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2014年5月21日 (水)

The Masked Empire 10(2)

 特にありません。というか、ここに書くことを考えている暇がありません。

***

 セリーンはけん制し、高く斬りつけ、ブリアラの素早い立て続けの攻撃を横っ飛びにかわした。彼女の右手の刃が繰り出され、ブリアラの鎧のちょうど尻の上のあたりに小さな掻き傷の線を引く。

 動きを忘れてはいないようだ、と息を切らしてブリアラが言う。ふたりは前後に身を躍らせ、それぞれの刃を閃かせた。半月の光は、セリーンが辛うじて森の中を見通せるだけの明るさしかなく、影法師としか見えないブリアラの姿は、背景の森の深い紫色と灰色の中を滑らかに動いている。ふたりが位置を変えると、ブリアラの顔が遠い焚火の方を向き、その鎧と両手の刃に暖かい光が輝いた。 

 セリーンは両手のダガーで円を描くようにしながら近づいていった。ブリアラの突きを受け流して踏み込む。高い方の刃がブリアラの喉に当てられ、低い方の刃がブリアラの背中に回って、その退路を断った。
 ブリアラは長い息を吐き、忘れていた技も全部思い出したようだ、とセリーンに言った。

 両手のダガーを鞘に収めながら、自分に抱かれるのは好きだったのではないか、とセリーンが言った。刃の切っ先を向けられていてはそうではない。ブリアラの二本のダガーが月光に煌めき、すぐに鞘の中に姿を消した。彼女は歩み去ろうとして向きを変えた。

「ブリア、お願い」
 その声に、彼女は足を止めた。影法師の乱れた髪の毛と、長く細い両耳の輪郭が焚火の光で照らし出されている。
「わたくしに何を言えというの?」 セリーンは尋ね、彼女に一歩近づいた。「後悔しているとでも? そんなことはわかっているでしょうし、それで何も変わらないことはお互い承知しているはず」 
「ほんの少しでも気にかけていると聞かされれば、足しにはなるかもしれない」

「わたくしと同じように、あなただってレディ・マンティロンの教えを受けたでしょう」 セリーンが言い返した。「後悔を認めれば、あなたはわたくしの弱さにつけこんで、後悔は屍にとってなんの役にも立たないと言い立てるでしょう。実際に役に立つことが何かを尋ねれば、あなたは何もないと答えるでしょう。あなたの慰みのため苦悶するのはご免です、いくらあなたが、彼らの死はわたくしのせいだと責め立てても!」

「責め立てる? あなた、彼らを殺したのよ、セリーン」
「そう」 セリーンは平静な声を保っていたが、その震えには自分で驚いた。「ギャスパードが噂を広めたとき、わたくしが玉座を守るためには、叛乱を鎮圧するか、あなたを処刑して彼の間違いを示すか、どちらかしか道がなかったのです」
 それを聞いてブリアラが振り向いた。「そして、私を選んだと言いたいの? それで私の気が休まるとでも思って? 私の命を救うために、あなたが何百ものエルフの農奴を殺したことで?」
「わたくしが何百ものエルフの農奴を殺したのは、彼らがわたくしの統治に叛旗を翻し、帝国を脅かしたからです」 セリーンがそう言う声は低く、訴えかけるようだった。「他にどうするべきだったのか、言ってごらんなさい。衛兵たちを殺し、街を封鎖したのが貴族の家や商人ギルドだったつもりで、わたくしがどうするべきだったか、言ってごらんなさい
「他に道があったはずよ!」

「本当にわたくしに腹を立てているのですか、ブリア、それとも、わたくしがそうせざるを得なかったことを、心の奥では気づいていた自分自身に腹を立てているのですか?」 セリーンはもう一歩近づいた。ブリアラの身体に触れることができるくらい側にいる。「誓って言います、エルフたちを傷つけることなく済ませる道があったのなら、わたくしはそれを選んでいたでしょう」 彼女はゆっくりと、注意深く、ブリアラの肩に片手を乗せた。

「どれだけ長い間一緒に過ごしてきたのです、ブリア? あなたが、エルフたちへの思いやりを持つよう促してきたことに、わたくしがまるで気が付いていなかったとでも思っているのですか? 彼らがあなたにとってどれだけ大切なのか知っています・・・、そしてわたくしも同じ考えです。メイカー、あなたたちがどれだけ知性豊かであるか、わたくしはずっと見てきました。どこのエイリアネイジでも、もっと有意義に生活できるはずの、どれだけ多くのエルフたちが無為な立場に虐げられているのか? わたくしが、どれだけ多くの優れた精神の持ち主や、忠義深いしもべたちをあのスラムで焼き殺したのか、それが、わたくしが他の道を考えもしなかったせいだとでも言うのですか?」 彼女は声を詰まらせた。

 闇の中、ブリアラの顔は影法師のまま動かなかった。「私があなたの傍にいたのは、それが理由じゃないわ、セリーン」
 セリーンは無理に微笑み、首を振った。「知っています。でも、もしあなたがわたくしに愛想を尽かしたのだとしても、それでエルフが憂き目を見るようなことにはなりません」

 彼女の手はブリアラの肩に置かれたままだった。ブリアラは息を吸い、しばらくしてから、セリーンの手に持ち上げた自分の手を重ねた。彼女は、セリーンの息が自分の肌にかかるくらいまで身体を寄せて言った。「愛想を尽かすなんて・・・」

 樹木が裂けるときの雷鳴のような咆哮とともに、セリーンとブリアラのすぐそばの木が倒れて来た。
 セリーンが飛びのくと、すぐ側にブリアラも続き、さっきまで二人がいた場所に枝が倒れるときの衝撃を、目だけではなく耳でも味わった。彼女は瞬きし、緊張した眼差しで、闇の中に潜む姿を探し、目前の地面から響いてくる耳障りのひどい音を聴いた。

 ブリアラは二本のダガーを抜いた。「メイカー、あの木が!」
 それから、なんの予兆もなく、ブリアラがセリーンの方によろめきかけ、彼女の身体を地面に押し倒した。
 セリーンがなんとか立ち上がったときには、さらに多くの木の枝が周囲に倒れて来た。彼女は焚火の残像を瞬きして振り払い、胸の鼓動が激しく高まるような光景に見とれていた。
 木々に命が宿っている。

 ふたりを取り巻く周囲では、黄金色の葉をつけた数ある大きな枝が捻じ曲がって棘だらけの腕のような形になり、多くの木の幹はひどい音ともともにばっくり割れて、角張った両脚の形になっていた。より高い位置にある枝でできた冠の下にあるのは、 不快な出っ張りと歪んだ木のこぶで、それらが人面の不気味なパロディを形作っている。巨大な化け物たちの身体が軋みながら裂けるとともに、木材の真新しい断面から匂うような臭気があたりの空気に充満した。そのすべての動きがセリーンの両目に滲み、涙を流させ、彼女の心は、起きるはずのない出来事になんとか意味づけを見出そうとしていた。
 セリーンが目にすることができたのは巨大な三つの姿だったが、周囲の騒音から、あたりにはもっと数多くのそいつらがいることがわかった。

 巨大な木の化け物のひとつがブリアラの喉を掴み、その身体を高く持ちあげた。

 うろたえたセリーンの身体に冷たいものが駆け抜けた。だが長年にわたる訓練のおかげで心まで奪われることはなく、彼女の指先は手際よく腰袋の蓋を開けてふたつの指輪を指に嵌め、恐怖で吐き気を催しながらも喉元の飾りをきつく締めた。

 ブリアラを掴み上げたそいつが歩み寄ってくる。その片脚が持ち上がると、まるで織物飾りを引き裂くような音を立てて、根茎が地面からもぎ取られた。そいつはセリーンを掴もうとして、空いている方の手を持ちあげた。

「メイカーが許しはしない、スピリットめ」 セリーンが唸り、二本のダガーを抜いた。「彼女はわたくしのもの
 木の化け物が腕を振り下ろすのにあわせて彼女は横に身をかわし、地面に激突した枝の上に器用に飛び乗った。彼女は厚く捻じれた枝の上を二歩駆けあがり、そして跳んだ。両手に握ったダガーをブリアラを掴んでいる枝に突き立てると、焔がその周りを取り巻いた。

 木の化け物は、どこにも口がないのに咆哮をあげた。樹皮を通して響き渡るその大音声がセリーンの腹を揺さぶる。そいつが腕を激しく振り回すと、セリーンが突き刺した枝に纏わりつく焔が周囲の空中に軌跡を残し、自由になったブリアラが地面に転がり落ちた。もう一方の枝がセリーンのほうに振りかかるが、彼女は木の幹を蹴って地面に跳び下りた。

「ブリア? ブリア、起きなさい!」 セリーンは両手のダガーを威嚇するように振りかざした。小さな焔の舌がその腕のそこここに燻っている目前の木の化け物が再び咆哮し、その響き渡る音が彼女の歯を鳴らす間、他の二体の化け物たちも近づいてきて、そいつらが一歩進むたびに、根茎が地面からもぎ取られる。

「起きた」 ブリアラが、荒い息づかいをしながらも、なんとか両足で立ちあがった。
「よかった」 セリーンは腰をかがめた。「あなたをもう一度喪うつもりはない」

 三体の木の化け物が一斉に咆哮し、セリーンとブリアラに近づいてきた。セリーンは地面に打ち付けられる枝から身を逸らし、長い焔の尾をたなびかせてその腕に斬りつけ、それからふたつの化け物の間に素早く駆け込んだ。そいつらの動きは緩慢だが力は強く、たった一撃でも受ければ一巻の終わりだ。

 「なんとかならない?」 ブリアラが叫んだ。セリーンが危険を冒して一瞥すると、ブリアラが彼女を攻撃している一体に突進し、その幹を何度も素早く切り裂いていた。斬りつけるたびに不気味な黒い樹液がほとばしるが、化け物は痛手を受けた様子もなく、再びその腕を振り上げると攻撃を繰り出してきた。

「まあ、やつらはなんだから、きっと…、火じゃないか?」 ふたりの後ろから声がして、それから燃えあがる剣がシューっと音を立てながら頭上を飛んでいき、一体の化け物の木の葉でできた冠に着火すると、爆発して焔をまき散らした。化け物は苦痛の咆哮をあげ、その枝は焔が広がるとともに音を立てて裂けていった。

***

 ノーコメントで、次回に続くっ。

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