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2014年5月16日 (金)

The Masked Empire 9(3)

 "The MAsked Empire"は、こんなペースの更新になりそうですので、ご容赦ください。

***

 翌朝、彼らは黄金色と赤色に染まった森を抜け出て、すでに秋の肌寒さを予感させる農地の端に来ていた。森の中で何日も過ごした後、ギャスパードの目に触れないように開けた場所から次の場所まで素早く移動することは、セリーンを躊躇させた。

 空高く流れる雲は寒い日が訪れることを示している。彼女が、開けた場所を移動するのは安全なのかと尋ねると、ミシェルは、他に方法もないと答えた。森の中に留まりながら東を目指すなら大きく迂回しなければならず、それだけギャスパードの手の者に捜索の時間を与えることになる。ブリアラの連れのナイフ耳によれば、この先の湖の近くにはどの街道からも離れた小さな村があり、そこで補給と情報収集ができるはずだ。 

 先を進むフェラッサンを一瞥し、彼を信頼していないのか、と尋ねるセリーンに、ミシェルは、不信を抱くまでのことはしていないが、デーリッシュに代わりはなく、ギャスパードの敵であるのと同じくらいセリーンにとっても敵であると答えた。それからにやりと笑って、とはいえ少なくともあの馬鹿馬鹿しい刺青を見せるくらいの礼儀はある、と付け加えた。

 セリーンが読んだエルフに関する論文はひとつではない。大学はエルフ単独で講義を行う価値はないと考えていたが、セダスの通史の中で触れられる。ミシェルが馬鹿にした刺青は古代の神々を敬う意味がある。セリーンはエルフの文化を、興味深く、異国情緒があり、かつ底なしに悲しいものだと考えていた。デーリッシュが自分たちの帝国は滅亡したと認めなかったため、どれだけの知識が喪われたのか。世界が変わったことに気が付くまで、どれだけ自然の中で暮らすことになったのか。 

 それでも安全と考えているのかとセリーンに問われたミシェルは、フェラッサンによれば、ギャスパードの兵が巡回しているなら、上空には地上から追い出された鳥たちが旋回している様子が見えるはずだからすぐわかるそうだ、と答えた。全くエルフらしい、とセリーンが微笑み、そうであれば、フェラッサンとブリアラには後から追い付いてもらうことにして、ふたりは村まで馬で先行しようと告げた。 

 セリーンはミシェルの返事を聞きもせず馬を駆け出させた。ふたりがエルフたちの脇を通り過ぎるとき、ブリアラが驚いたような目を向けた。
 騙馬は最初驚いた様子だったが、恐慌でも、戦いでもなく、ただ駆ける機会が与えられただけだと知り、疾走を楽しんだ。セリーンは滑らかな足並みを感じ、冷たい風と温かい馬の臭いを嗅ぎ、しばしの間他のすべてを忘れて乗馬だけに集中した。
 騙馬が疲れた様子になると、セリーンは早足に戻した。遠くの方に小さな湖の銀色の輝きと、周囲の村落が見えた。 

 追い付いたミシェルが並び掛け、同じように早足に戻し、駿馬チェリテンヌの頸の横を軽く叩いた。チャンピオンから無断で駆け出したことを咎められると期待していた彼女は、ただ笑って首を振る彼の顔を見て失望しそうになった。取るに足らない乗馬が女帝の権利であると主張するのは、時間を潰す格好の手段だと思ったのだ。 

 だが、前方の村落を見つめるミシェルが、どうやら様子がおかしい、と言った。収穫されていない作物は、このままでは腐るに任せるばかりであり、湖には漁撈用の舟すら出ていない。

 まるで田舎育ちのように随分細かいことに気がつく、とセリーンが笑う。ミシェルは赤面し、気をつけるのが自分の務めであるし、間違いかもしれないと答えた。
 フェラッサンとブリアラを待つべきではないか、とセリーンに尋ねられたミシェルは、あのような村にとってエルフは善よりも害をなす者である、と答える。デーリッシュとは取引きするかもしれないが、エルフの盗賊と見なして即座に攻撃してくるかもしれない。
 セリーンは頷き、振り返って後方のエルフたちがまだ遠くにいるのを確かめ、ふたりで先に進もう、と言った。

 北西から村に近づき、外敵から守るための低い柵を通過すると、セリーンも異常に気が付いた。村は静かで、灰の臭いがする。簡素だが頑丈な建物はどれも無傷だが、広場まで近づいても人っ子一人見えなかった。

 ミシェルが指し示す広場の中止には、炭になった薪の山があった。その数はあまりに多く、ひとまとめにされているものもあれば、農奴たちがチャントリー式の火葬をするときのように、石で回りを囲まれているものもあった。愛する者たちのことはチャントリー式で、襲撃者はひとまとめで荼毘に付した。ミシェルがそう言って頷き、今度は声を張り上げて、誰かいないかと呼びかけた。返事はなかった。

 だが、遺体を燃やした者がいるはずだ。首を振りながらセリーンが言った。そのとき彼女の視界の端から槍が飛んできたが、ふたりから大きく逸れて外れた。どの店の陰から飛んできたのかはわからなかった。
 争うつもりはないが、この女性は自分が守ると誓ったお方。その身を脅かすなら、シェヴァリエとして村ごと焼き払う。ミシェルが叫び、剣を手にしてゆっくりと建物のほうに近づいた。姿を見せれば、危害は加えないと誓う。

 姿を見せたのは、庶民たちと農奴たちであった。肉屋の老人、腕に包帯を巻いた上品な婦人、こっそり顔を出す子供たち。セリーンは一目で全てを目にし、記憶するよう自分に強いた。服は汚れ、目には疲労と恐怖が宿っている。
 ギャスパードには、死をもって償わせなければならない。

 彼らは収穫の前に戻ってきて、欲しいものを奪って行った。村は彼らといざこざを起こさなかった。そう肉屋が告げた。理由を告げたか、とミシェルに問われ、最初は何も言わなかったと、婦人が答えた。服についた小麦粉から、セリーンは彼女がパン屋だろうと想像した。
 だが酒が進むと彼らは、自分たちはジェイダーからの攻撃を監視していると言った。ジェイダー。肉屋が唾を吐き、後を引き取った。

 二日後、レディ・セリルの乗り手たちが現れ、農地で働いていた全ての男女を斬り殺した。衛兵たちも、広場にいた全員も殺した。その後、水上に火の矢を放ち、舟に乗っていた若者たちをほとんど殺した。それから彼らは全ての食糧を奪った。一晩泊まり込んだ。群衆が一斉に恐怖の記憶にたじろいだ。

 連中は、村が玉座の敵を手助けしたため、ギャスパードに手を貸す者たちがどうなるかの見せしめになったのだ、と言っていた。ついに肉屋の声が嗚咽まじりになった。なんてことを、自分はギャスパードがどこの誰かすら知らない。 

 セリーンは広場を見渡した。小さな焦げ跡。まだ地面に滲み込んでいない血痕。ジェイダーの手の者。彼女に忠誠を誓い、玉座のために戦う。彼女は唾を飲んだ。

 作物は収穫が必要だ、とセリーンが告げると、ミシェルは片方の眉を吊り上げた。村は貴族同志の戦いに巻き込まれた。怯えるのはわかるが、作物の収穫も、漁撈もやめてはならない。さもなくば、このまま冬を越すことはできない。

 村の半分が死んだ、と肉屋が言った。握りこぶしを固め、顔を紅潮させているが、目は地面を見つめたままだ。
 であれば、食糧もそれだけ少なくて済む、とセリーンが言った。村の全てを喪いたくなければ、作業に戻るのだ。
 連中が戻ってきたらどうする。パン屋が尋ねた。歓待するのだ、とセリーンが躊躇なく答えた。連中が仕えるというのがどの貴族であっても、頭を下げるのだ。食糧を与え、自分たちに必要な分だけは隠し通す。彼女はパン屋を見た。もし連中が一晩泊まり込むのなら、酒をふるまい、葡萄酒で泥酔させ、寝ている間に喉を掻き切れ。
 パン屋は顔をあげ、驚き、そして頷いた。

 そう言う自分たちは何者だ、と肉屋が尋ねた。何が望みだ。
 セリーンは臆病な目をした相手をしかと見据えた。分けてもらえるだけ所望する。

 しばらくして、ふたりは村から外に出ると、ブリアラとフェラッサンが待つところまで馬を進めた。
 大丈夫か、とブリアラが気遣いを見せると、セリーンはたじろいだ。マスクの陰に表情を隠すことに慣れきっていたため、あまりにも容易に感情を曝してしまっていたのだろう。ミシェルがぶっきら棒に心配ないと答えた。村に寄ったのは無駄だった。先を急ごう。

 セリーンは頷き、ミシェルに続いて村を大きく迂回し、南に向かった。村の側の湖が小さな輝きになるまで、彼女は村の方を振り返っていたが、それも視界から消えると、正面を向きため息をついた。

「ご立派でした、陛下」 ミシェルが彼女に顔を向けずに言った。
「村の名前さえ知ることができなかったのに」
「それは大したことではありません」 彼は顔をしかめた。
「彼らの物語は、数多くある中のひとつ。戦に出た兵なら、誰もがそこら中で目にすること」
「そしてギャスパードも知っている」 セリーンは自分が歯を食いしばっていることに気付き、力を抜いた。宮廷であれば、自制の利かない彼女の姿は回りの忍び笑いを呼んでいただろう。だが今は、宮廷からだいぶ遠ざかっている。「彼が玉座に執着するあまり、数えきれないほどの屍が累々と積み上がっていく」
「彼がそのことに気付いているとは思えません、陛下」
「終わりにしなければ」 セリーンは手の指が痛むほど手綱を強く握りしめた。「わたくしの民にこのような仕打ちは許さない」

 ミシェルは何も言わなかったが、厳粛に頷き、そしてしばらくの間は、それで十分であった。

***

 村の半分を殺し、略奪、凌辱を繰り広げたのはジェイダーのレディ・セリルの手の者。
 故に、ギャスパードは万死に値する。
 私にはいまいちよくわかりませんが。 先に手を出した方が負け?

 「一晩泊まり込む」は意味わかりますよね(ってすぐ上に書いたけど)。和製英語"stay night"ではなく、"spend the night"。
 セリーンの演説は「七人の侍」みたいです。ほんとにパク・・・、オマージュじゃないかと思えるくらい酷似しているが、ミシェル曰く、それは数ある中の一つ(one of dozens)に過ぎない。古今東西そうであった、と言うとまるでマルクス史観か白土三平のような気もしますが・・・。

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