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2014年5月19日 (月)

The Masked Empire 10(1)

 ペース落ちてきていますが、なんとか間を開けず繋いでいきたいと思ってます。

***

第十章

 サー・ミシェルは、はじめはモントフォートのスラムで、それから貴族の邸宅で育った。長年のシェヴァリエの訓練では、森の中で自分と馬の安全を保つ術を学んだが、気に入ることはなく、実際には毛嫌いしていた。今、女帝セリーンがブリアラとフェラッサンに導かれてデーリッシュに向かう道のりは平原を過ぎ、また森の中の不愉快な旅に戻った。

 平原では、四方何マイルも先から発見される危険があることは知っていた。忌々しいデーリッシュが森や丘に居住区を構えるのも理解していた。そのどれも、平原の広い空から捻じれた枝と枯れ葉の中に戻ることの、悪寒のするようなおぞましさを変えはしなかった。

 フェラッサンは目的地が近いと言い、さして優れた追跡者でもないミシェルにもそれはわかった。馬を進める径は小動物の通り道にしては広すぎ、休息を取る空地の枯れ葉の下には焚火の跡が隠してあった。小さな音を立てる周囲の森が、まるでこちらを見ているような気がした。

 その夜一行は、そうした空地の一つで休んでいた。ブリアラが仕留めた小さな鹿の皮をフェラッサンが手際よく剥ぐ。ミシェルが驚いたことに、セリーンは焚火を起こし、鹿肉に味付けする薬草を摘みさえした。オーレイの女帝が火を起こす姿など決して目にすることなどない、そんな賭けがあったら大金でも惜しまなかっただろうが、彼女は自分のしていることをわかっているようだった。

 ミシェルは馬の世話をした。愛する駿馬チェリテンヌは元気だが、少し痩せていた。セリーンの乗る騙馬はまだ気ぜわしく、毛皮の状態は良くない。彼は手持ちの道具でできる限り身体を拭いてやった。乗馬の訓練に勤しんでいた時代からこのかた、厩舎の馬丁が毎晩代わりに世話をしてくれたので、自分の手を煩わすことはなかった。
 ミシェルは、ろくな道具がないことを申し訳ないと謝りながら、予備の革紐でチェリテンヌの脇腹の汗をぬぐった。愛馬は鼻を鳴らし、蹄鉄の手入れを催促するように脚を持ち上げた。ミシェルは、自分の荷袋に入っている鎧用の補修道具の中から、役に立ちそうなものを見つくろった。

 今夜は馬をしっかり結んでおけ、と声がする方を見るとフェラッサンがいた。焚火の光で照らし出されている彼は、棘のある長い小枝を細い指の間に挟み、熱心に見つめている。顔の刺青が焚火の光の中で自分の意志で踊っているように蠢いている。セリーンとブリアラは近くにいない。暗闇でダガーの稽古でもしているのかもしれない。

「馬の世話くらい知っている」 ミシェルがよそを向いた。「お前たちナイフ耳は、馬に乗りもしないくせに」
「農奴たちも乗らんぞ、シェヴァリエ」 背後でフェラッサンがくすくすと笑った。

 ミシェルは振り向き、エルフが自分にちょっかいを出していることに気付いたが、冷たい不安の波が首のあたりを締め付け、こめかみのあたりを脈打たせるのは否定しようもなかった。「黙れ」
「なぜ? には、誰にも言わないと約束した覚えはないぞ」 フェラッサンがにやりと笑いかけた。

 ミシェルは、苦労してなんとか拳から力を抜いた。馬たちが不安げにいななく。「拙者に何か話でもあるのか?」
「ひとつ答えてくれ、まずは。なぜ彼女とともにいる?」 フェラッサンが尋ねた。「君の女帝の大義はもう望みなしだ。 君は一度自分の人生をやり直した。もう一度そうすればいいし、その類稀なる剣技があるのだから、セリーンのチャンピオンという素性が知られないどこかの街で雇ってもらえばいい」 
「誓いをたてた」 ミシェルがため息をついた。「お前が理解するとは思えんが」
「名誉と任務? 理解するはずがない。私はエルフだし、名誉と任務は、重い鎧を着て馬に乗るヒューマンだけにしか通用しない考え方だ」

 ミシェルは自分の頬が紅潮するのを感じた。「スラムのことも何も知るまい。あそこでの拙者の人生は・・・、アカデミーが拙者に名誉を授け、それに背かない限り、至福のまま死を迎えることができるという、心の安らぎを与えてくれた」

「それも、君の秘密が暴露されるまでの話。これからの人生、自分でそうではないと気づいた誰かとして過ごすなんて、そんなひどい話があるものかい」 今やフェラッサンの声に、馬鹿にするような調子はなかった。古参兵にこそふさわしいような、静かな悲しみに満ちた話し方だった。「すべての英雄的な戦い、寝台まで群がってくる酒場娘たち、そして君はそれを心底楽しむことができないなんて」

 ミシェルは馬たちの結び目を確かめ、焚火の傍まで来てどっかりと腰を下ろした。「拙者は拙者なりに楽しんでいる」
「そうかね? それとも、本心はまだ隠しているのか?」 フェラッサンが尋ね、指の間で棘のある小枝を弄んでいた。「庶民の言葉遣いをうっかり使っていないか確かめるため、ひとり燭台の光に向かって一言づつ囁いてみる? 君とエルフとの間に似ているところがあると誰からも非難されることのないように、『ナイフ耳』のような中傷の言葉を少しばかり多めに口にしてみる?」
「お前はさぞ楽だろうな」 ミシェルが言い返した。「刺青の顔で、一生歩き回るのだから」

 フェラッサンは仰向けになり、空を見上げた。雲の間から、半月がぼんやりと輝いている。「かつて、我々の民はこの地を神々として歩いていた。君たちの目を奪うような魔法を用いていた。今、深い森の中に潜み、君たちシェムレンが、この世界の均衡を打ち破るようなことを再びやらかすのを心待ちにしている。若かりし頃、私が誰だったかわかるか、若者よ?」
「森の中を駆けずりまわってお話を聞く、若いデーリッシュのエルフか?」 ミシェルがフェラッサンを睨んだ。

 フェラッサンは驚いて飛び起き、それから心にもなく笑った。「よくぞ言った、シェヴァリエ」 しばらくして、彼は火を見つめ、柔らかい息を吐き出した。「私たちはハラに乗っていた。あまりに優雅に華麗に飛び跳ねるので、君たちの馬がまるでフェラルダンの犬のように思えるほどだった。しかも、ずっと賢くもあった」 彼はくすりと笑った。「おかげで強情なときもあった」

 ミシェルのエルフの母親は、エルフが乗る大きな白い鹿の物語を彼に話してくれた。その頃彼は幼く、五、六歳くらいで、その話を怖がったことを覚えている。誰かが馬に乗っている姿を見かけたのは、シェヴァリエが人々を殺しにスラムにやってくるときだけだった。
 ミシェルはチェリテンヌのほうを見た。彼の母親のその話を最後に思い出したのはだいぶ前だ。懐かしがったこともなかった。「セリーンとブリアラの声がしない」 彼は言って、話題を変えた。

「なにか違うものの稽古でもしているんじゃないか」 フェラッサンが言って、眉毛を揺らしてみせた。
 ミシェルは彼を睨み付けた。「それは侮辱だ」
「愛は侮辱じゃない。面倒で、先がなく、時を選ばないかもしれないが、侮辱じゃない」
「もし、お前の弟子が女帝を誘惑したのなら・・・」
「彼女のエルフのたくらみで? シェヴァリエよ」 フェラッサンが熱を帯びずに言う、「セリーンが、自ら望みもしないことに誘惑されると思うかね?」
 ミシェルは闇の中を見据えた。「どうして彼女がそんなことを望む?」

「それは、わからん」 フェラッサンが認めた。「もしや一層そうしたくなったのかもしれん、君の女帝がハラムシラルのスラムを焼いた後に・・・」
「拙者が言っているのはセリーン、エルフと寝ているオーレイの女帝のことだ!」
「君が『ナイフ耳』と叫ぶとき、言っているのは、自分がどっちの顔を選んでいるか世間中に知らしめたいということだけだ」 フェラッサンが詰った。「そして君の両手は、いっぱしの男として十分なくらい血塗られている。それらしく振る舞え」

「オーレイのことは何も知らぬくせに」 ミシェルは二人の回りの森のごつごつした木を手振りで示した。「ここから出れば、誰と、いつ寝ても構わない。宮廷では・・・、暇つぶしの慰みとして、彼女の目にとまった誰かと一時の恋の戯れに勤しむのも構わない。だが、召使いを長い間愛人として囲うのは・・・。皇帝や女帝の情人は、それ自身が政治の力を手にする。ブリアラは女帝の耳をわが物にできるのだ」
「耳だけじゃないといいんだがな」 フェラッサンがにやりと笑った。

 それ以上耐えられないくらい、エルフがセリーンを、あたかも酒場娘のようにみなして冗談の種にしている。ミシェルは立ち上がった。鎧を身に着けてはいなかったが、彼は剣に手をかけた。「お前は、拙者と拙者の女帝を侮辱した」
「まったく逆だ」 フェラッサンは流れるような動きで立ち上がり、その片手に現れた彼の杖は緑色に輝いていた。もう一方の手にはまだ小枝を持っており、それが彼の手の中で捻じれ曲がり、震えているのを、ミシェルは誓って目にしていた。「私には君が必要だ。君の女帝にとってもそうだ。彼女は重大な危険に踏み込み、そして彼女には自分の正体をわきまえたチャンピオンが必要だ」 彼は歩み寄ってきた。「デーリッシュはシェムレンの最も偉大な戦士を知ることになり、彼らの愚かな若者たちが、君を相手に自分たちの武芸を試したがる。君は怒りを抑え、彼らにその機会を与えてはならない」

「拙者は、拙者の望むとおり・・・」 ミシェルは森の中で何かが折れ、崩れる音を聴いて言いやめた。しばしの後、低い、揺さぶるような咆哮が空地の木の葉を揺らし、ミシェルの回りを、地面にできた裂け目から噴き出した死の臭いを運ぶ風が吹き抜けた。

「今のは何だったのだ?」 彼は尋ね、それがやって来た方角に振り向いた。もう一度、何かが衝突するような大きな音が、布地を引き裂くような雑音とともに背中のほうから聴こえてくると、ミシェルは半狂乱になって木々の間に何かの兆候を探し、焚火の端に何かの微かな動きを探したが、ぞっとするような、この世のものとは思えない騒音以外に何もなかった。

「私が、馬をきつく結わっておけと言った理由だ」 フェラッサンが答え、指の間の棘のある小枝を掲げた。「これはフェランダリス。強力な毒があるが、ヴェイルが薄くなったところにしか生えない」 
「つまり?」
「つまり、何かが通り過ぎてやって来るという、些細な可能性があるということ」
 フェラッサンは小枝を火の中に投げ込んだ。それは軋む音を立てて折れ、パチパチと鳴りながら灰になる間、緑色の煙をあげた。

「そして、拙者に伝えることをしなかった?」
「心配をかけたくなかったからな。実際、何かが本当にやってくるというのはまずあり得ない話だったのだ」 空地の奥の暗闇の中から、衣服を引き裂くような音がまた聴こえ、もう一度咆哮が鳴り響き、フェラッサンは顔をしかめた。「とはいえ、今となっては結構あり得る話だったようだ」
 ミシェルは剣を抜いた。「他のふたりを探さなければ」

***

 んー。なかなかはしょれませんね。フェラッサンとミシェルのやり取り。意外な組み合わせですが、 セリーンやブリアラを相手にミシェルが自分自身のことを話すことは、まずないでしょう。たとえいけすかない相手でも、男の子(おっさん)同志の会話はやっぱ違いますからね。

 フェラッサン、ところどころで感じるんですが、ハン・ソロ風だったり、オビ・ワン風だったり。いまいちキャラ定まっていない感じもしつつ、それらありがちなステロタイプに陥らないように、その集大成的なキャラクターを狙っているのかな。ああ、フェンハレルから名をいただいているってのもありますね。ハッタリとヒッカケのキャラクターでもあるわけか。

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