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2014年5月28日 (水)

The Masked Empire 11(2)

 DAプロデューサーのキャメロン・リー氏Twitterによれば、DAI開発フェイズはアルファに移行したそうな。E3(6月10日ー12日、LA現地)がえらいことになる、とのたまっております。

***

 シェムレン、とミシェルの前に立つエルフの戦(いくさ)がしらが冷笑を浮かべて言い、仲間ににやりと笑いかけた。
 ミシェルは荷車のひとつの傍に縛りつけられている。セリーンは近くの地面に敷かれた毛布の上に横たわり、杖からメイジのアプレンティスと見て取れる若い娘の看護を受けている。昨夜より顔色は良くなっているが、昨夜の様子をよく見たわけでもなかったのかもしれない。落下して傷を負った彼女の頭皮は縫い合わされ、エルフの娘が治癒の魔法で炎症を抑えていた。彼女は彼に一言も喋らず、セリーンの身体の上に覆いかぶさり、冷たく白い光を両手から発しており、それがミシェルの肌に虫唾を走らせている。
 エルフの戦士たちはもちろんミシェルに話しかけてきていたが、その語彙は限られていた。

 シェムレン、と再び彼らのかしらが言った。大男で、肩幅が広く、ずっと剣を振ってきたことを示す太い腕をして、ここにいる者たちの中でもっとも年長であった。ここでお前らのような者がどのような目に会うかわかるか、と彼は言って考え込むふりをした。エルフたちが急いでいれば、腐った水にあたった狼のようにその場で射殺(いころ)す。数日ほど時間があれば、「フェンハレルの歯」と呼ばれる遊戯の獲物として駆り出される。

 戦士の何人かが笑ったが、一番若い者は森の方にぎこちなく目を向けた。
 獲物は服を剥ぎ取られ、両手を縛られ、腰から下だけにぴっちりと張り付く固い革のズボンをはかされる。それにはいくつもの小さな釘が打ち付けられている。追手たちは百数える間だけ待ち、その後獲物がどれだけ長く逃げ回ることができるかを楽しむ。一歩進むごとに釘が足の肉に深く刺さっていく。

 自分の足跡は貴様たちを焼き焦がすから、自分には手を触れることさえできないに違いない、とミシェルが顔色一つ変えずに言った。
 不意を突かれて瞬きしていた戦がしらは、気を取り直して言った。キーパー・テルヘンが必要なものを手に入れたら、お前は手を触れられるだけでは済まないのだ、シェムレン。シェムレンという言葉を使うたびに男を間をあけ、ミシェルが頭に来ているかどうか確かめた。剣で一突きされていてもそうするのかどうか、ミシェルは後々のために覚えておくことにした。

 どのみち、戦がしらは失望させられるだけであった。その言葉が発せられるたびにミシェルの微笑みは増していく。
 貴様らの首領が欲するものを手に入れるまで、縛られた相手に虚勢を張るつもりか、とミシェルが尋ねる。自分がよほど弱っているのでもない限り、子供たちでも脅すか、森に向かって叫んでいたほうがましだろう。

 戦がしらはフェラッサンから、ミシェルがシェヴァリエ、シェムレンの偉大な戦士だと告げられていた。本当の剣の達人の腕前を見せつけるべきかもしれん、と彼は言った。荷車の傍で子供たちが棒切れで遊んでいるあれのことか。ミシェルが顎を突き出して、剣の訓練に勤しんでいる戦士たちの方を示す。貴様が稽古をつけさせている男は横に動くときに足を引きずる癖がある。実戦なら、心臓の鼓動三回もしないうちに足を斬り飛ばされる。ミシェルの言葉に、戦がしらも他の者たちも思わずその方向を見た。稽古にもっと時間を費やすべきだし、そもそも貴様は自分自身の欠点に気が付いていないのではないか。

 部族を侮辱した、と戦がしらは片手をあげた。その癇癪を抑えることができず、主人の言いつけを守れないなら、むしろ貴様自身が部族を貶めることになる、とミシェルが言う。貴様の血も、歴史も、暮らしぶりも侮辱はしていない。ただ、無礼を働くゴミくずのくだらないメンツを馬鹿にしているだけだ。

 それも同じことだ、戦がしらがミシェルの顔を強く殴った。ミシェルの視界が再び鮮明になると、エルフはまた笑っていた。身の程を知れ、シェムレン。彼は戦士たちのほうに振り返って見張りを言いつけ、怪しげな素振りをしたら殺せ、と命じた。
 戦がしらが荷車に戻ると、他の戦士たちが見張りについた。

 待つ間、ミシェルは楽な姿勢を取った。しばらくしてからは、身体が鈍らないように筋肉の鍛錬を存分にこなした。一番若い戦士がそれに気づいたが、何も言わなかった。
 任務も、責務もなく、彼はチャントリーの中で瞑想するときのようにくつろいでいた。意識を彷徨わせ、逗留地の中の動きに目を向ける。昼餉の支度をする料理人たち、野菜と香料を混ぜ合わせた野生ウサギのシチューと、三十ヤード離れていてもそれとわかる農奴のパン。小麦と、塩と、獣脂をほぼ等分に混ぜ合わせたもので、食糧に乏しい冬には、農奴の身体を肥えさせる唯一のものと言ってもよい。

 ミシェルがそれを最後に口にしてからかなりの年月が経っていた。年老いたエルフの女性がその一切れに蜂蜜をかけており、彼の母親がミシェルの分にだけほんの少し、働いている酒場からくすねて来た砂糖をかけてくれたことを思い出した。口の中に唾が溜まり、彼は目を背けた。

 若い戦士たちは、剣の稽古を終えて弓を手にしていた。狩人たちがウサギやシカの獲物を手に戻ってくる。長い時間が経つと、ミシェルはこの逗留地が、想像していたようなナイフ耳の盗賊で一杯の洞窟などではなく、まるで軍の幕舎のように手際よく運営されていることを認めざるを得なかった。エルフは誰もが忙しそうで、目的や任務をもって動いており、軍の野営地と異なることには、彼が召使いと見なしていた者たちが、狩人や衛兵たちより低い扱いを受けている様子もない。彼らは身分に関わらず幸せそうに呼び合い、家族のように挨拶をかわし、からかい合っている。 

 ミシェルは、自分の身体を揺さぶる楽曲がいつ始まったのかはっきり覚えていなかったが、そのゆったりとしたくつろぎが、座って逗留地を眺めていた彼を滑らかな調子の中に引き込むのを感じた。その調べには源も旋律もなく、正しくは音色すらなかった。ただ心地よく、まどろむような、まるで子守唄でうたた寝を誘われるような感じがしていた。心のどこかでは、逗留地の他の者たちもその目に見えない調べに捉われて歩き、動きまわっていることに困惑していたとはいえ、心の他の部分では穏やかに満悦した気分だった。

 完璧に自然な様子で、ひとりの戦士が彼の身体に覆いかぶさり、ミシェルの縛めを解いた。戦士の目はうつろで、彼だけが目にする何かを安寧とともに見つめている。他の戦士は見えないものに微笑みかけ、ゆっくりとした調子に乗せて、身体を左右にのんびり揺さぶっている。

 ミシェルは、恐れも躊躇もせず立ち上がった。セリーンの看病をしている癒し手は、ひとり鼻歌を口ずさみながら坩堝で薬草を混ぜている。戦士たちは調子に合わせて膝を両手で叩いていた。自分たちが見張っているべき戦士が立ち上がっても誰一人気にかける様子もなく、ミシェル自身も気にさえしていなかった。彼の心の奥底の声は、剣を手に取れと警告の叫びを発していたが、彼はそれを無視して、自分が囚われていた荷車から静かに歩み去った。
 歩くにつれ、彼は恐れを抱くことなく衛兵たちに背を向け、癒し手の口ずさむ鼻歌の調子に歩調を乗せていた。逗留地の端にいたエルフの偵察たちも彼を気にする様子はなく、ひとりは癒し手と同じ旋律の口笛を吹いていた。

 逗留地を出る径は森の中に続いていた。ミシェルはその旋律が曲がりくねった小路を自分を導くのに任せて気軽な歩調で進み続け、緩やかな斜面を降り、木々の生えない小さな空地までやってきた。 

 そこはまるでメイカーが空地を作るため、そこだけスコップで地面を抉り取ったような場所で、おそらく差し渡し百ヤードほどあるだろう鉢状の切れ込みになっていた。鉢の真ん中には輪の形になるようにいくつも石が並べられており、午後の陽ざしの中で、刻み込まれたルーンがおぼろに輝いている。石の輪の真ん中には、黒っぽい外套を纏ったヒューマンの男の姿があった。彼の背は低く、頭は禿げかかっており、細い黒ひげを生やし、ビーズのように小さくて丸い輝く瞳をしている。
 彼は口笛で調べを奏でながら、指を鳴らし、足踏みして拍子をとっていた。

 ミシェルが石の輪に足を踏み入れようとした直前、最寄りのルーンが閃光を発した。
 蜘蛛の巣が破られるように楽曲が消え、ミシェルは身震いして両膝をついた。まるで深い眠りから目覚めたら、自分が会話の途中であったことに気がついたような感じだ。全てのものが鋭く、鮮やかに見えた。ミシェルの両手の下の草は冷たくてすべすべしており、まるで地面が捻じれているような感じがした。

「ひとつ、笑い話でもどうだい?」 石の輪の中の男が尋ねた。その軽やかな語り口は、セリーンの宮廷で下級の貴族が用いるようなものだった。
 ミシェルの全身は震え、歯は狂ったようにガチガチと鳴っていた。筋肉をこわばらせ、シェヴァリエが薬物や魔法と戦うために用いる、意識集中の鍛錬に無理やり身を委ねる。「何・・・、何だ・・・」

「サー・ミシェル・デ・シェヴィンが酒場にやってきました」 石の輪の中の男が言った。「バーテンが彼を見て言いました。『悪いが、うちにはエルフの食い物はない』 サー・ミシェルが言いました。『構わんよ。どのみち、奴らの肉はろくな味がしない』」男は長く、激しく笑い続けた。

「拙者に何をした?」 ミシェルは苦労して立ち上がり、ただ立っている愚を犯すことなく戦いの構えを取った。足の下では地面がまだ揺らいでいたが、意識集中の鍛錬は役に立った。平板でゆっくりした呼吸を整え、全身から噴き出す冷や汗は無視した。

「衛兵たちを惑わせ、忌々しいナイフ耳どもの縛めから君を解き放った」 石の輪の中の男が愉快そうに言った。「それもすべて、施しのため」 男は頭をこくりと下げた。「ああ、具体的にかね? フェイドのちょっとした芸当で、回りの者たちが君のことを気にかけないように啓発したのだ。面倒な立場から逃げるときに役立つ。女性の裸を眺めるときも、いや」 彼は付け加えた。「やったことはない。それはいけないことだろうから」

 ミシェルは男を見て、石の輪を見た。「貴様、ディーモンだな?」
「スピリット」 男が言い、にこやかに笑った。「イムシャエルとお呼びいただこう」
「なぜ?」
 イムシャエルは、それが男の名前だとしたら、微笑んだ。「まあ、何か呼び名はいるだろう」
 ミシェルは睨み付けた。「なぜ、拙者をここに連れて来た?」 
「君を連れて来たのは、私も君も似たような問題を抱えているからだ」 イムシャエルは前に進み出て、石の輪の縁まで近づくと薄ら笑いを浮かべた。「我々ふたりとも、どこかに行き、誰かになりたいのだが、そうできない」

 ディーモンは草の上を歩いても足跡を残さない。彼の黒い外套は上品に仕立てられ、黒いブーツの留め金は輝いている。
「貴様のようなともがらの話は聞いている」 ミシェルが言って、昔聞いた物語の記憶を呼び覚ました。「貴様は欲望のディーモンだ」

選択のスピリット」 イムシャエルは決して笑顔を絶やさない。「私が欲望のディーモンに見えるかね? 服を脱いで、すけすけの衣装でも身に纏えと?」 ミシェルが睨み付けると、ディーモンはため息をついた。「スピリッツにも色々いるのだ、若いの。愛のスピリット、名誉の、武勇の、正義の・・・」 彼は上の空で手を振りながら、石の輪の縁を歩いた。「そして、そう、また憤怒も、貪欲も、傲慢も。我々は皆、ヴェイルを通り過ぎるとき、こちらの世界との何らかの繋がりを抱いている」

 ミシェルは輪の外側を、ディーモンに歩調を合わせながら歩いた。ディーモンから受けた影響が何であれ、彼の身体はそれから概ね回復していたが、まるでちょっとした鍛錬を終えた後のような、ほぐれた四肢の震えは残っていた。彼の足の下では、黄色の秋の草が踏みつけられている。「そして、貴様がここにいる目的は何だ?」

「何もない、今回は。あの忌々しいエルフどもが、私をこの輪の中に召喚したのだ」 イムシャエルは、通り過ぎがてら石の一つを拳で叩き、弾けたエナジーの閃光が彼の手に突き刺さると顔をしかめた。「ここに囚われた。ここから出ることもできず、フェイドに戻ることもできない。自分の力を用いることさえできないのだ」
 ミシェルは彼の周囲の者全ての心を操った楽曲を思い出した。「逗留地丸ごとを相手に力を用いたではないか」 
「何、あの芸当か?」 イムシャエルは気取った笑いを浮かべた。「よしてくれ。私のは、もう少しばかり・・・、大きな結果をもたらすものだ」

 ミシェルはしばし黙り込み、諦めて尋ねた。「なぜ彼らは貴様を呼び出した?」「彼らは、彼らの歴史の断片をもう一度手に入れる手助けを私に求めている。歴史には通じているかね、サー・ミシェル?」

「そうでもない、ディーモン」 ミシェルは歩き続けている。
「いいかね、君はハラムシラルが古いエルフの首都であると考えているが、それ以前、テヴィンターの若僧たちが悪ふざけをする前、エルフたちが故郷と呼んでいた、ずっと偉大な土地があった」
「アーラサン」

 イムシャエルはにやりと笑った。「ああ、愛するエルフの母親から、スラムで教わったことを、君はちゃんと覚えているじゃないか!」 ミシェルに睨み付けられ、彼は許しを請うように両手を掲げた。「すまん、すまん。君たち定命の者たちは、頭から漏れ出る考えに触れられると、いつも気に障るのだった。そう、アーラサン。だが、それですら古の帝国の首都に過ぎない。全てが、オーレイも、フェラルデンも、それから西のありとあらゆるところが、エルヴェナンの一部だったのだ。だから、オーレイのほとんどどこであっても、十分深いところまで掘り返してみれば、高貴なエルフの亡骸が葬られた古い墓陵に行き当たる」 イムシャエルは目を細めた。「そして結局のところ、そうした墓陵のほとんどがエルーヴィアンで互いに繋がれている」

 ミシェルは足を止め、ディーモンに顔を向けた。「オーレイの地下に秘密の通路があるというのか?」
 イムシャエルは鼻を鳴らした。「秘密の通路? そうではない、若いの、ドワーフではないのだから。エルフはあまり歩かなかったのだ。エルーヴィアンは魔法の鏡だ。そのひとつに踏み入れば、どこでもない場所をほんの少し旅することで、馬でも数日は要するくらい離れたどこか別の場所に出てくることができる」 ディーモンは再び別の石を叩き、指先に突き刺さるエナジーの閃光に顔をしかめた。「古のエルフの魔法。常に敬い給え、古のエルフの魔法を」

「そして貴様は、それらを旅のために用いる」 ミシェルはディーモンをまじまじと見た。これは罠だ。必ず罠が仕掛けられている。若者がディーモンと取引をすることになるどの物語でも、必ずディーモンが罠を発動させる。
 鍵となるのは、若者がその罠を逆手にとってディーモンをやり込めることができた物語もいくつかある、ということだ。

「そう、君たちはそれを旅に用いる。君は聞き上手だな。ジェイダーからヴァル・ロヨーまで、望むなら陽の光を目にすることなく旅することができる」 イムシャエルは立ち止まり、ミシェルに視線を投げた。「余計なことは考えるなよ、シェヴァリエ。極めて古い種類の危険な魔法であるし、呪文の中にはただ単に君を焼き焦がしてしまうものがあるかもしれん。君がその地下で魔法の剣を手に入れることなどあるとも思えん」 再び歩き出した彼は、依然として足跡を残していない。「ともかく、エルーヴィアンは君の仲間がハラムシラルを占領して以来、用いられずに眠ったままだ。我らが友であるキーパーは、私にそれらを目覚めさせようとした」

 ミシェルは追い付くため歩調を早めた。「では何故、彼の望みどおりにしない?」
「私のことを深く慮ってくれているのかね? そいつはじんとくるね」 イムシャエルは微笑んだが、すぐに歯を剥き出しにした顔つきに変わった。「彼は私が必要なものを手渡すことができない。憤怒のディーモンは怒りを糧とする。傲慢のディーモンは、毎朝人々が鏡を見るときに用いる妄想を食する。そして、私には選択が必要だ。テルヘンはエルーヴィアンを目覚めさせることを欲しながら、それ以上のことは何もない。彼は彼の行いの影響を手渡そうとしない。この意味がわかるかね?」
「わからん」
 イムシャエルはほくそ笑んだ。「正直な男だ。まあ、概ねは。私のため定命の者をひとりここに連れてきて、そこにある忌々しい石のひとつの上にその手のひらから血を滴らせてくれたのなら、サー・ミシェル・デ・シェヴィンの物語を真実に変えてみせる。私が君にそう言ったら、どうするかね?」

 ミシェルは瞬きをした。「どうやって?」
 「君の後援者であったブレヴィン侯爵が偽造者に金を積んだやり方よりも、ずっと巧妙な方法で」 イムシャエルはにやりと笑い、彼のビーズのような瞳が、老いた者の笑い皺に囲まれた中で輝いた。「いくつかのスピリッツたちがいくつかの夢の中で囁く。いくつかの文書は自分の行いを決して覚えていない者たちの手で改竄される。次にギャスパードのバードの誰かが掘り返したところで、彼女が見つけるのは、ミシェル・デ・シェヴィンが正真正銘自ら名乗る身分の男であり、現に生きている者たちが、高貴かつ正直で、一点の曇りなくヒューマンの生れであるところのサー・ミシェル、君と一緒に育ってきたことを覚えていると、悲しくも不在となられたメイカーに誓うのだ」

「そして、見返りは?」
「私はこの忌々しい輪っかから外に出て、石に血を滴らせた者の身体の中で生きていく」 イムシャエルは深く、楽しそうに息を吸った。「私が最後にこの世界を眺めてからしばらく間が空いた。少し見て回りたいと思っている」
 ミシェルは立ち止まり、怒りとともに歯を食いしばった。「貴様は拙者に、どこかの哀れな生き物に貴様を憑依させ、呪われた存在に変えろというのか?」
「そう」 イムシャエルが彼のほうに振り向くと、ディーモンの顔は笑顔のままだったが、その瞳は燃え上がっていた。「あまり心地よいものではないだろうな? だからこそ、選択なのだ」

 ミシェルは踵を返し、また歩き始めた。彼は自分の前の足跡を見て、すでに石の輪を一周していたことに気が付いた。「ここで貴様を叩き潰すべきだろうな」
「そこらのルーンを二つばかり壊せばよい」 イムシャエルは歩調を変えずに言った。「もちろん、君は残りの人生全部を、いつか誰かが正体を暴くのではないかと覚悟しながら生きることになる」
「拙者は拙者が誰かわかっている」 ミシェルはそう言って、空地と、ディーモンを後にした。

 逗留地の縁にいる偵察たちは、彼の姿を見かけて飛び上がった。彼らの弓が見事な手際で掲げられ、狙いをつける間ですら、警告を発する叫び声をあげた。彼らの目は見開かれ、途方に暮れており、本当であればミシェルが縛りつけられているべき逗留地の一画を振り返って一瞥を送った。

 ミシェルは両手をあげた。「降参する」 彼は言った。「女帝陛下のところに連れて行ってくれ」
 しばしの間、彼はただ単に射殺(いころ)されるのではないかと思っていたが、視線を交わした彼らは、代わりにミシェルのほうに近づいてきた。ひとりが残って引き続き弓を構え、他の者たちが彼を掴んで、地面に引きずり倒した。

 彼は不平一つ言わず罵倒と、殴打や足蹴りに耐えた。そうすることでセリーンの元に連れ戻されるのであれば、御の字だった。
 彼は、彼女がオーレイを奪還する手段を知ったのだ。

*** 

 いいっすねえ。ディーモン登場。俄然やる気が出てきますねえ。Asunderに続いて、召喚されたはいいが結界から外に出ることができず、異界にもどることもできず、悶々とするという定番、お約束のディーモンのネタ。過去のヴィデオ・ゲームにも数限りなく登場してますねえ。

 「選択のスピリット」と詐称するディーモンが「私の力はそんなもんじゃない」とうそぶくところ。"My power is a bit more ... consequential."と言っているのですが、「重大な結果を招くもの」という感じですね。そして「選択のディーモン」は、"consequence"、選択(行為)の結果、帰結、影響を求める、と言い放っております。DAシリーズの楽屋落ちみたいなもんですかねえ。

 なぜかディーモンの名前は聖書風というかユダヤ風なんですね。Ishmael だと、これは聖書に登場するイシュミエル(イシマエル)で社会の敵。上に登場するのはImshael。DA2には名前だけ登場していました。「イムシエル」のほうがもしかしたら発音近いかもしれませんが、DA2ではCODEXのみで、読み上げられたわけでもないでしょうから不明。素直に「イムシャエル」にしときました。 

「意識集中の鍛錬」は、"centering exercise"で、現代ではどうやら意識を集中させる(自分を世界の中心に置く)怪しげな?精神鍛錬法を言うそうですが、シェヴァリエの訓練ではどんなのだろう。centeringには「せり枠」(アーチのてっぺん)の意味もあって、そこでもバランスを崩さず活動することかなとも思いましたが、わかりにくいし、違うだろうから直しました。

 ジョークはねえ・・・。本邦某有名コメディアンが、「コメディーは(国ごとに)ローカル」とのたまっていましたが、あちらのコメディアンも似たようなことを言っていた。難しい。

 ディーモン(イムシャエル)のジョーク。原文だとすっと意味が分かる。私の訳で通じるのかどうか。

 Sir Michel de Chevin walks into a tavern. The barman looks at him and says, "We don't serve elves here." Sir Michel says, "Fine with me. There's no good meat on them anyway." 

 ジョークの分析は野暮。"serve elves"には二重の意味がある(ダブル・ワーディング)というネタであるとだけ申しておきましょう。

 類似品には、こんなのがある。(英語が苦手な)某国民をバカにしたエスニック・ジョークですので、ぼやかします(というか英語も○○人の部分も、かなりインターチェンジャブルなのですが)。 

 男が酒場に入ってきて、○○人を茶化した新しいジョーク仕入れて来たぜ、と満面の笑みで言う。
 バーテンが男に言う。「いいか、言葉には気を付けろ。俺も、隣のこいつも、それからそこに座ってるお客のそいつも皆○○人だ。」
 「わかってるって」 男がにこにこしながら言った。「ちゃんとわかるように、すごいゆっくり喋ってやるからよ」

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