人が逃げたことに、何時間も気が付かなかった見張りの者たちのほうではないのか。

 逃げ出したりしていない、とミシェルがかすれ声で叫ぶ。自分は女帝の側を離れたりしない。戦がしらが彼の髪を掴み上げて、ではどういうことだ、と問い質した。
 魔法に操られた。そう言ったミシェルが戦がしらを睨み返す。同様に操られた衛兵たちが彼の縛めを解き、気が付いたときには、中にディーモンが立つ石の輪の近くにいた。

 セリーンが見つめるキーパーの顔が青ざめ、その蒼白さに反して刺青がどす黒く染まった。恐怖の顔つきだ。たとえその理由が、メイカーよ許したまえ、ディーモンのせいであったとしても、恐怖が果たす役割はヴァル・ロヨーの宮廷と変わらない。

 何か誤解していたことでもあるのか、とセリーンが無邪気を装って尋ねた。
 キーパーがミシェルを縛るように命じると、偵察たちが彼を地面に押し倒し、衛兵たちが手足を縛りつけた。
 ミーリス、来い、檻を確かめなければならない。それ以外言葉を発せずにキーパーが去り、セリーンの看病をしていた若い癒し手が駆け足でその後を追った。
 彼女の姿が見えなくなった。

 残った他の者たちは、蔑視と恐怖の顔つきでセリーンとミシェルを見つめており、しばらくの間、セリーンは自分がその場で殺されてしまうのではないか、またしても計算違いをやらかしてしまったのではないかと悩んでいた。
 何が起きたのか教えなさい、と彼女が言った。彼女が目配せするとミシェルは小さく頷いた。自分たちに対する扱いは許容できないものであり、説明を拒むと言うなら・・・。

 黙れ、と言った戦がしらが長老たちの方を向き、このふたりは自分が相手をすると告げた。彼らは頷き、怒りと恐怖の顔で振り向きながら、ふたりの元を立ち去った。残ったのはひとりきりだが、一番はじめから彼女の言い分を認めようとしていない男だった。

 お前は、我らの民を魔法で危険に曝したのだ、シェムレン。戦がしらはミシェルに言った。拳を握りしめ、激昂した顔は赤く、顎を引くたび、刺青が脈動しているように見えた。
 お前を生かしてはおかない。

 偵察どもに自分を何時間か殴打させてからでなければ、貴様が勝つ望みはない、と血だらけの唇でミシェルが告げた。セリーンが咎めるような顔を向けたが、ミシェルはその視線を受け止め、しばしの後、彼女も理解した。エルフの戦がしらは、どんな服従の印も弱さの顕れと見なし、今彼に弱さを見せることは、殺されることを意味する。

 彼と戦うときは、サー・ミシェル、何人か助太刀をつけさせてあげなさい。それでようやく互角の戦いになるでしょう。彼女が言った。
 戦がしらはふたりを睨みつけると大股で歩き去り、衛兵たちはふたりの方を不安げに見ながら、セリーンを見張ることができるくらい近く、だが自分たちの声が聞かれないくらい遠く距離を置いていた。彼らの手が素早く、密かに、苛立たし気に動いて場所を変えるのを見て、レディ・マンティロンの談話室でそんなことをすれば、あからさまな恐怖を示したことを笑い飛ばされたであろうと、セリーンは思った。 

 ミシェルが静かに、先ほど会話をセリーンに断りなく勝手に進めたことを謝罪する。セリーンは、ミシェルのほうが正しかったことは自分でもわかっているだろう、と言い返すが、彼は、女帝の意見を覆したことにはいかなる言い訳も許されないと、ばっくり傷を開けた唇で小さく笑った。

 殺されるところだった、とセリーンがつぶやく。ミシェルが何を見つけたのか知らないが、少なくとも自分たちが命拾いする役には立った。
 そのようだし、彼らにとってもそうかもしれない、とミシェルが答える。驚きのため跳びはねそうになったセリーンが、魔法なのか、と尋ねる。

 まさしく、と言ってミシェルは声を潜めた。エルフはディーモンを召喚した。古代の魔法の鏡を甦らせ、オーレイ全土を誰にも気づかれずに旅するつもりだ。それら鏡は、何世紀もの間にわたり、魔法によって防護されてきた。
 セリーンの身体は凍り付いた。ヴァル・ロヨーに無事戻ることができる。 
 それだけではない。偵察や小部隊を極秘裏に移動させることができる。ミシェルが言った。ギャスパードに不意討ちを仕掛け、情け容赦なく打ち倒すことができる。

 セリーンはゆっくりと微笑んだ。では、今大事なことは、エルフたちに殺されないようにすること。
 デーリッシュの元を訪れたのは、結局のところまったく無駄ではなかったようだ。
 優しくパラパラと音を立て、この秋初めての雨が降り始めた。

***

 キーパーの一番弟子、「ファースト」の名は"Mihris"。アラブ系に多い名前のようですが、「ミーリス」でしょうかね。

 書き忘れていましたが、「戦がしら」は"warleader"、「竈の女あるじ」は、"hearthmistress"。

 「キーパー」、「ファースト」はカタカナで、どうして他は古風な和式かというと、ゲームに登場したほうはカタカナになっていただけの話。個人的好みはカタカナですが、「ウォーリーダー」はともかく、「ハースミストレス」はちょっと日本語の中で使うのは無理でしょう。

 デーリッシュ以外の、すなわち古のエルフの教えに従わず、もっぱらヒューマンの世界で生活するエルフのことは"flat-ear"で「平ら耳」。ひとりを言うときは"flat-ears"とは言わないようで。 

 さて、DAシリーズではおなじみのエルーヴィアン(Eluvian)。DAOに何度か登場し、Witch Huntで重要な意味を持ち、DA2ではメリルが甦らせることに没頭していたあの鏡。
 DAIにも思いっきりつながりそうなネタですね。単純なファスト・トラックの仕掛けにはしないでほしいが、なんかしそうだな(笑)。

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