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2014年4月28日 (月)

The Masked Empire 5(1)

 さて、DiabloIIIも遊ばずに(ちょっとだけ遊んだ(笑))、続いていきましょう。

*** 

 第五章 

 ハラムシラルのスラムでは、叛乱の火口(ほぐち)が燻っていた。貴族の冷酷な所作は目新しくもなく、街中のエルフは下を向いて歩くことをわきまえていた。エルフ女性は、一人で出歩くこと、見かけが可愛いらし過ぎることの危険をまだ若い頃から知っていた。エルフの商人は、滞っている支払いの一部をせしめるくらいまで貴族に催促することは許されるが、やりすぎると自分の家を焼かれることも知っていた。 

 それが好まれていたわけではないが、そう知られ、甘んじられ、世の中はそういうものだと諦められていた。

 レメットの死は許されなかった。友人だったスレンは、他の商人たちとかつての彼の善人ぶりを囁き合った。仕事に正直で、家は清潔に保ち、安価で丁寧で完璧な仕事ぶりによって貴族の御者たちの仕事まで請け負っていた。怒らず、良く笑い、友人には気前よく酒を奢った。レメットはごみ屑などではなかったが、メインセライ卿の手の者たちは彼を殴り、切り刻み、バラバラになった身体をみせしめのため、まるで最悪の犯罪者のように街中に晒した。レメットのようにいざこざと無縁だった善きエルフがそんな目に合うなら、他の者たちはどうだ。 

 レメットは遣い走りを救うため死んだ、と盗賊たちは囁き合った。稼業がなんであれ、真のエルフの心の持ち主を、支配者が誰か見せつけるためシェムどもが犬のように切り刻んだ。それによって石つぶてがさらに飛んでくるとヒューマンどもが恐れていたのは、とうに昔の話だった。 

 レメットはあの晩酒場で歴史の話をしていた、とジネットや他のエルフ信奉者たちは囁き合った。彼が何を話したかはともかく、ヒューマンが和平を反故にして侵攻するまで、ハラムシラルがエルフの故郷であった時代の話を聞いていた。そしてエルフの故郷を焼いた貴族の末裔どもが、ひとりの無辜の子供を殺そうとしたとき、彼はその前に立ちはだかった。そうしないエルフがいるものか。 

 ハラムシラルのピエール伯爵は、ヒューマンに害が及ばない以上メインセライ卿の行いを咎めることはせず、スラムの巡邏を強化するように命じた。深夜仕事から帰宅するエルフの集団は、衛兵たちから執拗に苛まれ、殴打された。翌朝、市場の開かれる広場で衛兵たちの死骸が見つかり、その耳はエルフの盗賊がやるように切り取られていた。 

 ピエール伯爵はシェヴァリエの一隊をスラムに送り込み、屋内に留まる分別を欠いていたエルフを十人、見せしめのため殺した。翌朝、シェヴァリエの厩の馬丁たちが殺され、彼らの馬の喉が皆掻き切られているのが見つかった。 

 レディ・エルスペスは、彼女の領地へ立ち入ろうとするメインセライ卿を追い帰した。彼の粗暴な行いによって、彼女の大好物であるタルトの原料ベリーが市場から調達できなくなったというのが理由だった。卿が引き返すと自邸からは煙が上がっており、馬車の窓から飛び込んだ石つぶてが、卿の鼻に当たって血で濡らした。

 賢い貴族たちは秋の休暇と称して別荘に引きこもった。愚かな貴族たちは衛兵を増やした。

 そしてそういった顛末は、静かに、ゆっくりと、ハラムシラルからオーレイ全土に伝播していった。

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 セリーンにとって、ギャスパードが初手をしくじった後の日々は、爽やかで静かに流れた。外交文書に署名し、報告を読み、援助を求める発明家たちや芸術家たちに謁見し、ディヴァインを主賓として招く舞踏会の準備に追われた。そこでディヴァインは貴族たちを前にして、メイジとテンプラーの間の緊張関係を緩和する何らかの一歩を踏み出す手はずだった。

 ディヴァインの赤毛の代弁者から便りはない。拒絶も承諾もなく、続く沈黙はセリーンの胃を締め付けた。また眠れない夜が訪れ、寝台の隣で丸まって横になっているブリアラをよそに、彼女は夜明けを眺めていた。 

 オーレイに必要なのは次のブライトだ、と彼女は考えを巡らせていた。それが真の救いになるわけではなく、帝国に破壊が訪れるのも望まなかった。だがブライトへの対処は、容易ではないとしても、少なくとも単純だ。戦える者を集め、ダークスポーンに立ち向かわせ、グレイ・ウォーデンたちがアーチディーモンを退治するのを待つ。即座にそうならなくても、最後には政治ごとは抜きになる。ローゲイン・マク・ティアがグレイ・ウォーデンを愚かにも裏切り、先のブライトの最中に政権を簒奪しようとした話は、どう考えても困惑を呼ぶが、野蛮なフェラルダン貴族たちですら、最終的には結束することになった。

 アビサル・リフトからダークスポーンが湧き出し、次のブライトが始まるなら、大公ギャスパードは前線に立って、その類稀なる軍略の才を持って敵と対峙するだろうか? テンプラーたちとメイジたちは、怒りの矛先をダークスポーンに向けるだろうか? 

 セリーンはため息をついた。次のブライトは文字通り、内紛や内戦など及びもつかないほど手ひどくオーレイを切り刻むことを知っていた。それだけではなく、ブライトのたびに文化は失われ、知識は散逸した。戦時に図書館を建てる者はいない。彼女の大学、父の教えに虚ろに盲従する代わりに、批判的考察を学んだ彼女の受講生たち、学び舎への道を徐々に進むことになる庶民たちやさらにはエルフたち・・・、それらすべての事柄は、単なる生存のための戦いを前にすれば、置き去りにされる。

 眠ったほうがいいと、横でブリアラが囁いた。起こしてしまったと謝るセリーンに、ブリアラはとうに前から起こされていたと答える。
 女帝の背負う重荷、とセリーンが言って笑う。ブリアラは彼女の上に覆いかぶさると、一緒に背負わせてほしいと求める。
 耳と目はブリアラに委ねたが、これは自分だけで背負うもの、セリーンは相手を引き寄せるとそう言った。起き直ったブリアラが、ひとりでは無理だと告げ、リマッチェの求婚への返答について尋ねた。ブリアラの両の瞳はあまりにも大きく、朝早い光の中では暗く、セリーンは、穏やかで深い底なしの水面の中をのぞき込んでいるような感じがした。 

 リマッチェはすでにギャスパードについた。そう言ったセリーンはため息をついた。ギャスパードが狩りの旅で彼女に提案を持ちかけた日の夜、ブリアラがバードの罠からミシェルを救い出した日の夜、二人の貴族は誓約を交わしていた。ギャスパードは二つの戦線で敗北したが、リマッチェが失われた事実が、セリーンの勝利に後味の悪さを加味したことは知っている。

ブリアラが彼女の手を握りしめ、彼が忠誠の向ける先を変えたことを度外視すれば、今からでもリマッチェの求婚を受け入れることは可能だと言った。彼にとって、玉座の隣で統治するほうが、ギャスパードにつくより魅力的なはずだ。求婚を正式に取り下げて、女帝の怒りを買うよりもそのほうが・・・。

 それではブリアラを失ってしまう。その言葉はセリーンの喉をつまらせた。自分にはブリアラしかいない。ブリアラがいてこそ自分だ。彼女はブリアラを引き寄せ、その温かい腕が自分の身体を抱くのを感じた。そして、ときにはブリアラのことが羨ましくなる、と告げた。

 セリーンは、それが言ってはいけなかった言葉であることに即座に気が付いた。ブリアラの身体が強張るが、彼女の声に変化は現れず、オーレイの女帝がエルフの侍女に嫉妬するのか、と問い返した。
 ブリアラはいつでもここから立ち去り、別の人生を歩むことができるから、とセリーンが答える。それでも依然としてエルフのまま、そう言ってブリアラはえくぼを浮かべて笑ったが、セリーンには彼女がまだ傷ついていることがわかった。

 でも、自分は玉座に座るために生まれ、それ以外なにもすることはできない。自分の両親とレディ・マンティロンが・・・。セリーンの声は小さくなっていく。
 ブリアラは身体を離して立ち上がり、自分のローブを羽織りながら、セリーンは立派な学者になれるでしょう、と言ったが、それも皇帝ギャスパードが彼女の意に沿わない決断をするまでの話であり、そのあとは面倒なことになるのは間違いない、と付け加えた。

 そうかもしれない、愛しい人、と言ったセリーンも立ち上がり、何事もなかったかのようにローブを羽織り、リマッチェのことは考えてみよう、と言った。
 ブリアラは頷き、マスクを身に着け、姿見の陰の通路から姿を消し、ため息をついたセリーンは、小さな魔法のポットを手に取った。

 どうやら、今朝のお茶は自分で淹れなければならないようだった。

*** 

 後半のブリアラとのやり取り、女帝と立場はだいぶ違いますが、フランス革命前夜の宮殿近衛連隊長(准将)、ジャルジェ(ジャルジャイユ)伯爵家令嬢のことを歌った歌を思い出しますね、って「ベルばら」のレディ・オスカー(オスカル)かよ! 

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