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2014年5月12日 (月)

The Masked Empire 9(2)

 フェラッサンのエルフの説話(フェンハレルに関する寓話)。結構好きなんですけど、果たして正鵠をついているのでしょうか。

***

 セリーンは断固たる決意で乗馬に耐えた。
 ブーツと下着は完璧に仕立てた自分のものをまだ身に着けていた。盗んだ鎧は擦り傷を作ったが、最初の夜に、若い頃舞踏会でのとっさの繕いのため学んだ技能を用いて、その部位に当て物をした。
 だが、両脚と腿、背中の腫れた筋肉にはなす術なく、痛みを甘受していた。小休止を求めるべきときにもギャスパードのことを考え、どんな弱さの兆しも見逃すつもりなく待ち構える仇敵たちで一杯の群衆の前に、若い女性が全身を曝して立つ場合にでも、落ち着き払った美しい振る舞いを欠かさないよう、レディ・マンティロンから手ほどきを受けた四十にも及ぶ筋肉の鍛錬を思い出していた。

 夜になって、ミシェルと、ブリアラの連れのデーリッシュが一行を停止させてからは、彼女は身体を屈伸させ、ダガーの稽古を一通りこなした。彼女の手首、喉、指には、サークル以外の者が一生のうちにお目にかかれる以上の魔法が潜ませてあり、それにはレディ・マンティロンから贈られた指輪と、手にしたどんな武器にも焔を纏わすことのできる指輪も含まれ、不意うちを喰らわせた兵士何人かを倒すには十分な力と技能を与えてくれる。
 だが、ギャスパードとそのシェヴァリエ軍団に対するにはそれ以上のことが求められる。そして彼と直接対決しなければ、この一件が決着しそうにないこともわかっていた。

 二週間ほど経ったある夜、フェラッサンとミシェルが明日の行程を相談している間、彼女が炉火に照らされた空地の端で、レディ・マンティロンが「蝶」と名付けた稽古をこなしていると、ブリアラが後ろから、二段目が違う、と声をかけた。

 稽古の手を止めたセリーンは肩越しに振り返り、口を閉じた笑みを向け、情けないほど息切れしていることを隠した。鎧を脱いだブリアラは疲弊の色濃く、汚れていたが、焚火の黄金色の光が舐める影とほとんど変わりのない姿であっても、変わらずまだ愛らしかった。

 進むべき径や兎の調理法についての些細な会話を除き、ブリアラが話しかけて来たのははじめてだった。セリーンは愛人をそっとしておき、兆しを待っていたのだ。

 これで正しいはずだ。できるだけ冷静に、口論の糸口にならないようにセリーンが言った。前の手で敵の攻撃を受け流し、後ろの手を交差させる振りで反撃を阻止し、踏み込んだ両方の刃で喉の動きを制する。彼女は稽古の出来栄えをつかむために指輪の魔法を用いていなかったが、想像上の敵に対してそのとおり実演してみせる際に、焚火の焔がダガーに纏わりついているように見えた。

 違う。ブリアラは自分のダガーを取り出し、無意識に醸し出される優雅さで空中を斬った。一段目は受け流すだけではなく、敵の手首を斬りつける。二段目は敵の繰り出す腕ではなく喉を狙う。
 彼女の攻撃の位置はセリーンのものより高く、その手首の素早い動きには、「蝶」の名に相応しい優雅で眩惑するような美しさがあった。
 そうすることで、次の攻撃で喉の動きを制するに十分なほど敵に近づくことができる。

 本当にそうか、ブリアラはいつもレディ・マンティロンの弓の稽古の方を好んでいたではないか。セリーンの言葉に彼女は、自分は両方とも使いこなすことができるし、正しいのは喉だ、と言った。
 セリーンは、ブリアラはどうせ相手の喉を掻き切ってしまうのだから、その動きを制する必要はないだろう、と微笑みながら言った。

 鎧相手、魔法の守り、ダークスポーンのような固い皮膚の敵、またはフェイドから来た化け物が相手だったらどうか。玉座を追われて、輝くシルヴァライト製の得物ではなく、農奴のナイフを用いなければならなければどうか。ブリアラはそう言いながら、怒りの表情で歩み寄ってくる。現実の世界は、ヴァル・ロヨーの宮廷の中のように完璧なお膳立てなどないことのほうが多い。

 セリーンはため息をついた。「ブリア・・・」
「あなたは大バカよ、セリーン」 ブリアラは大きく美しい瞳に涙を一杯に溜めていた。ブリアラが近づくにつれ、焚火の光を受けたそれらが闇の中で猫の瞳のように輝いている。彼女の首筋の血管は忙しく脈動しているが、その歩く姿は優雅さを保ったままだ。「説明は聞きたくない。理由は知っている。ただもっと慮って欲しかった」 

「鍵のかかった宮廷の一室でほんの二、三年過ごすだけ、ただ、それだけじゃない!」 相談を中断したミシェルとフェラッサンがこちらを見ていることに気が付いたセリーンは、声を低く抑えた。「わたくしたちにとっては何も違わなかったはず」
「あなたの髪には、あなたの焼いた者たちの煙の臭いが染みついている」 ブリアラが言った。「それが違い」

 踏み出すセリーンの足の下で枯れ葉が鳴った。「わたくしたちの帝国が、これほど短い間に、いくつもの戦火を潜り抜けることができると思いますか? わたくしは、わたくしたちが世界の羨望の的となる大学や、芸術や文化によって名を残したかった。でもその代わりに、オーレイの没落を招いた女帝として知られることになるかもしれない。あなたにはハラムシラルのエルフたちを悼み、わたくしの心を悶え苦しませる贅沢が許される。わたくしの玉座に腰を下ろせば、全ての街が目に入ります。他のすべてを救うため、そのうちひとつを焼かねばならないのなら、わたくしは咽び泣きながらでも、松明に火を灯します!」

 ブリアラは生唾を飲んだ。「あなたは咽び泣いてはいないでしょうに。玉座に腰を下ろしてさえいない」 彼女は素早く、急な足取りで歩き去った。「お許しいただけるなら、輝けるお方、悲しみに溺れる贅沢を享受しにまいります」

 セリーンは、彼女の愛人が焚火のほうに離れていくのを見ていた。
 それから、ブリアラのほうが正しかったので稽古に戻り、二段目をより高いところに突き出した。

*** 

 ウィークス氏が「臥薪嘗胆」を知っているかどうか知りませんが、セリーンのギャスパードに対する気構えはそんな感じがします。
 女性二人のやりとりは・・・、やめときましょうね。

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コメント

泣いて馬刺しを食う、じゃなくて、「泣いて馬謖を斬る」という心境だったんでしょうかセリーンは。
とはいえ、ブリアラに非があるわけでもなく、むしろよくやってると思います。
女帝の判断ベースは所詮マクロ、国民個々の営みや命の実感とは大きな隔たりはありますもんねぇ。

>フェラッサンのエルフの説話
私は更に意地悪で、会いたいエルフの女性が、もう1人のエルフの王女だったと勝手にオチを作ってしまった。(笑)
死体でも会えればいいんでしょ?という外道。

三國志では、兵や民のことを慮ることこそ、ポーズであっても君主の務め、王道、徳の道ですから、これでもかってくらい執拗にやりますね。馬謖を処刑したのもポーズ。孔明の丞相の地位返上もポーズでそれを周囲が止めるのも想定のうち。

王道ではなく覇道ありきの帝国主義オーレイでは、徳はほぼ間違いなく通用しないはず。セリーンの苦悩は誰もわからない。理解不能。彼女は鬼子なんですね。

フェラッサンの寓話、そのおちだと、猿の腕の話みたいですね(笑)。このあとも出てきますのでお楽しみに。

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