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2014年4月 4日 (金)

The Masked Empire, Chapter 1 (全訳1-1)

 試行版です。細部磨いていないのでまだ多少粗いかも。

 前回記事の要約に対応する部分ですが、どんだけ違うかおわかりいただけたでしょうか・・・。

 ゲームの小説版(に限らずエンターテイメント系小説)は、アクション・シーンや殺気立った場面から始めるのが鉄則みたいになっていますが、敢えてそうしないところが、著者ウィークス氏の「小説家」としての矜持なのか、DAシリーズというフランチャイズなので(もっぱら読者がファンだから)許されるのか。
 ちなみに彼の小説"Palace Job"の劈頭は思い切りアクション・シーンだったのですが。

 サー・ミシェルが恰好よすぎ! 
 なーんて、要約じゃなかなか伝えにくいもんねえ。

 ちなみに固有名詞の読み方は暫定。オーディオ・ブックでも出してくれりゃいいのに(DA小説の売り上げ部数じゃまず無理かな)。

***

第一章

 女帝セリーンは、オーレイ大学の広い「チャントリー中庭」に、従者と護衛からなる取り巻き集団、さらには彼女自身のチャンピオンであるサー・ミシェルを伴って歩み入った。大学の教職員全員が謁見のため集合しており、教授たちは彼女が近づくとお辞儀をした。

 蒼白い朝の陽ざしの中、大理石の壁は新雪のように輝いていた。中庭の石畳はアンドラステの姿を描くモザイクになっており、真珠色に輝く鎧に身を包んだ誇らしげで大胆な様子の彼女と、その背後の紅玉色の焔を表していた。
 セリーンは、ここを前回訪れたとき、無頓着な者たちに踏まれたモザイクの石畳が幾つかずれていたことに気がついていたが、今日はそれらが修復されていることを目にして満足した。
 アンドラステのモザイクは、瑠璃の両眼でその中庭の名前の由来となった教会を見つめている。大学の中では最も背の高い建物であり、組になった輝くふたつの青銅製のドームがあたりを睥睨しているが、学生たちはふざけてそれらを「アンドラステのおっぱい」と呼んでいた。

 大学総長がセリーンにそう告げたわけでは、もちろんない。

 大きな青銅製の扉の上、アンドラステとその門弟たちの壁画の上には、チャント・オヴ・ライトの一節が石の中に金文字で彫り込んである。「学び多き子は、親たちにとっての、メイカーにとっての賜物」。
 総長と教授連は、その一節の下でお辞儀したまま、セリーンと取り巻きたちがアンドラステのモザイクの上を歩み寄ってくるのを待っていた。

「皇帝陛下」、総長ヘンリ・モラクがそう告げ、セリーンの合図を待って、彼と同僚たちは頭をあげた。「ご来訪いただき、光栄に存じます」
「このように大変なときですが、モラク、あなたと他の教授たちがオーレイの未来のため与えてくれる知識と知恵は、わたくしの心に安らぎをもたらしてくれます」 セリーンが微笑んで従者に手を振ると、そのうちふたりが複雑で精巧なつくりのシルヴァライト製のからくりを取り出し、何度か曲げたりひっくり返したりして、ちいさいが驚くほど快適そうなベンチを鮮やかな手並みで完成させた。
 サー・ミシェルが横に踏み出し、回廊と大理石の壁に穿たれた窓に目を向けて、女帝に対するいかなる脅威も見逃さないように警戒していたが、セリーンが個人的従者に要求するように、その間いつもどおり自信に満ち溢れた雰囲気を保ったままであった。

 モラクは驚愕して跳び上がった。明らかに彼は彼女を自室に招き入れ、自分の管轄するこの地をセリーンが訪れた意図を尋ねるつもりだったのだろうし、またおそらくは、将来を嘱望される学生が新らたにものした論文原稿に目を通してもらうつもりであったのだろう。野外における会話の糸口を探るためしばし沈黙している間、モラク家の家督以外の男子であることを示す比較的簡素なマスクの下で、彼の唇は困惑と思慮のためすぼまっていた。セリーンは、こんなにもあっさりと彼の意表を突くことができたことを静かに愉しんでいた。

 女帝は、ロープのように数珠つなぎになった真珠を縁取りにあしらい、ヴァルモント家の色を示す紫水晶を配した黄金の複雑な紋様を織り込んだ、クリーム色のサテンのガウンを身に纏っていた。それですら彼女の女帝としての地位に許される、乗馬以外の公的な場面における最も簡素でくつろいだ装いであったが、そうであっても、一日中身に着けていたら背骨と腰を押し潰すのに十分なだけの重さがあった。彼女は小さなシルヴァライト製のベンチに、安堵や不快さが思わず顔に出ないように、いつものように注意深く腰を落ち着けた。

 オリージャンの上流階級の者たちが公的な場面で身に着ける顔の上半分を覆うマスクは、彼女が表情を秘匿するのに役立った。それには月長石が散りばめられ、頬骨と鼻を示す部分は黄金で縁どられている。両目の周囲は沢山の小さな紫色のサファイアで囲われており、また染め上げられた多くのクジャクの羽根が流れるように後ろに拡がり、黄金と菫色の冠とともに彼女の頭を取り巻いていた。サファイアと羽根は、特定のガウンに合わせるために、または特別な場面であることを示すために着け替えられるようになっていた。女帝のマスクの下の顔は白粉で覆われ、唇は深い紅色に塗られていた。

「皇帝陛下のお望みいかんに存じますが」と総長モラクは話し始めた。「ダウシー教授が、クナリ社会の劣等性に関する彼の学位論文の一部をご披露することをお許しいただけるなら、彼も大変な名誉に服すことでしょう。それはブラザー・ジェニティヴィの初期の記述を大胆に発展させたものでございまして、本職の記憶が正しければ、陛下は彼の初期の作品は極めて前途有望であるとお考えであったと存じます」
「とても素敵な申し出ですわ」、セリーンはそう言うと、モラクが横を向いて、彼の右手に並ぶ教授連の中からひとりを呼ぼうとするまで待ってから、こう付け加えた。「ですが、パー・ヴォレンの大きなツノの生えた支配者たちに関する議論は、冬の到来がすでに予感されるこの時分には、少々殺伐としたものに過ぎないでしょうか」 彼が驚いて振り返ると、彼女は続けた。「おそらく、あなたの教授のうちどなたかおひとりから、数学の研究についてお話いただく方がよろしいかもしれません。わたくしは、わたくし独自の単純な方法でヴィラニオンの定理に取り組んでおりますので、あなたの博学な学者の中のおひとりから、その証明過程を説明いただけると大変うれしく思います」

 しばしの間、大きな中庭に静寂が訪れ、学生や庭師が餌付けしている、冬に南へ渡ることをやめた小鳥たちがさえずる声だけが聴こえた。
 モラク総長は生唾を呑んだ。家督の身分ではないとはいえ、彼は落ち着きを喪うべきではなかった。胸中をあからさまに顔に出してしまうことが帝国宮廷の場で害をなすと考えた一族が、彼を学者生活に追い払ったのか、それとも彼自身が大学生活に慣れてしまい、宮廷生活のための訓練を忘れてしまったのか、とセリーンはぼんやり思案していた。いずれにしろ、彼の評判にとって良いことではない。

「輝けるお方」とついに彼は言った。「ご自身の学究をそれほど軽んじてはなりません。ヴィラニオンの定理はとてつもなく複雑です。白状しますが、本職の数学研究においてすら、知性の波は岩肌の並ぶ浜辺に打ち付けられて粉々に砕け、ほとんど何の成果も見出せておりません。しかしながら数学の実演をご所望とあれば、自然界においてあまりにも頻繁に眼にする特定の比率が、メイカー自らのご意思を反映しているに違いないことを示す論文をものしました。光栄にも、もしそれを・・・」

 「お茶を」とセリーンが求め、従者のひとりに手を振ると、火を用いずに中の水を温めるルーン紋様の施された美麗な銀のポットが取り出された。別の従者が取り出したアンティバン陶磁器のいくつかのカップと皿のセットは、あまりに繊細なつくりのために朝の陽射しが透けていた。
「他の教授の中には、ヴィラニオンの定理を解明している方が間違いなくおられることでしょう。仮にわたくしどもが、テヴィンターの一介の学者がものした定理すら理解できないのであれば、オーレイ大学をセダス一博識な学び舎と呼ぶことは到底できませんから」

 モラク総長は、それには腹を立てたように見えた。ついに貴族の誇りを丸ごと喪ってしまったのだろう。「申し上げますが、輝けるお方、知識と文化の探究においてオーレイ大学は比類なき存在でございますし、またテヴィンターの学者連中が、メイジ支配者の単なる奴隷の身分であることもその無視できない一因でございます。宗教的な、また政治的な抑圧から解放していただいているからこそ、本職らは陛下から、オーレイの文化をさらに拡充するようお力添えをいただいているのです」

 そう、ときに辛辣な言葉を投げつけるくらいのことは、モラクは宮廷生活の訓練をまだ覚えていた。セリーンは、ついに会話が面白くなってきたことを喜んだ。「では、あなたの学生のおひとりについては? 昨年ヘレーヌ伯爵夫人と乗馬を楽しんでいた折に、彼女が、並はずれた数学の才能がある若者をここに推薦していると聞きました」、彼女は従者からティーカップを手渡されると、一口すすった。「今思い出しましたが、彼こそがヴィラニオンの定理を研究していて、その議論が元でわたくしが詳しく調べるつもりになったのです。確か、若者の名前はレナンでしたでしょうか」

 「ああ、その件で」とモラクが言って、セリーンが話をどこに進めようとしているか気がついた彼の視線は無情なものになった。「その者の入学申請は覚えております。そしてもちろん、私どもの門戸は誰にも広く開かれているとはいえ、貴族の血脈やその正当な推薦をもって、彼らが私どもの威厳ある伝統を間違いなく維持していくことを・・・」
「教えてください、モラク」セリーンは言うと、お茶をすするのを止めた「あなたは数学を研究しているのでしょう。零についてはご存じ?」

 お茶は素晴らしい味わいで、シナモン、ジンジャーとチョウジのリヴァイニ・ブレンドに、セリーンの好みに従ってハチミツで甘みをつけていた。
「存じております、輝けるお方」モラクはしばらく沈黙した後、その質問がただのお愛想ではないことに気がつくと、そう答えた。彼はセリーンの従者が差し出したティーカップを、ほとんど隠しもしない苛立ちとともに受け取った。
「結構。それは、あなたの大学で学ぶ貴族以外の血筋の学生の数です。それについては、少しばかり失望を表明しなければなりません、モラク総長、というのも前回お話をしたときから少しは改善が見られると期待していたものですから」
「輝けるお方・・・」
「お茶をいただいたらいかがですか、モラク。わたくしはあなたの校舎に農奴たちを徘徊させるようにお願いしているのではありませんよ。血筋を越えた知性を有していることを貴族たちが見極め、ここに推薦してきた庶民たちを入学させ、彼らの研究によってオーレイがより強大になる機会を与えるよう、お願いしてきたのです。」
 モラクの拳は手にした皿と同じくらい蒼白になっていた。「あなたがお話になっているその若者は、皇帝陛下、エルフでした」 

 セリーンは彼女のチャンピオン、サー・ミシェル・デ・シェヴィンのほうに向きなおった。彼は帝国の紋章が塗り上げられたシルヴァライト製の鎧を身に着け、威風堂々とした出で立ちであった。彼の家系の紋章は心臓の上の部分に描かれており、彼のマスクはセリーン自身のそれの簡素化されたものである。「サー・ミシェル、シェヴァリエはその鋭い目で名高いと聞きます。この中庭には、これまでひとりのエルフも見かけなかったのではないですか?」

 サー・ミシェルはかすかに微笑んだ。「ものの見方によりますでしょうね、陛下」 彼はチャントリーを、特にその青銅の扉の上にある壁画を指差した。「拙者に間違いがなければ、あの壁画は伝説のヘンリ・デ・ライデスの手による、アンドラステとその門弟たちを描いた作品の忠実な複製です。ヘンリがオリジナルを制作した時分、エルフはまだオーレイを裏切りも攻撃もしていなかったので、同盟相手と考えられておりました。二十年後、ディヴァイン・レナタがエルフに対する聖なる進軍を始めたとき、彼女はまた、チャントリーが所蔵しているエルフが描かれたすべての作品を破壊するようにも命じました」彼は微笑んだ。「しかしヘンリ・デ・ライデスがあまりにも優雅にかつ熱心に嘆願するので、この作品たったひとつだけが破壊を免れたのです。ヘンリが、いまや異端となった門弟シャルタンの耳の部分を削ぎ落とすという条件つきで」

 セリーンは、感謝をこめて首を傾げた。「ああ、そうでした。そして大学はオリジナルを忠実に複製したようですね。どれがシャルタンか指差せますか、モラク? 耳は変えられましたが、その大きな目は見間違えようがありませんもの」

 モラクは壁画を見て、それからセリーンに視線を戻した。「もちろんです、輝けるお方。チャントリーと異なり、大学は正しい歴史を再現することに誇りを持っております。あれこそ、アンドラステが忌わしきテヴィンター帝国の奴隷身分から解放したエルフです」

「とても奇妙なことに、研究範囲を制限しようとする宗教的抑圧と戦うことにそこまで熱心な大学が、この件については、ディヴァイン・レナタ自身と同じだけでも考えを曲げようとしないわけですね」
「確かに謎ですな、陛下」サー・ミシェルが言って、総長モラクを見やった。
 総長はティーカップを長い間すすっていたが、それを皿に戻すと、カップが踊って陶磁器がカチャリと鳴った。「ヘレーヌ伯爵夫人の申請については、もちろん、喜んで再検討させていただきます」
「オーレイは、その文化と学術に対するあなたの貢献を誇りに思います」セリーンは首を傾げると立ち上がった。従者のひとりが小さなシルヴァライト製のベンチを取り上げ、彼女の背後でそれを折りたたみ、セリーンはカップと皿を他の従者に返した。「さて、宗教に関するお話のあとでもありますから、ここのチャントリーが授ける教えを有難く味わう時間を持ちたいと思います。誰にも邪魔されないようにお願いしますよ、モラク総長」それから彼女は微笑むと、和平を持ちかけるために付け加えた。「わたくしの用が済みましたら、そのメイカーのご意思を示すという比率のお話もぜひ伺ってみたいものです」

 教授連はお辞儀をし、セリーンが大きな青銅製の扉に近づけるように、急いで道を開けた。セリーンの従者たちは、サー・ミシェルを除いて誰も付き従わなかった。
「お話の向かう先を予め教えていただいてもよかったのではないでしょうか、陛下」彼はつぶやいた。「シャルタンの異端は、あまり一般的な知識ではございません」
 セリーンは彼のほうを見ずに微笑んだ。「あなたを頼りにしていましたよ、チャンピオン」
「中に同行いたしましょうか?」
「アンドラステのおっぱいの中は十分安全だと思います」セリーンがそういうと、サー・ミシェルは扉を引き開けた。ミシェルが中を覗き込み、部屋を見渡して危険の兆候を探し、彼女のほうに向きなおって頷くと、彼女はひとりで歩き出した。

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