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2014年5月10日 (土)

The Masked Empire 8(2)

 続きます。  

***

 セリーンとサー・ミシェルが最初の一団に接触したのは、ギャスパードの待ち伏せを逃れてから数時間後のことであった。

 ふたりは戦場から北へ向かい、馬を進めることができるほど浅く、遠方から視認されないくらい深い森の中を進んだ。ミシェルは牡馬を数分疾走させ、それから早足へ、最後には並足にまで速度を落とした。彼は女帝に尋ねられる前に弁明した。二人乗りで疾走を続ければ、愛馬チェリテンヌは、まだ必要とされているうちに死んでしまう。彼が首の横を叩くと、馬はまるで同意するかのようにいなないた。
 女帝は、チャンピオンの技量を信頼していると告げた。この窮地から生きて逃れるために必要と思うことならなんなりとするがいい。

 それから数時間、ふたりは狩人が用いる古い径(こみち)を進み、サー・ミシェルはもやった陽を確かめながら、ハラムシラルの街をぐるりと迂回し、帝国街道の向こう側に出ることを目指して北東へと馬を向けた。セリーンは無口で、まだ身に着けていた儀仗用の鎧の一部が鳴る音も無視した。もともと実用に供するつもりもなかった鎧の、美しく繊細な細工の施された胸当ては押しつぶされ、とうに打ち捨てられ、忘れ去られていた。

 周囲の森が一斉にうごめき、サー・ミシェルが緊張した。即座に続いて弩の矢がふたりのそばを飛び去っていく。ミシェルが身体を前に倒したため、セリーンは一瞬彼が射られたと思った。彼が鞍から落ちんばかりになって剣を突き出すと、彼女は鈍いブーンという音とともに、径を塞ぐように張り出してきた縄が切断され、両側に飛び去るのを目にした。
 ミシェルが恐慌をきたしてチェリテンヌを疾走させていたら、馬は縄に足を取られ、乗せているふたりもろとも首の骨を折っていただろう。その代わり、森の奥から鎧姿の男たちが飛び出してきて、彼らは戦う機会を得た。

 セリーンが見ると、周囲をぐるりと取り囲んだ敵は鎖帷子と簡素な武器で武装しており、少なくとも半ダースは数え、その他に弩を手にした者たちが何人か控えている。ミシェルほどの武勇を有するシェヴァリエにとっても不利な塩梅だが、守るべきセリーンの存在がさらに彼の分を悪くしていた。

 逃げ切れるか、と彼女が問うと、ミシェルは乗馬を跳ねあがらせ、最寄りの一人の上に乱暴に乗りかからせた。否。
 ならば殺っておしまい、セリーンは身を屈め、地面に滑り落ちた。
 チャンピオンの毒づきを耳にしたセリーンに、ギャスパードの手の者ふたりが取りついた。彼らは嘲りの笑いを浮かべ、剣をだらしなく動かし、盾を低く構えている。何時間にもわたる捜索のため、彼女同様疲弊しきっているに違いない。降伏しろ、女帝、とひとりが言う間、もうひとりが後ろに回る。鎧もなく、戦士でもない。ギャスパードの温情を期待しろ。

 両手を下げ、がっくりと肩を落とした彼女の姿を見て、あっさり済むと思った後ろの男が剣を振り上げた。彼女は振り向きざま、儀仗用とはいえシルヴァライト製の腕甲で男に一撃を浴びせ、ダガーをその眼窩に突き刺した。ルビーの指輪の魔法が刃の回りに焔を走らせ、死んだ男が倒れる間、その口から煙が湧き上がる。

 セリーンが振り返ると、もうひとりが盾を構える。彼女の別の手の指輪が魔法で鼻歌のような唸りをあげ、彼女の目には、まるで優れた画伯が見るように相手の動きがはっきりと映る。どんな小さな動きも感じ取り、それにより奇襲の範囲に誘い込むことも、相手の一撃を逸らすことも可能だ。レディ・マンティロンから贈られたその古い指輪は、「黒狐」と呼ばれた伝説の盗賊貴族が身に着けていたものだという。

 そのとおり。彼女は二本目のダガーを抜きながら言った。この身は戦士にあらず、汝らの女帝なり、刃を向けし者命なく、その累一族郎党に及ぶ。ならば言うがよい、かかる謀叛をなすほどの者、いかな邪なる荷負いの獣が産み出したか。
 相手はたじろぎ、彼女にはそれだけで十分だった。あらかじめ訓練されていない限り、そのような調子の問いを投げ掛けられれば誰でも戸惑う。答えるつもりがなくとも躊躇する。

 彼女は踏み込み、指輪が長年にわたりレディ・マンティロンに強いられた訓練の記憶を呼び覚ます。相手の盾の回りを舞い、剣を握る手の外側に出て、その腕になで斬りを浴びせて制止し、喉に向けて素早い左右連続の突きを見舞う。相手がたじろぎ、盾を持ち上げると、それを待ち構えていたセリーンは相手の後方に膝をつき、逆手に持ったダガーを剥き出しの腿の裏に深く突き刺した。相手が悲鳴を上げる間、もう一本を股間に突き上げる。二本ともまだ焔をあげており、彼女は少々しみったれた充実感を得た。 

 悲鳴と嗚咽をあげて男が膝から崩れ落ちると、セリーンは守りの態勢で立ち上がり、自分をかすめ飛ぶ弩の矢からとっさに身を避けた。装填に手間取る射手に向かって突進し、丁度弦を巻き上げ終えた相手の革鎧の胸を二本のダガーで突き刺さすと、男が背にしていた木の幹に釘付けにした。

 セリーンは二本の刃を抜くと、剣戟の音のする方に振り返った。ギャスパードの兵の最後のひとりは、長柄の斧を振りまわしてミシェルを鞍から叩き落とそうとしている。チャンピオンが身をかわすと、後ろ脚で立ったチェリテンヌが前脚の蹄で男を蹴り上げ、よろめかせた。ミシェルの剣が男の鎧もろとも骨まで刈り取ると、男は切断された肘を押さえながら悲鳴を上げて倒れた。

「無茶をなさらぬように、陛下」 ミシェルが鞍から身を乗り出し、男の頭に一撃を加えて止めを刺した。
「あなたの後ろにじっと座って、ただ別の的になっているわけにはいきません」
 彼は不満げにうなり、鞍から降りると、鼻を鳴らしているチェリテンヌの脇腹の傷を手早く確かめた。
「拙者は陛下を守るのが務め」
「そしてわたくしの役目はオーレイを統治すること」 彼女は言った。「でもしばらくの間、お互いの役目に多少融通を利かせてもよろしいでしょう」
「確かに」 彼はにやりと笑うと、彼女の倒した男たちの方を見た。
「それにしてもお見事でした」

 セリーンはあたりを見回し、これで最後でもないだろうから身軽に動ける装備が欲しいと言った。多くの兵は鎖帷子を身に着けていたが、 ふたりは倒れた兵の装備を検分し、痛みの少ない革鎧、縄の罠を操っていた男の胸当ての部分と、セリーンが刺殺した弩兵の胸当て以外の部分を見つくろった。
 周囲に目を凝らしていたミシェルが、森の中から現れたすらりとした栗毛の去勢馬を見つけ、どうやら二人乗りの必要もなくなったと言った。

 剥ぎ取った鎧をセリーンの痩せた身体に合うようミシェルが手際よくあつらえている間、彼女は重い儀仗用の鎧の残りを脱ぎ捨て、奪った馬に跨った。痩せて気ぜわしいが良く動く。ミシェルが革鎧を仕上げる頃には、彼女も馬を手懐けていた。

 サー・ミシェルとセリーンが帝国街道を目指して南に向かうこと数時間、そこで第二の集団と遭遇した。

*** 

 サブ・チャプターの区切りではないが、一旦ここまで。

 セリーンが啖呵を切るところ。こういうの手間かかるのでやめてほしいですね(笑)。

"I am no warrior. I am your empress, and for lifting a blade against me, your life is forfeit, as are the lives of all in your family."

 ここまでは意味はいいですね。口ずさんで見てもらうとリズミカルで、かつ韻を押している(LとFで固めている)こともわかる。問題は次。

"Now tell me, what foul beast of burden spawned one capable of such treason?"

 ここも謳い上げるような節回し。"beast of burden"はロバでも水牛でもなんでもいいが荷物を背負うための獣です。お前ほどの下種はどのような下劣極まりない生き物から産まれ出たか。貶め、蔑み、詰り、責める、大変な罵詈讒謗(ばりざんぼう)ということでしょう。
 "Beast of Burden"というストーンズの歌との関係は不明。あっちは自分を使い捨てにするなと女にすがる男のラヴソングだけど。

 ミシェルの愛馬(種馬)、チェリテンヌ(Cheritenne、読み方は英語読みのつもり。仏:シェリテンヌ、かな)は、著名ファンタジー小説「ベルガリアード物語」の主人公(?)の乗馬と同じ名前だそうで、それへのオマージュとか違うとか。自分で読んだことはないのですが、残念なことに結構沢山ある小説の和文ファンサイトにも馬の名前がない(馬の話が結構大事みたいなこと書いてあるというのに!)。やっぱ乗馬の文化はすたれてるのだろうか。

 「黒狐」(Black Fox)は、DA2にCodexと特典アイテムの名前・由来として登場したそうな(忘れてます・・・)。Awakeningに登場したのはDark Wolfか。まったく別人だけどネーミングが紛らわしい。

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