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2014年4月 9日 (水)

The Masked Empire 1(3)

 第一章は今回で終わり。当初二つに分けようとしていた意図に反して三つの記事に分かれてしまいました。過去記事含め表題のナンバリングを調整しています。

 分かれて読みにくいとしたら面目ないが、今後も次がいつできるかわからないので、とにかくできた分だけでもアップすることにしていきます。

***

 公式の晩餐に臨むとき、セリーンはいつもオリージャン・シェヴァリエの著名な試練のひとつを思い出す。数多くの剣先がからくり仕掛けで回転したり突き出されたりする前を、シェヴァリエが身をかわしながら駆け抜けるというものだ。だが幸い彼女はその試練をひとりで受ける必要はない。背後には、鎧こそ身に着けていないが、帯剣したままのチャンピオン、サー・ミシェルが控えている。前任者が暗殺者から女帝を守るため落命してから、彼はかれこれ十年近く彼女に付き従ってきた。 

 セリーンは、他の者たちの耳に入らないようにして、バードのメルセンドレから目を離さないようミシェルに命じた。ブリアラが迷路の庭園で発見したのは、一振りの剣であった。どんなことが企てられているにせよ、直前に招待客に加えられたバードがそのきっかけになるのは間違いない。 
 それからセリーンは、シェヴァリエであることを示す長い黄色の羽根飾りをマスクのてっぺんにつけた巨漢のチャンピオンを伴って、敵と味方が入り混じる戦場の中に足を踏み入れた。

 領内にセレスティン湖を擁するヴェナンのチャントラル伯爵は、ここのところセリーンにしつこく求婚を迫っていた。女帝には至って忠実だが、「ゲーム」の才能はからきしな男であり、セリーンはつかず離れずの関係を保つことにしていた。詩情に満ちた彼の挨拶に、同じく格調のある答えを返すと、セリーンはその場を立ち去った。

 領地にオリージャン・タワーを擁するレディ・モンツィマードのマスクには、タワーのファースト・エンチャンターから贈られたレリウムの結晶が配されていた。昨年の宮廷晩餐会に出されたアヒル料理が、サークル・タワーのそれに劣ると非難していた女性だ。夫の方は危険な男だが、彼女は愚鈍で、メイジとテンプラーの間の緊張関係すら重大事だと思っていない。またしてもサークル・オヴ・メジャイの料理の話を持ち出そうとする彼女を遮ったセリーンは、メイジが料理をするときは周り中を燃やし尽くしてしまうだろうと軽口を叩き、その場を去った。背後ではサー・ミシェルが、不調法なレディ・モンツィマードにあからさまな非難の眼差しを向けていることを、セリーンは見もせず知ることができた。 

 毒の混ざった社交儀礼を次々とこなしていく間、ずっと笑顔を続けていたセリーンの顎が痛みでうずいた。言葉の戦いをよそにして、晩餐会場にはメルセンドレの美しい歌声が続いていたが、それも大公ギャスパードの豪快な笑い声のため途絶えた。
 周囲の人ごみが開けると、メルセンドレが困惑した素振りで大公からそっぽを向き、オリージャン・シェヴァリエにして百戦錬磨の常勝将軍である大公キャスパードは、まだ笑い顔をしたままセリーンが口を開くのを待ち構えていた。

 これまでどれだけ「ゲーム」に慣れ親しみ、どれだけ準備怠りなくしていても、いつも必ず最初の瞬間に訪れる恐怖を、セリーンは感じた。

 その恐怖が去ってから、セリーンはギャスパードが招待客リストに最後に滑り込ませた黒髪のバードのほうに近づいていった。体格差が大きいにも関わらず、サー・ミシェルが完璧に歩調を合わせて彼女に追従しているのが足音だけでわかった。セリーンは、公式の場でマスクの着用を許されない庶民のように顔中厚化粧で覆ったバードが、困惑の演技を補強すべき頬紅を差し忘れているという、ほんの些細な手抜かりを犯していることを見逃さなかった。

 セリーンは、自分の従兄にあたるギャスパードに笑い声の理由を問い質す。サー・ミシェル同様、マスクにシェヴァリエであることを示す長い黄色の羽根飾りを付けている大公は、女帝に対する最低限の礼儀すら怠らんばかりの横柄な態度で、バードの歌の節回しがオリージャンが昔親しんでいた歌、「ミーグレン王のマバリ犬」によく似ているから笑ったのだ、と答えた。

 ミーグレンは、今から数十年前、オーレイがフェラルデンを占領下に置いていた時代に、帝国からフェラルデンに派遣された征服者の王であった。
 ギャスパードは、すぐそばに立っていたフェラルデン大使のバン・ティーガン・グエリンにはっきり聞こえるように、辺鄙で文化果つる「犬コロ貴族」の国に派遣されたミーグレンを憐れんで見せ、周囲の笑いを誘う。

 セリーンは女帝の地位に就いてからこのかた、隣国フェラルデンとの良好な関係を構築するため腐心してきた。彼女は、フェラルデンがいまやオーレイの友好国であることを指摘して、明らかに腹を立てている様子のバン・ティーガンを落ち着かせようとするが、無邪気を装ったメルセンドレがマバリ犬の話題を持ち出してその話の腰を折る。バードからオーレイに犬を連れてきたのかと尋ねられたティーガンは、料理が口に合わないだろうから、この晩餐会には連れてきていない、と反撃する。

 ギャスパードは、ティーガン大使への贈り物だと言って用意しておいた包みを手渡した。罠と知りつつも他になす術のないティーガンが包みを解くと、中からはブリアラが日中に庭園で見つけたものと同じ、使い古した一振りの剣が現れた。大公を諌めつつ、サー・ミシェルは剣と女帝の間に身体を割り込ませる。この広間内への武器の持ち込みは厳に戒められているはずだった。だからこそ、それを持ち込むためギャスパードが日中苦心惨憺していたことに、セリーンは思いを巡らせた。

 ギャスパードは、その剣がオーレイ占領軍への抵抗を試み、オリージャンによって亡き者にされたフェラルダン叛乱軍の女王、モイラのものであったことを仄めかした。セリーンは、ギャスパードの策略が単純だが効果的であることに気づいた。バン・ティーガンが屈辱に耐えきれずにあらぬ事を口にすれば、メルセンドレが驚愕の素振りでそれを増幅してみせ、もっとも愚鈍な貴族ですらティーガンがオリージャンを侮辱したことに気付かせるという寸法だろう。行きつく先は決闘しかなく、そのときセリーンには自分のチャンピオンであるサー・ミシェルを戦わせるか、ギャスパードが受けて立つのを傍観するか、その選択肢しか残されていない。どのみちフェラルデンとの関係は悪化し、また別の愚かな戦争の足音が近づくのだ。
 ギャスパードにとって、戦争こそ本領であった。

 怒りで目もくらまんばかりの様子のティーガンは、モイラの子息であり、のちにフェラルデン王となるマリックがオリージャン軍をフェラルデンから追い払った歴史に言及する。対してギャスパードは、モイラの傍に役に立たないフェラルデン兵ではなく、マバリ犬が一匹でもいれば、彼女も生きて国の解放を目にすることができただろうと侮辱を続けた。

 ギャスパードの策略にまんまと乗せられ、もはや堪忍袋の緒が切れたティーガンは、言ってはならない事を口走らんばかりだ。その様子を見て取ったセリーンが、女帝としての威厳ある声でティーガンに呼びかけると広間内に沈黙が訪れる。セリーンはティーガンに対して、オリージャンがもたらしたモイラの死に対する名誉挽回の機会を求めるつもりかどうか尋ねる。すなわち決闘による決着のことだ。セリーンの思惑を読み取ったティーガンは、決闘を求めると申し出た。

 周囲の貴族が叫び声をあげる中、セリーンがサー・ミシェルに頷き、チャンピオンは剣を抜いた。むき出しのシルヴァライトの青い光の輝きを目にした周囲は静まりかえった。
 セリーンから名誉ある決闘の用意は整ったかと問われ、チャンピオンは即座に否定した。決闘の申し出を受けた女帝側には武器を選ぶ権利がある。その手続きを踏まなければ決闘を開始することはできない。

 セリーンは、二国間の過去の遺恨のために尊い血を流すのは忍びないと告げ、自ら決闘の武器を選んだ。それは、羽根飾りだった。 

 サー・ミシェルが合点すると、自分のマスクについている黄色の長い羽根飾りを素早くもぎ取り、剣の達人の鮮やかな精密さでそれを構えた。その恰好を見た周囲の貴族は大喜びする。貴族たちは何を置いてもセリーンの臣下たちであった。みな血腥い決闘騒ぎも大好きだが、機転の利いたやりとりにも目がないのだ。

 あきらかに救われた様子のティーガンは、自分にはフェラルデンの毛皮が得物として相応しいが、あいにく手持ちがないと軽口を叩き、それもまた周囲の笑いを誘った。
 セリーンは、いまや何事もなかったかのように礼儀正しい笑顔を浮かべているギャスパードに対し、一つ目の贈り物に加えて、もう一つの贈り物でさらに気前の良さを示すように促す。大公は自らのマスクの羽根飾りをもぎ取ると、それをティーガンに差し出した。

 サー・ミシェルとバン・ティーガンが長い羽根飾りで突き合い、身をかわし合う様子を、貴族たちは大騒ぎしながら見物していた。セリーンはメルセンドレに、景気づけの歌を歌うように促した。

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 その夜、ブリアラは女帝セリーンの寝室に秘密の扉を通ってやってきた。入浴を済ませた寝室着姿の女帝は、薄暗い中で読書をしていた。ブリアラは、今や職を解かれた衛兵隊長がギャスパードのために剣を持ち込んだことを白状し、女帝の慈悲を請うているとの報告をする。シャトレインについて尋ねられたブリアラは少し躊躇したが、女主人は愚かでのぼせ上ってはいたが、忠誠心を忘れたわけではない、と弁護する。ただし、アヒル料理が不出来だったら彼女に鞭打たれたかもしれないエルフの娘たちのことを思い出し、多少の折檻は必要であろうと付け加えた。

 セリーンは、今宵のギャスパードに対する勝利の後には寛容さこそ相応しい、と応じると、ブリアラの首筋を優しく指でなぞってそのマスクを脱がせた。のぼせ上った恋には多少とも同情する余地がある。マスクを横に置きながらセリーンはそう言った。セリーンと頬を合わせたブリアラは、女帝の入浴剤である薔薇と吸い葛(すいかずら)の香りを嗅き、相手のサテンの寝室着を脱がせる際には、指でその冷ややかな感触を味わった。それから彼女は、空いているほうの手で燭台の灯りを素早く消した。

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