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2014年5月22日 (木)

The Masked Empire 10(3)

 切るところ間違えたかも。 

***

 ブリアラに歩み寄ってきたフェラッサンの杖は緑色に輝き、彼の身体を包んでいた。
「それ以外では、どうにもならん。シルヴァンどもは火と魔法以外はまず何も恐れない」
「剣を恐れぬとは浅はかな」 サー・ミシェルがセリーンの傍にやってきて、頭上に持ち上げられた枝の腕を剣で斬り落とした。フェラッサンがシルヴァンと呼んだ化け物は苦痛の咆哮を上げ、別の腕でミシェルを薙ぎ払おうとする。ミシェルが剣でそれを振り払い、シルヴァライトの刃で木を切り刻みはじめると、そこにセリーンも駆けつけ、焔に包まれたダガーでシルヴァンの幹に何度も何度も斬りつけた。

 彼女の後ろでは、別の火の玉が当たったシルヴァンが悲鳴をあげて後ずさりし、木の葉が萎びて灰になるまで自分の身体を叩いていた。セリーンは、別のシルヴァンがフェラッサンに腕を振り下ろすのを見たが、両者の間の地面そのものが隆起して壁のようになり、一撃を跳ね返した。ブリアラは後退して弓を引いた。放たれた何本かの矢は木を裂いて、幹に深々と突き刺さったが、化け物たちはそれに気が付いてもいないようだった。 

「まだ来るぞ!」 フェラッサンが言った。「私を残して君たちは、いつでもお引き取り願ったほうが・・・」 彼は杖を掲げ、すでに燃え上がっているシルヴァンにまた別の火の玉を投げつけた。そいつは咆哮し、よろめき、そしてついに崩れ落ち、焔がそいつの内部から燃やし尽くした。焔の光の中で、フェラッサンは汗だくで荒い息をしている。

 ミシェルは根に斬りつけ、大きな棍棒のような腕を盾で弾き返すとき、後ずさりした。「陛下?」
 「こっちよ!」 セリーンが突進し、ミシェルを攻撃しているシルヴァンに斬りつけ、もう一方の大きな腕のひと振りを素早くかわして後ろに下がった。「焚火へ!」

 他の皆が続いた。彼らの足音と息遣いが聞こえ、それらは彼女自身のもの同様に早く、追ってくる化け物の不快な切り裂くような騒音に紛れかけていた。「フェラッサン、やつらはどこまで追ってくるのです?」
「激怒と憤怒のスピリッツどもだ」 彼女のすぐ後ろで、フェラッサンは息を切らしている。「君は恨みをどのくらい長く抱き続けるかね?」 

 セリーンは野営地に着いた。シルヴァンどもが後ろに続いているが、その動きは遅い。「ブリアラ、持てるだけ持って。ミシェル、馬をお願い。フェラッサン、炎の用意を、もし・・・」
 そのとき彼女の前方から、喉を締め付けられたときの悲鳴のようないななきが聞こえ、彼女を跳び上がらせた。野営地の向こう側の端、馬が結わえられていたところから、木が裂け、枝が捻じ曲がる音が聞こえてくる。

 しばしの後、チェリテンヌ、ミシェルの美しい軍馬が空地に倒れ、その脇腹は血にまみれ、脚は折れ、もがれた小枝のように捻じ曲がり、ただ皮一枚だけで繋がっていた。馬は悲鳴をあげていた。

 ミシェルは声なき血を吐くような悲鳴をあげた。彼は野営地を跳ぶように駆け抜け、長剣を盾を持つほうの手に持ち替え、焚火の傍を過ぎるときに、燃え上がる焚き木を一本掴み取った。一呼吸も置かず、彼はその木を空地の端にいるシルヴァンに向かって投げつける。
 そいつが苦痛の咆哮を上げながら燃える焚き木を振り払ったとき、ミシェルは力任せの剣を何度も浴びせて切り刻み、木と樹液を空中にまき散らした。依然として声のない叫びをあげながら、彼は何度も何度も打ち据え続け、最後に火の玉がシルヴァンに着火して爆発したとき、ようやく後ずさりした。

 彼が興奮した顔つきで振り向き、仲間に怒りの表情を向ける間、シルヴァンが崩れ落ちた。
「すまん、すまん、名誉は一対一の戦いで打ち負かすことを求めていたのだったな。悪いことをした」 フェラッサンは、今や杖に寄り掛かり、荒い息づかいをしている。「愛馬に慈悲を与えてやるんだな、シェヴァリエ、そして、ここから逃げ出さなきゃならん」

 セリーンは彼女の乗馬、ひょろりとした騙馬が倒れて身動きせず、首が不自然な角度に捻じ曲がっているのを見た。ブリアラは素早く荷物を掴み、フェラッサンは立ちあがり、杖を持ち上げて、火の光が途絶える端の暗闇のほうを見張っている。

 サー・ミシェルは愛馬に歩み寄った。馬はまだ悲鳴を上げていたが、ミシェルを見つけると泣き声が和らぎ、啜り泣きとなった。
 ミシェルは、まるで駿馬が彼に向かって問いかけたことに答えるかのように口を開き、それから唾を呑んだ。彼は跪き、ダガーを手にした。「許せ」 そう彼は言って、素早く鮮やかに止めを刺した。
 彼は立ち上がり、セリーンのほうを向いた。「鎧を取ってきます」
 彼女は頷いた。

 シルヴァンの砕けるような、引き裂くような音が、今や周囲の至るところから聴こえて来ており、フェラッサンはゆっくりと円を描いて歩き回り、そのすべての姿をつぶさに見た。
「あなたが疲れ果ててしまうまで、あとどれだけ火の玉を撃つことができるのです?」  セリーンが彼に尋ねた。
 エルフは疲れ切った笑顔を向けた。「仮定の質問には、答えないでおくのが好みなもので。シェヴァリエ、行けるか?」
 ミシェルは粗布の大きな袋を肩に担ぎあげ、その重さに呻いた。「いつでも」  

 セリーンは周囲で木が立てる騒音に聞き耳をたてた。それは徐々に近くなってきており、空地の端では、枝が捻じ曲がっている。
「南はどちら?」 彼女が尋ねた。
 フェラッサンが指し示した。
「ならば、道を照らして頂戴」 セリーンが命じ、両手のダガーを威嚇するように構えた。

***  

 本村凌二教授は競馬にも造形が深いらしいですが、彼の「馬の世界史」という本をしばらく前にKindle版で手に入れ、時間もないので読まずに放っていた(ちなみに私は競馬にまったく興味がない)。
 "The Masked Empire"をひととおり読み終わったので、翻訳のとき役に立つかもしれない馬の知識でも増やすかと思って読みはじめたら。これがことのほか面白い。

 まだ中途なので感想と呼べるほどのことは言えませんが、馬に関する薀蓄が広がること間違いありません。
 騎馬を主戦としていた古代の軍隊のエリートは、乗馬の技術はもちろん、馬の世話も厭わず、むしろそれこそ重要な、誇るべき責務であったとか。言われてみれば当然ですが、言われないとなかなかわからない。

(クリント・イーストウッド監督・主演(そう、あの主役は渡辺さんのように見えますが、実はクリント・イーストウッド「主演」です!)の映画「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima, 2006) には、西「男爵」とその愛馬が登場し、上と似たようなシーンが描かれる(その部分、史実とは違いますが)。日本人が撮ったらあそこまでやらんだろうなあ・・・)

 面白いのは、大陸国などの「世界帝国」は、実は騎馬放牧民族の侵略に耐えるため、やむに已まれず生まれた体制ではなかったのかという説。そして史料が乏しいだけの理由で軽んじられているが、実際にはすでに騎馬放牧民族のほうが先に巨大な帝国(と呼べるだけの版図)を築いていたこと。定住民族の帝国は、彼ら相手の戦争ではからっきしだめで、まるで形無しであったこと。逆に定住型の帝国が勢力を増し、交易制度に干渉して締め付けると、騎馬遊牧民族のほうにも一致団結する機運が生まれ、巨大な軍事帝国として団結するということ。

 西方の不穏な動きに蝕まれつつある某大陸国の様子を見ていると、歴史は繰り返すのではないかとまで思ってしまう(歴史上、あの大陸国の王朝は、もっぱら西からの圧力で滅んでいったという)。 

 そして思わず膝をうったのは、なによりも乗馬が「速度」の概念を人間の歴史に持ち込んだという説。それは後に地中海の航海にも通じ、(おそらく)大航海時代に繋がっていくのでしょう。
 資本主義の本質って、それなんですよね。圧倒的な速度と、(それなくして成し遂げられない)果てしない勢力の拡大が必須要件。やがて(最後の白地図である)アフリカ大陸も塗り分けられると、もはや広がる先がなくなってしまう。その先どうなるのか、誰にもわからん。サイバー空間が次の大航海時代だなどという説は、あまりあてにならないそうだ(すでに終わってる節もあるし)。

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