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2014年5月26日 (月)

The Masked Empire 11(1)

 また固有名詞で悩むことになるところ。

***

 第十一章

「恐るべき狼の名に懸けて、どうして連中を連れて来た?」 
 テルヘンという名のデーリッシュのキーパーは、中年のエルフの男性だった。背負っている赤く輝く杖は、昨晩仲間の矢に点火したものだ。刺青の下の顔は疲労のため皺深く蒼ざめ、髪は銀色になっていた。ブリアラには、もしかしたら優しい顔に見えたかもしれないが、彼はこの朝、デーリッシュの逗留地の真ん中で、憤怒で顔を真っ赤にしてフェラッサンを怒鳴りつけており、ブリアラ自身は、大きな荷車のひとつに後ろ手に縛りつけられて座っていた。 

 フェラッサンはにやりと笑った。 「新しい知り合いが必要だと思ってね」
 デーリッシュ・キーパーは怒っているような身振りをした。「何年もかけて相応しい場所を見極め、呪文を準備した。必要なものを手に入れるため、シェムレンと接触する危険さえ冒した」
「それなら、すでにヒューマンと接触しているのだから、別にいいじゃないか!」

「今」 テルヘンは、フェラッサンがまるで言葉を発しなかったかのように続けた。「必要なものを手に入れるのが、ここまで間近に迫ったとき、お前はヒューマンの貴族と彼女のチャンピオンを連れて来たのだと?」 テルヘンは嫌悪のため顔を歪めた。「ヴァーネーン族はすでに汚名を帯びているのだ! お前の馬鹿げた考えがなくても、それからその女のもだ!」 彼はブリアラのほうに振り向いた。

 彼女は背筋を伸ばし、彼の顔を睨み付けた。「アベラス、ハーレン。軽視するつもりなどありません」
「よせ、娘」 彼女の言葉は彼の怒りをいくばくか鎮めたらしく、彼はため息をつき、フェラッサンのほうに向きなおった。「私が野良猫どもを引き取るとでも? どうしてこの娘を自分の一族に送らないのだ、それだけ役立つのなら? 少なくともメイジなのか?」

 それを聞いて、フェラッサンは無表情になった。「何年もの間、私が与えた情報を手に入れて来ただろう、テルヘン。それらは彼女から手に入れたもので、彼女が自分の民だと考えている者たちへの贈り物だったのだよ」
「健気な心意気だ」 テルヘンは疲れたように顔を拭った。「だが、なぜここにいる?」

 ブリアラは背筋をさらに伸ばした。「オーレイのエルフは虐げられています、キーパー。大公ギャスパードが権力を握れば、さらに虐げられることでしょう。女帝セリーンの復帰を支援すれば、あなたは、オーレイのエイリアネイジに住む多くのエルフを救うことができるのです」

 テルヘンは両目を閉じ、顔をそむけた。「アベラス、ダーレン」 彼は静かに言った。「だが、オーレイのエイリアネイジに、私の民はひとりもいない」

 それからブリアラは静かに座ったまま、議論を聴きながら、逗留地の様子を見回した。大きな荷車、アラヴェルと呼ばれるそれらは、小さな街の建物のように円形に配置されている。いくつかの目的はわかった。ひとつは弓矢の道具用だ。近くでデーリッシュの子供たちが的当て遊戯に興じている。野菜で一杯の木箱を積み、側に燻製肉を吊るしているアラヴェルもある。第三の荷車の後ろでは、デーリッシュの戦士たちが模型の敵に木製の剣を振るっている。彼らの動きを観察したブリアラは、ヴァル・ロヨーのセリーンの邸宅で百回は目にした訓練と同じであることを見て取った。

 彼らは彼女の民ではない。
 その言葉に傷つくべきであったかもしれなかったが、彼女の心はその代りに虚ろであった。笑い声をあげながら遊ぶエルフの子供たち、技についての冗談を飛ばすエルフの狩人たち、弟子たちが朝飯の皿を用意している間、古い歌を歌うエルフの料理人たち。荷車の開いた扉から、まだ寝ている一組の老男女がいびきをかいているのも目に入った。お姫様はおらず、フェイドのスピリッツがアラヴェルの間を行き交って洗濯をするのでもないが、彼女が想像できたであろう以上のことに満ちていた。誰一人、首をすくめたり、ヒューマンを不安げに見ていたりしていない。誰一人、ヒューマンが野営地に入ってきて面倒を起こすことを恐れていない。

 そして、彼らはエイリアネイジが焼かれるに任せ、それというのも、エイリアネイジのエルフは彼らの民ではないからだという。

 彼女はフェラッサンとテルヘンの間の議論に意識を戻した。デーリッシュのキーパーは、もはや大声を出してはいなかった。彼は疲れているように見えた。フェラッサンは、いつものように冷静で、薄笑いを浮かべていた。

「よかろう」 とうとうテルヘンが言った。「お前の・・・、弟子は・・・、野営地を歩き回ることを許すが、お前が身元を預かるのだ。そして彼女がエルガーアルラに近づくようなことがあれば、彼女の命はない。シェムレンの戦士は縛りつけたままで、貴族の方は目を覚ますまで見張りをつけておく。私は一族の長老たちと話をして、その貴族の話を聞きたがるかどうか確かめる」

 彼が苛立たし気に身振りをすると、細い杖を手にした若い女性が近づいてきて、ブリアラの縄を解いた。まだはたち前であろう彼女の顔の刺青は新しくて鋭く、せいぜい一年前に彫られたものだろう。彼女の指は器用だが、手作業によるたこができていた。彼女の衣装の生地はヒューマンとの交易で手に入れたものに違いないが、ブリアラの知らない優雅な縫い方がされており、毛皮と針金細工が施されたいくつものクリスタルで縁どられている。

 ブリアラが彼女の顔色をうかがうと、そこには嫌悪こそなかったが、歓迎もまた見当たらなかった。
 テルヘンとその若い女性が去り、フェラッサンが手を貸してブリアラを立ち上がらせた。
「今まで教えてくれませんでしたね」 彼女が言った。
「ああ、ブリアラ、ところで、君のこれまでの人生ほとんどで理想化していた民は、実のところ思い上がった馬鹿野郎どもだったよ」 フェラッサンは首を振った。
「話は聞いたか?」
「はい」
「話を聞いていたか?」 彼の表現に違いはなく、彼はアラヴェルの間を抜けて歩き始めた。ブリアラが彼に続いた。

「気にもかけていないと」
「その通り。まあ、それは言い過ぎか。彼らは過去のことは気にかけている」 フェラッサンはエルフの言葉で歌う料理人のひとりを指さした。彼女がパン生地をこねている安手の真鍮の鉢には、かまどの女神シライーズの像が描かれている。「実際のところ、ものすごく気にかけている。彼らの人生は、古い断片を探して保存し、後世に伝承することに費やされる。古の言葉、古の帝国、古の秘密。だが今の時代は?」 彼は肩をすくめた。「今の時代の方がずっとつまらないようだ」

「そして、私たちが耐え忍び、燃やされて苦しんでいる間、彼らは古い遺跡を掘り返して、エルフ語で『ダイアモンド』は何というかでも調べているのですか?」 ブリアラは逗留地を見回しながら、声を低く抑えた。
「ミダージェン」
「私は彼らに手を貸した」 彼女の声が少し大きくなった。「彼らの民じゃないエイリアネイジのエルフたちだけじゃなく。私は彼らを手助けした、あなたを通じて何年もの間」

「わかっている、ダーレン。テルヘンもわかっているが、それを認めるのを嫌がっているのだ」 フェラッサンが側らを見て、ブリアラは、逗留地を出て森に向かう自分たちをエルフの狩人たちが見ていることに気が付いた。
「おかげで、君と君の友人たちがまだ生きているんだ」

「どうするのです?」 彼女は尋ね、森のほうに注意深い目を向けた。朝の光の中では、茶色くなった枯れ葉をまだ枝につけたままのただの木々にしか見えず、どれも命を宿して襲ってくる様子はない。「他の部族に頼れないのですか? あなたの一族とか?」

「ああ、それはない。私の一族はこの近くにはいない」 フェラッサンは表情を曇らせた。「名前に反して、デーリッシュのほとんどの部族はデールズから逃げ出してしまっている。誰かが皆いっぺんに攻撃を仕掛けることが難しくなるように散らばったのだ。君の女帝が、ヴァル・ロヨーに帰還する手助けを欲するなら、ギャスパードよりも前に・・・」 彼は肩をすくめた。「癒し手たちが彼女を目覚めさせるのを待つ。彼女は説得することに長けているといったね。昨晩は木々まで動かした」 彼はぼんやり笑った。「もしかしたら今日、彼女は山々を動かすかもしれない」

*** 

 エルフ語はそのまま読めばまず大丈夫なのに、デーリッシュの固有名詞は難しい。
 アラブ風、トルコ風、インド風みたいな音をまねているのかな。

 キーパーの名前は、Thelhen。色々読めそうですが、「テルヘン」と素直に読んでおきます。部族名はVirnehn。「ヴァーネーン」。その他は出た都度書いていくことにします。

 前章とここで二回出てきました、"A lovely sentiment." 「健気な心意気」としていますが、DAシリーズで、"lovely"が出てきたら要注意ですね。かのDAOの名作トレイラー、"Sacred Ashes"では、冒頭モリガンが使っています。

"The legend says that the tomb sits atop this peak."
"Lovely. We can freeze to death while digging for the bones of a mad woman."

ウォーデン「伝説では、墓陵はこの頂上にあるという」
モリガン「素敵。狂った女の骨を掘りあてる間に、凍え死んじゃうなんて」

 意味は「うんざり」です。馬鹿にしている、皮肉を言ってるんですね。

 

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